【目次】 1. 世紀末へGO、閉塞していく日本 2. ミリオン28曲!感覚も麻痺する音楽バブル 3. 2冠達成・ドリカム「LOVE LOVE LOVE」 4. 不思議なポジションを確立した福山雅治 5. バンドをチャートに引き戻したミスチル 6. 多角経営化開始の小室P 7. カリスマに昇りつめる安室 8. B'zの全てが詰まっている「LOVE PHANTOM」 9. OLカラオケご用達?大黒摩季 10. ビーイングに反旗を翻したWANDS 11. ZARDはビーイングの最高傑作 12. Jラップが市民権を得た今こそ、「DA.YO.NE」を再考する 13. オザケン王子、人気爆発 ■ 1995年 シングルチャート
まこりん(以下 ま):年間チャーーート、かいっっこっっ。 TSUKASA(以下 T):毎度馬鹿馬鹿しい二人でございます。 ま:今回は95年だぁーーーーーーーーっ。 T:き、気合入ってますね! ま:気合いっぱいのまこりんですーー。今日も空回りするぞっっ。 T:空回りなのか(笑)。 ま:まぁ、そうかもな、と。 T:というわけで、今回は95年なんですけども。ちょうど10年前ですね。 ま:やーーー、懐かしさMaxです。青春ど真ん中です。 T:ちょうど我々、高校生ですし。 ま:自分語りしたくてたまらない年です、この年は。 T:多感な時期に聴いた音楽ということでね。 ま:もうチャートとかいいから、っていう。 T:あ、チャートよりも、自分を(笑)。 ま:そんな気分にすらなりますね。 T:青春の蹉跌とかいろいろを。 ま:どんな恥ずかしいことをしてしまったかを吐露し合うわけですよ。 T:世の中全て悟っていた気になっていたなあ、とか。生きる意味などない、とか。 ま:ははは。この世は全て見切った、とか。価値のない世界だ、という。 T:そうそう(笑)。俺は選ばれている、という。全部勘違いなんですけどね。まあ、勘違いは青春の特権だということで。 ま:勘違いしまくりだね。 T:まあ、そんな青い思い出とともに記憶されている、非常に音楽バブル真っ盛りの曲たちを、今日は振り返ろうかなと。 ま:この年はそういうリアル思春期のヒット曲なので、ちょっと、恥ずかしいような感じもあったりして。 T:そうですねー。ま、思い入れがあまり懐古主義にならないように気をつけようかな、と。 ま:そうねーー。個人的なエピソードの披瀝になり過ぎないように行きましょう。 ■世紀末へGO、閉塞していく日本 ま:てわけで、軽く導入として95年ってどんな年?ってのをおおまかに振り返ってみると、社会事件的には・・・。 T:年のど頭からいきなり、でしたね。 ま:阪神大震災。 T:あとは地下鉄サリン事件と。この二つですね、大事件としては。 ま:これだけの年といっても過言でないわけで。この二つは非常に象徴的な事件で、この年を境に世相がどよーーーんとしたというか。 そんな印象ありません? T:そうねー。世紀末へ向けて、閉塞していく日本という。 ま:戦後50年の物語が、この2つの事件で一つの破局という形で終わって。 T:だから、90年代前半というのは、バブルが崩壊したといっても、まだ残り香が漂っていたというか。 ま:けっこうみんな能天気だったというか、そんなに危機感はなくって。 T:そうなのよね。ガラッと世相が変わった、っていう感じはなかった。少なくとも一般市民レベルでは。 ま:なんとかなるかも、という希望的観測で覆われていたというか。 T:それがなんかこの年ぐらいからやっぱり、日本全体が変な空気になっていきますよね。あら、どんづまりかも、という。 ま:あ、マジダメかも、という。で、まぁこの後は大企業が潰れたり、不可解な犯罪が連発したりで、もうなにがなんだか、という。 T:酒鬼薔薇とか、少年犯罪があり、という。 ま:泥沼な空気が日本全体を包んでいくわけですね。 T:ま、あと細かいところではPHSサービスが始まったりですね。 ま:あとwindows95ね。 T:情報化社会の進行が急になる。高校生がポケベル持ち出したのって、この年だっけ。 ま:あー、これくらいかな。 T:ま、すぐPHS、んですぐ携帯となるわけですけど。 ま:通信関係の飛躍的進歩ってのはこの年あたりからだね。 T:ま、若年層を中心に、そんなツールで繋がりだしていくというのもこのあたりで。 ま:で、相対的にマスコミの力が弱くなっていくわけだけれども。だから、この年がシングルヒットのバブルの頂点というのも当たり前かな、という印象はありますね。 送り手側が送ったものをエンドユーザーはただ消費する、という形態がだんだん壊れていくわけで。 T:ああ、このへんから個人個人でタコツボ化していくという感じでね。 ま:個々で勝手に繋がって、勝手に世界を作る。マスコミの支配力が以前ほど通じなくなっていくわけで、 そうなると自然と大ヒットも少なくなっていく、という。 T:個人個人で閉じこもっても、特に困らなくなっていくし、それで気持ちいいんだからいいんだ、という。 そういう傾向が顕著になってきた。 ま:まぁ、この年からいきなりってわけじゃないけれども、きっかけとしてこの年は色々と要素がそろっているな、 という、そんな印象はある。 T:えっと、「新世紀エヴァンゲリオン」の初回放送も実はこの年の後半だったりしまして。 ま:あーー、そうだね。あれも、この年の象徴かもね。 T:見事にシンクロしているかなと(笑)。世紀末へGO、という、そんな95年です。 ■ミリオン28曲!感覚も麻痺する音楽バブル ま:で、さっき言ったようにシングルバブルはこの年が頂点でして、なんとミリオンセラーが・・・何曲だ。 T:28曲です。 ま:狂ってます。 T:ありえねえー。 ま:アリエナイザー、発動しちゃうよ。 T:もう、なんでみんなしてそんなCD買っていたの?と問いたい。 ま:まぁ、実際買っていたんだけれどもね。 T:その中には俺らも入っているわけですが(笑)。 ま:CDショップも、大型店が地方にも開店しまくったり、ゲーム屋とか本屋でもCDを扱いまくるようになったし。 T:TSUTAYAが巨大になってきてたような気がする、この頃。 ま:レンタルCD屋もセルコーナー拡充したり、なんかもう、売れ売れ売れ売れです、という。実感として、それは感じましたよね。 なんかもう色んなところでCD売っていて、それで売れているぞ、という。 T:銀色の円盤が飛交いまくる日本、という。もう、なんの心配もない音楽業界。全てが上手く回っている感じでしたね。 ま:ほんと景気よかったよなー。色んな音源のリイシューも活発だったし。CD屋行けば、なんかおもろいものが落っこっている、 そう信じられた時代でした。 T:で、そんな95年のチャートなんですけど、いつもなら上位20曲を取り上げて語っているわけですけども。 ま:うん。 T:あのー、ここまで全体的に売れすぎると、とても上位20曲では流れを把握できないという感がありまして。 ま:ねぇ。ウィークリーで5万枚売っても10位に入らない、という週すらあるしね。もうありえないほど色んなジャンル が動いていたからね、この年は。 T:そうなんですよね。んで、実際チャート見ていただければわかるんだけども、 上位だけ見たら何組かの決まった人達による寡占状態だったりして。 ま:そうね。 T:上だけ見たら、小室、コバタケ、B'zとかで占められているんだけども、下のほうでもずーっと何十万枚ってのが並んでいるから、 ヒットしてないというわけでもなくて。 