東京都府中市生まれ、中央大学経済学部出身。高校時代のビートルズのコピーバンドをきっかけに、大学時代は米軍基地や横浜、新宿等などのディスコ、ジャズ喫茶といったところでのアルバイト演奏の日々に明け暮れ、そうしたなかで少しずつオリジナル楽曲を書き溜めていった。
「30歳になるまでは音楽を続け、それで芽が出なかったやめよう」大学を卒業しても音楽を続けながらアルバイトの日々をつづけた。そして1980年、作詞家松本隆の目にとまり、彼の作詞による「北京で朝食を」でデビューすることになる。ちょうど彼が29歳にならんという頃であった。
デビュー期、彼には「最後のビートルズ・エイジ」なるコピーがついていたと記憶している。
しかし、デビューした後すぐに彼の活動が順調に進んだというわけにはいかない。
デビューするも売上的に厳しい時期が長く続く。またそうした日々の中での創作意欲の減退という状況もあったのではなかろうか。
当時ミュージック・リサーチ誌に連載されていた富澤一誠の音楽時評「俺が言う」(ソニー・マガジンズ)で、その当時の彼に対して「レコードだとこんなにいい歌手なのに、コンサートでそれがここまで表現できないというのも珍しい」といった類の発言をがあったのを記憶している。
それが一気に変わるのは、1984年。
高橋真梨子へ提供した「桃色吐息」が大ヒット。そして自身もレコード会社を日本コロンビアから東芝EMIへ移籍し、シングル「マイ・クラシック」(デパートの大丸のキャンペーンソングだったと思う)をスマッシュヒット、アルバムのセールスも一気に伸びた。
ここから数年は他の歌手への楽曲提供も目立つようになる。シングル作品では中森明菜の「AL-MAUJ」をはじめ、ジュディ・オング「ひとひらの雪」「エスメラルダ」、加藤登紀子「七色の罪」、沢田研二「女神」、岩崎宏美「風の童話集」、研ナオコ「名画座」、堺正章「二十三夜」「サルビア心中」、谷村新司「12番街のキャロル」……。
アルバム曲にまで目を向けると、提供歌手は吉川晃司、田中裕子、早瀬優香子、原田知世、原田貴和子、野村宏伸、ビートたけし、中村雅俊、高田みづえ、石川ひとみ……、と実に多い。
作曲家としても歌手としても、大ヒットメーカーではないが、確実に力をつけ、才能を開花させた彼は盤石に見えた。が、傑作『甘い生活』を1988年にリリースして後、目に見えるメジャーシーンでの音楽活動はどんどん少なくなっていった。
1990年、ジュディ・オングの歌った「エスメラルダ」の自身のバージョンのシングルと、更にそれを収録したベスト盤「十六夜曲」。
1991年、「十六夜曲」発売記念ライブを収録した初のライブビデオ「青の時代」。
1992年、シングル「帰るところあるの」。1998年、10年ぶりのニューアルバム「8 beat dream」。
2000年、80年代後半のライブ音源からセレクションした「アンプラグド・ライブ」。2002年、テンプターズの大口ひろしとのユニット「TWO brain TWO hearts」のシングル「みんな元気かい」。以上が、以降の彼の作品の全てである。
他の歌手への提供楽曲というのもこの20年ほど、極めて少ない。
歌やジャケット写真などから受けるイメージだと彼は芸能界的な華やかさが苦手のようにみえたが、実際その通りになってしまったようだ。
彼が何故今表に立たないのか、あるいは立てないのか、それはよくわからない。ただ、彼が残した歌がすばらしいことに変わりはないし、作曲家としての良さも提供楽曲を見ればそれはわかる。もし表に立つことが今の自分にあわないと思っているのなら、作曲家としてだけでもいいから彼の音楽が聞きたいな、と思う。
彼にはそうしたオファーがまったくないのか、それともそうしたつながりすらも既に彼は絶ってしまったのか。或いはそれ以外のなにか深い理由――闘病であるとかそういったパーソナルな事情、があるのか。1リスナーでしかない私には杳として知れない。(※――2010年現在、彼は自身のサイト、http://www.takashisato.com/を立ち上げている。彼は今でもマイペースに活動しているようだ。)
時間の流れを追う形で彼の作品を見ると、レコード移籍した1984年がまさに段落になっている。それ以前のコロンビア所属時代は匂ってきそうな「真正ビートルマニア」の世界。東芝EMI時代は「桃色吐息」と「マイ・クラシック」のヒットによって定着した「エキゾチック・ヨーロピアン歌謡」の世界といっていい。
