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対談 「WINK Memories 1988〜1996」

〜Winkの歴史と全シングルを検証〜 【Part3】 94年〜95年 総括




  1994年 

M:94年は「いつまでも好きでいたくて」〜「シェリー・モンシェリ」。この時期のアルバムのコピーが"Wink meets the 60'S、70'S"で「懐かしいけど新しい」。
T:ああ、もうそのへんはきめてかかってたんだ。
M:うん。完全に決め打ち。
T:この辺になるともう中期のイメージは脱却できてますよね。
M:もう別物だね。
T:でもそれって結構、最初期のコンセプトじゃないですか?実は。
M:そう。「アマリリス」の方向をぐぐっと追求している。意図的にシンセ音とかは抜いていて本当にフォーキー。そっち方面の進化を目指している。


cover ■ いつまでも好きでいたくて  (94.02.23/19位/7.9万枚)
T:だって「いつまでも好きでいたくて」は加藤和彦さんだもんね。どフォーク。
M:加藤和彦はロックでもあり、テクノでもあり、クラシックでもあり、となんでもござれなんだけれども。
T:出はフォーククルセイダーズという。
M:うん。これは「フォークル」の加藤和彦。
T:すごい人ですよね、そう考えると(笑)
M:やっぱりこの人も日本のNM・ロック系の原点にいる人だから。それこそフォークルかジャックスかはっぴいえんどかというそれくらいの原点だから。
T:この人も御大ですよね。
M:うん。でこれはそのまんま「悲しくてやりきれない」というか、そんな感じだよね。
T:ああ、そうね(笑)モロフォーク。
M:それ以外表現しようがないという出来。
T:んで歌詞が秋元康という。
M:秋元さんはわりと根がフォークっぽいから。この人フォーク聞いていたな、というそういう詞作が多い。なもんで、これはありかなと。
T:や、これは悔しいけど・・・って悔しいけどってなんだって感じだけど(笑)結構きますねこれは。胸キュンしてしまう。
M:この素朴な作りが結構よかったりする。今までのWinkでは文脈通じないけれども。
T:いやぁ、ユーロビートとかヨーロッパとかゴスの影も形もないからね(笑)
M:もうアレは「レディードール」で終わった世界だから。もう別物としてみてよねという。
T:だから、さっき言ったリセットがあったからこれが出来たんですね。
M:うん。そうでないと納得がいかない。
T:まあでも、リアルタイムで聴いてたらえええっってなってたかもしれない。
M:それは私がしっかりなっています。
T:ははは。リアルタイムでこの曲知らなかったんですよね。
M:この良さを知ったのはホントつい最近。
T:いま改めて聴くと、じんわり染みる曲で。
M:あのさちょっと間違いがあるかもしれないけれども、ミスチルとかスピッツっていうのは60〜70年代のフォークとかフォークロックとかあるいはビートルズ的なものを、90年代にJ-POPとして再生したというイメージがあるんだけれども。
T:んー。それはあると思います。スピッツなんかフォークな曲多いし。ミスチルは浜田省吾経由というか(笑)フォークロックな曲あるし、ミスチルの曲なんか、アレンジ取ったらフォークだってのいっぱいありますしね。ビートルズは当然入っているし。ってか、フォークって90年代末期に一時復権したし。
M:そうだね。
T:ビートルズってのも90年代、やたらまた何度目かのブームっていうかアンソロジーとか出て。90年代中期のキーワードではあると思います、そのへん。
M:このWinkの転向はその辺の空気を察しての転向かなと、その文脈で以降のウインクも持っていこうとしたんじゃないかなぁと、私はこの時期のアルバムを聞いて思ったりする。
T:レイドバックな。あーそうなんですかね。
M:アルバム聞いているとなんかスピッツとかよぎるのよ、私的には。
T:でも94年っていうとまだ、そこまで色濃くはないですからね。やっぱりミスチルの台頭あたりからって気がするから、もしその空気を読んだのだったらスタッフは鋭いのではと。
M:そう思う。だからこの路線も当時のわたしには何故感が強かったんだけれども、で、数年後聴いてスタッフの目指していたモノがわかったという。あーー、そういうことか、という。
T:なるほどねぇ。いや、この時期のアルバムも聴かんといかんね。
M:ホントアルバム聴かせたいっす。
T:や、ほんとここまでのボリュームになるのだったら、聴いてからやればよかったなと。
M:もっと「萌え〜〜」以上。とかそんな話だけになると思っていたよ、わたしも。
T:はははは。「リメイン、萌え〜」とかそんな感じ?って高を括っていた。
M:なんでこんなことになったんだか。
T:ふりかえっちゃだめだ!


