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全アルバムレビュー Wink

≫≫≫≫対談 「WINK Memories 1988〜1996」全シングルレビュー 【Part1】 【Part2】 【Part3】


 「日本のポップスは、西洋のポップスの模倣である」
 こうした言説はいまだにある。西洋が本場であり、日本にあるのはニセモノ。日本のポップスなんてバッタモノ聞いて満足しているなんて、カッコ悪いよね。
 ――かつて、この言葉は相当の力を持って日本の音楽界を呪縛した。
 「はたして、そうなのかな?」
 この音楽における鹿鳴館コンプレックスに疑問をもった者が、例えば筒美京平であり、松本隆であり、そして、Winkのプロジェクトに携わったものなのではないのかな、と私は思う。

 Winkの楽曲の約半数は、洋楽のカバーでしめられている。しかしWinkの音楽は、西洋で流行っているものにあわせた猿真似でも、二番煎じでもないのだ。
 まず、カバーした楽曲が実に多種多様。ヒットした年代も違うし、アーティストの傾向も様々、日本でよく知られているものもそうでないものも、ある。ロックもあるブラックもあるラテンも、ロシア民謡まである。それら出自の様々な楽曲をメルティングして、カオスのツボとなったそこから意識的に取捨選択し、日本人向けに再構築(時には元の楽曲がなにか判別不能なほどに――)させたのがWinkの音楽といっていい。
 つまり楽曲のリソースとしてそれらを使った、というだけなのだ。 カバ―という手段は同じでも、思想性が違えば、そこから生まれる音楽ももちろん変わっていく。彼女たちの音楽は広義のサンプリングなのである。
 Winkの楽曲において、カバーとオリジナル楽曲の垣根は、限りなく低い。そのふたつは判別がつかないほど完全に融和し、オリジンと化してしまっているのだ。この時点において、模倣だとか二番煎じだとかいった言葉は意味をなさない。 これは、元ジャックスのメンバーであり、Winkの音楽プロデューサーの水橋春夫をはじめ、編曲者の門倉聡、船山基紀、作詞者の及川眠子、作曲者の門倉有希、工藤崇、尾関昌也などなど、彼らの功績である。

 「日本のポップスは西洋のポップスをローカライズしたものである」
 この当たり前の結論にいたって、日本のポップスは、成長神話と西洋へのキャッチアップとリンクした「歌謡曲」から、無国籍で自己完結的で人工的な「J-POP」へと変化する。
 Winkが、バブル経済からその崩壊という、急転直下で日本がパラダイムシフトする89〜90年に突然狂い咲きした理由が、そこである。
 いま、音楽の鹿鳴館コンプレックスを口にする人は以前より相当少なくなった。 「ニセモノだろうとどうだろうと、そんなのどうでもいいじゃん」、そのようにわたしたちは一蹴できるようになった。

 さらに云えば――。Winkが、音楽、さらにビジュアルを含め、レプリカントじみた虚構美・人工美に満ちている理由が、そのサンプリング性にある。
 音楽はそれが培われた文化、民族性と強固なつながりを持っている。本来は、血腥く、泥臭いものなのだ。
 それらのすべてを断絶し、地から浮遊したところに結晶する美しい架空のなにか――これがWinkの音楽であり、ひいてはJ-POPの本質だと、私は思う。



cover ◆ Moonlight Serenade  (88.07.01/52位/5.0万枚)
1. 渚物語  2. NAVY BLUE  3. BYE BYE BABY  4. 風の前奏曲(プレリュード)  5. DANCE WITH ME  6. 素敵に Happy Birthday  7. 朝焼けのバルコニー   8. あなたの肩に頬うめて 〜Put Your Head On My Shoulder〜  9. SUGAR BABY LOVE  10. ジャスミンは哀しい香り
 五曲が洋楽カバー。作家は見岳章、木戸やすひろなど意外な人材も。 アレンジャーは大谷和夫、鷺巣詩朗、若草恵。船山、門倉両御大をはじめお馴染みの作家たちはこの時点では未登場。
 ――というわけで、デビューアルバムらしい試行錯誤の感じられる――かと思いきやさにあらず、「なつかしの洋楽を現代に甦らせるアイドルデュオ」というコンセプトは明確に提示されている。 ジャケット写真やアートワークも一貫していて、Winkプロジェクトってファーストからきちんと稼動していたんだなぁ、と感心することしきり。
 初期のWinkの良さは、綿菓子のように淡くなつかしいポップスの良さ。音楽によるお医者さんごっこなのである。これが「Twin Memories」までの基調となる。 ファーストアルバムから戦略に迷いがないアイドルが成功しないわけがないよね。7点。


