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まこりんのつれづれなる日々



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2010.12.28

 つーわけで明後日30日、冬コミに関する情報。
 スペースとサークル名は12/30 西あ-09b「なかとも会」。新刊は「栗本薫全作レビュー1 ぼくらの伊集院大介の挽歌への階段」とうなぎさんのオリジナル小説「よだそう」です。
 あと五月に発行した斉藤由貴コピー本――来月発行する完全版の体験版的準備号みたいな感じで、ちょっとだけ置きます。宣伝の一環?
 他の既刊は「うなグインサーガ」と「くねくね」と「中森明菜 歌姫の軌跡 2」と、こんなところです。
 んじゃ、荷物まとめたり、諸々の支度やってきまっす。



2010.12.21

■ 「中森明菜 in 夜のヒットスタジオ」見たけれども……

 驚きの古館伊知郎NG。なので85年秋から90年のレギュラー放送終了までの間の歌前トークはほとんどナシ。もう絶対、報道ステーション見ない。元々そんなに見てないけど。
 ジャニーズ系全てNGなのは百も承知であきらめてるけれども(――独立したトシちゃんでもダメっぽい)、まさか司会の古館が。これ今後の「夜ヒット」アーカイブ企画の障害になること必至だな。居ても居なくてもいいポジションなのに毎回出てるって、とんだ迷惑。テレ朝のプロレス実況色物アナだった彼を育てたのは「夜ヒット」のはずなのに。
 あと、なぜか関口宏もNGっぽい。犯罪おかした田代まさしやノリピーはNG。でも小室哲哉はOK。当時の人気歌手はわりと映りこんでいる、聖子・ジュリー・郷・秀樹・チェッカーズ・吉川・安全地帯・ミポリン・キョンキョンこのあたりもOK。次のアーカイブで期待できるのはこのあたり? フツーに考えたら、次は聖子ちゃんなんだろうけれども、色々ともめて結婚前後の三年弱、夜ヒットから締め出された経緯があるし(夜ヒットスタッフの仕切りで郷・聖子の結婚関連企画を用意していたとかいないとか)、ジュリーは過去の映像のアーカイブ作品に否定的なスタンス(以前と比べると最近は軟化したけど)だしなー。
 94年冬の「ミ・アモーレ」〜「LA BOHEME」〜「Rose bud」〜「TATTOO」メドレーはテロップミスの修正入れてる。でも94年秋の「月華」の「中森明奈」のテロップは直してない。
 CM入り直後・CM明け直前も、ちょろっと収録しているものあり。
 権利関係が煩雑だったり(陽水とのコラボ、百恵のカバー、ユニバーサルスタジオでの収録)、放送ミスがあったもの(「ミックジャガーに微笑を」、四回目の砂漠セットの「AL-MAUJ」)、明菜の親族の声・映像がはいったもの(「恋人たちの時間」、三回目「十戒」のトーク)はNG。89年早春の「FEREWELL」のみ、どれにも該当しないがなぜが収録見送り。
 当時流行のDCブランドとのコラボというコンセプトで夜ヒット番外編的に85年春に放送した特番「歌う国技館」での「ロンリージャーニー」と「ミ・アモーレ」は単に気づかなかったのか、それとも権利的に難しいのか。「スターどっきり」入れるスペースあるなら、これ入れたほうが良かったのに。
 「FNS歌謡祭」は完全にダイシェスト。それぞれ収録は一分強。
 ひとまず、飛ばし飛ばしでざっと見てきづいたのはこんなところ。
 んで、いい作品なのかどうかって!? それは愚問。とろけます。ちゃんとした感想はおいおい。



2010.12.09

 冬の新刊同人「ぼくらの伊集院大介の挽歌への階段 (栗本薫全著作レビュー集・ミステリ・現代小説篇)」「よだそう(オリジナル小説・続くねくね)」、頒布開始します。
 二作ともに浜名湖うなぎさんがの著作、わたしは編集を担当しています。
 去年末発行の「うなグインサーガ」「くねくね」気に入っていただけた方なら多分今回も満足していただける一冊か、と。2冊で送料込900円。
 通販に関する仔細はこちらの↓通販サイトでおねがいします。
 http://www.chalema.com/book/wagamamakorin/ 「歌謡砦書店」