どちらの作品にもいえるのが、いずれも成熟している、ということ。今でも当時でも珍しい29歳という遅咲きデビューということもあろう。彼はデビュー時から安定した大人の音楽を作っていた。うわついた所がなく、しっとりと深く、艶に濡れて程よく酔わせる詞・曲・アレンジ、そして歌声――。それは今の音楽業界が忘れてしまったもののひとつといえるかもしれない。
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◆ I've been walking (80.04.??/ランクインせず)
1.アジャンタ
2.Spy
3.Mr. ロンリー
4.メ・ソ・ポ・タ・ミ・ア
5.G線上のリンダ
6.メトロポリス
7.Any Day
8.北京で朝食を
9.赤い靴は嘘つき
10.8ビート・ドリーム
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全曲が作詞・松本隆/作曲・佐藤隆/編曲・鈴木茂による強力なファーストアルバム。
シングルの「北京で朝食を」をはじめ「アジャンタ」「Spy」「メ・ソ・ポ・タ・ミ・ア」といった東芝時代の彼の基調となる異国情緒風味も詞作の中にさらりと入りこんでいるし、また「Mr lonely」「Any day」といった彼のビートルマニア的な横顔もしっかりと出ている。
さらにいかにも松本隆といった勝気な小娘と軟弱男の恋物語を歌った「メトロポリス」「赤い靴は嘘つき」も名曲。歌詞に「留守番電話」というアイテムを出したのはこの「メトロポリス」が1番最初なんじゃなかろうか。実に効果的に使っている。ラストを飾るはビートルマニアの熱情が奔流となって溢れ出した名曲「8 beat dream」。
ファンなら涙なくしては聞けない。ちなみに。「赤い靴は嘘つき」〜「8 beat dream」の流れを、松本隆は後の処女小説「微熱少年」において小説化している(――ように見受けられる)。
ファーストにしてこれだけの充実のラインナップに素直に舌を巻くし、なにより彼の諸要素が既にこの時点ですべて出ているところも興味深い。今後このアルバムを越えるのは難しいだろうなと思わずにはいられない、あまりにも出来すぎたファーストアルバム。9点。
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◆ Urban "AU-RI" (80.11.??/ランクインせず)
1.CINERAMA CITY
2.Bad Sociey
3.CABARET
4.After 5 Woman
5.Good-bye -さよならと言ってくれ-
6.A man likes Mr.Woody -ウッディー俺も男だ!-
7.Hard-boiled Night
8.Again -涙だけアゲイン-
9.Secret Agent -探偵(スルース)
10.Morn'
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「AU-RI」とは何か。裏ジャケットにひっそりと書かれている。「誰もの心の中にきっとあるであろう桜の咲き誇る美しい国」と。漢字で書くと「桜里」になるのか。それはジャポニズムの世界だろうか。それを踏まえて「Urban"AU-RI"」とはどういう意味か、このアルバムはどういうコンセプトなのか、と考えてもいまいちはっきりと読み解けない。都市化されてもなお残る日本的な情緒の世界ということか。しかし、このアルバムはそのような世界を歌ってはいない。
作家陣は前作と同じで松本+佐藤のW隆に鈴木茂がアレンジ担当。前作を踏襲しつつ、非常にハードボイルドチックなアルバムになった。孤独を愛する男の、ペーソスと浪漫の世界。当時の萩尾望都が連載していた巴里が舞台の群像青春漫画「メッシュ」の1話のような「キャバレー」がその中でも特に良い。(この曲をはじめ、佐藤隆における松本隆の詞作はどこか萩尾望都を思わせるところが多く見られる、ちなみに萩尾と松本はお互いファンであり友人関係でもある)
いわゆるオフィスラブ風の不倫を歌ったり(「After 5 Woman」)、一人暮らしの男の部屋に転がりこんだ可愛い雌の野良猫を歌ったり(「hard-boild Night」)、といった日本が舞台でもよさそうでありながら、イメージとしては日本ではないどこか異国の街を舞台にしたように聞こえる。
