膨大なディスコグラフィーを見て「じゃあ、加藤登紀子でも聞いてみようかな」とふらりと思ったあなたのための紹介っっ。こんなに大量のアイテムがあるとどれをとば口にして聴いていったらいいかわかんないもんね。まず、彼女の簡単なプロフィール。 加藤登紀子 1943年12月23日、満州はハルピンで生まれる。終戦、引き揚げ後は京都で育つ。 1962年、東京大学文科V類に入学――68年3月、同大学文学部西洋史学科卒業。 1965年、日本アマチュアシャンソンコンクール優勝。これをきっかけに翌66年、ポリドールより「誰も誰も知らない」でデビュー。 「ひとり寝の子守唄」「知床旅情」「琵琶湖周航の歌」などのヒットを飛ばし、女性シンガーソングライターのはしりとなる。 1972年、元全学連委員長藤本敏夫氏と獄中結婚。同年長女美亜子出産。 その後も75年、次女八恵、80年、三女美穂と子宝に恵まれる。 子育てをしつつも音楽活動は続行。長谷川きよし、中島みゆき、河島英五、坂本龍一、ムーンライダース、上野耕路、佐藤隆、THE BOOMなど様々なアーティストとのコラボを実現してゆく。 2002年、夫藤本氏と死別。 その他の主なヒット曲「愛のくらし」「この空を飛べたら」「ANAK」「灰色の季節」「難破船」「百万本のバラ」「さくらんぼの実る頃」……。 オリコンデータによるシングル売上げベスト5はこちら。
と、こういった公式めいたのはいいとしておいて、だ。じゃあ、どれから聴いていったらいいのよ。というあなたの質問にズバッと応えます。 1. ベスト盤から攻める ま、大抵の初めて聴くっつう時はベスト盤から入るのが一番オーソドックスですね。加藤登紀子さんもライトユーザーのためにものすごい数のベスト盤が出ています。 ――が、しかぁし、その数の膨大さゆえに逆にどのベスト盤を手に取ればいいのかわからないという罠もまたっっ。 正味な話、なんでもいいんだけれど、ユニバーサル(旧 ポリドール・キティ)から出ているベストは二の足を踏んだほうがいいものも多いかもしれません。ユニバーサルモノは音源が古いのよ、ぶっちゃけ。 デビューから87年までポリドールで、2001年からまたポリドールの権利を受け継いでいるユニバーサルになったけれど、ユニバではまだ活動期間が短いのでユニバから出ているものも勢いポリドール音源が中心。 んで、オリジナル音源が60年代とか70年代初頭となるとさすがにそのまま今の耳で聞くとなるとつらいものがあるんだよね。74年に告井延隆氏と出会う前は、サウンドも出来上がっていないし、彼女のボーカルも練れていない。 もちろん、リアルタイムユーザーなら全然問題なしなんですけど、現在形の加藤登紀子を見聴きして、代表曲から聴いてみよう、と思い立ったという私のような後追いだとちと音とのギャップが大きく、食いつきが悪いとおもわれ。 無難なところからいくと、ソニーから出ているベストがお勧めかな、と私は思う。 となると、三つに限られるかな。25周年記念のセルフカバーアルバムの『Tokiko Songs』(SRCL-2240)、30周年記念のベスト『加藤登紀子の世界』(SRCL-2850/1)、ソニー盤の方の『ゴールデン☆ベスト』(MHCL-121/2)。このあたり。 特に『ゴールデン☆ベスト』(ソニー盤)は30曲はいって3000円なので一番お徳、かつソニーの最新のベストなので入手も容易でこれが一番いいかも。ソニー盤でなく、となったら2001年にユニバーサルに出戻りしてリリースしたセルフカバー「My Best Songs」。これで決まり。 近年「登紀子情歌」とか「プライムセレクション」とか「エッセンシャルベスト」とか、ユニバーサルから色々とベストが出ているけど、あれらの内容は未確認。TOKIKO Records 以降の音源使用がメインなら、いいんですけどね。 2. 流通しているオリジナルアルバムで攻める とはいえ、ベスト盤ってのはダイジェストなので、実は言うとそんなにその歌手の実力なんてのは測れないものです。誰でもそうなんだけれども、ベストって小さくまとまっちゃって、そのアーティストの本当のスケールってのは、出せないんだよね。 