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秀才時代の思い出


小学生の頃の夢を見た。
寝覚めが非常に不愉快だったので、ちょっとその頃の話をしようと思う。

私の小学生時代、それは私の秀才時代でもある。
学年トップの秀才、クラスメートや教師達のあいだでも一目置かれている存在。
そんな一昔前の漫画ような秀才がその頃の私だったのであるが、それを自慢したいから今これを書いているわけではない。
(だいたいそんなものはなんの自慢にもならない)
その頃の自分はとても醜悪な存在であった。
多分あの頃の私がいたら、ぶん殴っているだろう。
もちろん殴られた彼は理由などわからないであろうが。
今でも自分のことをすばらしい人間だなんてなにも思っちゃいないが、特にこの頃の自分を思い出すと今でも思わず叫びたくなるほどあの頃の私は醜く恥ずかしい。
つまりこれからの文章は、あの頃へのちょっとした懺悔と謝罪だ。


小3の三学期だと思う。
何を思ったのか母が中学受験向けの進学塾に私を入塾させたのが全てのきっかけだろう。
主要4科目の成績が一気に上昇した。
まぁ、もともとそんなに悪い成績ではなかったのだが(確か通知表で社会、理科が5、国、算は4か3って感じだった)、それが一気にオール5に変貌。
各項目の評価も全て「よく理解できている」になった。
中学受験というものをちょっとでも知っている人ならわかる話だが、中受という存在そのものが首都圏・関西圏特有のものなので一応蛇足で書くが、中学受験での出題範囲というのは(なぜか)小学校での履修範囲にまったく準拠していない。
例えば算数で言えば方程式に類する問題をグラフや図形に変換して(流水算とかニュートン算とか過不足算とかそれぞれ名がある)方程式を用いずに解かなくてはならない。
また、理科、社会などのそれぞれの分野の暗記内容も中学校での基本レベルあたりは必須であったりする。
学習のレベルがまったく違うのだ。
これでまともに中受の勉強を普通にこなしていて、小学校での成績がダントツにならないほうがおかしい。
時はバブル前夜、ちょうど中受ブームの頂点の頃だったが(今のように低偏差値の新設の私立が乱立したり、二番手校が受験日を増やしたりする以前だった)埼玉のしかも田舎というのもあったので中受のための勉強をしている子供はほとんどいなかった。
(確かその学校で私の学年に私立に流れたのは私を含めてたった3人だったと思う。ひとりは私と同じ塾に通った友人だったが。ま、受験した子はもっといたようだった)
というわけで私はその学校でたったひとりダントツでブっちぎっていたのだ。

で、そんな私はどうなったかというと、調子に乗った。
もともと学校というのは成績優秀者にとってはパラダイスになるように出来ている場所である。
特に各々の自我が目覚める前の小学生の頃なんてのはなおさら。
勉強が出来る、ただ、それだけで周囲のほとんどの人間から尊敬される、それを見事に当時の私は悪用していた。

成績がよくなると、まず、周りに寄ってくる人間の質がよくなった。
他人のゲームや漫画をギッたりするような達の悪い人間が安易に近づいてこなくなる。
でもっての真面目なかつ、裕福そうな家の子が友達に増える。
というより、親のほうが私との友達づきあいを暗に奨めるような気風すら漂ってくるのだ。
外で遊んでいるあまり成績に頓着しないクラスメートは最初敬して遠ざけるような気配も出てくるが、適当にテレビの話題とかをネタにフランクに話し掛けたり、グループ学習で教えたりすれば、結構簡単にこちらの手のひらにに乗っかってくる。相手は単純な子供だしね。

結果、クラス内のぼぼ全員の人心を掌握した(つもりになっていた)。
当時、クラスメートのほぼ全員と友達感覚になっていた。
友達というか、手駒のように見ていた。
そこには「友情」だとかいうような割りないものが希薄で、ただ学校で自分が快適に暮せるための手駒程度にしか見ていなかった。
相手との付き合い方はこっちのさじ加減ひとつと思い込んでいたし、相手が何を考え、どう思っているかなど私にとってさして意味がないものと掃き棄てていた。
だから、自分の思ったことを言って、自分のしたいと思って、それで悪びれもせずいたと思う。
外的世界も内的世界の延長で、どこまでも自分は果てしなく、なにも問題ない。そう思い込んでいた。
そこから生まれるのはある種の無邪気な悪意と万能感である。