深夜のデニーズで群れにはぐれた暴走族2人が憤懣やるかたない時をつぶしているという日本が舞台としかいいようがない「ウッディー 俺も男だ!」にしても、そのシーンを最後「まるでウッディーアレンの映画のようだぜ」とまとめていて、どこか遠い異国の街の風景のように耳に響く。卑近な泥臭さは洗い流され、どこかの物語の世界となる。これが松本隆の夢見の技法なのだろう。
曲とアレンジは前作よりもいっそうビートルマニア一直線、こっぱずかしくなるほどビートルズ路線。各曲の名曲度は前作より総じて低いが、アルバムの統一感ではこちらが勝っているかと。8点。
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◆ 憧れは夢の中に (81.10.??/ランクインせず)
1.Oh my love
2.苦い朝
3.愛しのDreamin' girl
4.コスモポリタン
5.Mr.Blues
6.裸足のゼルダ
7.Be my woman
8.サンデーアフターヌーン
9.Be trad
10.憧れは夢の中に -I'm a dreamer-
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松本隆、鈴木茂のラインがここから薄くなる。のだが、結果は前作よりテンションが下がって散漫な印象。ひとり立ちするのはまだまだ、というその辺がやっぱり新人なのだろう。当時既に30歳とはいえね。
2人の空いた穴は萩田光雄と竜真知子で埋めており、「裸足のゼルダ」「コスモポリタン」など、いい曲もあるがトータルとしての魅力は落ちる。ちなみに「Mr Blues」は時期からいってジョン・レノンの死を歌った歌だろう。これはさすがに残る。ともあれ低調であることは否めず、6点。
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◆ P.S I love you (82.08.01/第91位/0.3万枚)
1.ローゼのワイン
2.君にダブル・パーキング
3.好きさ好きさ
4.スチューデント・ライン
5.片手にマティーニ 片手にブロークン・ハート
6.Too Long Spring
7.八月のメモワール
8.いじけ いじけて
9.愛のファウンテン
10.From 東京
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なんとかオリコン100位圏内には食い込んだが、依然低迷から抜け出せぬ1枚。中年男のよろめきを歌った不倫ソング「8月のメモワール」、長すぎた春の追想である「スチューデント・ライン」「Too Long Spring」あたりがよい。リバプールサウンドど真ん中の「君にダブルパーキング」や「好きさ好きさ」には相変わらずだなこの人、と思わず頬が緩む。
なぜかビートたけし作詞の「いじけ いじけて」はミスマッチでいまいち。佐藤隆には酔っぱらって長嶋茂雄の話をするような団塊リーマンの風情はない。もっと乾いててクールだよ、彼は。都会的な洗練とビートリー路線を敷いたコロムビア時代だが、松本隆プロデュースの2枚を超えるものは作れなかった。6点。
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◆ 男と女 (84.06.21/第38位/9.8万枚)
1.マイ・クラシック
2.映画時代
3.短くも狂おしく燃え
4.愛してくれるかい
5.アフロディーテの夏
6.アンダルシアの娘
7.悲しい森の子供たち
8.ウォーターホール
9.壁になったジャンゴ
10.白夜のエトランゼ
11.痛いよ
12.どじ
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突然の転向。そして覚醒。「アイアイアーイ」のいきなりのボーカルコラージュに驚き、そして続く狂ったようなバイオリンの音色で何かを打ち破ったことに気づく。その勢いでA面は一気に流れていく。ジャンゴ・ラインハルトへのオマージュであろう「壁になったジャンゴ」、沢田研二の作詞で彼もコンサートでカバーした「白夜のエトランゼ」などもよい。1番の名曲は「8月のメモワール」の続編ともいえる不倫の愛の顛末を歌った「悲しい森の子供達」かな。盤全体から漂う夜の匂いがいい。売上もロングセールスとなり、日本レコード大賞の優秀アルバム賞も受賞している。