2010.11.27

 うあー。いろいろと追いつまってます。風邪がなおらんっっ。
 まずひとつめ。twitterで色々いうてますが、今年の冬コミ。12/30 西あ-09b「なかとも会」になります。新刊は栗本薫のミステリーに関するもの、です。著者は浜名湖うなぎさんで編集が私。あと、何かコピー本で出せたらいいな、というところです。これの編集作業ずっとやってます。
 冬コミあわせで斉藤由貴レビュー本も企画していたのですが、ニューアルバムが12/20に延期になったのと、このアルバムのレビューを何とか本につめこみたいのとで、こちらは延期。新譜レビュー部分以外のところは結構進捗しているので、はやければ来年早々――遅くとも五月のスパコミあわせ位には――、というところです。60〜70頁で600円くらいの本になると思います。
 ふたつめ。大貫妙子さんの「pallet」のレビュー、全アルバムレビューに加えてます。「UTAU」も書きたいのだけれども、ちょっと待って。
 みっつめ。品切れ中の「中森明菜・歌姫の軌跡」第一巻の再々版アンケートをとります。

 ■ 再版に関するアンケート ※ アンケート終了しました。

 明菜さんの活動休止宣言以降、ぽちぽちと問い合わせがあるのですが、「ないです」と断るのも、ちょっと申し訳ないので――。
 「再版分欲しい」という方は答えてください。ひとり一票のみ、50冊分ほど購入希望の方が集まったなら再版できるとおもいます。二巻も在庫薄なので、二巻も一緒に欲しいという方はそちらに投票してください。
 前回同様、再版は初版の誤字・脱字を訂正したのみです。加筆の予定はありません。



2010.10.28

 先日、迷惑メールを処理していたら、こんなものを見つけた。

>title  腐女子にハメまくろう♪

> 恋愛に不慣れなオタク系女子向けにコミケ会場にて告知してみた結果
> スグに会える
> スグにヤレる
> 女の子の大量登録に成功しました☆
> http://○○○○○○
> オタク女子は自分の外見にあまり関心がないためか、時々極上の素材が落ちてたりします。
> しかも処○率が非常に高いため、今までに味わったことのないセックス体験が可能です☆
> 気軽なセフレ作りから本格的な性的な調教までご自由にお楽しみいただけます。

 なるほど。近頃「腐女子狩り」だとかいって腐女子狙いでナンパする行為があるらしいという、ほとんど都市伝説めいた噂があるが――男性向エロ雑誌で特集されたとかなんとか、なんでそんなところに需要が生まれるのかと不思議で仕方なかったが、つまり、腐女子=恋愛偏差値が低い女=俺様のコンプレックスを刺激しない、俺色にいくらでも染められる女、と。そういうことなのね。処女厨の亜種だった、と。
 ま、そこに「トップ校はさすがにダメでもこれくらい偏差値を下げれば俺でもなんとかいけるだろ」みたいなさもしい妄想がプラスされているんだろうけれども、的外れすぎて驚く。もーさー、現実をみろよなー。乙女ロードでもコミケ会場でもいいけど、「腐女子」ってのがどんなものか見れば一発でわかるし、腐女子ナンパがおよそ不可能に近い行為だっつうことがわかるだろうて。
 てめーみたいなすすけたヤローなんざおよびじゃないっての、わたしの素敵な素敵な○□×○▲様本漁ってる最中に邪魔だっつーの。てなもんで。
 それぞれの腐女子の脳内にある堅牢な妄想の城の黄金の玉座に鎮座まする素敵カプ様に勝てるほどの魅力がまずあるわけがないし、あるという自信があるなら渋谷とかでナンパした方が手っ取り早いって話だがや。
 そもそもさ、なにか勘違いしているみたいだけれども、腐女子の多くは、報われない現実の代替として腐女子してるわけじゃないからね。「おやつは別腹」感覚で現実の自分とはまったく別個のところで妄想世界でうふうふしてるだけなんだから。フツーに彼氏いてってレベル飛び越えて、結婚して子供もいてって人も山ほどいるわけだし。
 それをうかつに妄想領域にあがりこんで俺の方が魅力あるだろって、ホントたいしたタマだよ、まったく。
 って、迷惑エロメールに引っかかる頭のレベルに言っても仕方ないか。