強烈に覚えていることがある。
今でも友人づきあいを続けている同じ塾に通ったKクンのに関すること。
彼とは塾以外でもよく彼の家に行って一緒に勉強をしていた。
同じテキストを買って同じ問題を解いて教えあったりなどしていた。
とここまでは微笑ましい話なのだが、で、小六の二月。
結果、彼は第一志望を合格した。
その報告を電話で初めて聞いた時、私が一番最初に心に思ったのは「おめでとう」でも「よかったね」でもなく、なんと「珍しいこともあるもんだ」だったのだ。
もちろんその言葉は口には出さなかったが、一緒に努力をしておきながらなんて冷たい嫌な奴だと我ながら呆れる。
これが過去の自分であったと思いたくない。
確かに彼は受験体制に入るのも遅かったし、模擬の偏差値と比べるとかなり難しいものであったのは事実だ。
そういった事実から「めずらしいこと……」というのもわかるが、それよりも努力した時間を共有した片割れが成功したことを喜ぶという当たり前の心の動きがないはなぜよ。
ああ、もう、子供って自分のことしか考えていないんだもん、って俺だけか……。
ということでKクン、ごめん。
万時において友人のことをその程度に思っていたのよ、当時の自分。


一方、教師や他の親などの大人の信任も底なしにアップした。
何をやっても「○○くんの言うことなら間違いない」で通る。
例えば私の落度で相手を不愉快にさせ喧嘩になったとする、で、そこで教師が出てくるとする。相手がそのまんまの言い分をする。私が涙交じりの愁訴で嘘をついて相手が悪いといったとする。
と、完全に相手が悪いことになったりするのだ。
これは成績のほかにも私が異様に大人に対する媚び方が上手かったというのもあったと思う。
成績が上がり、学校での授業がまったく意味ないものとなっていても一応教師を立てていたし、それに子供が実の親に見せるようなあざとい媚び方を私は教師を前に見せていたのだから、これで贔屓しない教師の方が珍しいという感じだった。
よって、およそ勉強とは関係ない「音楽」や「家庭科」、「美術」の成績もあがり、絵画展や硬筆・毛筆展、読書感想文などもさして良くもないのに優秀作に引っ掛るようになった。
さすがに最優秀には一度もならなかったが、ただわたしの作品であるというだけで教師は評価を嵩上げさせた。
(ちなみに体育は成績は変わらなかった。
というのも運動神経からきし無しで体育が大嫌いだった私はことあるごとに病弱のフリをして体育の授業を休んでいたから、というか親と教師をだまくらかして、学校自体も休みまくっていたな、そういえば)
もちろん、贔屓をしているという声も外野ではあるらしかったが、結局私のところまで直接届くこともなかったし、例え届いたとしても「贔屓されるほど親しくなってみろ」と思っていたが。

もちろん、教師は大人だけあってそんな私をあざとく利用していていたのだが……。
何故かいつ席替えしても私いる班には必ずLD気味の子、児童施設からきている子、鉄板ヤンキー予備軍みたいな子が必ずひとりいた。
つまりはいいように世話係やらされていたのだ。
授業中、さっさと課題クリアして暇な時間とかはよく教えてた。
教えるのは優越感味わえるので嫌いじゃなかったし、相手も不思議と嫌がらずよく聞いてきたので上手く噛み合っていた。
だが、今振り返ると「どうよ、これ」と思ったりする。

と、まあ、こんな感じにブイブイいわせいてた。
ま、それに気づき、咎める人もいなかった。
子供ってのはどこまでも増長するもんだし、かつ私のように表では大人に媚びてしおらしくできるような狡猾なタイプはなかなか尻尾を出さないしね。
と、調子に乗っていた小学生時代を過ぎ、私立中学に行く。
もちろん、当たり前のようにそこで「頭がよくっていけている自分」という幻想は見事打ち砕かれる。
そりゃそうだ、高偏差値校というのは、優秀な子が集まる場所なんだから、みんなが勉強はそこそこ出来る。
そこはハイ・レベルの中で争いなんだから、「頭がよい自分」なんてセルフ・イメージが持続できるわけがない。
と、ここで、私は初めて上には上がいるという事実を知り、さらに自分の弱みを知ることで相手を思いやるようになり、人間として成長する(したよね??)。

と、このように醜悪な心根の子供時代から私は卒業したのだが、ただ、ここで書かれている自分は今の自分から見た内面外面含めた過去の自分であるから、もしかしたらずいぶん誇張し、露悪的であるのかもしれない。
だから、あの頃に出会った人に私がどう映っていたのだろう、とふと思う時がある。
あの時ついていたさまざまな嘘は当時は全て上手く通ったと思っていたが、もしかしたら全て見ぬかれていたのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
人を思いやらない傍若無人な子供だと断じた過去の自分はもしかしたら相手にはそうとも映らなかったのかもしれないし、そのままだったのかもしれない。
だからもし、あの頃私とであった人々にまた会うことが出来るなら「あの頃はわがままでごめん」そう、謝ってみたい。
相手はその言葉に驚くかもしれないし、うなづくかもしれない。
私はその反応が見たいのだ。


2003.08.06


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