cover ◆ At Heel Diamods  (88.12.01/6位/34.5万枚)
1. 愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜  2. 悪いあなた 〜Love In The First Degree〜  3. 優しい頃を踊りたい 〜Cross My Broken Heart〜 4. 愛が止まらない 〜Turn It Into Love〜 [Remix Version]  5. Sugar Baby Love [Remix Version]  6. 冬のフォトグラフ
 「愛が止まらない」のみに寄りかかった継子的なミニ・アルバム。「愛が止まらない」に、PWL系新曲がふたつに「愛がとまらない」と「Suger Baby love」のリミックスに、〆のバラード、という構成。 作りの精密なWinkのアルバムにあって唯一、急ごしらえというか、雑というか、らしくないアルバム。ぶっちゃけていえば、当時そのへんに転がっていたユーロビートカバーの安っぽいアルバムと同じ。西友のニーキュパのワンピースとか、そういうのはWinkには必要のないんですからねっっ。 「愛とま」のリミックスもめずらしくアブラっこい下世話なエナジー、振りまいてます。5点。


cover ◆ Especially For You  (89.04.26/1位/50.8万枚)
1. Especially For You  2. Baby Me   3. 硝子の心 〜Heart Of Glass〜  4. Only Lonely  5. Take Me To Heaven   6. おしゃれ泥棒  7. Remember Sweet  8. ひきとめないで  9. 優しく愛して…   10. 涙をみせないで 〜Boys Don't Cry〜
 バブルの絶頂と共にWinkのバブルも到来。89年に驚愕のセールスをたたき出した彼女たちの三枚目にして最高売上。しかもハイクオリティー。初期Winkの世界がこの一枚で完成されたといってもいいかも。 ガラス細工のようなフラジャイルな魅力。甘いノスタルジーでは終わらない、透明な美しさを放っている。それでいて大衆性も堅持。みんなが楽しめるわかりやすいアイドル・ポップでもあるのだ。
 明治製菓CFソング「Remember Sweet」のみ網倉一也作曲(――ってなつかしい名前だな、おい)で、ほかは全てカバ―というのに、この圧倒的なオリジナリティーにみんな驚愕すればいいとおもうよ。 楽曲はリソースに過ぎないという意識的な姿勢がなければこのアルバムは絶対生まれない。 オリジナリティーって、ホント、なんなんだろうね。8点。


cover ◆ Twin Memories  (89.12.01/2位/45.4万枚)
1. Oh My Love (Introduction)  2. One Night In Heaven 〜真夜中のエンジェル〜 [Remix]  3. Special To Me  4. Shining Star  5. さよなら 小さなCry baby   6. 愛してる 〜Never Stopped Loving You〜  7. In Your Letter  8. 夜間飛行 〜Never Marry A Railroad Man〜  9. Joanna   10. 淋しい熱帯魚 [Remix]  11. Oh My Love
 イメージカラーで言えば深い飴色。晩秋のイギリスの田舎街風といえばいいのか、トラッドで品よく暖かく、ちょっとセンチメンタル。 朝早い、枯葉の敷きつめられた舗道を白い息を吐きながら散歩している雰囲気。 Winkの世界が思い出のポップスの再構築であるならば、もっともそれが表現されているのがこのアルバム。
 「Special To Me」「Shining Star」といった引きの強いタイアップソングすら、シングル化せずアルバム曲でおさめてしまうあたりに、Winkプロジェクトの高潔さを――と云ったら大袈裟すぎるか。 改めて聞くと「さよなら 小さなCry baby」から「In Your Letter」と続く一見地味に見える流れが、このアルバムの全体の印象をぐっとシックにまとめているんだなということがわかる。
 「淋しい熱帯魚」の吃驚アレンジも、ジョン・レノンのカバーも、なんなく乗り越え、この成功をもって、前作によって完成した第一期のWinkの世界は早くも完結。普遍性の高い名盤です。ブリティッシュポップが好きな方は是非。9点。