なので、今回は上位20曲限定でなく、もうちょっと広く見ていきたいかなあと。 ま:まぁ年間100位で33万枚って、去年(2004年)なら年間20位に入るレベルなわけで。 T:ああああ、100位で33万枚なのかー。だからまあ、ヒット曲が多すぎるということなんだよね。 ま:もうハイレベルにもほどがありますよ。 T:当時はでも、20〜30万枚とかだと「あんまり売れてねえな」とか思ってませんでした? ま:そうそ。ミリオン行ってヒット、という。 T:だから数字って怖いよね。今思い返すと、ただ週替わりのようにヒット曲が生まれていたという、そういうことだったんだけども。 当時にすると、もうミリオン売れないと「こいつは終わった」とか、そんな感じで。 ま:そそそそ。ありえねーーー。 T:酷いよね(笑)。 ま:ミリオン行かなかったから落ち目って、どういう判断だよ、と。 T:はははは。 ま:昔の自分にそう言いたい。 T:もう、ほんとジャンプシステムですよね。数字が全てという。 ま:実態として数字が膨れ上がりすぎて、受け手側も完全に麻痺してた。 T:そうね、麻痺してましたね。黙っててもミリオンヒットが沸いてくるし。まあ、大変な時代でした。 というわけでそろそろ中身に行ってみましょう。 ■2冠達成・ドリカム「LOVE LOVE LOVE」 T:まずは、とりあえず1位は称えましょうということで、ドリカムさんですか。 ま:この年はアルバムも1位で、ダブルパンチですーー。 T:2冠ですね。 ま:すばらしぃっっ。えーと、2冠は88年の光GENJI以来? T:あ、そうなりますね。まあ、ドリカムは91年あたりからずっとお化けセールス出していたわけで。 ま:まぁ、トップ集団ではあったよね。 T:アルバムも既に「The Swinging Star」で300万枚売っていたり、まあ、シングルでは「LOVE LOVE LOVE」は突出してるんですけど。 この年がその極めつけ、という感じかな。王者になりました、という。 ま:やっぱ、2冠ってのは凄いですよ。あとは78年のピンクレディーと81年の寺尾聡と、2001年の宇多田ぐらいですし。 T:まあでも、凄いんだけど、ドリカムの年だったかと言われると、そうでもないような気がする。 ま:そうねー。そこがまた凄いんだけれども、この年は。 ドリカムは「サンキュ」もミリオンで、どう考えてもこの年は頂点なんだけれども、他も凄すぎたから。 T:いろいろありすぎてね。 ま:さほどのインパクトはない。 T:印象としてドリカムが突出していたか、というと、全然そうでもなくて。リリースとか露出もそんなに多くなかったしね。 ま:まあ、ドリカムはそのあたりもともと自制的だからね。テレビに出るけれども、そんなにイケイケに出まくりはしない。 メディア選んでます、という。 T:まあ、この時代はそういうスタンスでないと、あんまりイケイケでいると落ち方も激しいぞという、 そんな恐ろしい時代なので。スタンスとして正しいとは思いますが。 ま:ま、ね。そういったスタンスが、今でもドリが一線の理由の一つだろうし。 T:ま、このドリの2冠は90年代前半の人気の一つの結実という感じで。 ま:この後アメリカ行って、迷走して、んで日本に回帰して人気を戻して、という。そういった歴史を鑑みても、 第一期ドリの結実って感じですね。 T:だからこの年にドリが日本を席巻しまくったぞ、という感じでもないんですけど、まあ「LOVE LOVE LOVE」は売れました。 ま:うん。 T:ってでも、曲としては別に・・・。 ま:はっきり言ってそんないい曲か、という。 T:はははは。ねえ。普通ですよね。 ま:割とどうでもいいタイプのバラードだな、と。ドラマ主題歌だし、売れたんだろーな、という。 T:や、やっぱりこう愛を叫ぼうと。愛を呼ぼうと。みんな感動したわけですよ。 ま:それにしても、聴覚障害者のドラマ(「愛してるといってくれ」)で、愛を叫ぼうっていうのもあざといよな、と思ったりもする。 T:うーむ。 ま:トヨエツが常盤貴子にうがーーーって叫んで・・・ T:ははははは。 ま:常盤貴子が気付くっていう、ほら、あの名場面を思い出すわけですよ。 声の出し方わからないトヨエツが、貴子を求めて叫ぶわけですよ。 T:で、あのチェンバロのイントロが・・・という。 ま:「LOVE LOVE LOVE」が流れるわけですよ。そう考えると、結構ドラマ主題歌の黄金パターンな使われ方だったのかもな。 T:ドラマと曲とセットで、よく出来ているんじゃない、という感じで。 ま:「高校教師」の森田童子とか、「101回目〜」のSAY YESとか、あのへんと同じで。 T:「ラブストーリーは突然に」とか、そのへんの系譜ですよね。ま、曲も歌詞のメッセージもシンプルでわかりやすいし、 年間1位というのも違和感はないですね。 ■不思議なポジションを確立した福山雅治 T:次はですね、大きいカテゴリーになりそうなところはちょっと後回しにして、3位の福山なんですけど。 ま:ましゃですかい。言うことないわーーー、俺。 T:はははははは。まあ、ちょっとここは触れておきたいかなと。 ま:これもドラマで売れたよね、と言うしか。 T:つうか、このへんの年になるともうドラマとCMのタイアップしかないから、上のほうは。 ま:まだタイアップ神通力効きまくりですからね、この年は。 T:前に対談でまこりんさんが言っていたように、完全に歌の宣伝媒体が歌番組からドラマとCM、 あとカラオケに移行しているという、そんな感じなんですけど。 ま:そうですね。まさにこの年は黄金期だ。 T:まあ、ただ、福山さんって、ずーーーっと売れてるじゃない。今でも。 ま:そうねーー。不思議だよね。 T:この前も「MELODY」とかちょこちょこ売れてて、「IT'S ONLY LOVE」も売れて、で、この「HELLO」であらあら、っていうぐらい売れて。 んでその後も「桜坂」とかありつつ、ほかの曲も堅実に売れているという。不思議です。 ま:これ言ったら失礼になると思うが、福山センセーは、織田裕二センセーと同じ箱なんじゃないかな。軸足が芝居か歌かの違いだけであって。 T:や、もともと歌手志望なのに役者で先に売れてしまったという差異はあるにせよ、佇まいとしては役者ロックの箱ですよね。福山さんは。 ま:ドラマでの人気を歌にフィードバックして、ヒットという。で、未だにドラマ、CMと歌を行ったり来たりして、相互補完で人気を持続、という。 T:じゃあ、福山さんのこの息の長い人気というのは、顔です、という、そういうことでいいですか。 ま:やっぱりF1層の支持無くしては、福山は語れないのかな、と。売上的にはね。そう思ったりします。 T:音楽自体はまあ、ものすごく変哲なくて、むしろ一世代前の人みたいな感じしますもんね。フォークとかNM、歌謡曲出だよなあ、というのをものすごく感じる。 ま:清潔な一人サザンというか、そんな感じだし、福山センセーの歌って。 T:あとまあ、福山さんのオールナイトニッポンいつも聞いていたぞ、と。そんな思い出もありつつ。 ま:あーー、なぜかわたしも聴いてた。 T:福山先生、下ネタ連発でして。 ま:ホーケーネタとか。 T:はははは、あったねえ。あとリスナーと電話繋いでエロトークとか、毎週やっとりました。 ま:まぁ、そういったところで野郎の共感も得つつ、という。 