cover ■ トゥインクル トゥインクル  (94.05.25/28位/7.4万枚)
M:次「トゥインクル トゥインクル」。これはシングルはわりと打ちこみなキラキラ感で攻めているよね。
T:これいくつかバージョンあるんですよね。
M:アルバム『overture !』の60'Sバージョンがめっさ好き。「バンド」って感じで、うわーーこのいなたいドラムの音すっきやわ〜〜。と。
T:もっと生な感じなんだ。
M:生音そのもの。もう60年代ですという。
T:シングルのほうもなんか、以前のユーロビートではなくてもうちょっと抑えてますよね、アレンジ。
M:うん。
T:ちょっとハウスっぽいかも。
M:あ、そうかも。
T:ピアノとかもろハウス。リズムとかもこう、薄いつくりで。
M:打ちこみメインだけれども以前のような作りこみではなくって。
T:ハイエナジー!って感じではない。
M:さらっとした感じ。かるーく作りましたという。
T:姿勢がじゃなくて、音がね(笑)。
M:うん。これはこれでいいと思う。
T:自分も結構好きだな、これ。だからこの年は、結構いいとこ来れてるというかその、荒療治を経て(笑)。
M:やりなおそうとしているな、と。別物としていいかな、と。
T:でも数字には結びつかないんだけどもねぇ・・・。
M:でも「リアルな夢の条件」からの数字を維持しているわけで。
T:あ、そうだね。キープはしているね。
M:まぁ、ここまでは次の期待が持てる感じがする。んが。
T:んが?
M:というところで次。


cover ■ シェリー・モンシェリ  (94.10.26/29位/2.5万枚)
M:「シェリーモンシェリ」でいよいよ売上が危険水域。
T:うう・・・CAUTION!って感じですか。
M:だって2.5万枚ってヤバイでしょ客観的にいって。
T:いやぁ、ねぇ・・・。でもこれいいですよね。
M:いい。すごくいい。
T:後期の中ではかなりいい。
M:またこれだけこの時期にして継子的なんだけれども、非常に醒めた作りがカッコイイ。やっぱりウインクは低血圧だよと。
T:いい感じのクールな色気が出てる気がする。
M:ヒップホップ的な要素が出てきているよね。
T:そうですね、リズムがレゲエっぽくて、あと上ものはブラック。
M:なんか歌詞が無駄に脚韻を踏んでいるし。
T:無駄にて(笑)「Oh Why わかんなーい」とかですか。
M:うん。でもそれがカッコイイ。このノリってちょっとこの時期にしては新しすぎじゃない?
T:かなり早いっすよ。これ最近聴きなおして"うおーっ"て思った。
M:いまでもアリなつくりだよね。
T:全然いまでもいける。新曲として出ても全然いける。
M:えーーーっ、Winkってここまでやっていたの!?という。
T:ちょっとびっくりですよね。
M:うん。少なくとも5年は早い。
T:いまの宇多田とかに端を発するR&Bの人が歌ってもおかしくない。
M:歌詞の歌への載せ方とか、バックトラックを含めての全体の軽さとかももちろんそうだし。
T:そうそう、この薄いつくりとか、リズムがループする感じとか。
M:これは今だよねほんとに。
T:少なくともこの時期にしては早すぎる。
M:こんなもの94年に出して受けるわけがないという。
T:はははは。
M:だって94年っていえば小室時代初期だよ。それでこのつくりはありえない。
T:だからね、小室が98年〜99年ごろやってもまだ少し早かったというアプローチではないかと。これは「MISS YOUR BODY」とかあのへん。
M:しかもこれがいつもの門倉聡が作っているというのも、どこにその引きだしあったの?という。
T:「Sexy Music」からやってるんだもんなぁ。
M:すごい。
T:さんざんあれやこれややってきて、で、出て来た。
M:でもこれまた、この凄さに当時の私はまったく気づかなかった。
T:いや、自分もリアルタイムで聴いてたらわからないと思います、これは。メロディ立ってないじゃん、とか言いそう。
M:なんかサビがない、とか。
T:そそそ。隠れた逸品ですね、シングルの中では。
M:さっきからやたら売れなかった曲を褒める二人だけれどもこの曲に関しては本当に再評価すべきだと思う。
T:天邪鬼精神じゃないんですよぉ〜別に。
M:実際驚いたんだよ。
T:や、「淋しい熱帯魚」とかも素晴らしいけど、これも実はいいよと。
M:「Wink侮りがたし」を象徴する1曲。
T:てういか、誰かがどこかで言わないと歴史の中に消えていくじゃないですか・・・。
M:だからいうんです。(川平慈英風に)
T:いーーんです。
M:この時期のフォーク転向といい、「シェリーモンシェリ」といい、スタッフには本当に切れ者がいたんだなぁと感心する。後で凄さに気づく。
T:そうね、この年に関してもまこりんさんの話聞いて「へぇーっ」て感じだし。そもそもカバーの選曲センスとか感心するしね。
M:そうねやっぱりすごい。伝説のプロジェクトですよWinkは。
T:スタッフには恵まれていたと想像するな。
M:ってまとめにかかる前に最後の95年にいきましょう。



