アンルイスといえば、「六本木心中」「ああ無情」のヒットに代表される歌謡ハードロック路線をイメージをする人がほとんどだと思う。
『遊女』『女神』『My name is Woman』といった歌謡ハードロック時代のアルバムももちろん痛快でカッコいいんだけれども、
その歌謡ハードロック路線に到る以前の作品もなかなか面白いなとわたしは思う。
ずぶの歌謡曲な「グッバイマイラブ」の頃はともかく、歌手としての自覚が生まれたものの暗中模索の「甘い予感」から「ラ・セゾン」の頃は、もろジュリーになったり、湘南サウンドになったり、
ヤマタツ・竹内夫妻なアメリカンポップスになったり、髪を染めてニューロマやってみたり、と千変万化。
歌謡ロックの世界をつくった後もKim Bulladをプロデューサーに迎えて、なかなか面白いプロダクトを残していて、興味は尽きない。
◆ Pink Pussy Cat (79.08.05/49位/1.5万枚)
1.Dream Boat Annie 2.Love Magic 3.Just Another Night 4.ウォッカ or ラム 5.太陽神 ~恋の女神~ 6.Alone in the Dark
7.バスルーム 8.シャンプー 9.Lost in Hollywood 10.I'm a Lonely Lady 11.Dream Boat Annie (reprise)
ひそかに山下達郎全面プロデュースのアルバム。パーソネルを見ると、YMOのお3人がプレイヤーで参加していたり、吉田美奈子、椎名和夫らが作家として参加していたりかなり豪華な作りなのだが、あまり知られていない。こういうのがレアグルーブっていうの?
後のハードロック路線とは違った味わいだけれども、楽しめます。アメリカンポップスオタク山下達郎の面目躍如。音は70年代後半のフュージョン期典型といった感じ。YMOがらみでもテクノ成分はまったくございませんのであしからず。個人的には「Love magic」「Alone in the dark」の吉田美奈子作品がツボ。
このアルバムの流れで「恋のブギウギトレイン」という傑作が生まれる。
ちなみに中国題は「粉紅色的小猫」ってなんで中国題がついているが意味は不明。ジャケットはなぜかトロフィーにかぶりついているアン姐ぇさん。裏ジャケではピンクのシースルーのネグリジェで過激に挑発、誰のアートディレクションかいなと調べたら、早川タケジでした。やっぱりね。7点。
◆ Linda (80.07.21/29位/8.9万枚)
1.プラネタリウムの惨劇
2.おとぎのダンス・ホール
3.Time of the season
4.ちょうどいいレディー
5.Navy Blue Afternoon
6.恋する二人
7.Pink Bologna
8.Me
9.LINDA
10.New Rising Star
11.Time Limit
12.Good-bye My Love (Short Ver.)