ジャケットには本人の写真を使わず、タイトルは名画からのいただき。詞はハードボイルドで曲はエキゾチックでヨーロピアン、全体としてロマンチックにビートル指数は低めで、という東芝時代の彼の路線は既にここで確定している。ちなみに東芝時代の佐藤隆のアルバムのディレクターは後に宇多田ヒカルを担当する三宅彰と、沢田研二の個人事務所の社長でありCOCO-LO時代のプロデューサーであった大輪茂男。この時期の沢田研二の繋がりは、そういうこと。ちなみにこの作品では「李幻」なる者が詞を数曲提供しているけど、これはジュリー? 当時ジュリーは自身の作品で「李花幻」なるペンネームを使っていたのを知っているけれども……。8点。
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◆ 土曜の夜と日曜の朝 (85.03.01/第5位/14.9万枚)
1.12番街のキャロル
2.桃色吐息
3.オルフェ
4.カルメン
5.僕達の孤独
6.ファンタンゴ
7.星はもうベールをまとい
8.クレタの迷路
9.霧のスカンジナビア
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シングル「カルメン」をはじめ、谷村新司との競作となった「12番街のキャロル」、高橋真梨子のヒットで有名な「桃色吐息」、後に田中裕子がカバーした「星はもうベールをまとい」など、目をひく楽曲が多い。ゆえに彼のアルバムで最大のセールスとなった。
中近東からヨーロッパへ、という前作で築き上げた異国情緒路線を突き進んでいて危なげがない。ただあまりにも安定しすぎて音の冒険がもうちょっと欲しいかな。チト河内は優秀なアレンジャーだとおもうけれども、前作のこなしという色が強い。ので前作から1点マイナスで、7点。
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◆ コムシ・コムサ (85.08.22/第24位/3.8万枚)
1.北京で朝食を 2.スパイ 3.コスモポリタン 4.キャバレー 5.君にダブルパーキング 6.マイ・クラシック
7.カルメン 8.裸足のゼルダ 9.桃色吐息 10.ローゼのワイン 11.スチューデント・ライン 12.アジャンタ
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5周年&ブレイク記念でリリースされたベスト・アルバム。コロムビア時代中心で、個人的にはちょっといかがなものかなセレクションではあるのだけれども(――コロムビア時代中心で「8ビート・ドリーム」がなぜはいらないんだっ!)、ま、こんなものかな。普通のベスト盤ということで可もなく不可もなく、7点。
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◆ 日々の泡 (86.03.01/第21位/3.4万枚)
1.ください 2.日々の泡 3.否 4.希望商人 5.ひとひらの雪
6.少女 7.慕情 8.不思議な呪文 9.薄情 10.旅芸人の恋歌
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巻上公ニの悪魔的で不気味な詞がよい「ください」「薄情」、ザ・阿木燿子としかいいようのないリリックの「ひとひらの雪」がいい。楽曲を提供しあう仲である加藤登紀子の詞の「旅芸人の恋歌」はサウダージ感覚に溢れていて、傑作といって差し支えないかと。アレンジャーは篠原信彦に変え、より砂漠で中近東。もっと不気味で悪酔の夢のようでもいいと思うぞ。
とはいえ女視点で「ダメダメ」の連発で体をまさぐる男の掌を拒否するという「否 -non-」はオカマ風味でちょっとむずむずしたりもして。これは高橋真梨子とか中森明菜とかあのラインの女性歌手に歌わせればよかったのに、って案外提供ボツ曲だったりしてね。中間部でちょっとだれるけど、まとまりのある、良盤です。8点。
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◆ 水の中の太陽 (87.07.06/第74位/0.4万枚)
1.虹色浪漫