cover ◆ Velvet  (90.07.11/4位/19.8万枚)
1. Sexy Music [Remix]  2. Rainy Lonely Pavement  3. 夏服のジュリエット 〜Dos Hombres〜   4. Unshakable  5. 雨に願いを  6. 銀星倶楽部 〜I'm In Mood For Dancing〜   7. あの夏のシーガル 〜Cherish〜   8. I'm Gonna Knock On Your Door  9. 贅沢な孤独   10. 月夜の真珠貝
 早くも過渡期。前作までの世界を受け継ぎながらも変化していく。 アーティフィシャルな幻想の世界へと入り込むWink。アレンジャーを船山基紀から門倉聡に変更。音の作りが俄然ド派手に、それにあわせて詞作も虚構性の強くなってくる。
 ハードなギターが主張する「Rainy Lonely Pavement」、タイトル通りの星屑がきらめくような華麗なアレンジメントが冴えている「ダンシング・シスター」のカバー「銀星倶楽部」、 ファンタジーな「月夜の真珠貝」といったところが聞きどころか。 この変化についていけなかった御仁も少なくなかったようで売上は急下降するが、ここからがWinkの本領発揮なんだよなぁ。7点。


cover ◆ Crescent  (90.12.16/6位/16.4万枚)
1. ニュー・ムーンに逢いましょう [Remix]  2. 悲しい枯葉  3. 冬の蜃気楼  4. 悪い夢   5. 真冬の薔薇   6. 雨に消えた初恋  7. Miracle Knight  8. All Night Long  9. 夜にはぐれて 〜Where Were You Last Night〜 [Remix]  10. Variation 〜さよならの変奏曲〜
 当時のWinkの楽曲の良さ、それは、もしかしたら人形愛的な良さなのかもしれない。
 Winkのからくり人形のようなぎこちない振り付け、不慣れゆえの緊張の無表情、多くの視聴者はそれらを揶揄したが、すぐに彼女たちはそれを逆手に取った戦略に乗り出す。 「私たちは人形である」。「One Night in Heaven」の振り付けに如実であるように、Winkは自らを「人形」だと、規定した。
 その戦略はまもなく楽曲全体にも敷衍していく。架空の、どこにもない世界の音楽にのせて、どこにもない愛の歌を歌うWink。 ふたりの凶兆の影差す人形的な美しさとともに、それらの歌は圧倒的な説得力をもった。
 ――というわけで「Crescent」なのだが、って話が大袈裟すぎるな、おい。
 はかなく繊細なお人形さんが、切ない歌を歌い、ひらひらと舞っている――というWinkのパブリックイメージに一番近いアルバムがこれなんじゃないかな。凍てつく冬の北欧といったイメージからゆっくりと架空空間へと飛翔していくWinkワールドが楽しめるはず。
 「ニュームーン逢いましょう」で中華+ユーロ+歌謡曲と三国をごった煮しちゃっても、その返す刀でKissの「I was made for lovin' you」をカバーしても、破綻なく成立してしまうのは、Winkの音楽性を含めた存在すべてが、ポストモダンだから、なのだ。 彼女たちの音楽は、民族性、歴史性を超越した架空空間にあるのである。
 チェンバロのイントロが切ない「冬の蜃気楼」、ギターとバイオリンの狂宴といった佇まいの「夜にはぐれて」、パイプオルガンが荘厳な「Variation」などなど、冷たく冴え冴えとした音楽空間の真ん中で、ぽつねんとして所在なく微笑む美しく悲しいふたつのレプリカントが幻視できるはず。 クラシカルなのに近未来的な人工美、これぞWink。9点。