T:そんなところも、まあ、憎めないキャラだなあ、と。 ま:プロデューサーが上手い、って言ったらダメ? T:それが結論ですか(笑)。 ま:や、嫌われる要素ねーなー福山、って思うし。 T:ないですね。過剰さがないし。TPOわきまえている。 ま:好きになる要素はあって、嫌いになる要素はない。よく考えたらこれは凄いですよ。 T:無敵やん。 ま:そりゃ、たいしたことない歌でも売れるよ。 T:はははははは。いや、まあ、露出もそんなにしないし、今やほんとに不思議なポジション確立してしまっていて。 ま:でもピンポイントでいい露出するんだよね。やっぱり、桑田君に近いなー、印象としては。 T:うーん、そうなのか。 ま:あらゆるところがアミューズ印って感じ。ま、桑田君はもっとぶっ壊れているけれども、 憎めなさ、というか、嫌いになる要素がないところというか。 T:桑田さんのエロも、実はそんな過激なエロではないしね。TPOわきまえたエロ、という。顔も良くて性格も良かったら、 そりゃ最強ですよ、ということで。 ■バンドをチャートに引き戻したミスチル T:で、次はチャートの上位20位の中に4曲送り込んでいるミスチルさんと、 そのミスチルさんに加えマイラバもヒットさせた小林武史先生は、やっぱりこの年外せません。 ま:何故か突然、ここでコバタケさんがプロデューサーとして脚光を浴びるわけですね。 T:ミスチルとマイラバで12位までに5曲ですから、凄いです。ある意味コバタケさんの年です。 ま:まぁでもコバタケさんって、この二組以外に何していた?という感じですが。サザンとかキョンキョンとか昔のはいいとして。 T:や、まあだからミスチルの大ブレイクに引っ張られて、という感じではあるんですが。 ま:だから、まぁそのあたりの脚光の浴び方は小室さんとはちょっと違うわけなんですよね。あくまで裏方、という。 T:うん。で、前年までのチャートと、この年からのチャートで、分水嶺になるのはやっぱりミスチル的要素かなあと思うわけでして。 ま:まぁ、ミスチルが出てからフォーキーなものが再びチャート的にアリになったというか。 T:93年と94年っていうのは、もうビーイング旋風が吹き荒れていて。 ま:そうですね。 T:で、ビーイング以外のも、音が非常にビーイング的というか、全部いっしょに聴こえるんですよ。 破綻のない打ち込みで、適度にキラキラしていて、という。 ま:確かにシンセ使いとか、あの時代特有の空気ってあるよね。 T:ビーイングの均一的な、工房的な作りの打ち込みアレンジがチャートを席巻していたという感じで。 ま:ぺらっとして、薄くって・・・。 T:それがミスチルのブレイクあたりから、バンドものがぐぐっと盛り返してきたなという印象がありまして。 ま:いなたいバンドサウンドがふたたび「アリ」になって。 T:ビーイングと小室の打ち込みサウンドが席巻していたチャートに対抗、というわけではないけれど、 均一化していたヒットチャートがまた多様化への道を辿っていくという契機がこの年かな、と。 ま:まあ、確かに「一方でこういうのが出てきたな」というのは印象としてあるよね。 ミスチルはある意味反動保守的だったのかもしれない。 T:そうね。反動というのはあるだろうね。対ビーイング、対小室という意味で。 ま:バンドに顔があるし、何事にも意味性を求めるし。 T:90年〜94年あたりでは希薄になっていたところですね、そこは。 ま:どんどん匿名化していくJ-POPにあって、回顧的な部分を引き継ぎつつ、 今っぽくリニューアルしてもいてという。そういうところは大きいですね。 T:ってことでまあ、さっきドリカムの年ではないと言ったんですけど、この年はミスチルの年、という感じがする。 ま:や、でも小室先生の年でもあるわけで。っていうか私はそっちの印象の方が強いな。 T:だからまあ、小室VSコバタケという年ですね。んで、片や打ち込みでダンスミュージック、片や生音でビートリィで、という。 ま:まぁそんな構図ですね。 T:だからここでミスチル的なものが出てきたというのは必然かなあ、という気もする。 ま:そうですね。みゆきVSユーミンのように、時代が求めた構図なのかも、小室VSコバタケは。 T:ここからそれまでの小室的なものに加えて、バンドがどかどかと出てきて、チャートもいっそう混沌としてきますし。この年はスピッツもブレイクしましたし、 あとL⇔Rとか、ジュディマリとか。それにイエローモンキーもじわじわ来てたりですね、あとちょっと変化球ですけどシャ乱Qもきて。 ま:非ビジュアル系のバンドってのは、ミスチルのブレイクで道が開けた部分ってのはあるかも。売上的にはね。 T:そうですね。ビーイング全盛期には驚くほど非ビジュアル系バンドって、チャートに出てこないから。 ま:ま、それは、その前にバンドブームがあって、そのブームが終わって、で一旦波が引いたという、そういう経緯があったかと。 T:そうね。 ま:だいたいこの時期にブレイクしたバンド系って、バンドブームの尻尾の時期にデビューして、 美味しいところ何も食べれなかったという、そういう面子だしさ。 T:そうね。ネクスト・バンドブームという。ミスチルも、デビュー時のコンセプトが「バンドブームとの差異化」だったらしいし。 ま:あ、そうなんだ。それはどういう点での差異化なわけ? T:最初に想定したターゲットが、女性の音楽ライター、とか。十代をターゲットにするのは後回しで、という。 ま:ああああ。はいはい。確かにそういう感じだった。下っ端業界人に受けるような。そういうパブリシティー戦略っぽい感じはあった。 デビュー時のミスチル。 T:等身大とか、メッセージとかそういうのはもう、ナシだと。そういう意識だったらしいですよ。 だからまあ、その一つの形が渋谷系ではあるんですけど。 ま:そうね。ギョーカイに憧れる人の音楽、という。 T:そうそう。ていうか、「Versus」ぐらいまでのミスチルってまさに渋谷系な感じで。CDジャケットとかなんとなくオサレ、という。 ま:そこがスタート地点と考えると、ミスチルはずいぶん遠いところにたどり着いてしまいましたねー。 T:そうね。それがここまで来たのは素直に桜井さんの力かと思いますよ。 ま:なんかもう今は、精神系というか― T:はははは。悩める人、になっちゃったからね。 ま:ギョーカイ人が気がついたらセミナーに嵌まっている、 というそんな構図にも見えたり―ってかなり危険なことをうっかり言ってしまった。 T:まあ、やっぱ前年とこの年で売れまくってしまった、そこからくる苦悩みたいのも、 歌にフィードバックしていくという。で、今に至る、と。 ま:そうならざるを得ないんだろうけれどね。これだけ支持されると、考え込まざるを得ない。 俺のやっているものってそういうモノ?と。 T:この年のミスチルさんは、前年のブレイクを経て、今度はライヴツアーを映画化したり― ま:「es」ね。 T:まあ、そのタイトルからしてもう精神系なんですけども(笑)。でまあ、あとはスタジアムで野外ツアーをやってみたり、どんどん存在が膨らみあがっていくというところで。 まあ、渦中にいたら大変だろうなとは思いますよね。 ま:桜井さん自身はそんなに売れる音楽を作っているつもりはなかったのに、 たまたま時代に担ぎ出されてしまったというか。そういうのはあるんだろうなー。 T:いや、でも売れる前は「100万枚売れてやる」というのが目標だったらしいですけども。 