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メイン・インデックス歌謡曲の砦>「年間チャート回顧」 ―1991― その2 アルバム編 (1)


「年間チャート回顧」 ―1991― その2

アルバム編 (1)
シングル編
アルバム編 (2)



 <1991年 アルバムチャート>


 売上(万枚) タイトル  アーティスト
1197.5天国のドア松任谷由実
2172.5TREECHAGE&ASKA
3138.9MARSB'z
4137.2PRINCESS PRINCESSPRINCESS PRINCESS
5123.2Oh ! Yeah小田和正
6103.4SCENE 2ASKA
794.8LINDBERG 4LINDBERG
890.7K2C米米CLUB
986.9NEUTRAL杏里
1086.8Lucky渡辺美里
1186.8RISKYB'z
1285.2MILLION KISSESDreams Come True
1382.8Jealousy
1477.6Pocket永井真理子
1575.8Lluvia今井美樹
1672.0WONDER3Dreams Come True
1771.3Edge of The Knife浜田省吾
1870.1ARTISAN山下達郎
1966.6野球選手が夢だったKAN
2064.6Higher Self氷室京介



■バブルの終焉とその後の90年代―ユーミン「天国のドア」

まこりん(以下「M」):それではアルバム編にいきましょう。年間第1位は、ユーミンの「天国のドア」です。
TSUKASA(以下「T」):出ました!という感じで。
M:パチパチパチ。3年連続―――
T:年間1位ですね。
M:この年もまたまたトップを取ってしまったユーミンさんです。
T:無敵モードです。
M:えーーっと、またまた早速売上の話からで恐縮なんですが・・・
T:日本で初めて200万枚売れたアルバムなのかな?
M:えーーと、オリコンでは200万いっていない。翌年ランクインしていないから。
T:そうなんだよね。
M:ただ、このアルバムの数字は当時の新記録ではあるのね。それまでの記録が寺尾聰「リフレクションズ」164.6万枚で、 その次がマイケルジャクソン「スリラー」の161.6万枚。
T:で、前年のユーミン「LOVE WARS」が161.2万枚でその記録に迫り、ついにこの年新記録、と。
M:ついにここで記録を塗り替えた、と。
T:イケイケモードの頂点ですよね。ユーミンのアルバムリリースが年末の一大行事という感じだった。
M:オリジナルアルバムの数字もここで頂点ですね。その後94年の「THE DANCING SUN」がミリオンシングルを2枚突っ込んで、 200万枚を越えるけれども、実質的なブームの山はここって感じですね。
T:このアルバムはシングル入ってないですからね。シングル入ってなくて200万枚売るアルバムってもう現れないでしょう。
M:うん、それがユーミンスタイルだから。当時のネ。
T:当時全然シングル切ってないからね。「ANNIVERSARY」とかヒットしたけど、おまけみたいなもんで。
M:ただこのアルバムは、TBSのソユーズ打ち上げプロジェクトとタイアップを組んだアルバムだから。
T:「SAVE OUR SHIP」だっけ、テーマ曲。
M:半分くらいはソ連のロケット打ち上げを見て作った曲だったかな。「Aはここにある」とかもそうだったと。
T:だから全体のイメージがなんとなく宇宙っぽいですよね。
M:そうそう。だから、まぁシングル無しでこの数字ってのも確かに凄いけれども、本人の力だけではないということはちょっと言っとかないといけない。
T:発売時の宣伝凄かったしねぇ。絨毯爆撃のような。
M:うん。アルバムの作りもスペイシーで、ジャーナリスティックで、スピリチュアルで、という作りで、非常にアップトゥデートな感じがある。
T:だから、このアルバムはファンの間でも評価分かれるみたいですね。
M:そうなん?