cover ◆ Queen of Love  (91.07.10/6位/10.9万枚)
1. 真夏のトレモロ [Album Version]  2. 想い出に Good-Luck  3. 真夏の夜の夢 〜Mysterious〜   4. 一年前の恋人   5. Fun Fun Fun  6. 泡になる 〜Endless Summer〜  7. シエスタ   8. きっと熱いくちびる 〜リメイン〜  9. 夜の月、昼の月   10. Mighty Mighty Love
 前作が冬をイメージしていたのと対照的に今回は真夏をイメージしたアルバムとなった――が、これがなんとも高貴。 イタリアや南フランス・ギリシアなどの地中海あたりのリゾートでのひと夏の戯れ、といったイメージで聞いていただければ。 「シエスタ」「夜の月、昼の月」とゆったりと微睡むような楽曲に、むせ返るほどの花の匂いに満ちた「きっと熱いくちびる」、宿命の厳しさのどこか感じる「Mighty Mighty Love」などなど。佳曲ぞろい。 「泡になる」の身も心も溶けるかのような典雅さは、もはやアイドルという領域を越え、官能的ですらある。「想い出に Good-Luck」「Fun Fun Fun」などの楽しげな楽曲もセレブなおねぇ様が、ちょっとだけ羽目を外しちゃった、といった態で、ありえないほど、上品。 これらの高貴で邪気のない夏の戯れを――たとえようもなく繊細で美しいお人形さんが、時に退廃的に、時に優雅に歌い、演じ、舞っていますよ、という世界。このアルバムもまた、南欧という記号の向こうにある、豪奢で妖しい"ここではないどこか"のアルバムなのである。
 「Queen of Love」と「Crescent」は美しき自動人形(オートマタ)幻想によって彩られた双子的傑作といっていい。この成果を残して、彼女らはぽちりと目を開く。恋がしたい――。陶器のような肌に血が通い、体の奥に炎が揺らめき、そして次作となる。9点。


cover ◆ Sapphire  (91.11.25/7位/6.6万枚)
1. あの夜へ帰りたい 〜Step Back In Time〜  2. BIG GAME  3. 闇夜の逃亡者 〜All Night Long〜  4. 聖なる夜に帰れない   5. 世紀末も平気 〜Do You Wanna Dance〜  6. ほんの小さな勇気   7. Get My Love   8. 12月の織姫  9. Tears   10. 背徳のシナリオ
 またまた変化していく。恋に目覚め、夜の匂いが濃密になってきた。ブラックコンテンポラリーをベースにしながら、危険な駆け引きを妖しく歌っていく。 「あの夜へ帰りたい」から「世紀末も平気」の前半の流れは完璧といっていい。 後半、ちょっとイメージが絞りきれず散漫になってしまうのが珠に疵だけれども、 ロシア民謡とJ-POPの融合という奇跡をみせた「背徳のシナリオ」、Winkらしい(やっぱりビリー・フューズとの相性は抜群)「12月の織姫」など、聴きどころは多い。  ちなみにここから相田翔子・鈴木早智子作詞・作曲作品が一曲ずつ収録されていく。 タイトルのサファイアのごとく冷たい輝きをたたえている一枚。7点。

cover ◆ Mode 鈴木早智子ソロ  (92.03.25/17位/3.7万枚)
1. ラスト・ダンスは頬よせて  2. 1999年の退屈  3. ハリウッドな恋にして  4. 最後の楽園  5. TRANSFER  6. 不実な仔猫たち 
 92年・春の三ヶ月連続アルバムリリースの第一陣は、さっちんのソロ・ミニアルバム。意外や意外、捨て曲なしの好盤だぞっ。
 香港を舞台にシノワズリなメロディーが旅情を誘う森若香織作曲の「ラスト・ダンスは頬よせて」をはじめ、全体的に東南アジアの都会といった雰囲気。香港とかシンガポールね。 世紀末の都市の喧騒を歌った「1999年の退屈」や「ハリウッドな恋をして」など、都会なんだけれども、サウンドにさらりとエスニックな匂いが漂っている。ざわざわとした熱気とじんねりとした湿気を感じ、情熱とゆったりしたタイム感が混交している。 それをさっちんが少し斜に構えてクールに歌いこなしております。「不実な仔猫たち」は「無実のオブジェ」「リアルな夢の条件」へと続く不倫を歌ったハードロック歌謡。 Winkの持つハードでシャープな部分をぐっと進化させたようなアルバムといっていいかも。8点。


