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アルバム「歌姫」シリーズの再始動の願いをこめた妄想的な選曲


今年の中森明菜の活動が見えなさげなので、暇つぶしに布団に寝っ転がって終わってしまった『歌姫』シリーズの続編の楽曲を勝手に妄想セレクションしてみたのですよ。
が、これがもうね、勢いがとまらなくなっちゃって、ということで、ちょっと文章として残してみますね、というテキスト。

近年の明菜の声、特に「歌姫」シリーズでの明菜の歌唱の魅力ってのは、抜いた声の良さだと思うのですよ。
まったく力を張らずに、思いっきり抜いた球なんだけれども、何故か球威が重い、というか、そんな感じ。
鼻唄混じりのような、軽く口先で呟いて歌っているな、そんなようで、どしんとくる。
無駄に張らず、歌いまわさず、つまり「歌わないで歌っている」。
これはある程度のキャリアと、そして相当の歌心がないとできない歌い方だと思う。
おもわず想いがこぼれるかのように、おもわず言葉がこぼれるかのように、だけど、大袈裟でなく、あくまでさりげなく、歌っているのを感じさせないほどに自然に歌うのだ。
シンブルで無駄な部分がなく、けれど確実に歌の心を掴んだ歌い方で、これができるのは現役の歌手ではそういないんじゃないかなぁ。

こういう歌い方にあうのは、匿名性の高く、ちょっと物悲しい70年代頃までの歌謡曲だと思うのですね。
オケなしのアカペラ状態で軽く口ずさんで、それでいい歌だなぁ、って改めて良さがわかるような昔の歌ってあるでしょ。ああいうのがいいのよ。

第一候補としてはまずこのあたりの60〜70年代歌謡。

「街の灯り」 堺正章
「君をのせて」 沢田研二
「みんな夢の中」 高田恭子  (浜庫ではこれが1番いいとおもう)
「別に」 グラシェラ・スサーナ
「あざやかな場面」 岩崎宏美  (「思秋期」よりもこっちだとおもうなぁ。今の明菜は)
「ルージュ」 ちあきなおみ  (「さだめ川」と迷ったけれどこっち)
「戦争は知らない」 フォーク・クルセダース
「ざんげの値打ちもない」 北原ミレイ (ちょっと暗すぎるかなぁ)
「夜が明けて」 坂本スミ子
「見上げてごらん夜の星を」 坂本九  (今の明菜には絶対あうと思う)
「アカシアの雨がやむ時」 西田佐知子
「時には母のない子のように」 カルメン・マキ  (本当は「マキの子守唄」なんかがいいけれども誰も知らないだろうなぁ)
「酒場にて」 江利チエミ  (これもくらいなぁ)

この路線は戦前の抒情歌や戦後直後の哀歌と相性がいいような気がする。
このあたりも一緒に歌ってほしいなぁ。ということで、これは第2候補。

「カチューシャの唄」
「さすらいの唄」
「ゴンドラの唄」
「星の流れに」
「かえり船」
「カスバの女」
「蘇州夜曲」
「何日君再来」

あと、「ケ・セラセラ」「月の砂漠」なんかもいいかなぁ。
個人的にはここにビリーホリディの「I'll be seeing you」、さらにカイン・リーの「美しい昔」なんか歌ってくれたら最高なんですけれども。

明菜の歌で、ほろほろっと泣かせてほしいのよ。
こういう小さな唄をふっと軽く唄って泣かせられる歌手は今彼女をおいて他にないとおもうのですけれど、どうでしょうか。




もう1つの企画としてやってほしいのは、戦後直後の進駐軍音楽。当時のジャズを基調にした音楽ね。
明菜はこの時代の音楽のDNAを受け継いでいるのでは、と見ている私は一度はやっていただきたいと常々思っている。
88年のコンサートツアー「Femme Fatale」ではここに標準をあわせた懐メロコーナーが白眉であったらしいので―――実際ツアーのコンサートビデオのこの部分の出来は出色、是非とも実現してほしい。
往年のミュージックホールやキャバレー、ベースキャンプの匂いを彷彿とさせるような楽曲がいいなぁ。
これはちょっとバタ臭く感じるほどおもいっきり声を張って歌い倒してほしい。


「東京ブギウギ」
「銀座カンカン娘」
「カモナマイハウス」
「スワニー」
「ブルーカナリー」
「ビーバップ・ア・ルーラ」
「スターダスト」
「テネシーワルツ」
「ラビィアンローズ」
「セントルイスブルース」
「リンゴの木の下で」
「サイド・バイ・サイド」
「恋のバカンス」


歌手でいうなら越路吹雪や笠置シズコ、元祖3人娘あたりのイメージね。ぎりでザ・ピーナッツのアップテンポのものあたりもいいとおもう。
ちょっとこのあたりは不勉強なんで、私はあんまり詳しくは知らないんだけれども、これも聴きたいなぁ。


ま、企画としては歌姫シリーズは終了なので、こんなこと考えてもひまつぶし以外の何者でもないのだけれども、中森明菜って歌手は色がついた歌を自分のものに塗り替える才能に優れているので、違ったアプローチ再び過去の名曲を甦らせるプロジェクトを始めてほしいな、というのが私の正直な意見。
その時にここに挙げられた楽曲が収められたらこれほど嬉しいことはありません。
どうでしょうか、歌姫レコーズさん。


2004.07.31
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