T:嫌いな人は嫌いみたいよ。時代に迎合しすぎる、みたいな。
M:確かに「バブルと、その後」というアルバムではあるよね。時代の狂騒を捉えつつ、その先の闇も見据えつつ、という。
T:改めて聴き返すとそんなにバブリーな感じないんですけど、個人的には。むしろ脱バブルかなと。
M:わたしは「91年」という時代のアルバムだなぁという感じは受けるなぁ。
T:どのへんが?
M:ちょうど端境に立っているという。なんか、こう、ちょうど境目に立っていて、両方を見ているという感じ。
T:ああ、バブルも傾いてきて冷戦も終わって、さて、こっからは、みたいな。
M:バブルと、その先の90年代という。
T:これと次の「DAWN PURPLE」は、売れ方とは逆に内省的な感じを受けます。足元を見つめなおすというか、外面でなく内面を見つめてみるというか。
M:なんかこう、ズレが出てくるんだよね。世間がユーミンに求めているものと、自分が進もうとしている方向に。
T:「恋愛のバイブル」的なものではなくなっていきますよね、このアルバムから。
M:うん。ただ、この「天国のドア」に関しては、危なっかしいアルバムだよなぁ、というのがわたしの正直な意見。
T:危なっかしいかー。私なんかもう隙のないアルバムだなぁと思うんですけど。
M:当時のユーミンのインタビューとかも見ていると、精神系な発言が目立つし。
T:ああ 精神に向かってはいるよね明らかに。
M:オカルトっぽいっついうかさ、オウムを育てたニューエイジ的ないかがわしいムーブメントに片足突っ込んでいるぞという。
T:悟り系に向かっているかも。次の「DAWN PURPLE」なんか、ジャケットが完全にそっちだよね(笑)。
M:旦那まで(「天国のドア」のレコーディングの時に)「僕は神を見た」とか言い出すしさぁ。
T:はははは、マンタさん、見えちゃったか。見えてはいけないものが。
M:「時代の巫女」って感じで。1曲目(「Miss BROADCAST」)とかも言い得ているんだけれども、ちょっと怖いよという。
T:ああ、ああ。巫女的なイメージあるね、このアルバム。「時はかげろう」とか、このアルバムのツアーのビデオでも歌っているけど、すごいことになっている。
M:なんか預言者の様になっている。
T:卑弥呼様みたいになっている。あれ見たときになんだかすごいところに行っているなあと思った(笑)。人間じゃなくなっている、という。
M:ははは。だから以前のようなシンプルな良さというものはもうここにはないわけで。非常に作りこんでいて―。
T:隙が全くないという。
M:そしてあやしーーーいオーラを出している。
T:それでまたユーミンの声って宇宙人的だから、ハマってしまっているのよねぇ。
M:ねぇ。特にこの時期って、金属的なボーカルを意識して取っているし。
T:「SAVE OUR SHIP」とかさぁ、歌っていうよりまさにモールス信号みたいな声じゃないですか。
M:はははは。まあ、ねぇ。
T:そこに嵌まったりしたんですけど。似合うことは似合うでしょ、SFっぽい世界。
M:うん、そういうミスティクなものってのは彼女の持ち味だから。このアルバムは「REINCARNATION」とか「VOYAGER」とか、その辺のアルバムの系譜でもあるしね。
T:そうそう。ユーミンの声だからいいんだ、みたいなのはある、こういう系譜は。
M:や、でも好きよ、わたし。宇宙人のユーミン。
T:「不思議な体験」とかかなり好き。
M:プロモも笑えるしね。宇宙船に連れ去られるユーミン。
T:「不思議な体験」のプロモ?「コンパートメント」に入っている?