13.Why
14.LONDON DAYS
15.Travelin' Band
◆ La saison d'amour (82.08.21/8位/13.4万枚)
1.Photograph 2.Baby, Let me stay tonight 3.さよならスウィートハート 4.La saison (Album Ver.) 5.Shake Down 6.Don't smile for me (part.1)
7.Can you light my fire 8.All mixed up 9.AちょっとHOTみだら 10.つかのま スターダスト 11.Double Vision 12.Don't smile for me (part.2)
◆ Heavy Moon (83.03.21/31位/7.0万枚)
1.Cinderella
2.Glass cup upside-down
3.Dot in my heart
4.Sick in Bed
5.IN PUT-OUT PUT
6.LUV-YA
7.Feeling Blue
8.Psychedelic TOFU
9.I HAVE A SECRET
10.Navy Blue
11.LULLER
12.HEAVY MOON
◆ I Love You より愛してる。 (83.10.21/26位/3.0万枚)
1.女・Tonite
2.Driftin' in the Morning
3.Imagination
4.Close to you
5.少しだけ Remember
6.Genki Juice
7.Surrender
8.Time Sometimes
9.You And I
10.I Love You より愛してる
◆ Romantic Violence (84.05.21/50位/1.7万枚)
1.LONDON無宿
2.GET AWAY
3.BUT STILL…
4.SET ME ON FIRE
5.ROMANTIC VIOLENCE
6.薔薇の刺青
7.IN PLEASURE
8.薔薇の奇蹟
9.BREAK THE RULES
10.HOLIDAY
11.MOONLIGHT DRIVE
全曲伊藤銀二編曲によるポップンロックなアルバム。さらにUltra thanx として北島健二の名前も(――「You were the STAR of this album」と最大の賛辞をおくられている)。いかにも80年代なジャパニーズニューウェーブ臭が漂い、これはこれで好きかも。ちょうど「遊女」と「La saison d'amour」の中間の位置にあるアルバムかな。
とはいえ個人的に1番好きなのは1番HR寄りな「IN PLEASURE」だったり。ただ「ワムで朝までDancing tonight」(「LONDON無宿」)という歌詞にはちょっと笑ってしまった。そうかぁ、ワムで踊ったか、一晩中。
北島健二は以後、アンのアルバムで常にハードでキャッチ―ないいプレイをしまくり、彼女にとって重要な片腕のひとりとなるが、もうひとりの片腕、
湯川れい子ともここで出会いとなる。母語が英語である彼女にとっては、彼女の感覚を的確に日本語詞として翻訳できる手練の作詞家が必要だったのだな、ということに湯川の登場で気づかされる。
海外のアーティストとのインタビューなどを数多くこなす音楽評論家であり、多くのヒット曲の作詞家であり、英語曲の日本語詞や洋画の翻訳などもこなししている彼女はアン・ルイスの詞に適任である。彼女の出逢いがあって「六本木心中」が生まれる。7点。
◆ Dri・夢・E・T・C (85.03.21/46位/2.7万枚)
1.JUMP ! アニーとロックSHOW 2.ピンク・ダイヤモンド (Ver.2) 3.LOST PARTY 4.TRUE TO ME 5.DANCE W/ME 6. Dri・夢・E-T-C
7.セクシャルダイナマイト 8.Mr.MONDAY 9.Wonderful Night 10.Dirty Fingers
◆ 遊女 (86.05.21/3位/17.4万枚)
1.Honey Dripper
2.立ちっぱなしのBad Boy
3.Other Side Of The Night
4.SAMISHISA’S On My Mind
5.あゝ無情
6.Slumber Party
7.遊女のCrazy Love
8.Tell Me That You Love Me
9.Sweet Temptation
10.TRIANGLE BLUE
◆ 女神 -Joshin- (87.05.21/6位/11.7万枚)
1.JOSHIN
2.INSANE
3.Glass Heart
4.Do or Die
5.Love Machine
6.Guys and Dolls
7.TOKYO Bay Blues
8.Heartbeat
9.Four Seasons
10.天使よ故郷を見よ ~The Regrets of Adam+Eve~
◆ 女息 (88.05.21/8位/7.2万枚)
1.MEIKI
2.SIREN
3.月下の獣達
4.女念’S 1988
5.NEVER FOREVER
6.W/HORE(惚れ)てしまった
7.UWAKI
8.殉愛
9.HIT and RUN
10.STRANGER IN THE DARK
11.KATANA (Ver.2)
12.今、FAR AWAY
◆ My name is Woman (89.09.21/7位/9.4万枚)
1.復活-REVIVAL-
2.LONELY LOVE
3.WOMAN(X-10ed MIX)
4.HEAVEN OR HELL
5.(NO MORE)GAMANしたくない
6.SURRENDER YOUR HEART
7.MY NAME IS WOMAN
8.美人薄命(DIFFERINT MIX)
9.FEED BACK
10.愛してくれる女を愛せ
11.RUNNING OUT!