  1995年 

M:95年は「私たちらしいルール」から「Angel Love Story」です。
T:うう・・・ラストだねぇ。


cover ■ 私たちらしいルール  (95.03.01/46位/1.6万枚)
M:「私たちらしいルール」は前年のフォーク路線の延長って感じだったよね。
T:今度は杉真理さんで、歌詞は再び秋元康。
M:中島みゆきっぽい三角関係な歌。
T:歌いっぷりであっさり聞こえるけどもね。
M:正確にいえば研ナオコの「愚図」をお手本にしたかなという感じ。
T:あああ、そう繋げるか。
M:知っている?「愚図」。
T:ていうか、研ナオコのアルバムもっている。
M:はははは。お前は俺の友だッッ。よくわからんが。
T:ははは。や、なるほどと思ってしまった。
M:秋元先生は研ナオコとは懇意だし、知っていただいたんだろうなきっと。
T:狙ったのか〜。
M:知らないでは通じないよこれは。
T:いやあそうかWINK版「愚図」だったのかこれは。
M:詞のシチュエーションはまったく同じでしょ、「愚図」と。
T:いやほんとに。だからフォーキーなアレンジでありつつ古きよき歌謡曲風味もあるかなって思っていたんだけど「愚図」だったのね(笑)。
M:確かに歌謡感が高いね。
T:すごくドメスティックな日本のポップス、って感じ。
M:そうそう、WINKにしては珍しく湿っている。
T:ちょっと憂い入ってますよね。
M:うん。
T:でも結構曲調と、歌詞と、ボーカルと、いいバランスだと思う、この曲。
M:減点する部分はないというか、これは成功していると思う。
T:これ以上いくと怨念がましい、とかこれ以下だと切なくならない、っていうその絶妙なバランス。
M:うん馬鹿だねあんた、と肩を叩きたくなる感がある。それが歌謡曲なんだけれども。
T:ははは。「いやになるわ〜」で肩をポン、と。
M:忘れちゃえよ、と励ましたい。で、屋台のラーメンとかおごるわけよ。
T:ははははは。
M:あるいは赤提灯でコップ酒なわけよ。
T:WINKに(笑)シチュエーション膨らみすぎ。
M:て、まぁこれはいい曲です。
T:だからほんとに、この辺は音楽的にはいいとこ来れてるんだよなぁ。
M:スタッフはきちんとしているのよ、決して投げていない。
T:ね。しっかり作っているよね。
M:うん。そのへん小室系の末期とかと違うわけですよ。
T:ははは。ほんとにもう、奇作というのはない。某あみのような。
M:某朋美のような。
T:某の意味ねえ(笑)。
M:そんな晩節を濁すような作品がWinkにはないわけ。
T:ただ単発ではあるんですよね、作風が。アルバムだとわかんないけど。
M:一応フォークは去年からやっていたことだけれども。
T:間に「シェリーモンシェリ」とか挟まってくるし。
M:そう。
T:次ハイパーユーロだし。
M:やっぱり一定の売上が伴わないとそのあたりは難しいのかも。