cover ◆ Each side of screen  (92.04.25/11位/6.1万枚)
1. Frou-Frou  2. ピアスの真相 〜We Can Make It〜  3. 摩天楼ミュージアム  4. 白夜  5. Like A Bird   6. 未来まで待てない  7. 霧の楽園 〜THAT'S THE WAY (I Like It)〜  8. 恋愛ギャンブラー  9. 追憶のヒロイン  10. ただ夏に恋をした
 第二陣はWink名義のフルアルバム。これだけ濫作しているのにクオリティーが落ちていないのは、どういうことだ? ボーカルも、よりいっそう表現力をまして、よりいっそう艶っぽくなっている。
 ロック的アプローチをみせる「摩天楼ミュージアム」「未来まで待てない」「Like A Bird 」、モロブラコンな「霧の楽園」「恋愛ギャンブラー」(すげータイトルだな、おい)、 ラテンの「追憶のヒロイン」と、しっちゃかめっちゃかな方向性に見えて、聞いての印象は非常にまとまりがある。  これはアレンジと詞に統一性があるから、だろうな。このアルバムに漂うハードで淫靡――でありながら上品な雰囲気は門倉聡と及川眠子の手によるもの。ふたりは偉大。 全体に程よいうねりと変化がありながら、バラードが「ただ夏に恋をした」一曲だけ、という疾走感のある構成も好印象で、しかもこの「ただ夏に恋をした」が決定打的な名曲なんだよなぁ。
 この「Each side of screen」と次作「Nocturne」は、心を持ってしまった人形たちの激情といった、およそ誰にも到達することのない孤高の領域に達している。もはやこれはWinkというジャンルなのだ。9点。


cover ◆ Delphinium 相田翔子ソロ  (92.05.25/9位/3.9万枚)
1. Believe Moon -overture-  2. Pleasure  3. アンビバレンス  4. LOVE  5. 黙示録  6. VOX 〜あなたには聞こえない〜  7. Believe Moon
 三ヶ月連続リリースの〆はショーコ。
 オーバーチュアから「Pleasure」のイントロのまるでエニグマみたいな展開におののくが中はいたって、90年代J-POP。 彼女のソングライターとしての部分に焦点を合わせた作りといっていいかな。「Believe Moon」「アンビバレンス」がショーコの自作。 「Love」はジョン・レノンの、「VOX」はサラ・マクラレンのカバー。
 打ち込みをメインにしながらもビートリーな音のぬくもりも垣間見せる。しっとり。このアルバムが「Luz」「JOIA」といった全曲自作曲のソロアルバムへと繋がっていく。
 ふたつのソロ・ミニアルバムを対比してみると、ショーコが聖子でありビートルズであり、さっちんが明菜でありローリングストーンズなんだな、というのがわかる。7点。


cover ◆ Nocturne 〜夜想曲〜  (92.11.26/19位/2.6万枚)
1. リアルな夢の条件  2. あなたに秘密な夜  3. 冬幻想  4. Celebration  5. 刹那ヴァージョン  6. Only One  7. 無実のオブジェ  8. ロマンスの方舟  9. ふりむかないで  10. 時計をとめて
 闇の魔力。タイトルのごとく、夜の底に深く沈んでいくエロティックな一枚。セックスを真正面に受け止めて被虐的。
 冬の無個性な都会を舞台に、ある時は、実らぬ恋の業火を激情のままに燃えさからせ、ある時は、静寂のままに時がゆっくり降り積もっていく。 この振幅がなかなかすさまじいのだけれども、明菜の「TATTOO」「BLONDE」路線と「難破船」「水に挿した花」路線が一緒にコンパイルされている、と考えれば納得。 動のロック的楽曲が激しさを増せば増すほど、静のバラードがより美しい結晶となっていく。
 どれだけ聞き手の欲情をかきたてても、気品を失わないのがWink。ハードなギターサウンドで煽っても、彼女たちはつねに冷たく醒めている。 このドールめいた妖しさが楽しめる「リアルな夢の条件」「あなたに秘密な夜」「無実のオブジェ」「ロマンスの方舟」といったあたりが今作のハイライト。 「I'm a objet」と言い切って説得力があるのは当時のWinkだけだと思う。
 「ふりむかないで」「時計を止めて」と、ザ・ピーナッツ、ジャックスとWinkの原点ともいえる2大邦楽アーティストのカバーをラストに飾り、「Velvet」から「Nocturne」まで一気に駆け抜けていったWinkの妖しい虚構美の世界は終了。抜本的な変革の時を迎える。9点。