ただ、思った以上にでかい存在になってしまった、というのはあるのかも。 売れてみたら「なんじゃこりゃー!」みたいな。まあ、でも、ミスチルは売れますよ、それは。 ま:そうっすか。あんまりそのへん、わからない。 T:曲はいいし、アレンジもいいし、歌詞もこう青春の蹉跌と苦悩という・・・ってなんかひどい物言いしているが(笑)。 そりゃあ、やられますよセンシティブな若者達は。 ま:でも私には、なんか歌謡曲としての毒というかエグミというか、 そういうのが全くないので、受けるとか受けない以前に、「わからない」って感じ。ミスチルは。 T:うーん、まあ、破綻が少ないからな、ミスチル。 ま:いや、まあ私はフォークに対する感性が欠如しているから仕方ないんだろうけれどもね。 ハマショーとか良さがぜんぜんわからんし。 T:そこでまたハマショーを出しますか(笑)。 ま:ははは。 T:前もイエローカード出てるので、2枚目レッドカードです(笑)。ということで、次。 ■多角経営化開始の小室P T:で、次はコバタケさんが出たのでやはり小室先生かなと。 ま:来ましたねーーー。 T:まあ、小室先生がプロデューサーとして炸裂し出したのは前年なんですけども。 ま:TMを終了して、篠原涼子「恋しさと切なさと〜」200万枚の大ブレイクが94年で。 T:で、テツヤコムロレイブファクトリーも成功させまして。この年はその、前年ヒットさせたtrfや篠原涼子をやりつつ・・・ ま:安室・華原・globeを始動させて、という。 T:あと浜ちゃんやらhitomiやら内田有紀やらもやり出して。 ま:もうなにがなんやらのお祭り状態。 T:本格的に多角経営化していく小室先生です。 ま:あのですね、実は今までずっと95年春の「夜のヒットスタジオスペシャル」を流しながら対談していたのですが。 T:あ、そうなんすか。 ま:小室先生出過ぎっっっ。 T:はははは。 ま:何回衣装チェンジして登場してるの?という。 T:あ、アーティストと一緒に出てるのが多いと。 ま:えーとこの回だと、明菜・篠原・trf・内田有紀・浜ちゃんに小室先生が登場しています。いちいち衣装を変えて登場している。 T:小室先生、出たがりだなあ。つうか、真面目に言うと、前年とかこの頃って「プロデューサー」という 立ち位置をすごく強調していましたよね。 ま:そうね。 T:それまで「プロデューサー」なんて言葉や職種は、一般的には専門用語みたいなもんだった。 それを「篠原涼子withT」とかいってみたりですね― ま:ははは。 T:一緒に出演して、後ろで鳴らないシンセやギターを弾いてみたりすることによって、一生懸命宣伝していたという。 ま:「プロデューサー」って言葉が一般化したのは、小室先生の力、大だよね。こういうことやるのがプロデューサーです、 ということを世に広めた。 T:誰がプロデュースしてるなんて、誰も気にしてないしね、この頃。 ま:しかも小室先生のプロデュースは、全てがオーバープロデュースというか。 歌手をとっかえひっかえしてもさほど困らない代物だったりして。 T:プロデューサーが主役になってしまうというところまで行ったからね(笑)。 ま:そういうところまで持って行ったのも小室先生の力だよね。 T:それはそこまでやればプロデュース業という仕事、広まるよと。 ま:さらに「結局裏方が全てを作っているんだよ」ということまで皆さんに教えてしまった、という。 T:ははは。みんな掌で踊っているんだぜ、と。 ま:舞台に立って歌っている人はあくまでお人形さんなんですよ、 ということも教えてしまって。音楽が「夢」でなく、「ツール」になる、その過程を推し進めてしまった一人でもあるかなぁ、と。 T:ああ、それはあるな。知らないからこその幸せ、みたいなのは確かに80年代の歌謡界と比べると、ないですね。 ま:だからまあ、小室先生は偉大だけれども、厄介だなぁという、そういう部分もあり。 T:まあ、功罪ありますな。さっきも言ったようにもうこの頃はタイアップとカラオケがヒットと切り離せないんだけども、 カラオケにターゲット絞ってしまったのも小室先生だしね。 ま:あぁそうね。 T:カラオケで歌える歌でないと駄目、という。で、ユーザーが歌い飽きる頃にはもう次の曲出さないと、と。 ま:そして私たちはどれだけ高い声を出せるかの競争をやりだすわけですよ。 T:ああ、ハイトーン偏重主義というのもあるかもなあ、小室先生の罪。 ま:なにかのアクロバティックなスポーツのように。 T:だから、出るか出ないか、ぐらいのキーなのがいいんでしょうね。スポーツみたいなもんで、 クリアできるかできないか、ぐらいの。 ま:上手い下手でなく、ハードルクリアしたかどうか、という。ハードルぶっ倒しても、 クリアしたならよし、みたいな。そんな高音競争が。 T:で、まあ音楽がカラオケ用ツールのようになっていく感じもありまして。 音楽がただの情報になっていくという。そんな流れに加担してしまったところもありますが。 ま:ってさっきから、否定的なことばっかり言っているな。 T:いやいやっ。小室先生で育ったようなもんですからっ(笑)。 ま:まぁでもこの年の上位小室曲は、割とどうでもいいというか、あんまり私は思い入れないんですが。 T:小室先生凄いのは次の年だからな、ほんとは。 ま:「WOW WAR TONIGHT」とか、語るか?という。 T:まあ、これは当時ダウンタウン人気もピークだったし、相乗効果ですね。 浜ちゃんがこの曲で200万枚で、松ちゃんも著書の「遺書」がミリオンセラーで。 ま:じゃtrfの三ヶ月連続リリースは? T:あー、trfは売れるときに売っとけ、という感じでは(笑)。 ま:ははははははは。 T:だってこの年2枚オリジナルアルバム出しているし、シングル5枚切っているし。 ま:でもまぁ、この時点では、trfがその後あんな風になるとは思わなかったなあー。翌年からのぐだぐだ加減は想像できなかった。 T:ま、今も解散せずにやってますけど。もう「T」じゃないやん、っていうツッコミは当然入るわけで。 ま:だから今考えると、売るときに売っちゃえってのはわかるけれども。 T:ていうか、「BRAND NEW TOMORROW」でいきなり売り上げ落ちるんだよね。 ま:まーね。だって半年以上リリース開いているし。 T:この年の上半期までは絶頂期だったのに、いきなり下半期ガタッと落ちる。 ま:その間に先生がglobeとか安室とか華原とか、もっと大切なものを始めてしまって、trfはハブんちょになった。 T:そうね。小室先生が飽きたということで。あ、でも、「CRAZY GONNA CRAZY」と「OVERNIGHT SENSATION」は大好きなおれなのですが。 ま:デスコだしね、「OVERNIGHT〜」。 T:プチディスコブームを生んだという。ウルフルズも「OVERNIGHT〜」を聴いて「ガッツだぜ!」を作ったとか、まあどこまでほんとかわかりませんけども。 ま:ってゆーかですね、この時期になぜ70'sDisco?ってのはあったと思うんですよ。恥ずかしいよと。今更だよ、と。 T:まあねえ、なんで今ミラーボールなんだよ、という。 ま:でもまあその後、気がついたら日本のポップスはディスコがアリになっていたわけで。 T:っていうか、今や困ったらディスコやっとけ、みたいな感じになってますよ。ディスコやればとりあえず売れるよ、という。 