cover ■ JIVE INTO THE NIGHT 〜野蛮な夜に〜  (95.06.25/92位/0.6万枚)
M:て、わけで次の「JIVE INTO THE NIGHT」。
T:パラパラっすね。
M:これはもうわかりやっすーーーいハイパーユーロ。説明不要という感じ。
T:でもこのときってまだパラパラブーム前じゃない?直前ぐらい?
M:安室奈美恵の「TRY ME」のヒットがこの年。
T:あーそうか、じゃあまさに出だしだ。
M:ユーロの女王の名は渡さないわよ、という意味合いでのリリースだったのかも。
T:そうなのかなぁ(笑)安室なにするものぞ、と。
M:でも刺激はされたんじゃないかなぁ。でないこととで何故ハイパーユーロと思ってしまう。Winkの情念薄めのハイパーユーロもいけます。こう非常に主張のない感じが。
T:意外や合ってますよね。
M:ライジング系にはない魅力がある。
T:パラパラだけどあんまりこう、ガングロ向けではないというか。
M:ああーそうかも。ちょっとおハイソ過ぎるかも。
T:おハイソ(笑)。
M:もっと下品で欲望を直撃するような感じがあったほうがいいのかもなぁ。
T:ケバいエナジーを照射するようなね。
M:うん。
T:そういう感じじゃないかなぁ。
M:時代はWINKを見放したか……。でも私はこれも好きなんだよ。
T:ちょっとあと1曲あるんだから、しんみりしないで。こらえてっ!
M:これが最高位92位という、もうなんつかフォローができないところまでいって。
T:ひゃーっ。売上も1万枚を割ってしまいました・・・。悪くないけどねぇ。
M:全然安室に対抗とかそういう事態じゃなくなってしまって。
T:いやぁこの年の安室はそりゃ誰でも難しいよ。街中にいるんだもの、安室くずれが。
M:あぁ、そんな時代だったね。
T:やたら女子高生が権力もっていた時代ですよ。


cover ■ Angel Love Story 〜秋色の天使〜  (95.09.15/62位/0.8万枚)
M:そんなWINKのラストがとうとうやってきてしまうわけですが。
T:感無量です!
M:「Angel Love Story」。
T:最後はこれなんかブラコン?
M:そうね、なぜかブラック。
T:なぜか、という感じだけども。
M:DJがくちゃくちゃいじっております。
T:スクラッチがチャカチャカと。
M:「シェリー・モンシェリ」の尖鋭性と「JIVE INTO THE NIGHT」の泥臭さの中間地点がこれってことなのかなぁ。すごく90年代後半J-POPって感じの作り。
T:んー、でもこれも同時代的に考えると結構かっこいいよ。
M:うん。カッコイイのはたしか。
T:ちょっとSMAPっぽい。「がんばりましょう」のトラックに通じるものがある。「♪だいたんに〜 だいたんに〜」って歌ってますが。
M:だからこれくらいなら時代に半歩早い感じでちょうどいいでしょ、という。そういうわかりやすいカッコ良さがある。
T:そうね、「シェリー〜」は飛ばしすぎたけども。
M:だからこれは正解とスタッフも思ったんじゃないかなぁ。さじ加減絶妙、いけるって。
T:これは出た時はラストシングルだと思ってないんだもんね。
M:まぁ、細かい内部はわからないけれども、少なくともさっちんとしょーこはそうだろうね。
T:いやぁ、まだ音楽的にはいける感じの曲ですけどねぇ。先がまだ見たいぞ、という。
M:うん音楽的にはもっとどんどんやっていけるよ、という。ただ、売上が……。
T:・・・・・。や、でもJIVEより30位もアップしているよ!62位だけど。
M:ははは。この「Angel Love Story」の2曲目はトランスミックスなんだけれどもトランスってこの時期既に市民権得ていたっけ?
T:トランスかよ!いやまだヒットチャート市場では早い様な気がする……。
M:だよね。
T:全然。パラパラを経て、という感じでしょ。
M:だからスタッフの先見性ってあるなぁとやっぱり思ったりする。今シングルの4曲目ののmore trancy instrumentalをはじめて聴いてみたんだけれども、なんか大変なことになっている。
T:はじめてって。
M:だって4曲目にカラオケ以外にボーカル抜いて更にいじったインストで収録しましたって。
T:あ、そうなんだ、いじったんだ。
M:そんなのはあんまり当時なかったから、フツーにカラオケと思ってスルーしていた。
T:いやぁ力入ってるなぁ(笑)最後まで。
M:95年でこれかぁ、とちょっと感動した。
T:しょぼくれて終わってはいないぞ、と。
M:音楽的にはね。
T:売上はしょぼくれてるけども。