M:うん、入っているよ。
T:あーそれ未見なのよ実は。ファン失格だな。
M:あ、ないんか。見とけ。面白いよ。
T:宇宙に拉致されるわけですか。
M:そんな感じ。導かれるの。
T:トンデモ入ってますね。過剰なユーミンという。
M:それがユーミンよ。このアルバムのキラー楽曲の「満月のフォーチュン」とかも、ただの恋の瞬間の歌なのに、 「あなたがあなたでなく わたしがわたしでなく」とか非常にあやしーーい描写に、ユーミンキターーと思ってしまうんだけれども―。
T:はははは。でもちょっと電波かな、という。
M:ね。
T:「Glory Birdland」とかも、なんかオカルト入っているし。
M:ちょっとオリエンタリズムも入っていたりと、妙に神秘主義。
T:あと辺境趣味とかもあったりするしねぇ、ユーミン。アフリカとか中央アジアとかあのへん。
M:ね、秘境とかそういう、密教世界的というか呪術的なものにぐっとくるみたいだよね、ユーミン。
T:だんだんこう恋愛とか日本ということからはみ出していきますね。
M:そこがね、危なっかしいのよ。オウムってのはそういう80年代の歪んだ神秘主義の馴れの果てだからさぁ。オカルティーな方向に突き進むのはちょっとなぁと思ったりする。
T:「砂の惑星」とかもうモロに呪術の儀式みたいな曲だしね(笑)。とんでもないところ行ってしまうという、このアルバムはその1歩かもしれないですね。 前のアルバムが「LOVE WARS」で、そこで「恋愛のユーミン」というのを一区切りという感じもするかな。
M:確かにこのアルバムから一区切りって感じなんですが。
T:複雑ではあると。
M:うーーん、そこがねぇ。もっとシンプルな人でいて欲しかったなぁと。オカルトユーミンも好きなんだけれどもね。
T:自分は非人間的なところにもグッときてしまうので、このアルバムも大好きなんですけどね。確か初めて買ったユーミンのアルバムでもある。 んで「何だこの声すげぇえぇ」って。
M:なんつう入りこみ方よ。
T:なんか気持ち悪めなところに嵌まってしまったという。まあ、最初にこれで嵌まってしまったというのが、幸なのか不幸なのか・・・。
M:それはわからんね。
T:まあその後荒井由実聴いて、またやられるわけですけどもね。・・・でも「残暑」でちょっとほっとしません?このアルバム。
M:アレだけ昔に書いたものなのよ。
T:提供曲なんだよね。
M:ナンシー・ウィルソンにあげたもので、麗美が日本語で歌っている。箸休めになっているよね、この曲は。
T:この曲だけちょっと「あ、人間だ」という。まあしかし、この隙のなさと過剰さは、当時のユーミンの無敵の勢いが顕れているなあと。
M:日本のそれまでとその後でもあり、ユーミンのそれまでとその後でもあり。本当に分水嶺のアルバムだなぁと思いますよ。
T:象徴的なアルバムではありますね。
M:完成度も、まぁマンタが神を見たのもわかるなという。
T:聴いて損はないんではないかなと。
M:ただちょっと売上的な話に話を戻すと、「ユーミン絶対時代」から少しずつ後からひたひたとやってくるものがあるわけで。 以前のように一人勝ちというわけではなくなってくる。
T:そうね。「Delight Slight Light Kiss」でミリオンの扉を開いたけども、続いていろんな人が入ってきたぞという。
M:ミリオンも、この年は6枚がミリオンセラーで。
T:アルバムもねぇ、なんでいきなり、っていうぐらい売れてますよね。
M:しかもこのアルバムで打ち立てた史上最高売上記録も、このチャート2位のチャゲアスと12位のドリカムがあっけなく 抜き去るわけで。
T:ここから90年代は記録の塗りかえっこになっていくんだよね。チャゲアス、ドリカム、globe、GLAY、B'z、宇多田という感じで。やんややんやの売上合戦。
M:91.10 「tree」 235.1万枚/91.11 「MILLION KISSES」 236.3万枚―これがユーミンをさらっと抜いて、以後は 92.03 「スーパーベストU」 269.7万枚→92.11 「The Swinging Star」 322.7万枚→94.09 「Atomic Heart」 343.0万枚→96.03 「globe」 413.6万枚――とまあ、 こんな感じでどんどん変わっていく。
T:まあ、そういう売上至上主義の扉を開いたと、これは89年の対談でも言った気がしますが。
M:ここでとうとう売上におけるユーミンの役割が終わったかな、と言う感じがある。
