まぁ、70〜80年代の歌謡曲に関するサイトを運営しているような人間の端くれとして、80年代初頭に大ブレイクしたYMOを中心とした日本のテクノ・ニューウェーブモノってのは大好物のひとつで、まあ、それなりに聞いているつもりでいた。 いたんだが、この2枚のコンピレーションを聞いて正直やられた。 いやぁ、わたしなんざ全然ひよっこですよぅ。ただの知ったか全開にわかマニアでしたよぅ。って、思わず卑屈になっちゃうもんね。 誰だッッ、こんなマニアックな選曲をしたやつはっっ。ビックリして買っちゃったじゃないかぁっっ。 ■ えーっと、これは80年代テクノ歌謡コンピレーションで「イエローマジック歌謡曲」がYMO関連、「テクノマジック歌謡曲」がそれ以外、という感じなんだけれども2セットあわせて全92曲という大ボリューム。 もうここはテクノ地獄なの?てなもんですよ。これはテクノという名の新手のいじめか、と。 ええぃっ、どいつもこいつもピコピコしやがって、と。 もう、冷静になることも容易でなくなってしまう。 いやぁ、こう選曲がね、「春咲小紅」「ハイスクールララバイ」「風の谷のナウシカ」などのお約束のテクノ系ヒット曲、あるいは「ハートブレイク太陽族」「ねらわれた少女」などのマニアのみの知名度なら抜群の裏名曲といったものはもちろん収録されているのだけれども、 こんなものどっから持ってきたの?という、これ選んだのどんなオタクだよ(――や、田中雄二さんなんだけれども)と、そんな楽曲がてんこもりにありまして。(―――ソニー系の音源が当時の実勢よりもちょっと多めじゃねぇの、ということにはあえて触れない。大人だから) こんなのあったんだぁ×うわっそれにしてもなんだかすげぇ、という素直な驚きの2乗で、もうマニアゴコロくすぐられまくりですよ。もう。 このコンピだけでも充分素敵なんだけれども、もっと聞きたくなる。1曲だけでなく、じゃあアルバムでは他に何やっていたのかしら、とか、気になる。気になりまくる。 で、気がついたら、解説文に載っているアルバムタイトルを思わずGoogleで検索している。ネットオークションで落札している。中古レコードショップ漁りしている。ヤバイ。金がいくらあっても足りないっっ。 危険ですよ、この作品は。非マニアにはともかくマニアには「取り扱い要注意」。マニア的好奇心刺激されまくりで、気がついたら、散財してしまう。現にこのわたしはコンピ聞くまでまったくノーマークだった同日発売の「Complete SUSAN」をしっかり買っているし。 ■ 「イエローマジック歌謡曲」のほうはもう色々楽しすぎる玉手箱状態。 伊藤つかさ、安田成美、中原香織、ユミから、ロリータキャンディボイスとテクノポップの親水性を改めて確認したし(伊藤つかさの「恋はルンルン」には骨抜きッス。)、山田邦子、川上さんと長嶋くん、竹中直人などの作品からは当時のお笑いとのクロスオーバーぶりを想起して微笑ましく(――それにしても「I Like Best」のパンキッシュで潰れた山田邦子の声には驚き)。 あとあと、ラジって前々からYMO関連の作品があると聞いていたけれども、やっぱ気になるなあ、とか。「ねらわれた少女」は自己言及アイドルの始祖かもなぁ、とか。「コンピューターおばあちゃん」はやっぱり坂本編曲だよなぁ、とか。「銀河鉄道の夜」はあんまりにも無茶な作品だろっっ、とか。なんか「サマルカンド大通り」のディレイの処理が微妙に気色悪くって忘れられないんですけれど、とか。 坂本センセは「From Tokyo」を『heartbeat』でリサイクルしているよな、とか。近田春夫さんってばキャラに似合わず美声なんだぁ、とか。 コスミックインベンションの「コズミックサーフィン」聞いてから、ふと気がついたら「キラキラキラキラ しゅわしゅわしゅわしゅわ」って歌っている私がいるんですけれど、とか。まぁ、余計なところを刺激されまくっているわたしがいるわけですよ。 ■ 「テクノマジック歌謡曲」のほうはYMO以外というしばりのせいで非常に選曲の苦労が垣間見えるラインナップなんだけれども、それでも面白いモノたくさん。 「哀愁のオリエンタル急行」に、あれ?船山基紀の打ちこみアレンジって、84年の柏原芳恵の「トレモロ」で一気にはじめたと思いこんでいたら、この時期からも片足はいっているのね、とか。堀ちえみ「Wa ショイ」はいつ聞いても気持ち悪くって素敵だよなあ、とか。「スペース小町」がなんだか「ラジオスターの悲劇」っぽくってカッコいいぞ、とか。「花のように」が俺には坂本教授アレンジに聞こえて仕方ないよ、とか。 「えんぴつに一本」にいたってはこのイントロのフレーズを坂本龍一はそのまま『Beauty』でいただいているよな、と思ったらその経緯が解説に書かれているよ、とか。 「星空のパスポート」って、たぶんこの企画もう1度やる価値ありだよな、とか。とにかく宍戸留美に萌え萌えですぅ、とか。もう前葉頭刺激されまくり。お、俺を誰か冷静にさせてくれっ。このマニアの無間地獄から助けてくれ――っ。 ■ ……ぜいぜい。さすがにもえあがりすぎた。ちょっと頭を冷やす。 や、ともあれ、テクノ歌謡の入門編としても、より深くのめり込んでいくための応用編としても、どっちでもいける感じのいいコンピレーションです。 一曲あたりの単価も大変お安く上がっておりますので、1度手にとってはいかがでしょうか。 ただし泥沼にのめりこんでもわたしは何も保障しません。ていうか一緒に溺れましょう。 一緒にピコピコしていきましょう。カクカクギクシャク踊ってみましょう。ついでに痙攣なんかもしてしみましょう。 そんなわけでほとんどソニーの宣伝部員な今回のわたしなのであった。ちゃんちゃん。 |