ま:だからそういう意味では、小室先生の先見性はここでも発揮されたのか、と。適度に褒めておく。 T:この時期の小室先生は結構ビシバシ読みが決まってましたからね。鈴木あみあたりからおかしな事になっていくが。 ま:はははは。もう見るも無残に。 T:ていうか、ちょっと待って、「Feel Like Dance」も 「I BELIEVE」も「CANDY GIRL」も「Body Feels EXIT」も好きだわ、おれ。あ、「もっと もっと」も。 ま:ど、どうした、いきなり。 T:や、さっき小室は次の年だよ、と言ったけど、やはりこの年も大好きでした。 ま:チャート上位に出てきてないんですよ。この年は上にはいないのよ。 T:下のほうなんですよね。それでも50万とか売れてるんだが。うーん、やっぱり語るの大変だなあ、この年。 ま:まあね。 T:内田有紀の「ONLY YOU」みたいな迷曲も密かに生み出しているわけですが。 ま:えーー、でも「ONLY YOU」はアレはアレでありでない?子供みたいな声で。 T:いやあ、なんかいきなり語り出すし内田有紀。ラップなのか、なんなのかっていう。 ま:まあ、ラップとしてはアレだが、ファニーな魅力が。おじさん萌えちゃうよ、という。 T:で、小室先生のコーラスがうわぁぁぁんという。「ゆーうううーうーーーうぉぅうぉううぉぁーーん」と。 ま、いろいろやり始めています、イケイケです小室先生、ということで、次へ。 ■カリスマに昇りつめる安室 T:で、まあ、小室プロデュースになるのはこの年の10月の「Body Feels EXIT」からなんですが、 安室ちゃんがブレイク、というのもやはり外せないかなと。 ま:安室さんはここまで来るとは思わなかったよなー、「TRY ME」の頃は。もっと浮き草で消えるかと思った。 T:「ポンキッキーズ」でうさぎのコスプレしていたのがねぇ。女子高生のカリスマになってしまった。 ま:アルバムがミリオンになったのも驚いたし、この年に。 T:ユーロのね。小室プロデュースになる前の。 ま:で、「Body Feels EXIT」ですよ。もう、ここでいきなり決定的になってしまった。 いきなり格が変わって驚いたよ、当時の私は。なんだこのいきなり大物感は、と。 T:ちょっと前までスーパーモンキーズじゃないか、と。 ま:そうそう。ダイエーのニーキュッパのワンピースのようだったのが・・・ T:はははは。 ま:いきなりガチガチのブランド服になったというか、イメージがね。そんな風にいきなり変わった。 T:だからなんか、歌でどうこうっていうより安室奈美恵という存在自体がいきなり来ましたよね、この年。 ま:安室先生は、東芝時代はアイドルという括りかと思っていたからさ。 T:しかもアイドル駄目な時代だしね。冬の時代で。B級を打破できない、という。 ま:そうねー。五年経ったら田舎に帰って、カラオケ教室開きそうなくらいにダメダメな臭いがしていたのに。 T:ははは。 ま:ただ、なんで安室がブレイクしたのか、ってのは私はよくわからなかったりする。 T:あら。そこをまこりんさんに突っ込んでもらおうと思ったのだが。 ま:えー、俺待ちかよ。 T:アイドルフェチとして。 ま:アイドル不毛の時代に何故ここまで頭角を顕して、しかも歌メインでのし上がって、ってのは全然わからんよ。 T:曲もねえ、普通のユーロだしなあ。別に悪かないけど、B級で終わっても全然おかしくないよね。 ま:や、まじめに当時も不思議だったよ。なんで「TRY ME」売れてるの?と。 T:ライジングの力、とか。 ま:この頃のライジングは荻野目洋子と観月ありさくらいしかいないし、そんな力ないっしょ。 T:そっか。 ま:それこそ安室先生であそこまで大きくなった事務所だし。 T:やっぱりまあ、同性の支持というか、女子高生が真似したがるというのは強いなとは思いますけども。 ま:まー、それこそカラオケ需要に支えられたと。カラオケ浸りの女子高生のハートにヒットしたという。 T:ただ、まあ周りの女子が次々安室もどきになっていくのは非常にうざかった、それに対して憤慨していた、 というのは今でも覚えている。 ま:ロングブーツにミニスカが、うざかったっすか。 T:あれは安室の顔とスタイルだからいいんであって、お前らがやっても全然よくない!と。 ま:ははは。 T:ていうか、黒髪で清楚な子が好きなんだ、おれは。それが、周りみんな茶髪になっていってですね、 ま:や、まあTSUKASAさんの桜井幸子好きはいいから。 T:はははは。ここでそれバラすなっ。 ま:あと「小顔ブーム」を作り出したのも安室からかなぁ。 「顔が小さい=かわいい」って価値観がおおっぴらになるのってこの頃からな感じする。 T:なんか、安室きっかけで女子高生が非常に調子乗りだしたというか、変に力持ち出した時代だったな、という気がしますね。 ま:それこそ、女性のお手本になるアイドルってのが90年代に入ってから、不在だったんじやないかな。明菜とか聖子のように、 髪形を真似しちゃう、っていう、そういう女性のファッションの雛型になるアイドルはいなかったわけで。 その空白状態に安室がぽっと嵌まったって感じなのかなー。 T:で、まあ、産休中にその椅子に浜崎に座られてしまった、と。 ま:そうねー。ともあれポップスにはそういう部分ってのはやっぱ必要なんだなと、 安室の登場で業界は気づいたんでないかな?中島美嘉なんかも、こうひっじょーーにファッショナブルで、 そのラインを狙っているなという、そういう印象あるし。 T:そうね。同性の支持がないと、というのはあるね。 ま:ただ、中島はいまいち女子高生に真似されてる感じしないけれどもね。 T:女子高生が真似するにはドスが効きすぎている気がしないでもない。 ま:そんなこと言ったら安室とかもアレなわけで・・・って、まあ、 楽曲の話さっきからまったくしていない二人がいるんですが、それってどうよ。 T:ははははは。や、「Body Feels EXIT」のシンセはカコイイですよ。 ま:ともあれ安室は、空白の女子高生枠にカラオケ機材を背負って攻め行って、 三国志で空城を占領するように、あっけなく天下を取った、と。 T:カラオケと女子高生が権力握っていた時代ですので、ま、象徴的かな、という感じで、次。 ■B'zの全てが詰まっている「LOVE PHANTOM」 T:えー次は、ミスチルに負けじとベスト20内に4曲送り込んでいるB'zさんです。 ま:B'zは、まぁこの年は「LOVE PHANTOM」、これで決まりでしょーー。♪いんらないっなにもーー、って歌い出しちゃうよ。 T:お、「LOVE PHANTOM」は推しですか。まこりんさん。 ま:や、この歌はB'zの全てが詰まっているか、と。 T:これはカコイイですよ。頭から終わりまで無駄がない。で、スピード感があって淀みない。 ま:ハッタリ具合とか、無駄な壮麗さとか、やたら早い展開、全てがB'zでしょ、という。 T:あとウジウジした歌詞もね、稲葉イズム全開で。 ま:これが売れないわけがないですよ。 T:これは初動売り上げが90万枚とかだったのかな。当時の記録でした。 ま:あーそうなんだ。これはドラマ? T:えーと、「X-FILE」主題歌。 ま:びみょーなタイアップだな。 T:B'zのタイアップはだいたい微妙なので(笑)。あとまあ、リリース前にライブで結構いい扱いでやっていたり。 