坂上香織のデビュー曲「レースのカーディガン」は作詞松本隆・作曲来生たかお・編曲萩田光雄という超鉄板布陣によるプロダクトである。 それは「木綿のハンカチーフ」「セーラー服と機関銃」「卒業」「楽園のドア」あたりの楽曲をモチーフにしたことが素人目でも一発でわかる、アイドルデビュー作としてはあまりにも優秀な「よくできた」作品であった。 確かにアイドル・ポップスとして計算され尽くした「よくできた」翻っていえば、それ以上それ以下でもない作品と言ってしまえばそれまでなのだが、それでも坂上香織の生硬な歌声で歌われるとそれなりの魅力を感じる秀作である。 そして曲もそこそこヒットもした。「ザ・ベストテン」にも一度だけランクインしたと記憶している。 また、ビジュアル展開も篠山紀信撮影のジャケット、大林宣彦のプロモーションビデオと80年代の美少女演出として、もうあまりにもなほどの王道展開だった。ちなみにファーストアルバムは全曲松本隆作詞である。 時はまさに後藤久美子を筆頭とした「美少女」ブーム。小川範子、藤谷美紀、宮沢りえらとともにライジングプロのポスト・ゴクミとして彼女はその戦略に組み込まれていき、 そして実際、そうした少女の儚さや哀感を漂わせた作品を残した。 「赤いポシェット」「グッバイ・マイラブ」アルバム「夏休み」。……。 しばらくすると、ユーロビート調の楽曲などを歌っている彼女を見る。 ま、この業界、色々あるしな、でも見た目に清潔感もあるし、時流に合わせるのもいいんじゃない、などと軽く見逃していた。 が、その後、ほどなく彼女を見なくなる。 気がつくと、彼女は実写版「電影少女」にでていた。役に合わせ、髪を短く切っていた(もしかしたらかつらだったのかもしれない)。 私は作品は見なかった。ポスターしか見れなかった。彼女には往時の魅力はなかった。なんだかひどく汚れたような感じだった。 そして、しばらくすると彼女はヌード写真集を出した。まだ、彼女は二十歳前だったと思う。 そして、彼女は今でもVシネマなどでケバく、お色気をふりまきつつ、活動中である。 別に私は彼女のファンでもないので、彼女の実像を知ろうとしたことは一度もなかった。 あくまで作品上のみの彼女しか知らない。 だが、その見た目の変身にいまいち、あの坂上香織?と、信じられない気持ちが今でも強い。 彼女に何があったのか、もしくはなかったか。知りたいと思う反面、それがとても怖い。 そしてがらにもなくこんな風に思うのだ。「芸能界って怖いなあ―――」と。 関係ないが、この曲、恋人との別れにカーディガンのプレゼントって、絶対ないでしょ。しかも、レースだし。 いくら「木綿のハンカチーフ」がモチーフだからって、これは強引でしょう、松本先生。 ま、そんなところが好きだったりもするのだけど。 |
2002.8.31