2010.09.15

 ぬおぉぉぉっ。斉藤由貴も来たぞ。

 http://www.toho-ent.co.jp/creative/saito.html

 25周年記念で、なんとオリジナルでしかもフルアルバム。所属プロダクションの東宝で個人レーベル「ファムファタル」立ち上げて、そこからリリース。一般発売は2月だけれども、東宝直販だと12月発売でなんとか25周年に滑り込みセーフ。
 作家陣は、今のところ、斉藤本人に、谷山浩子、遊佐未森、辛島美登里、亀井登志夫、武部聡志、上杉洋史、澤近泰輔。て、斉藤由貴陣営の総力戦やないですか。
 東宝はミュージカル関連作品中心に自主制作のDVD、CD発売は定期的に行っているのでノウハウあるだろうし、是非斉藤さんも続けて欲しい!!――と思うけれどもこの作品の成果次第、ってところかな。もちろん私は即予約。歌手の斉藤由貴がお好きだった方は是非。
 あともうひとつの25周年のナンノさん、記念ボックスの通販サイトで結構熱くナンノさん自身が語っている動画がアップされていたので、これまたよろしかったららら。こっちも楽しみ。

 http://www.cdclubnetshop.com/

 どちらも同窓会的な再会作品で、もちろん当時の作品群のクオリティーからいって間違いない作品になる(はず)。期待してます。



2010.08.16

 はい、ナンノ、キた。

 http://www.nanno25.com

 ひそかにファン向けに予告のあった、25周年記念の歌モノ。ボックスかぁ。
 CDはオリジナルマスターをベースにさらに音源をお色直し――て、斉藤由貴の「ビンテージベスト」や、山口百恵の「百恵回帰」の手法ね。DVDは歌番組とかの映像集、と。
 個人的には彼女の今の歌も、もっと欲しかったなぁ、と思うけれども、それは贅沢か。もちろん買いは決定。ネット限定販売だそうで、買う予定の方はご注意を。



2010.08.15

 今年のコミケも終了!! 当スペースにきてくださった方はありがとうございました。わざわざ来ていただいたのに新刊なしで、もうしわけなかったとです。今年も暑くて混んでて、でも楽しかったです。
 自家通販終了していた明菜本の第一巻、コミケ分がほんのちょっとだけあまったので、その分だけ自家通販再開します。買い逃した方、よかったらどうぞ、です。



2010.07.27

 中森明菜本、在庫確認・調整しました。
 委託販売させていただいている「まんだらけ」「タコシェ」「模索舎」さん、それぞれに上・下巻ともに在庫あるかと思います。
 自家通販が終了している上巻は、数部だけですが、夏コミで頒布できるようにしました。
 ・8/14 コミックマーケット 二日目 (会場/東京ビックサイト)「なかとも会」/東 G-41b
 今回は小説FCでスペース取っとります。当日は既刊の明菜本の二冊と栗本薫の追悼本と、あとなにか栗本関連で突発コピー本を作るかも、です。スペースがスペースなんで、音楽関連新刊はない――と思う(けど)。



2010.07.20

 超超久しぶりに本サイトの更新しました。
 最初、はてなダイアリーで書いてたレビューなんかを分類して転載する作業をしていたのですが、ま、これはこれで結構な量があったので大変だったものの、読み手的には、面白味がないなーと、ってか、せっかく久しぶりの本サイトの更新なんだし、新規テキストも買いチャイナ!
 そんなこんなで、原田知世の全シングルレビュー、仕上げてみました。同時にアルバムレビューのほうも取り上げていなかった近年の作品とか加えつつ、けっこう大幅にテキスト増量で改訂してみました。一年分以上、原田知世の曲聞いた。もうしばらくはいいっ。
 明菜も相当だけれども、原田知世はそれよりなお一層、ファンをふるいにかけてるよなぁ、いくら自分が好きだからって、ついてこれない人はごめんなさいで好き勝手やりすぎだわ、と、改めて思った次第。しかもこれでさほど支離滅裂に思われてないところが凄い。