ま、期待値も高かったし、完成度も高いし、それは売れるでしょう、という。 ま:あーなるほどね。や、でもこれはライブでは盛り上がるでしょう。 T:あーライブではね、ちょっと演劇チックな演出でやってました。稲葉さんが歌いながらドラキュラの格好に着替えて、 ま:ははは、恥ずかすぃ。ベタベタやん。マリスミゼルかよ。 T:で、アウトロでこうトラスを上に昇っていってですね。高ーーいところに昇っていって。 で、アウトロ終わりでそこから飛び降りる、という。場内騒然、という、そんな感じの扱いで。 ま:楽しそうですね、それは。 T:はははは。 ま:乙女になって、「稲葉さーんイヤーー」って黄色い声援をあげたいですな、それは。 T:で、騒然とする中、「ねがい」のイントロとともに稲葉さんがマラカスを振りながらステージから競りあがってくる、 というのがシュールでまたなんともだったんですけど。 ま:ははは、マ、マラカス・・・。天然だなー稲葉っち。 T:もう完全に稲葉ワールドでした、あれは。まあ、この年のB'zさんは、 前年ちょっとハード方面に振り切りすぎたので。一部ファンの方は、ポカーンとなっていたので・・・ ま:「Don't Leave Me」とかだっけ?前年のシングル。 T:と、「MOTEL」ですね。それに2枚組アルバム。 ま:HR色強すぎたか? T:趣味丸出しで行ったんですけども、まあ、ちょっと中学生や女子ファンには渋すぎた、と反省しまして。や、 わからんけども。んでまあ、ポップ回帰というか、そんなシングル3枚ですね、この年は。 ま:あーー、確かにポップだね、この年の3枚は。 T:B'zど真ん中の3つかな、という。 ま:ただ、B'zはどうやろうともそんなに売上変わらんだろ、という、そんな感じはします。 T:まあねぇ。固定ファンが強いからな。 ま:「LOVE PHANTOM」だけいつもより売れて、あとは120〜140万くらいっていう数字も実際変わっていないし。 T:ただ、アルバムはベストを抜かすとこの年発売の「LOOSE」が唯一300万枚で、最高売り上げだったりする。 売り上げでいうと、この年がピークだったり。 ま:なるほど。ライトユーザーの組み込みは一応成功したわけですね、ポップな三枚によって。 T:まあ、ミスチルとか小室に弾き飛ばされることはなかった、と。ここでも席はきちんと確保したぞと、そういうことかなと。 ま:まぁ稲葉さんは、もともとそういうところで勝負していませんからっっ。 T:そ、そうなの。 ま:稲葉ワールドは不可侵なわけですよ、J-POP界においては。 T:ははは。外の干渉は受けないわけだ。 ま:何者にも侵略されることがない聖域なわけですよ。聖域と書いてサンクチュアリなわけですよ。 T:なんかなあ。 ま:まあでも、やっぱりB'zってのは、替わりのアーティストがいない限り路線として生き残るだろうし。 T:でしょうね。実際残っているわけだし。 ま:それこそサザンとかと同じ枠というか。 T:もう席をどっかり確保してしまっているという。そこは揺るぎません、と。 ま:乙女なマインドを持ちつつ、どこか斜め上な稲葉である限り不滅ですよ、B'zは。 T:それはもう狙ってやれるものではないですからね、稲葉イズムは。 ま:ま、あとは老いが問題、というくらいで。二人ともなんかもうしわしわだし、近頃。 T:ははははははは。 ま:そこはちょっとやばいか?というそれはある。 T:松本先生ももうねぇ、おじいちゃんオーラを醸しているし。 ま:松本さんは、もうフォローする気もねぇな、という。 T:ははは。まあ、稲葉さんにはいつまでも腰をクネクネしてですね、熱唱していただきたい所存です。 ■OLカラオケご用達?大黒摩季 T:で、次。93〜94年はそれはもう寡占に近かった勢いのビーイングなんですが。 ま:そろそろしぼんできました。 T:この年は、ミスチルとか小室とかいろいろに押されて、年間チャートでは全体的に下のほうに追いやられています。 まあ、でも売れてることは売れている、まだ。 ま:でも大黒摩季とZARDくらいかな、本当に上位に食い込むのは。 T:一応、FIELD OF VIEWとか新人も出てきてはいる。 ま:あー、いたいた。ポカリスウェット。 T:♪とーつーぜーん きみからーのてがーみ、ですよ。 ま:でもまぁ、正味の話彼らはどーでもよさげというか、ってそれをいったらビーイングを語る意味ないわけだが。 T:まあ、元も子もないですな。 ま:どーでもいいからビーイングなんじゃないかと。って、長戸先生に怒られる。 T:この徹底した中庸さこそ美徳であって、存在意義であって。それがビーイングだよと。 ま:でもさ、その中で、なんで大黒摩季とZARDはしばらく残ったんだろうね。 T:えー、大黒摩季はやっぱり、F1層?かなという。 ま:やっぱそれ?OLの本音ぶちまけちゃう、という。 T:OLのフラストレーションをパワフルに歌い上げてくれるという。っていうか、大黒摩季の歌詞は結構凄いですよ。 ま:「夏が来る」とか? T:とか、「あなただけ見つめてる」だっけ、あれとか。ぶっちゃけまくり、という。 ま:なんかヒモっぽい男に貢いじゃってます、みたいなそんな歌だっけ? T:なんか、駄目男に尽くしまくってる様を歌いながら糾弾するんですよ。誉め殺しというか。 ま:だめんずうぉーかーだ。歌うだめんずうぉーかー大黒摩季。 T:で、もうすぐ30なのに貰い手がいないわ、なんつってどういう歌だよっていう。 ま:で、ちょうど声質も明菜とか静香とか、あのへんのカラオケ需要に被っている感じで。 よくよく見てみると「商品」として、優れているよね。 T:あとは、ま、久宝留理子とか、「強い女」枠というか。 ま:ま、久宝留理子はその路線は天然っぽい感じで、ゆえに失速したって感じなのかな。なんか容姿も幼いしさ。 T:ていうか徹底してなかったしね、久宝さんは。「男」一曲限定という感じだったし。 ま:まぁね。「早くしてよ」とかちょっと可愛くなっちゃったし。 T:無理しているな、とわかってしまう。まあ、大黒摩季を女性にカラオケで歌われると非常にこう、 変な汗をかくなというのはあります。 ま:はははは。 T:なんか、自分が糾弾されているような、そんな感じが。 ま:やっぱ彼女の生き残りのキーワードも、カラオケなんですね。 T:まあ、男のファンとかも周りにいたし、わかりませんけどね。 ま:いたねーー。 T:いたよねえ。すごい好きなやついたよ、男の友達で。 ま:大黒に何を求めていたのだろーか・・・。 T:叱られたかったんだよ。 ま:はははは。ダメ男になって大黒に糾弾されつつ、おひも生活を楽しみたかったんだきっと。 T:つまりMだった、ってまたファンに怒られるな(笑)。 ま:ま、でも今の大黒さんは声がもうなんだかすんごいことになっていたし、それどころでなくなっていますが。 T:あーー、声ガラッガラですよね。なんで?ちょっとびっくりした。 ま:ダメ男に尽くし過ぎて、水商売に染まりすぎて、酒やけでガラガラになったという、そんな声ですよね。 T:はははは。そういう設定で。 ま:ねえ、ほんとに。男か?という。ここは魚河岸か?という。 T:ははははは。コップ片手にテーブルに突っ伏していそうだ。 ま:でもまぁ、彼女の場合、もともと喉に負担をかけるような歌い方だったし。喉声って言うの? T:ハイトーンだったからなあ。もう迫力で押す、という。 ま:声帯を力ませて歌っている、という。