  WINKの8年を振り返る 

T:や、改めてみるとほんとに売上は別にして音楽的にほんと迷走っていうのは・・・92〜93年ぐらい?
M:でもその時期も一定の成果は得ていると私は思う。本当の意味での駄作というか、スタッフのたるみを感じる作品ってのは、まったくないよ。
T:8年間以上にわたって集中力というか、キープできてますよねぇ。
M:なんで、これで「夜もヒッパレ」で解散なのとホント不思議に思う。
T:あああああ。
M:解散シングルだして、コンサートくらい開いてやれよ、と。
T:いやぁ・・・だよねぇ・・・。や、この辺の事情曖昧なんだけども、一回活動休止ってかたちじゃなかった?いきなり解散だっけ?
M:一応休止だったと思う。ショーコがソロデビューするからというそんな感じで、なんとなく年度末に活動停止。
T:うーん まあ既に事実上解散だったのだろうけども、レコ大受賞歌手としては淋しいっ。淋しい熱帯魚。
M:それにしても後期もきっちり見てみることで本当にWINKの偉大さに気づいた。マジで。
T:WINKというか、WINKチームひっくるめて素晴らしいもの残しているなぁと改めて認識いたしました。
M:WINKが歌謡曲から少しずつJ-POP的な方向へグラデーションがすこしずつ変わるように変化していったのもわかったし。なんか今私の中でWinkという存在が大きくなっている。
T:はははは。
M:すげーよWINK、と。お前らよくやったよ、と。
T:わはは。おれたちが言うよ、と。
M&T:誰も言わないならおれらが言うよ、と。
M:って、まったく同じ言葉を打っている。
T:はははは。や、でもこういうのは誰かが拾い上げないとさー。ポップスってそういうものだけども。拾い上げてこれは素晴らしかった!といわないとどんどん歴史の潮流に流されていってしまいますから。 今回はそれができただけでも私は満足です。


■ Winkのふたりを今のJ-POPで表現するとなると……
M:でもなんでこれでショーコがソロになってボサノバやったりしてんのかなぁと、ちょっと思ったりはする。
T:いやぁソロはもうわからん。
M:もっとJ-POPで勝負してくれよ、と。お前ならできるよ、と。
T:ははは。
M:だってそのラインってあきらかにファンと自分のための音楽じゃん。
T:っていきなり手厳しいな、おい。いやあ、もうそこは一歩引いたんじゃないかな。
M:いやぁ、WINKが偉大過ぎて今の二人にたいして、こう、もちっとなんとかならんかと思ってしまった。
T:いやぁ・・・J-POPのフィールドで?二人が?
M:うん。ダメか……?
T:うーん どうだろう・・・。原田知世のスウェーデンポップとかあのラインってどうですか?
M:あ、それはあっているかも。
T:あからさまにJ-POPでっていうのはなんか想像つかないんですよねぇ。
M:もう既に違うんじゃないか、と。
T:それよりこう、渋谷系的な愛でられ方というか、ああいうのなら想像膨らむかも。もろJ-POPのラインだと例えばどのへん想像します?
M:うーん、そのへんはやっぱり難しいかも。ピチカートとかやっぱ渋谷系っぽいあたりが、すんなりいく。
T:そっちいっちゃうよねぇ。ってかJ-POPって、自意識の安売りというかそういう側面があるでしょ。
M:なんか手厳しいことをおっしゃってます。
T:WINKにそういう資質なくね?っていう。
M:確かにないね。もう素材で勝負という世界。
T:素材と世界観で、という。
M:自分とか出してどうするの、という。
T:でしょー?なんかだからあんまり想像できないんだよねぇ。
M:そうなると、やっぱりむつかしいのかぁ。
T:いや、でも今ならR&Bっぽいラインでありえるやもしれんとも想像を膨らましたくなる。
M:倉木麻衣とかあのラインってどうざんしょ。
T:あー、それは「DeliciousWay」の倉木?
M:うん。ていうか倉木の存在感の希薄さはWINKの二人でもいけるかな、と。
T:ああ、それだったら倉木というよりも、曲書いてる大野愛果のアルバムの世界観はアリかもしれない。
M:それ聴いてないからなんともいえん。
T:や、倉木への提供曲とか歌っているんだけど、もっと淡〜い感じなんですよ。
M:あ、そうなんだ。
T:淡い打ち込みポップという感じでボーカルもわりと淡々としてるんですね。だからいいかもなぁと今思った。
M:やっぱりそこはビーイングにいくんだ。
T:げっ、結局かよっ。てかそんなこといったらZARDでいいじゃんという気もしてきた。
M:ははははは。だったらそれでいいよ、となかば自棄気味。
T:はははは。
M:でもショーコのアルバムとか聞いてみたら案外勝負しているかもしれないし。
T:って最近出しているの?
M:アップフロントの「地中海レーベル」でだしている。
T:どうしよ、ビョークみたいなのだったら。
M:なぜビョーク(笑)。
T:いやぁでも歌っていることに感動した。
M:「夜明けの雨はピアニシモ」とか「クレタの白い砂」とかタイトル聞くだになんかヨーロピアンな感じ。
T:やっぱこう、エキゾ路線なのね。
M:うん。そうっぽい。