2010.07.14

 「中森明菜 歌姫の軌跡」の第一巻、自家通販分、完売しました。ありがとうございます。あとは委託販売分のみになります。まんだらけ中野店にはまだ在庫、確実にあると思いますので(他店舗はちょっとわからない……)、未購入の方はそちらでお願いします。
 んで明菜様、誕生日、オメ。あと「CRAZY LOVE」一般発売して、お願いっっ。着うた、音質悪すぎるねん。



2010.07.03

■ ある、ラーメン屋

 忘れられないラーメン屋がある。その昔、私が幼い頃に住んでいた街にあったラーメン屋だ。
 私の暮らしたその街は、当時、開発の途上にあったベッドタウンで、アスファルトの新しい広い街路や真新しい一戸建ての区画から一歩外れると、桑畑や雑木林、田圃やその間をうねる小川といったものがまだ広がっており、かててくわえて、都心への経路は古くからある県道を走る路線バスで、30分ほど走ると都心に繋がる大きな鉄道駅へとようやく辿りつくという、ベットタウンという言葉も面映い、実にひなびた田舎だった。茅葺の農家というのは既にさすがになかったが、堆肥の牛糞の臭いだとか、セスナ機で空中散布される農薬、といった記憶はある。
 そのラーメン屋は古くからある県道沿いにあった。当時からしていささかくたびれた感のある、一階が店舗、二階が住居、というのが長屋のように連なった建物の中の、そのひとつにあった。右隣がスナックで左隣がクリーニング屋だったと思う。
 その店は、入り口のガラスの引き戸の倍ほどにしか幅がない。かといって奥行きもさしてない。カウンターには椅子が四つほど、テーブル席もあったがふたつのうちひとつは、新聞やら雑誌やら製麺所の名前の書かれたプラスチックのケースなどがどさっと置かれていて、とても座れるような雰囲気ではない。その先には、上がり框の向こうの暗闇が見える。店内は雑然としていささか不清潔で、それなのにどこか殺風景でもあるのが、まるで独身男性の部屋のような趣があった。もちろん、店主の家族構成など当時の私は知るわけもないのだが。
 メニューは、ラーメン、チャーシューメン、ギョーザ、以上、それのみ。ギョーザはお持ち帰り可。テレビやラジオといった類のものもなく、人づき合いの下手そうな店主が、何も余計なことは言わずうつむき加減で黙々とラーメンとギョーザを作る。しんしんとした空気の中、客である私たちはそれを黙々と食べる。
 ラーメンは、ラーメンというよりも支那そばといった方がいいような、骨太な味。スープは醤油仕立てですきっとしていて、麺は細めの黄色味の強いちぢれ麺で、腰が強い。またチャーシューがうまかった。安っぽくごてごてと豪華に盛ったり、これみよがしにするのでなく、余計なものを削ぎ落とし、シンプルで、味に筋が一本とおっていて、うまい。
 散歩がてらに様々な店――おもに飲食店、をチェックすることに怠らなかった母に連れられてご相伴に預かった当時の私だったが、そのラーメン屋は、味といい店の雰囲気といい、郊外によくある親しみやすい佇まいの寿司・レストラン・定食屋・ラーメン・そば・うどん屋、といったものと一線を画していた。別格といってもいい、孤高の佇まいがあった。
 「無愛想で出前もしないけど、美味しいから」ということで、私は母に引き連れられて時々、ここに訪れた。母はラーメン、私はチャーシューメン、ギョーザは店内で食べる用と持ち帰り用で別個に頼む、というパターンが多かったと記憶している。
 ラーメンがB級グルメのひとつとしてメディアに取り上げられることの多くなった現在ならば評判になっていたかもしれないが、ひなびた県道沿いにひっそりと、とても流行っているように見えない姿で――まぁ実際そうだったんだろうけれども、とはいえ、その味ゆえに一部の住人に愛されて、その店はあった。