T:「THE DANCING SUN」でがっと盛り返すんだけれども、80年代から長く続いた右肩上がり状態は、ここで終わったんだよね。
M:うん。あとはタイアップで左右されるフツーの位置にいく。
T:一つの頂点であったと。というあたりで、そろそろ次行きましょう。

■業界が期待していた?チャゲアスの大ブレイク

M:ってわけで、次は結果的にユーミンを抜いたチャゲアスの『TREE』だね。
T:「SAY YES」が入ってるやつですね。6位にもASKAのソロ『Scene 2』が入ってます。
M:とにかく、いきなりチャゲアスが来たんだよねぇ。
T:チャゲアス来ましたねぇ(笑)。
M:これもまた不思議な現象だったよねぇ。
T:それまでは、存在感のわりに売上はそんなに、という感じで。でもライヴ動員数はあるぞ、 というのがチャゲアスの80年代だったんだけども。
M:シングルヒットも「万里の河」と「モーニングムーン」くらいだったし、アルバムもまぁ10位以内にはほとんど入っていたけれども・・・。
T:直前に「太陽と埃の中で」がちょっと売れてはいるんだけども。
M:そんなに売れ売れではなかったよね。
T:そうそう。それがいきなりこんな売れ売れに、と。
M:89年くらいからなんか不穏な感じはあったのよ。
T:不穏てなによ(笑)。
M:「PRIDE」が何故かチャート1位取っているし。なんの前触れもなく。
T:何故かって(笑)。あれは10周年記念アルバムだったんだよね。
M:あ、そうなん。ベスト?じゃないよね。
T:いやオリジナルアルバムなんだけども、まあ10周年で。 それで「夜ヒット」のマンスリーで出て、アルバム曲歌ったりとか。そういう効果もあったんじゃないかな。
M:チャゲアスは、わりと歌番組に積極的に出ていたんだよね。シングル売れていないのにやたらテレビで歌っているなぁと当時のわたしは思っていた。
T:Mステにも結構出てたみたいだしね。だから存在感はあったのよね、売上のわりに。
M:うん。
T:とはいえ、光GENJIに曲提供したりしても、存在感としては光GENJIのが上だったわけで。 それが90年代になったらこれですわ。
M:80年代後半は作家のイメージだよね、チャゲアスは。アイドル系に書きまくっている。
T:そうだよね。明菜様とか静香とか・・・って明菜様には書いてないっけ?
M:3曲書いている、詞のみを入れると。
T:あ、だよね。
M:チャゲも早見優(「Newsにならない恋」)に書いていたりする。
T:へぇーっ。まあ、でも本体のチャゲアスはわりと地味で。
M:そうね。そのかわり作家としては光GENJIをはじめ、トップクラスという感じ。
T:でまあ、武田鉄也効果もあって90年代前半は、ユーミンやB'z、ドリカムと並んで売上でもVIPクラスという感じで。
M:ね、急転直下ですよ。「その時歴史が動いた」という。
T:中学のときさぁ、凄かったよ。みんなチャゲアスのCDもってんの。みんな「ひとり咲き」知っているとか。
M:おかしい。
T:ちょっとありえない現象(笑)。
M:「WALK」とか「LOVE SONG」とか、以前リリースしたシングルの再リリースまで売れたしね。
T:「モーニングムーン」までの初期のシングル集「スーパーベスト」まで、リバイバルヒットしてしまって。 中身どう考えても90年代じゃないんですけど(笑)。
M:前半フォークだしねぇ。どうよ、という。
T:ふはは。でもなぜか中学生まで買っていた、という。
M:それが90万近く売れた。
T:ノートの表紙にチャゲアスの写真の切り抜き貼りまくっていた女子がいましたよ、当時。
M:ほえーーー、アイドル扱いだ。
T:そうそうアイドルよ完全に。その子はチャゲのファンだったんですけど。
M:し、渋い。――やっぱあれかなぁ、光GENJIから流れたファンも結構いたのかなぁ。89年から売り上げが伸びているあたりから考えても。
T:んーーー。どうなんかなあ。やっぱり「SAY YES」という感じが。
M:でも業界全体がプッシュしている感があったよ。なんか89年からじりじりと波がきて、 「DO YA DO」とか「太陽と埃の中で」はラジオスポットとか雑誌とか媒体での扱われ方がなんか凄かった。
T:そうなんだ。自分はリアルタイムの記憶が「SAY YES」以前は曖昧なので・・・。 あ、でも「DO YA DO」はなんかいい曲だなあってシングル借りたりしてたけれども・・・ 「DO YA DO」、結構いろんなところでかかっていたよね?