cover ◆ Αφροδιτη 〜アプロディーテ〜  (93.06.24/33位/2.1万枚)
1. 結婚しようね  2. 夏に会えなくて  3. Fishselfish  4. SAVE MY LIFE  5. 私みたいにいいかげんな彼氏  6. 月と太陽  7. 永遠のレディードール 〜Voyage Voyage〜  8. 幻が叫んでる  9. I Wanna Leave You  10. おしえて
 再び過渡期。今までアルバム収録曲の半数が洋楽カバーが通常のWinkにあって、今作はシングル「永遠のレディードール」だけがカバ―というあたりで、変革がわかるというものだけれども、これはかなり迷走しているぞ。
 新規参加の白井良明がアレンジした「夏に会えなくて」「Fishselfish」などはビートリーなローファイ・バンドサウンド。一方、打ち込みメインの「幻が叫んでる」「永遠のレディードール」はこれぞウインクという妖しい虚構美の世界。 さらにこれまた新規参加のAli Projectの宝野アリカ+かしぶち哲郎の「月と太陽」はフレンチポップ的なアプローチ。 さらにさらに、「結婚しようね」 「私みたいにいいかげんな彼氏」といった分類不可能なコメディータッチのポップスも入り込み、ってどんだけごった煮なんだっ。
 天球図をモチーフにしたアートワークは素晴らしいのだけれども、この散漫な楽曲群とかみあうはずもなく、残念なリザルト。 今までが傑作続きすぎたんだよ、うん。歴史的な流れで見れば、白井良明アレンジ作品が後のWinkの基調になり生音志向に大きく転換する。6点。


cover ◆ Brunch  (93.11.26/31位/2.6万枚)
1. MOVIN' ON  2. Made In Love  3. 涙を責めないで  4. 誰も知らない  5. 三日月の夜の小鳥たち  6. 追いつめたい  7. 咲き誇れ愛しさよ  8. あなたへの想い  9. 愛を込めて 10. ドロップ 
 骨太の改革っっ。というわけで、つ、ついに及川眠子が不参加のアルバムっっ。門倉聡アレンジも一曲しかないよっっ。 作詞は芹沢類、戸沢暢美、吉元由美など。作曲は来生たかお、楠瀬誠志郎、横山輝一、中野多佳子ら。編曲は小林信吾、Ian Princeら。洋楽カバーは三曲。という布陣。
 「迷走」としかいいようのない前作からなんとか立ち直ろうとしているけれども、結果、フツーの爽やかポップスになってしまっただけのような……。 ボーカリストとしてのショーコとさっちんは、非常に透明度の高い、主張のないのが主張というタイプなのだからして、だから楽曲でどれだけ厚塗りしても映えるのであってだねぇ、コンセプトをもっと明確にしないとだねぇ……。ぶつぶつ。 その中にあって、ビーイングな「咲き誇れ愛しさよ」だけが異色を放ちまくり。
 このアルバムで「自然体で明るいWink」というイメージが打ち出せたけど、そこから先がない。もう一歩、なにかに踏みこんで欲しかった。 ビートリーなWinkはちょっと、ガラス細工のように淡く儚いWinkでも違くて、架空感の強い虚構美のWinkもついていけないわあ、という、かなり特殊なWinkファン向けな一枚。6点。