だから仕方ないのかなーーと思うが。 T:まあ、頑張っていただきたい。 ま:とはいえ、ビーイング離脱直後にそれがばれるあたり、ビーイングのイメージ管理ってすげぇな、と思う次第です。 T:ははははは!それは確かにすごい。変に感心する。 ■ビーイングに反旗を翻したWANDS T:で、この年はほかにもZARDとかDEENとかまあ、前年に引き続き堅実に売っておりますと。 ただちょっと、その中でWANDSがひねくれたりしているんだけど。 ま:不協和音が…。B'zのハンパな物真似で終わるわけにはいかない、という。 T:上杉さんとギターの柴崎さんが反抗期に突入してしまったみたいで、ちょっと"いかにもビーイング"な曲から はみ出した曲を出すんですけども。 ま:WANDSはちょっと可哀相な感じがあるよね。ビーイングの中で一番悲劇的とゆーか、良くも悪くも象徴している。全てにおいて。 T:まあ、その後の上杉と柴崎のユニットの曲聴いたら、もうぜーーんぜんWANDS関係ないっすからね。 これほど自分を押し殺していたのか、と。 ま:al.ni.coだっけ。 T:そうそう。 ま:そんな違うんだ。俺チェックしていない。 T:や、もうグランジだし。 ま:ほえーーー。 T:ノイジーなギターがぐわぐわぐわと。で、上杉絶叫という。もう全く関係ない、WANDS。 ま:で、一方その頃、名前だけのWANDSは錆びついたマシンガンで今を打ち抜いているわけだ。 T:そうです(笑)。まあ、全然打ち抜いてないわけだけども。 ま:ははは。 T:なんかオリジナルメンバー一人もいないって、おかしな存在になってしまっているわけだけども。 ただよくあんな上杉そっくりなボーカルを見つけてきたなと、それは感心しましたけど。 ま:恐ろしいよね、ビーイング。 T:得体が知れない組織ですよ。秘密結社ですよもはや。 ま:いったいどういう組織なの?という。闇を抱えていますよ。 T:まあ、そんな反抗期のWANDSさんですが、この年の「Secret Night」とか、 次の年の「Same Side」「WORST CRIME」とか、非常にかっこいいです。でもセールスはもう、 93年が嘘のようなことになっていきます、という。 ま:つーかその辺記憶にない。ぶっちゃけ「世界が終わるまでは」までしか知らん。 T:まあ、あからさまにフェードアウトしていったからね。という感じで、まあ、絶対的な勢いは失っていく 秘密結社ビーイングでした、と。 ■ZARDはビーイングの最高傑作 ま:まぁでも、ビーイングのプロデュース方法ってのは限界があるものだと思うよ。正味の話。 こうなるのも仕方のないことなのでは、と。 T:ある意味全てを虚構で作り上げて、っていう感じだもんねえ。続ければ続けるほどボロが出るというか、破綻するよそれは。 ま:それこそ砂上の楼閣みたいなもので。理念としては成立するかもしれないけれども、 じゃその理念どおり事が動くかというと、そこまで人間機械的になれないもので。 社会主義が成立しないのと同じでさ。カオスでわけわらん部分がないとやっぱり持たない。 T:ねえ。だからまあ、ZARDはすげえ。むしろレアケースですよ。 ま:ZARDはだから、あれはアイドル声優と同じイコンだから、完全に。 T:その枠ですよね。声優というのも売り上げは少ないにせよ、手堅くて根強いし。 ま:聞き手が自分の欲望をひたすら注ぎこむための器というか、そんなからっぽの器なんですよ。 まあ、男ってのはそういう生き物だからさ。そういうのがやめられない人が全国に数十万人いるっていうのは、 別に不思議でないかな、と。ただ坂井泉水がどこまで楽曲制作に関わっているの?となると、かなり怪しく思うが。 T:まあねえ。全く謎だよね。 ま:アイドルのようなプロジェクトチームでないと成立しないように思える世界だし。 T:ってういか、坂井さんいまいくつなの?とか全くわからんし。 ま:だからこそイコン、という。 T:やっぱりビーイング恐ろしい。ZARDのジャケ写とか見てると妙に感心するもんな。 ま:存在はしているけれども、存在感はないんだよね。 T:これほどこう、実質をベールで覆ってふわっとしたイメージだけを打ち出すことができるのか、と。 ま:「こうである」というメッセージが写真からも全くないんだよね。 T:ほんとに(笑)。あれはある意味すごいです。ZARDのジャケ写。 ま:ま、だからこそ聞き手は好きなタイプの女に重ね合わせることができるわけで。ま、ZARDはビーイングの最高傑作ですよね。 倉木みたいに馬脚を現さない。 T:っていうか、ZARDこそがビーイングだ、というところまで行っているかなと。 ■Jラップが市民権を得た今こそ、「DA.YO.NE」を再考する ま:で、あとは、「DA.YO.NE」(年間33位/91.2万枚)は触れないとまずくない? T:これは避けて通れないというか、まあ、ドラゴンアッシュとかキックザカンクルーとかリップスライムとかですね、 聴いて育った人には信じられないでしょうけども。日本のラップがメジャーになった最初は、こんなのです、と。 ま:「おら東京さ行ぐだ」でなく? T:ははははは。 ま:「ないものねだりのI want you」でもなく? T:まあ、脈々とはあったんですけどね、もちろん。ただこの時期、「DA.YO.NE」のほかに、 SMAPの「HEY HEY おおきに毎度あり」とか、富樫先生のボンバヘとか、オザケンの「今夜はブギーバック」とか。 同時多発的にヒットが出たんですよね。 ま:だからそれこそトシちゃんの「It'sBAD」とか、「ないものねだり〜」とか、あのあたりが80年代半ばにまずあって。 その次の日本ラップがここなわけですよ。 T:ま、YMOとかもやってるし、曲のギミックとしてラップ、みたいな手法も脈々とあったんですけど。 90年代に入っても電グルとかスチャダラとかやってましたし。ただ、ラップがメインなものが、 お茶の間に、というのは・・・お茶の間にラップ、というのは、やっぱりここのムーブメントかなと。 ま:その中でミリオンを飛ばしたEAST ENDは偉大だ、と。 T:まあ、でもこのムーブメントは一体なんだったんでしょう。これからはラップだぜ!みたいな感じだったのだろうか。 ま:さ、さぁ……。 T:で、それが「DA.YO.NE」であり「HEY HEYおおきに毎度あり」であり「ボンバヘ」であるというのは、 なんとも、という感じなのではありますが。 ま:でも、どうだろ。近田春夫センセーが言っていたと思うけれども 、「いまだに日本ラップ界は「DA.YO.NE」越えはしていない」と。私もそう思うんだよね。 T:ほへぇ。それはどういう意味で? ま:日本語が持つ本来のリズムと、ラップとを融合させているわけじゃん、「DA.YO.NE」は。その辺今のラップって、 日本語をただ破壊して、念仏みたいになるわけで。大衆性ってのは低いと思うんだよね。 きちんと他者に向けて「わかる作品」になっていないというか。 T:「♪あがってんのー さがってんのー」とかも駄目か。 ま:あぁー。でも意味がないじゃん。 T:まあ、意味より語感みたいなのは多いですね。韻を踏むために歌詞が意味わからなくなっている、とか。 ま:まぁ、それでもいいんだけれども。日本語にも語呂合わせとか韻を踏んで遊んだりとかそういうのは和歌にもいっぱいあるし。 落語とかもそうだし。