M:うん。
T:おぼろげな記憶だけども、当時小学生でもいつのまにか覚えたぐらいだから。 「♪どぅ、どぅ、でどぅやどぅ〜」って。♪やんくんそんくんなんどぉぉん〜 ←いま真似しています。
M:なんだそりゃ。
T:あ、固まってますねまこりんさん(笑)。
M:まあ、「太陽と埃〜」→「はじまりはいつも〜」→「SEY YES」で、段階的に売りあげがぐわーっと上っていったという感じが 私はあるなぁ。
T:そうね、「SEY YES」より「はじまりは〜」が先なのよね。「はじまりは〜」もミリオンだし。
M:うん。ドラマだけでないという。
T:光GENJI、「PRIDE」、「太陽と〜」でじわじわじわーっという感じだったのかなぁ。
M:なんか業界全体がチャゲアスのブレイクを期待しているよ、という空気が90年頃からあったというのは、 これは忘れてはならない事実でしょ。
T:「モーニングムーン」ではブレイクが足りないという。ま、80年代の売上見たら、 もうちょっと売れてもいいよなあって思うけどね。後追いで聴いたら。
M:「モーニンムーン」以降、シングルは小ヒットの山が出来ているのよね。「恋人はワイン色」とか「指環が泣いた」とか。
T:プチブレイクという感じで、ブレイクし切っていない、という感はあったかも。80年代もいい曲多いんだけどねぇ。
M:当時からファンは結託していたっぽいよ。確か「指環が泣いた」って、「ザ・ベストテン」のリクエストで1位取っていた記憶がある(――調べたら「黄昏を待たずに」でした)。
T:へぇーそうなんだ。あれもスゲー曲ですけどね。イントロとか。
M:他の部門が激弱でチャートインしなかったけれどもね。これは唯一の記録だったかな、リクエスト1位獲得したもののランクインせず、という楽曲。
T:ファンの人、けなげじゃないですかぁ。
M:ねぇ。やっぱ周囲は再ブレイクを熱望していたのよ。
T:まあでももっとブレイクさせてあげたい、という気持ちは非常にわかるな。そういう空気がやっぱり業界にもあったのかな。
M:・・・って作品の話はしていませんが、それはいいの?