2.黒い瞳 〜アモーレ・ミオ〜
3.太陽のシチリア
4.戦場に降る雨
5.再会
6.デラシネ 〜AL-MAUJ〜
7.二つの太陽
8.カーサル陸橋の手紙
9.夏のにおい
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達者だなぁ。伊太利から南仏を通って巴里のイメージ。中年のペーソス溢れる夏の一人旅に浪漫と恋情がさりげなく絡み合って、大人になったらこういう風にさまよってみたいな、という気になる。鮮やかな太陽の光と乾いた大気を感じる酔わせる1枚。
映画「ひまわり」が下敷きにあるのではないかと思える「戦場に降る雨」、中森明菜が「AL-MAUJ」として歌った「デラシネ」、映像的な詞が美しい「虹色浪漫」など佳曲が並ぶ。アレンジャーは三宅純。今までのアレンジャーのなかでは彼が1番佐藤隆と相性がいいんじゃないかなぁ。様々な音楽を混ぜて作り上げたネオ・トラッドといった感のある三宅純の音世界に彼のロマンチックな歌は1番しっくりくる。ちなみにジャケット写真の女性はモデル時代の桐島かれん。9点。
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◆ 甘い生活 (88.11.06/第83位/0.6万枚)
1.ベルリンソナタ
2.禁断のオペラ
3.月にいる人
4.ペルソナ
5.カリョービンガ
6.星影のプロフィール
7.たまらないよ
8.スイートフルネーム
9.失楽園
10.ポルノグラフ
11.深い森へ
12.アリス幻想
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傑作。巻上公一+佐藤隆+三宅純による大人の密かで妖しい遊戯のひととき。耽美・幻想的なアルバムだ。テーマは「エロティック幻想浪漫」であろうか。聞きながら「いやらっしいなぁ」とつぶやくことしきり。
20年代のドイツはベルリンの頽廃美を狙った「ベルリン・ソナタ」にはじまり、妖しくエロチックな「禁断のオペラ」という流れは完璧。前作のラテンヨーロッパのイメージから対照的にドイツの黒い森とか、バルトの海とか、スウェーデンの湖とか、北欧な佇まい。うすら寒くて、暗く淀んだ雪もようの空をバックにしている、というか。
虹を駆け上がるように深い森へと導かれる「深い森へ」、アリスの姦計に嵌った愚かな男を歌った不気味なメルヘン「アリス幻想」などは谷山浩子的によい。それにしてもポルノ女優の喘ぎ声にノイジーなギターをからみ合わせた「ポルノグラフ」は外では絶対聞けませんってば。皆川博子のドイツモノの小説がお好きな方は是非。9点。
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◆ 十六夜曲 (90.12.12/ランクインせず)
1.北京で朝食を
2.キャバレー
3.八月のメモワール
4.マイ・クラシック
5.映画時代
6.12番街のキャロル
7.桃色吐息
8.カルメン
9.僕達の孤独
10.ください
11.ひとひらの雪
12.デラシネ
13.虹色浪漫
14.黒い瞳
15.カリョービンガ
16.エスメラルダ
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デビュー10周年記念でリリースされたベストアルバム。コロムビア時代の「北京で朝食を」「キャバレー」は白井良明アレンジでニューレコーディング。――私は原アレンジよりこちらのほうがいいな。デビュー曲から直近のシングルまでの代表的作品があますところなく並び、彼のキャリアを知るにはちょうどいい1枚といえる。余分な楽曲や足りない楽曲がほとんどなく、ベストとして実に綺麗にまとまっている。彼のエッセンスがぐっと煮詰まっていて入門編として最適。ベストアルバムとしてみて完璧なので、9点。
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◆ 8 beat dream (98.08.26/ランクインせず)
1.8 beat deam
2.君が居て、君を見て
3.ダイヤモンドの孔雀
4.No−No Man
5.フェリーニとバスタブ
6.Thank You Very Much
7.あれから
8.ルーシーいつも君を捜してる
9.何処か
10.忘れないさ
11.帰るとこあるの?