■ チーム「Wink」の結集力
T:ところで、WINK復活はあるか?ないか?という。PLのように。
M:うーーん、ピンクレディほど二人の結束力がない感じが。
T:わはは。
M:なんとなく一緒でした、今はなんとなくわかれています。という。
T:そのへんも淡々と(笑)
M:二人ともまた一緒にやろうと思わなさそう。
T:そっかぁ・・・。一回ぐらい見たいけどね。
M:レコ大40周年記念かなにかで「淋しい熱帯魚」歌ったよ、ふたりで。それくらいしか再結成がないけれど。
T:それ見てないんだよ。おれが見てないからもう一回やってください、ははは。
M:ともあれこれだけの音楽制作スタッフの結束力を持ちながらもなし崩し的に解散したWINKにはどうしても未練が付きまとう、というそんな二人という感じで。
T:やあ、改めてWINKとWINKチームの残した仕事は素晴らしいじゃないかと再認識した次第で。
M:はい。ホント素晴らしいです。
T:船山基紀さん、門倉聡さん、及川眠子さんをはじめ作家にも恵まれていたし。
M:門倉有希さん、工藤崇さん、尾関昌也さん……。さらに振り付け担当の五十嵐薫子さん、衣装担当のアンプレブーの源香代子さん、ジャケットワークの川原勝さん、そしてポリスターの水橋春夫プロデューサー。 色んな人材が集合してそして「Wink」という。
T:ほんとにこう、ともすると89年に集約されてしまう2人ではありますが。
M:それは違うよ、と。
T:うん。
M:音楽的にはもうありえないくらい広さがあるぞと。
T:8年間の活動で素晴らしいものを残していたんだなぁ、と。それをここで二人して言えてよかったなぁと。
M:本当にそうですね。
T:ってかアルバムとかほんとにいいから聴いてね!と(笑)シンプルに言えば。
M:って、TSUKASAさんもね。
T:あ、はい(笑)。未聴のも聴きます。そんな感じで、まだしばらくWINK熱は覚めやらないかなあ、という感じであります。
M:ってことで、みなさんWINKのCDを手にとって聞いてみてください。
T:WINKのCDは良いですよぉ〜、と。
M:これ聞かない人は馬鹿ッッ。
T:おすぎだ(笑)。いやピーコ?
M:じゃあTSUKASAさんがピーコで、私おすぎ。
T:はははははは。と壊れてきたところで読者のみなさん、さよ〜なら〜。
M:さよーならーーー。「♪ 時計を止めて〜〜 ふたりのために〜〜」
T:わはは。なにそれ。
M:いや、今俺の心のなかで「時計をとめて」が流れているから。
T:なんだそりゃ。



  Wink アルバムセレクション  〜Winkのこのアルバムが凄い〜 

最後にそれぞれのオススメのアルバムを紹介。
もしこの対談を読んで「今までWink聴いたことなかったけれども、ちょっと聞いてみようかなぁ」と思ったなら、このアルバムから聞いてみてよ、という二人のそれぞれアルバムベスト3です。