T:えっ(笑)。いや「TREE」好きですよ。
M:って、私聞いてないんだよね。振っておいてアレだけれども。
T:もうASKAのぬぅわぁんぁんっって唱法炸裂という感じで、全編に渡って。
M:はははははは。褒めてないよっっ。
T:いやいや褒めてるよっ。やっぱこの人の歌はちょっと真似できないですよ。最後のタイトル曲の「BIG TREE」とかもう、 ジェットコースターに乗って縦に横にぶん回されて最後酔ったような感じ。まあその、歌い方にしても作品にしても、 この時期はやたら壮大で荘厳で隙がないというか。
M:でも、この時期から明らかにASKAがリードしている感じで、チャゲの立場って・・・と思ったりする。
T:そうそう、そこがねー。そこが引っかかるのねこの時期。
M:80年代はそこまで差がなかったのに、この時期から明らかにヒエラルキーが出来ている。
T:明らかにASKAが前面に出すぎというか。このアルバムから「RED HILL」あたりまではそうね。
M:ASKAソロとの区別って?という。
T:いやチャゲの曲も何曲か入っているという、それだけかな(笑)。ただやっぱりASKAの味が大きく CHAGEを凌駕してしまっているのがね。
M:6位に「SCENE II」が入っているけれども、ソロとどう違うの?世界観的にも音楽的にも。
T:うーん、あー。言葉に詰まる。
M:そこの線引きがいまいちわからん。
T:「はじまりは〜」も「けれど空は青」も「君が愛を語れ」も、「TREE」に入っていてもおかしくないしなあ。だからまあ、「TREE」もすごくレベルの高い、いいアルバムであることは間違いないんですが、 ASKAのレベルの高さであって、2人のアルバムとしてはどうかなあというのはちょっと引っかかる一枚だったりする。
M:チャゲのチャゲアスとマルチマックスの違いはわかるんだけれどもなぁ。
T:ははははは。
M:売り上げも全然違うし。
T:って、そこかいっ。まこりんさんマルチマックス聴いていたか。
M:あ、ちゃんとは聞いてないッス、すまん。
T:適当に聞いたと。
M:やぁーー、ねえ。そこは突っ込むべきではないかと。
T:まあ、マルチマックスは明らかにチャゲのビートルズ趣味というか、オールドロックンロール趣味が反映されていたからわかりやすいんだけども。 それがチャゲアスにフィードバックしてないのよこの時期。95年ぐらいからはわりといいバランスに戻るんですけども。
M:この時期は基本がASKAの大陸的で陰で湿った世界だよね。
T:そうそう。やたら壮大で。常時肩パット入ってるみたいな感じ。
M:結構谷村新司に通じる大陸系フォーキーな部分って大きいよね、ASKAは。
T:うん、だからアジアでも成功しているのだろうし。アジアの人はこういうのが好きなのかな。
M:中島みゆきとASKAで90年代のヤマハツートップと言うのはある意味わかりやすい。
T:ああそうね。ポプコン組だ。
M:キーワードはアジアという。
T:ま、この時期のそういう大陸的で壮大な、隙のない作りもこれはこれで好きなんですけども・・・やたらクオリティ高いし。 ・・・しかしまあ、この時期にさっき言ったようなアイドル的な人気もついてきたのは、 わりと奇跡ですよね。B'zとタメ張っていたわけで。
M:そうなんだぁ。ちょっとその辺は実感ない。アイドルだったの?という。
T:B'zかチャゲアスか、という感じだったようちのクラス。男も女も。
M:ほえーーーっ。
T:まあ、そんなイケイケ期のチャゲアスでありました。

■語りこそ稲葉イズム!?B'z「RISKY」「MARS」

T:じゃあ次は、90年代を語る上で外せないB'zとドリカムいきます?
M:そうね。まずこの年で欠かせないのがB'zね。第3位の「MARS」、11位の「RISKY」と2枚入っている。
T:「RISKY」は前年の売り上げと合わせてミリオン行ったんじゃないかな?