cover ◆ Overture !  (94.03.25/34位/2.3万枚)
1. ケ・セラ・セラヴィ  2. 昔みたい  3. You're my rainy day  4. トゥインクル トゥインクル [60's Version]  5. いつまでも好きでいたくて  6. 想い出の味方  7. 兵士の休日 8. Tasty [Acoustic Version]  9. days 10. トゥインクル トゥインクル
 ――というわけでさらにもう一歩踏み込んでみたWink。
 最初に聞いた時は泥臭いサウンドと今までのWinkとあまりにもかけ離れた世界観に拒否反応を示してしまったけれども、改めて聞いてみて、これはいいっ。 「Overture !」というタイトルが表すように、本当に全てをリセットしている。全てのパブリックイメージを脱ぎ捨てた新生Winkだ。
 作家陣も、以前の面影はなし。秋元康、芹沢類、加藤和彦、杉真理、財津和夫、斉藤英夫、門倉有希ら。アレンジはBrett Raymondが半数担当。カバーはもちろん一曲もなし。 目指すは60〜70年代のフォーク・フォークロックの世界――というわけだけれども、そもそもディレクターが当時の当事者のひとりであるジャックスの水橋春夫なわけで、これが間違うはずがないのである。
 初期にあってだんだん忘れ去られていった「なつかしのポップスの再現」という概念を掘り起こしてぐぐっと進化した感じといえばいいのか。当時はスピッツやミスチルのブレイクなど、ビートリーな生音バンドサウンドが再び「アリ」になってきた頃、この大転向、戦略としては間違いがない。 しかもこの路線、一年前の「アプロディーテ」の頃から模索していたわけで、抜け目がないぜ、Winkプロジェクト。牧歌的でハートフル・ピースフルなWink、そんな世界があったっていいじゃない。お父さん、もう、フォークギターかき鳴らしちゃうよ、というわけで、8点。


cover ◆ voce  (94.12.01/58位/1.6万枚)
1. それはKissで始まった  2. Honey bee  3. シェリー・モンシェリ  4. それでもいいの  5. あなたがドアを開ける夜  6. PLEASE PLEASE ME  7. Sunny Day  8. 裸足のマリオネット 9. 永遠に… 10. 特別な一日
 Winkのアルバムって、デュオだけあって双子的なアルバムが多いと思う。 「Crescent」と「Queen of Love」、「Nocturne」と「Each side of screen」。それぞれが好対一の双子アルバムだけれども、はたして「voce」は「Overture !」の続編といっていい作品になっている――というわけで、前作と同じくビートリーな60〜70年代のバンドサウンドを中心に、ほんの少し同時代性も付与させている。 着地点としては、上質なA.O.R.といったところか。
 久々の門倉聡全曲アレンジで、岩里祐穂、上田知華、朝本浩文、といったあたりが新規参加陣。 どこを切ってもビートリーな「それはKissで始まった」「PLEASE PLEASE ME」、ティンパニの音色がもろにGS調の「それでもいいの」といった前作世界の延長にある作品もいいけれども、5年以上は確実に先取りしてるR&Bテイストの強い実験作にして傑作「シェリー・モンシェリ」、ファンキーな「Honey bee」、ショーコのソロ「裸足のマリオネット」が出色。 「裸足の〜」のボサノバテイストは、彼女のソロ時代への足がかりとなる。7点。


cover ◆ Flyin' High  (95.07.05/68位/1.0万枚)
1. Heavenが待ってる  2. あってる  3. JIVE INTO THE NIGHT 〜野蛮な夜に〜 [HOUSE MIX]  4. AIN'T NO BDOY 〜永遠の恋人〜  5. MY TURN 〜悲しみよりもしたたかに〜  6. 私の夏が始まる  7. 海に輝いて 8. 恋の受難にようこそ  9. これが恋と呼べなくても  10. 私たちらしいルール  11. JIVE INTO THE NIGHT 〜野蛮な夜に〜 [HYPER EURO MIX]
 原点回帰であり新境地。ハイパーユーロのブーム到来にあわせてWinkといえばやっぱりユーロビート。ということでカバーメインのアルバムとなったわけだけれども、以前のようなアルバムではない。
 かつてのゴテゴテの虚飾美のWinkから、いろんなものを脱色したという感じ。引き算の美学といえばいいのか。あっさりとしてて、極めて匿名性が高い。主張が薄い。とはいえ「Brunch」とは違って、トラックのそれぞれに色があるので埋もれるということはない。 ヘッドホンでじっくり聴きこむというより、B.G.Mとしてなにかをしている間に部屋に薄めに流して心地いい。90年代半ばの中庸J-POP・ほんの少し渋谷系寄りというところか。涼風のように軽やかでおしゃれです。
 時代性と大衆性を考えるとかなりいい線行っている。Winkらしさはないけれども佳盤。
 「Overture !」以来つねに完成度の高い新しいWinkを表現したものの、一度離れた客足を取り戻すというのはなかなか難しく、ここでアルバムにおけるWinkの歴史は終了となる。 ちなみに作家は、及川眠子、門倉聡、船山基紀、尾関昌也、となつかしの面子勢ぞろいに、 岩崎琢、 田原音彦などが参加。8点。