■ TSUKASA セレクション

cover 「WINK MEMORIES 1988-1996」
全シングル25枚の表題曲をリリース順に収録した2枚組のベスト盤。改めてWinkの曲をちゃんと聴いてみようかなぁ、とか初めて聴いてみようというときの 入門編としてはまずはコレ。「愛が止まらない」「淋しい熱帯魚」「真夏のトレモロ」「咲き誇れ愛しさよ」といったヒット曲はもちろんのこと、 ほかにも「きっと熱いくちびる」「永遠のレディドール」あたりの、Winkワールドとしか言いようが無い独特な世界観や、 フォーク回帰を見せた佳曲「いつまでも好きでいたくて」「私たちらしいルール」、後期のシングル「シェリー モンシェリ」「Angel Love Story」 における同時代的に考えるとかなり先進的で驚く音作りなど、聴き所満載。スタッフのプロデュースや作家・アレンジャー陣の見事な仕事など、チームとしてのWinkの 素晴らしさ、秀逸さも確認できる。是非、再評価を!

cover 「Especially For You」
「愛が止まらない」「涙をみせないで」でブレイクした後にして、「淋しい熱帯魚」で絶頂を極める直前―というタイミングでリリースされた、89年作の 全編ユーロ・カヴァーアルバム。このリリースタイミングならではの、熟しきる直前の瑞々しさみたいなものが封入されていて、まだちょっと以降の作品に 比べて不安定だったり、覚束なかったりするところも含めていとおしい一作。最初期のアイドルチックな部分と、後のクールなお人形感が 絶妙に止揚されているという点でも貴重では。一曲を除いて全編洋楽のカバーなのだけど、 選曲センスやアレンジの良さ、歌詞の世界観とWinkのキャラクターがあいまって、ほとんどカバー臭とか企画モノな匂いがせず、原曲とは別モノとして良い、 という出来になっているのが素晴らしい。タイトルチューン「Especially For You」などその極致!森雪之丞氏作詞の「硝子の心」や、 この2人なしにはWinkを語れない及川眠子+船山基紀コンビの手腕が冴えまくる「Only Lonely」あたりもハマりすぎ。 各自2曲ずつ収録のソロ曲における、2人のボーカルの対比も良いです。身構えずに聴ける、聴きやすい一枚かと。

cover 「Crescent」
90年末リリース作。モノクロのジャケット写真通りの、シックで寒い、冬のイメージで統一された作品で、アルバム一枚通しての完成度としては 1、2を争うのでは?結構いろいろな曲調をやっているのに統一感があるというのは、歌詞のほかに サウンドのミックスに因るところが大きいと思う。どんな曲調でも質感が寒〜いんですよ。これは意識してやったんだろうな。やっぱりWinkの スタッフは優秀です。いきなりチェンバロが鳴り響くバロックチックな「冬の蜃気楼」や、KISSのカバー(!)「悪い夢」、 寒々しいロック・ユーロ「夜にはぐれて」、そしてパイプオルガンが荘厳でゴスな終曲「Variation」あたりに漂う、翳りがあって陰鬱でクラシカルな冬のヨーロッパ、 という空気が全体を支配しているのだけれど、これがもうWinkに嵌まりまくり。それまでのキーワードだったユーロビートは「悲しい枯葉」、 オールディーズは「雨に消えた初恋」に集約されているし、この時点でのWinkの世界というのがひとつここで結実してしまったような感すらある。 「真冬の薔薇」での翔子の凛とした歌いっぷりや、キュートな小品「Miracle Night」、浮遊感漂うミディアム「All Night Long」などもいちいち良くて、 飛ばす曲がない。シングルの「ニュー・ムーンに逢いましょう」がいきなり浮いているし、「夜にはぐれて」のリアレンジも結構凄いことになっている けれども、このヘンテコぶりも含めてWinkワールドということで(笑)。ともあれ、傑作といって差し支えないと思います。