M:そうですね。シングル編で言ったけれど、ブレイクポイントは前年だったわけだけれども。
T:で、「MARS」もミリオンで、さらにこの年の年末にリリースした「IN THE LIFE」がダブルミリオンと。 もう大大大ブレイクですよ。
M:「BE THERE」でついた勢いからぐわーっと。それこそずっーーと上向きという感じだよね、91年は。 どこまで上行くんだ?という。
T:「BE THERE」からの一連の流れは実にうまいなあという感じでした。
M:倍倍ゲームのように売り上げが伸びたね。
T:上昇気流に乗った途端、シングル一枚ごとにいろんなタイプの曲を切っていって。 んでミニアルバムの「MARS」で好き勝手やりつつ(笑)、 シングルでは手堅くファンを掴んでいく、という。
M:結構ミニアルバムを細かく出していたんだよね、この時期のB'z。この「MARS」もそうだし、これってどういう戦略だったの。
T:本線では「どこまでやっていいのかな?」と曖昧になっているところを、ミニアルバムは傍線です、ということでチラ出ししてみる、という感じかなと。 それで受け入れられたら本線にも組み込んでいくという。石橋を叩いて渡るような戦略性を感じる。
M:この「MARS」は「LADY NAVIGATION」のヒットが冷めないうちに、ざっと出したって印象があるなぁ。 前のミニアルバムの「WICKED BEAT」は「太陽のKomachi Angel」の直後だったよね。
T:うん。「WICKED〜」はまたちょっとよくわからんアルバムなんだけども、初期のTM路線の決着という感じかなああれは。
M:そんなところに販売的な戦略を感じたりもした。
T:この「MARS」に入ってる「孤独のRunAway」が、シングル扱いでもいいような曲だったしね。
M:ドラマタイアップついていたしね。
T:オンエア頻度も高かった気がするし。でもシングル切らないでミニアルバムで売る、っていうのは上手かったかも。 しかしねぇ、「MARS」とか100万売れるアルバムじゃないですよこれ(笑)。
M:これタイトル曲って、ポエム?
T:ふははは、そうポエム。稲葉が詞を読んでるだけっていう。
M:や、でもアレこそ稲葉イズムですよ。
T:そ、そうなんかい。
M:脈々と流れる乙女―
T:ウジウジしてるんだよねぇ。
M:しかもちょっとずれている。ちょっとっていうか、かなり?
T:ふはは。長嶋茂雄的なズレね。あそこでポエムを読むっていうのがもうわからんし。
M:えー、稲葉さんのファンならアレはわかってあげてよ。
T:いやぁ彼はあんな端正なマスクしてるのに、やたらフラれる女々しい駄目男の感性がわかりまくっているというのが不思議なんですけど。そこが稲葉イズムなんだけども。 男性にも支持層が多いのはそこかな、と思ったりする。
M:うーーーん、でも、顔だけではないなにかが稲葉さんにはあるからさぁ。こう付き合ってみて「えぇぇぇぇ」ていう。
T:ははははははは。
M:そういうのはあるんでないの?女性サイドから見れば。
T:そんな、ハンサムなんだし歌も上手いんだからもっと自信もちなさいよっ!って感じだけどねぇ。
M:や、自信は持っているのよ。ただ相手がついてこないという。「こんな人なのぉーー」で引くという。
T:そこでウジウジ下向いちゃうわけだ。
M:ってまた随分なこといっているな俺。
T:いやあそのへんの内実はわからん(笑)。まあ確かにこのポエムは稲葉イズムですわ。
M:でも基本ハードロック寄りで、そんな売れないアルバムではないんでないの?「MARS」。
T:いやでも、ポエムと「孤独の〜」以外の曲は過去作のリアレンジなんだけども、こっちはこっちで松本先生が気持ちよく なってギター弾きまくっているだけじゃないか、という(笑)。 2人で好き勝手やっているじゃねーかという。これを出せるというのは勢いと自信だと思うよ。しかもまたこれがバカ売れするんだから。 この成功は翌年のHR方面への路線変更に繋がったかなと思う。
M:正味な話、わたしB'zってどれが成功とか失敗とかよくわからんのよ。なんかなにやってもB'zっていう。ギターぎゅわー―んいっていて、稲葉さんがへんな言葉をシャウトしていればB'zかな、という。