cover ◆ Back to Front  (95.02.25/93位/0.4万枚)
【disc:1】 1. Only Lonely 2. いちばん哀しい薔薇 3. Shake it 4. Made in Love 5. 12月の織姫 6. イマージュな関係 7. ロマンスの方舟 8. 奇跡のモニュメント 9. Alone Again 10. 風の前奏曲(プレリュード) 11. DING DING 〜恋から始まるふたりのトレイン〜
【disc:2】 1. 水の星座 2. Cat walk Dancing 3. 幻が叫んでる 4. 無実のオブジェ 5. 想い出までそばにいて 6. Tasty 7. 愛を奪って 心縛って 8. スカーレットの約束 9. 迷子のロンリー・ハート 10. 背中まで500マイル 11. PLEASE PLEASE ME
 おまけ。90年以来、年末、それがなければ年度末に必ずリリースされていたベストアルバムのなかからひとつ。95年に発売されたカップリングコレクションを紹介。
 シングル曲は、なかには過度なリミックスを施されているものもあれども、ひとまずほぼ全てがアルバムに収録されているけど、B面は半数以上が未収録なので、これは買わなくってはいけませんっ。――って、どうせカップリングなんて捨て曲、穴埋めばかりなんじゃないの?と侮るなかれ。Winkに限ってはまったくの逆。 鈴木・相田の連名で記されている丁寧なライナーからわかるように「ギリギリまでシングルと競い合った曲」「時代性との兼ね合いでカップリングなってしまった」クオリティーの高い曲ばかりなのだ。 聞けば聞くほど、Winkというプロジェクトがカップリングを非常に大切にしていることがよくわかる。そもそも、こういった企画が立ち上がること自体、あまりないものね。
 さてさて、A面とB面を比べながら見てみると、なんパターンかの傾向があるように思える。 ひとつは、はじめから大ヒット狙い撃ちでガチガチに作りこんだA面と対照的に、今後はこういう路線もやっていきますよ、と予告編的に作られた小品。 「真夏のトレモロ」のカップリングで、はじめてブラコンにトライした「Shake it」、「咲き誇れ愛しさよ」のカップリングでフォーク志向を見せた「Made in Love」といったあたり。
 またその逆で、A面ではいままでにない新境地を見せたので、バランサーとしてB面はそれまでの路線、というパターン。 「結婚しようよ」のカップリング「幻が叫んでいる」、「いつまでも好きでいたくて」のカップリング「愛を奪って 心縛って」あたりはその傾向だな。
 一番多いのが、A面B面が双子的になっていて、二曲でひとつの世界になっているもの。 「One night in Heaven」と「Cat walk Dancing」、「リアルな夢の条件」と「無実のオブジェ」、「背徳のシナリオ」と「12月の織姫」、「夜にはぐれて」と「想い出までそばにいて」、「Sexy Music」と「いちばん哀しい薔薇」などなど。
 ただひとつないパターンがある。「A面できたけど、カップリングどうする?」「その辺にあるデッドストックからでよくね?」というアレ。いやぁ、マーベラスですなっ。
 個人的には、ラテン志向を垣間見せた「スカーレットの約束」「ロマンスの方舟」、都市を描きながら独特の浮遊感のある「奇跡のモニュメント」「Cat walk Dancing」が好み。 アナザー・シングルス。もうひとつのWinkの歴史を知ることのできる稀少盤にして名盤。ファンなら意地でも入手すべし。10点。


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2008.11.02
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