12.どんなに遠く離れても
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リリースとしては10年ぶりのオリジナルアルバムであるが、レコーディングデータを見ると、92〜94年と相当以前に録ったものである。そこになにかの事情があるように見えるが、はたして。八ヶ岳のプライベートスタジオにこもってほぼ自分一人きりで制作したという―――楽器演奏のほとんどは彼のものだし、詞もいつもなら職業作家に頼んだものを自分で書き、更にジャケットのアートワークも自分でこなした、究極のプライベートアルバム。タイトルはファーストのラストを飾った名曲「8 beat dream」からであり、このアルバムのオープニングを飾っている。
エキゾチック路線で名を挙げた彼であるが、そんな彼の久々のアルバムは恥ずかしげもなく初期のビートルズ路線、ということで、懐かしのアレを求めるライトユーザーにちょっと肩すかしだったりもして。とはいえ、これはこれでやっぱりいい。
佐藤自身が書いた詞は虚飾性が薄く、つまり、悪くいえばちょっと素人臭い直球のラブソングが並んでいるのだけども、それがいかにもビートルズマニアのちょっと不器用なおじさんの純情、と微笑ましく響いてくる。この人、絶対悪い人じゃないよ、みたいな。ただ、ファンとしては久しぶりなんだから異国情緒路線も忘れずにちょっとやってほしかったな、というのも一方であったりして、そんなわけで7点。
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◆ アンプラグド・ライブ (00.11.18/ランクインせず)
1. デラシネ
2. ベルリンソナタ
3. 虹色浪漫
4. 黒い瞳
5. 禁断のオペラ
6. 再会 〜グランド・ジェットの日曜日〜
7. たまらないよ
8. カリョービンガ
9. 星影のプロフィール
10. 深い森へ
11. カーサル陸橋の手紙
12. 桃色吐息
13. デラシネ
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2000年にインディーズレーベル「コスモスレコーズ」からリリースされた佐藤隆・初のライブアルバム。音源は89〜90年のライブからのもので、10年以上前の音源をなぜあえて新たに発表するのか、リリース情報を聞いただけではいまいち不明だったけれども、実際作品を聞いたら、答えは簡単明瞭。傑作ライブだから、このまま埋もれたままにしておくのは勿体無い音源だから、時期は過ぎてしまったけれども、あえてソフト化した、と。そういうことね。
87年「水の中の太陽」、88年「甘い生活」の二枚のアルバムからがメインで、いわゆるベスト的な選曲とは言えないけれども、売れるベストとしてではなく、このサウンドを残すってコンセプトなのだろう。――とはいえ「桃色吐息」「デラシネ(AL-MAUJ)」と佐藤隆作曲の二大シングルヒットはしっかり収録しており、抜け目ない。重久義明のアレンジによって、それぞれの楽曲はスタジオ録音盤とはまったく装いを異にしている。
そんな今作のお色直し。「アンプラグド」というタイトルからして、フォーキーなサウンドで、アコギの弾き語りメインの、地味なサウンドメイクなんじゃねーの ? と思われがちだけれども、さにあらず。このアルバム、むっちゃ派手なのだ。「ヨーロピアン」とか「エスニック」という言葉で括られがちな彼の音楽だけれども、その真骨頂といっていいかも。ギター・ベース・ピアノ・パーカス・弦カルテットという編成でさらに深く、その民族の血と業に入り込んだという印象。スタジオ録音盤より一層コアで、それでいて華やか。サウンドに煽られるように、佐藤隆のボーカルも、いつにもまして艶っぽくパッショネイト。まるで幻のカーニバルに迷いこんだかのような、闇が深く、血が濃い、妖しい1枚。カッコよすぎて眩暈するほど。
ベストテイクはラストのほうの「デラシネ」(オープニングもバージョン違いの「デラシネ」なのだ、これ。こちらもドラマチックでなかなか)。ベースもパーカスもバイオリンも、んでもって佐藤隆の歌唱までもが、情念ほとばしりまくり。なんだこのものすごい気迫は。9点。