12.SAGA
13.BIRD OF PARADISE
「女」シリーズ第4弾でラスト。ヒットシングルとなった「Woman」をはじめバラードのイメージの強いアルバムといえるかな。
ギターバリバリ全開でゴリゴリ押すばかりでなく、シンセのおかずも適当に配置され比較的まったりとした、これなら工藤静香が歌ってもおかしくないぞ、という歌謡感に溢れた聴きやすい作品。
アップトゥデイトな作りでこのアルバムが一番好きという人も多いだろうなぁ。
中崎英也と松田良がアンの歌謡ロックからメロウさを引き出しております。
もちろん「MY NAME IS WOMAN」のアンルイス節全開のハードなオールドロックも最高。
ラストを飾る「BIRD OF PARADISE」は女性の業を歌った六分半に及ぶ壮大なロックバラード。名曲。脳みそが筋肉でできているような、マッチョで能天気で陰影なしのHRばかり歌っているように見えて、
こういうシリアスな面を臆面もなく出してしっかり嵌まってしまうのだから、アンって凄いよなぁ。
「女」シリーズはアンの「ロイヤルストレートフラッシュ」という感じで、どのアルバムも実にアンっぽくって磐石で外しがない。8点。
◆ RUDE (90.10.21/10位/7.3万枚)
1.BOYS GET READY
2.SEVENTH HEAVEN
3.A・BA・YO
4.欲望
5.WAITING
6.RUDE
7.FINISH!!
8.BREAKDOWN
9.接吻
10.DON’T WORRY 神様
11.ASIAN BLUE
◆ K-ROCK (92.09.23/7位/11.5万枚)
1.いらいらさせないで
2.Foolish Prisoner
3.Mr.Rocker
4.夜に傷ついて
5.Poison
6.消えゆくままに…
7.夢の果てまでも
8.ほっといてよ
9.銀色の涙
10.Take Me Back
11.Middle Of Eden
◆ Rockadelic (93.09.22/15位/9.2万枚)
1.ROCKADELIC LOVER
2.LOVE SPECIAL
3.YA!YA!
4.砂塵
5.眠れない夜のBREAK
6.乱
7.邪魔(LOVE IS OVER)
8.VIRGIN LAND
9.愛してるよ
10.エロスで殺して
11.RED WINE & BLACK TATTOOS
12.LUCKY’S DOOR
◆ Piercer (94.11.23/53位/1.8万枚)
1.I'M IN LOVE
2.DO DO DO
3.KISS
4.PIERCED HEART
5.楽園
6.DA SILVA STAR(THE BOY THAT LISTENED TO HIS HEART)
7.HIPPIE HOTEL
8.KARADA
9.これ以上の愛
10.GIRL TALK
11.I’M IN LOVE(ENGLISH VERSION)
このアルバムは、Char作のレゲなシングル「I’M IN LOVE」ではじまる。いつもと違う味わいながらもなかなか色っぽく、これもこれでアリ。
続く元チェッカーズの武内亨の「DO DO DO」もちょっとアンにしては変化球。ルーズでちょっと不貞たメロディーが新鮮。
ジャズ風味のベースやラッパが心地いい「KISS」も意外な感じ。
Kim Bulladは今までのゴリゴリなオールドハードロックだけでなく、もっとアップトゥディトな形で今のアンルイスの魅力をひきだそうとしているように見える。
とはいえ、マブダチ早見優との共作(――コーラスにも優は参加)「Girl Talk」はいつものノリで、やっぱりこれにもヤラレマス。女性上位万歳。7点。
◆ La Adelita (96.09.21/91位/0.6万枚)
1.LA ADELITA
2.MESSY MARRIAGE
3.カナリア~Like A Canary
4.SWAMPY DESERT QUEEN
5.泣かずにいられない
6.Be QUIET!!
7.FLOWER CHILD
8.眠れないMEDICATION
9.UNCONDITIONAL LOVE
10.THE CONQUEROR~征服者
11.MOTHER EARTH