T:ふはは、「へんな言葉をシャウト」(笑)。でもまあB'zは翌年の「ZERO」でHR色を強めていくわけだけども、今聴いたら普通にB'zだけど当時はあれでも結構ハードだったですよ。 本人達も「これ売れないかも」と思って出したと言っているし。 それでまたバカ売れしたからいよいよなんでもありになったけれども。
M:HRでメガヒットって確かにあんまりないものねぇ。それ以前に商業的に成功したのってアンルイスくらい?だし。
T:そうでしょ?「ZERO」まではかなり慎重にリリース重ねていったと思うんですよ。 だから「MARS」もこれ日本で100万売れる音ではなかったと思う、B'z以前は。
M:なるほどねぇ。そう言われればそうかも。
T:だからまあTMくずれから始まって、「ZERO」に行くまでに、かなり石橋叩いたなぁという感じはするよ。 日本のシーンでどこまでやっていいのか?という。洋楽HRをバリバリ聴いてるような人にとったら、 他愛ない音かもしらんけども。
M:その辺はやっぱりビーイングだなって感じしますね。あんまりB'zってビーイング色ないけれども。
T:うんないよね。
M:その辺の計算具合はビーイングっぽい。
T:「RISKY」がやっぱり分水嶺だったかな。っていうか「RISKY」っていうタイトルって、それまでよりちょっとロック色が強くなって、この音は日本のシーンで出すにはリスキーかな、という ことでこのタイトルなわけで。
M:そうですね。なのにあそこで100万いって、路線が決まったかな、という。
T:今聴いたらどっこもリスキーじゃないんだけども(笑)。「RISKY」の成功で拓けたですね。これはでも名盤ですよやっぱし。前半がすごい。稲葉イズム炸裂。 アルバム最初の歌い出しがいきなり「♪お前は高くつく女〜」だし。
M:これもラストが、なんかあれなんですが・・・語り?
T:ふはは。これも語っちゃってるんですよね(笑)。延々喋ってる。
M:やっぱ欠かせない路線なのかも、これはこれで。
T:いや欠かせなくはないだろう。「コーヒー飲めるようになったんだ?」とか毎回やられても。
M:いやぁ、でも私は聞きたい。
T:はははは。
M:ていうかB'zの真髄ってのは、聴き手に突っ込ませるところだと思うから、やっぱ。
T:うん。まさに。笑えないと駄目よね。
M:「お前なにいってんだよ」とか言いながら「でも稲葉の戯れ言が耳から離れないんだよ」と何度も聞いている。
T:最近のB'z突っ込めないのよぉー。駄目だよぉー。
M:あーー、以前と比べるとちょっとテンション低いよね。
T:この語りの精神を思い出してほしい。「CD借りたまんまだった」の精神を思い出してほしい。
M:はははは。
T:ちょっとねぇ、最近のは右から左に抜けていく。
M:それはB'zファンの総意なのか知らんが。
T:いやあ総意は私もわかんないんですけど。
M:うちら的にはそうかも。
T:そういう意味では「RISKY」はもう、試行錯誤の末開花した稲葉イズムが暴れまわっていて、最高です。 とりあえずB'zはもう1回語りやってみたらいいんじゃないかな。
M:ってやっぱり欠かせないんじゃないですか、このノリは。
T:うん、思い改めた。語りやりましょう!
M:って誰に言っているの。
T:松本先生に(笑)。んでミニアルバムで無茶苦茶売れなそうなハードなの作るの。91年に立ち返ろう、と。
M:ゼロがいいゼロになろう、と。まあともあれ、おもしろカッコよくあって欲しいよね、B'zは。笑えるカッコよさ。
T:うん。
M:これを忘れないで頂きたいな、と。
T:だからパクリパクリって確かにパクリなんだけどさぁ。オリジナリティがあれば許されるっていうなら、 稲葉のこのイズムがもう限りなくオリジナルじゃないですか。
M:はははは。た、確かに。
T:稲葉の歌と歌詞が乗ってりゃオリジナルだろと。そこで自信をもって擁護できるわけですよ私は。
M:稲葉のこのセンスはね。唯一無比ですよ。
T:それが薄れつつあるので、もう一度思い出してほしいです。



その3 アルバム編 (2)へ

2005.06.28
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