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◆ En (11.02.16)
1.イエスタディ 2.je'teim 〜受話器から〜 3.我が儘娘は眠りの中 4.ペパーミント・キッズ 5.ピンナップにシャウト 6.私の夢 7.僕の願い 8.太陽の誘惑 9.ありがとう
10.桃色吐息 11.姫魔性 12.気持ちいっぱいあるでしょ 13.桜心中 14.ママに捧げる挽歌 15.チャイニーズ・ガール 16.瑠璃色の恋人達 17.二十三夜 18.夢の世代
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よもやまさかの13年ぶりのニューアルバム。配信のみでの発売。佐藤隆の30年以上のキャリアの中からセレクションした、他歌手への提供楽曲のセルフカバー集となっている。
提供歌手は田中裕子、原田知世、吉川晃司、堺正章、谷村新司、早瀬優香子、などなど。「桃色吐息」ブレイク前後の80年代中期に書いた曲が中心になっているのだか、知名度よりも改めて歌いたい歌を選んだのだろう、アルバム曲やらマイナーの歌手への提供曲が並び、ほとんど佐藤隆カルトQ(――って表現もいい加減古いな)といった佇まい。今回も前作「8 beat dream」同様、佐藤隆自身がプライベートスタジオでほぼ全ての楽器をプレイした、極めてプライベートな作りとなっている。一作曲者として楽曲提供してきた彼、仕上がってきた音源のなかには「これはちょっと違うな」というものもあったそうで、そういうものも含めて「自分だったら、こういうサウンドでこう歌うな」というのが今回のコンセプトだという。自サイトで当時のデモテープを披露しているその延長に今回の作品集があるのだろう。
まず驚くのが声の艶。シングル・アルバムといった作品制作はもちろん、ライブ活動も現在極めて散漫な彼だが、かつてとまったく変わりのない、深く広がりある声なのだ。そしてギターの音色がとても綺麗。前作「8 beat dream」同様、そこが今の彼の追及しているサウンドなのだろうな、というのがとてもよくわかる。前作やコロムビア時代の彼が好きならば、これは!というアルバムにしあがっているんじゃないかな。
全体的に、今の時代にはなかなか稀有な、若く健全な明るさに満ちているところも、大きな特徴。「夢の世代」とか「ペパーミントキッズ」とか「気持ちいっぱいあるでしょ」などなど、匂いたつほどの青い若さに満ちてて、うわあ、もうこんな時代に戻れねぇ、と思うことしきりなのだけども、これを歌い弾いているのが今のアラカンの佐藤隆という不思議。
ただひとつ残念なのが、ここは生のストリングスで、またはパーカッションで聞きたいなという部分の多くが打ち込みで処理されていて、ちょっとデモテープっぽくなってしまってる所。今回は、ビートリーでシンプルなロックだけでなく、彼の得意とするもうひとつの、クラシカルでエキゾチックポップスも収録されているのだけれども、こういうサウンドメイクだとなかなか活き辛く、そこだけがちょっと今回勿体ない。スパニッシュな「太陽の誘惑」とか、生の弦入れたらもっと光ったと思うんだよな。ま、それも、様々な都合による所があるのだろうって、わかるのだけれどもね。とはいえ、エキゾ路線のイメージの強かった「我が儘娘は眠りの中」「桃色吐息」をギターメインの、でもしっくりとくるアレンジメントにしたところは面白く、これはこれで正解かなっていうのもあったりもして、なかなか侮れない。
回顧的な作品のようでいて、意外と「今」な作品。サイトを拝見するに次の作品作りに早くも取り掛かっている様子なので、楽しみ。その時はひとりきりでなく誰かしら音楽的パートナーを携えた方がもっと音楽的な広がりのあるいいものができると思うな。
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