特に加藤登紀子のようなアルバムアーティストはベストではその魅力は削がれまくり。私がファンになったきっかけもやっぱりよく出来たアルバムを聴いてから、ですから。 ベストを聴かずにいきなりオリジナルアルバムから入る、という勇気ある行動、私は支持しますねっ。――とはいえ、アルバムにはそれぞれの色があるし、完成度もまちまち。――だからひとまずベスト盤を聴いてしまうんですけどね。――と、そんな迷えるあなたに教育的指導っっ。 現在流通しているものは、いつのまにか95年発売の「花」以降となっております。となると、この中で最初に聞いてほしいのは……。 『TOKIKO L'amour 2 Songs For You 愛の歌を』 『TOKIKO DANCE 踊れ時を忘れて』 まず、この2枚は聴いてほしい。前者はラテン・ミュージック。後者はシャンソンが中心。これ聴いて、加藤登紀子、ダメ、肌に合わんわ、というのであれば俺はもう何も勧めないっっ。それぐらい私の愛聴盤です。 沖縄民謡好きなら『花』、フォーク・カントリー好きなら『TOKIKO Jurney Born on the Earth』から入るのもいいかも。 70年代の登紀子のイメージを現在進行形的にリファインした「TOKIKO Poesie 春待草」もなかなか。「今があしたと出会う時」も悪くないよなあ。 あと、最近ようやく再発売した坂本龍一プロデュースの『愛はすべてを赦す』『夢の人魚』も、ピアノメインのストイックなサウンドワークが嫌いでなければ是非聴いていただきたい作品。 逆にお勧めできないのは『晴れ上がる空のように』『沖縄情歌』『花筐』『シャントゥーズ TOKIKO』あたりかな。ま、これは私の好みだからなんともいえませんがね。 3.廃盤のアルバムを攻める(CD編) 廃盤になっているとはいえ、中古ショップなどにふらりと入って見てみると案外ぼろぼろと廃盤モノなんかが落ちているものです。 特にファンになりたてだと、新品よりも安い中古のほうがいいわ、なんてことで廃盤モノが先にそろったりなんかしたりもしますし。 ということで廃盤したアルバムでお勧めはというと……。 『さくらんぼの実る頃』 『モンスーン』 これは外せません。ソニー時代の廃盤は案外見つかりやすいのでここから入るのもいいかも。 ま、ソニー時代のアルバムはクオリティーが一定しているのでどれが悪いということはあまりないですね。「エロティシ」「TOKIKO」あたりも傑作。ここから入っていっても問題ないかな。「モンスーン」だけアジアンテイストで、それ以外はヨーロピアン色がどれも濃いです。 あと限りなく流通量が少ないポリドール時代のオリジナルCDでは……。シャンソンアルバムの『私は私』は見つけたら絶対買っていただきたいし、ムーンライダースサウンドの「最後のダンスパーティ」もなかなかかな。 3.廃盤のアルバムを攻める(レコード編) 「アナログレコードのプレイヤーあるから、ひとまず中古レコードショップのワゴンセール品から探すわ」というちょっと変わったあなた。私に似ていますね――というのはいいとして、だ。 ま、こういう探し方する人も少ないと思うんだけども、一応レコードでしかないもののお勧めは……。 センチメンタル・シティロマンスがっちり組んだはじめてのアルバム『回帰船』。 フォルクローレ色の強いライブアルバム『祭り』、長谷川きよしとのジョイントライブアルバム『Live』あと『ハルピンの夜』あたりかなぁ。 ま、こんなもんかな。ひとつきっかけが出来るとあとはずるずるとファンになっていくのであまり心配ありません。 ――っつうことで、みなさん一緒に加藤登紀子を聞きましょう、と言ってこの場を〆ることにします。ではでは。チャオー――ッ。 ※ ディスコグラフィー・データ作成の資料 各レコードのジャケット、歌詞カード 『加藤登紀子大全集』(POCH-1042/51)ブックレット 「この瞬間を愛せよ」加藤登紀子著、新潮社刊 「止まらない汽車」加藤登紀子著、新潮社刊 加藤登紀子公式ホームページ 以上を参考にしました。 |
改訂 2008.12.21
2003.11.07