 幼いある日、私は銀座の雑踏で、財布をなくした。
 日曜の夕方、学習塾の模試で都内に出たついでに、銀座にある鉄道模型屋に寄ろうとして、場所を確認するために近くの電話ボックスの電話帳で住所を確認して、その時にうっかり電話機の上に財布を置き忘れて、五分後に気がつき戻ったときにはなかった。
 わたしは近くにあった数寄屋橋の交番に訪れた。「財布落としました」
 警察官はわたしに紛失届を書かせた。「じゃ、もういいよ」
 いいよ。ではない。よくない。私はどうやって帰ればいいというんだ。ここから電車とバスを乗り継いで一時間以上かかるというのに。
 まごまごしている私に警察官は10円を渡して追い払った。家に電話しなさい、と。仕方ない。電話した。
 「財布落として帰れないから、迎えに来て、有楽町駅の銀座口改札前にいるから」
 10円など市外局番ではすぐ切れてしまう。できるだけ要領よく言ってみたが、はたして。見ると改札口の時計は四時過ぎ。
 そして私は待った。六時くらいまでは平気だった。しかし来ない。何故来ない。
 体よく追い払われた交番にもう一度いってみようか、やめようか。もしかしたら、他の改札口にいるかもしれない。いや動いている間にすれ違いになるかも知れない。遭難した時はした側はみだりに動いちゃいけないって、誰か言ってたし。聞きかじりの変な知識だけは昔からあった。
 しかしなにも進展はない。すれ違う大人は山ほどいるのに、誰も気にとめない。
 八時。いや、もう、絶対おかしい。どうしようもない、どうにもできない。惨めだ。情けない。泣く。こんな時間にこんな所で、子供が泣いてても、おかまいなし。都会はおそろしい。
 九時。泣いても仕方ないし、動いてみる。日比谷口、中央口、京橋口、有楽町駅の周辺をぐるりと何周もする。手がかりなし。また警察に行こうか――でも追い払われないために、どういえばいいのだろうか。ぐるぐる考える。
 十時。ふと地下道の入り口が目に入る。ああ、そういえば、有楽町駅って地下鉄にもあったよな、まさか――。いた。母が。
 「なんでこっちにいるのさ。有楽町駅の銀座口改札っていったじゃん」
 確かに地下鉄駅に正式名称で銀座口改札というのはない、とはいえ憎まれ口をいうこともあるまいに。しかしそれに母は叱らなかった。
 母なりに、警察に訪れたり、地下鉄駅の構内放送を流してもらったりと、それなりに探していたそうだが、ことごとくわたしの行動範囲とかぶらなかったらしい。
 とにかく何とかなった。終電近い電車で自宅に向かう。バスはもう終わっていたので駅からはタクシー。夕食は摂っていないでしょ。ふと母は問いかけて、そのラーメン屋でタクシーをとめた。
 こんなひなびた所にまで24時間のファミリーレストランが広がってなかったこの時代、深夜になると子供の入れるような飲食店はほとんど閉まっていたのだが、その店だけ、おそらく隣のスナックの客相手の為だろう、遅くまで開いていた。
 子供相手におよそいい加減な警察やら、機転のきかない母やら――それでもありがたいという気持ちは傲慢な子供である当時の私には持ちあわせていなかった、何よりもふがいない自分が情けなく惨めで、今日という一日を全て塗りつぶしたい気分だった。
 ムスっ垂れたまま、母とふたりで黙々とラーメンを食べた。やっぱりそのラーメンはうまかった。
 それからすぐに、母と共に行動するような年齢でなくなり、またその街からも離れた。そのラーメンを食べたのはあの時が最後だったかもしれない。
 そんなに数多くラーメンを食べているわけでもないが、あのラーメンに勝っているラーメンに、今のところ味わっていない。



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