■ まこりん セレクション

cover 「Back to Front」
「Reminiscence」「Diary」「Raisonne」「WINK MEMORIES 1988-1996」などのシングルコレクションを聞いて(――もちろん全シングル網羅の「WINK MEMORIES」がベスト) 「おおっっ」と琴線に触れるものがあったならば、次はまずこれを聞いて欲しいかな。「Sugar Baby Love」から「シェリー モン シェリ」までのカップリング曲コレクション。
なんでこれがB面なの?と思える隠れ名曲の宝庫。もったいねぇなぁ、と思ったらあなたももうハマりの路へまっしぐら。 本当にWinkはカップリングにまでも手を抜いていない。特に「One Night in Heaven」以降のカップリングとシングルの相克というのは凄まじい。毎回がハイレベルの争い。
個人的に「A面に持ってきてもいいんじゃね」ベスト3は「いちばん哀しい薔薇」「想い出までそばにいて」「Cat Walk Dancing」。
作品を表現したジャケットのふたりの後向きの写真といい、さらにWinkの二人がそれぞれの曲についての思い出を語っていたり、とアルバムとしても実にきちんとした作りです。

cover 「Queen of Love」
91年作。ちょうど前作「Cescent」と対になるようなアルバムかな。前作が北欧の冬だとしたら、これは南欧の夏という感じ。地中海っぽい感じ。イメージとしては射るような烈しい陽射しを感じるんだけれどもWinkが歌うからなのか、ほどよく乾いていて、涼しげなのが高ポイント。
ビーチボーイズの「Fun Fun Fun」をルーズに歌いこなしちゃうあたりも微笑ましいけれども、「泡になる」以降の後半の畳み掛け方が個人的にはツボ。うっとり酔わせます。 石畳の細い路地が迷宮のようなヨーロッパの古い城市をいつまでもさまよって抜け出せないという感じの(――ってどんな比喩だ)「きっと熱いくちびる」は個人的には外せません。 その後の「夜の月、昼の月」もいいし、ラストの「Mighty Mighty Love」も決定的だよなぁ。これ、この曲がラストというだけで私的には「ありがとうございます」という感じ。"これから何かが始まる"という期待感を伴った珠玉のエンディング。
それにしてもこの時期のWinkにはクラシカルな気品ってのがとにかく似合いますなぁ。

cover 「Nocturne 〜夜想曲〜」
92年作。トータルとして冬のイメージで統一されたアルバムだけれども、今までとは違ってアーバンでプラスチックという感じ。都会の冬。でもって詞のテーマは危険な恋が中心。身も心も寒いからこそ、ひそかに道ならぬ恋に自らを燃やしてしまう、というか、寒いからこそよりいっそう肌は熱く燃え、みたいなそんな世界。
「野獣のよりも淫らに抱きしめて」とか「地獄まで落ちてもかまわない」とか「癖になりそうね 言葉じゃまた拒んでも」とか「あなたに愛されない運命ならば 殺してください」とかやたら扇情的でエロティックな詞が目立つけれども、Winkのふたりがそれを無機質に歌うものだから妙にアンバランスな色気が出てしまって、この危うさがなかなかどうして好きだったりする。
曲はギターが前面に出ているものが多くてカッコイイ。そんな妖しい歌の合間にある「冬幻想」や「Celebration」はいつもの冬ざれいていて、雪の結晶のようなバラードで安心できる味わい。 ちょっと上級者向けの作品かなと思えるけれども、個人的にはこれでちょっとWinkを見なおしたというのはひそかにあったりする。こういう世界も表現できるのか、と。それまでの「からくり人形」そのものの世界というよりも、そこからからくり人形の実存に入っていって、そこにマゾヒズム的快感を見出したというか、そんな「からくり人形の被虐」の世界にはいってきている。 これがあって「永遠のレディードール」が来ると思う。ともあれアルバムでの「歌うアンドロイド」路線はここで終了。次作からは大きく路線を変えていていくことに……。





その後、今のWinkのふたりってなにしているのかなぁ、と編集ついでになんとはなしに調べていたところ、さっちんが「零 Re-generation」というアルバムを一昨年末インディーズでリリースしていたことが発覚。
しかも試聴するにあっさりと淡い打ちこみで癒し系風味の薄暗い世界観という。「竹田の子守歌」を憂いのある薄ら寒いけむった感じでカバーしていたりして、 Winkの世界を引き継ぎつつも今の彼女の年齢にあった形に発展した音楽の世界で、こりゃわたしたちはさっちんを応援しなくちゃならんのか、などとお互い顔を見合わせてしまった。こりゃ、買えというお告げか……。
WINKのふたりとも、翔子はもちろんさっちんもいまでもがんばっております。




改訂 2008.12.22
2005.05.15
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