ただ、今のラップはそれが洗練されていないかな、と。 T:それが見事に結実しているのが「DA.YO.NE」だと。 ま:まあ、見事というわけではないけれども、ミリオン売って派生作品を生んだパワーはあるな、 広く受け入れられる大衆性はあるな、と。 T:まあ、「だよねー だよねー」のリフレインは強烈でしたけども。サブリミナルのように。 ま:って、TSUKASAさんは「DA.YO.NE」否定派? T:えっ、いや否定はしないですけども。これを越えるものはない、と言われると答えに窮する。 キックとかリップとかは割とそのへん、出来ていると思うんですけどねぇ。 ま:まぁ近田センセーが言ったことだから。しかも昔だと思うし。 T:まあでも、ちゃんと口づさめるラップである、というのは新鮮だったなと思いますけども。 ま:まぁ、ラップって日本化していくと河内音頭になるからさ、結局。 T:ああー、そうかも。 ま:そこを河内音頭にさせずにあくまでラップとして日本人向けに、という。 かっこよくラップをやりたい、というそのジレンマはあるんでないかな。そこを河内音頭でいいじゃん、 って突っ切ったほうがいいものが出てくるんじゃ、という感じは私はします。「DA.YO.NE」」とか、やっぱ突っ切ってる方向だし。 T:まあね。ともあれ、実は「DA.YO.NE」から10年経ったという。そう考えると結構なとこまで来たなあと思いますけども。 ここまでチャートにラップが溢れるなんて思ってなかったし。 ま:まぁそこまで一般的なものとは思わなかったし、っていうか今でも思ってないし、私は。 T:ある世代以上に訴えるものではないしなー。 ま:そこを越えようとすると河内化するしかないわけで。 T:だから、ラップの曲で「世界に一つだけの花」みたいな存在の曲が出来たらすごいけど、まず考えられない。 ま:それが課題だっつうことなんでないかしら。近田さんが言うとるのは。 T:ああ、なるほどね。それなら話がわかります。「DA.YO.NE」は結構、おじちゃんおばちゃんでも口づさみそうだもんな。 ま:そうそう。 T:そういうことね。やっと腑に落ちた(笑)。 ま:って、今になってやっと言ってること分かったのかいな。 T:ははは。なんか話が交錯しねーなーという(笑)。 ま:や、そっちのヒップホップ系っていうのはほんと一定のユーザーで自足していて、メガヒットってないからさ。 それは、いいのか、悪いのか、っていったらあんまりいいことではないと思うのよね、私も。未来がないとゆーか。 T:なるほどね。そういう意味では確かに「DA.YO.NE」にあってほかにない可能性というのは、わかる。 ま:だからラッパーの人は、「DA.YO.NE」を振り返って考察する意味もまだあるよ、と。 T:目指せ「DA.YO.NE」と。ラップで年間1位を獲れ、と。 ま:そのために必要なのは「DA.YO.NE」のDNAだと。 T:だから「マルシエ」とか結構いいとこ行ってたんだね、今思うと。あれは飲み会の歌だし。 まあ、何回も使えないんだけども、ああいうネタは。 ま:あーー、そうね。まぁ、でも河内音頭なんかは"新聞読み"なんてネタもあるようで、ってゆーかそもそも河内って"音源かわら版"みたいな、時事ネタから始まったものなので、 だから撮って出しみたいなところが和モノラップの本質なのかもな、と。 T:なるほど。 ま:だから何回も聴ける、という耐性よりも、鮮度とシズル感で攻めていく方がいいのかも。だからキックもがんがん出しまくれ、と。 T:打つべし打つべし、と。 ■オザケン王子、人気爆発 T:あと、えっと、さっき「今夜はブギーバック」の話がちらっと出ましたけども、この年といえばオザケンが人気爆発してたなと。 ま:もう「カローラU」に勝手に乗ってろ(「カローラUにのって」/年間42位/82.1万枚)と。 T:ははははは。 ま:や、俺にはオザケンの魅力、わからないからさ。小山田ならまだわかるが。オザケンって、いいー?と。 T:オザケンを好きになる女性の層がいるというのはわかるでしょ。王子様萌え、という。 ま:オサレ小僧でないからさ、俺。サブカルっ娘でしょ、オザケン好きは。 T:や、サブカルともまた・・・。 ま:ちがうん? T:ジャニ好きの変種というか、まあ。 ま:ええええええ。そうなん。 T:えー、あの時の人気爆発っぷりっていうのはそういうのではと。 音楽は別にしてですよ?こう、ムキムキっとしたマッチョな男性像ではなくて・・・ ま:ひょろっとして頼りなくって、でも高学歴みたいな。 T:そうそう。本人も王子様キャラ貫き通していたし。 ま:どーでもいいわーーー。 T:ははははは。 ま:そんなキャラ、史上最悪につまらん。 T:ははははははは。 ま:僕の仔猫ちゃんと一生言っとれ、と。 T:え、でもそういう層がいるのはいるでしょ。 ま:てゆーーーかーーーー。まぁーーーーいるだろーーーけどーーーー。 T:ははは。 ま:どーーーでもいーーーーいーーーーわーーー。 T:え、急に荒れだしたんですけど、まこりんさん(笑)。なんでそこまで憎悪を燃やす? ま:や、なんか、そういう享受のされかたなん?と。 T:えーーそうでしょ。CMで天使の羽とか生えていたしさー。森永ダースのCF。 ま:もっとピチカートファイブとか、そのあたりと同じ箱だと思っていた。 T:いや、音楽ファン的にはそうなんだけど。この年の人気というのは、それ以外の層も巻き込んでいたでしょ。 渋谷系ファンだけで50万とか売れないし。 ま:じゃ、サブカル渋谷系王子様、ということで。お洒落で頭良くっていい家柄なんて素敵、って。 T:ま、この年のキャラ設定にも飽きたのか、すぐに心変わりして、隠居決め込んでしまうオザケン様ですが。 ま:てゆーーーかーーー、こんな設定で寄って来る奴にろくな奴いねーーよ。そりゃ隠居するよ。初手から間違いだ。 T:いやなんでだから荒れてるの(笑)。 ま:あ、じゃ、おとなしくなります。 T:や、この年は自ら嬉々としてやってましたけどね、小沢くん。分裂気質なのかもしれん。 この後いきなりジャズとかに行って、んでその後はアメリカ行ってしまうし。王子様萌えで惚れたファンには辛いだろうなあ、と。 ま:まぁ、よーわからん、ぶっちゃけ。オザケンは全てがちょっと自己韜晦気味でさ。天然でないから面白がれないしさ。 T:あーーーまあねえ。全部計算済みだぜ、へへへ、という、そういうのはあるかも。 ま:それの頭でっかちな部分が自分を苦しめていくようになるわけで。で、結果が隠居じゃどうもこうもならんわい。 T:えーでも、小沢くんの場合は、苦悩して隠居って感じでもないような。ただ、こう、売れるのも飽きたし、みたいな。 キャーキャー言われてテレビ出るのももう飽きたし、アメリカ行こう、っていう。 ま:や、まあ、でも小沢君なりには悩んでいると思うよ、って私は勝手に思うけれども。 T:そうかなあ。 ま:素直に悩んでますって顔しないだけで。 T:でも、それはここで嬉々として王子様になった自分が悪いですよー。いきなりなんか躁になったもの。 前年までと全然ちゃうやん、という。 ま:ずいぶんひどい言い草だ。ここにあるのはルサンチマンだけだ。 T:はははは。えー、そういう結論かい。 ま:でも自己演出法を間違えると後々面倒ですよ、という例としては彼がいますよ、というのはあるかな、と。 T:まあ、オザケンが王子様になって輝いていたよと。95年の風景としてね。 アルバム編へ続く |