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工藤静香 『rosette』
1.断崖
2.Mirageの虜
3.Unbeliever
4.瞬間の海
5.月曜日の失踪
6.くちびるから媚薬
7.愛の漂流者
8.素直に言って
絶頂期の気合を感じる一枚 (1990.04.04/PCCA-00055/ポニーキャニオン) |
三田静香(「Wの悲劇」の薬師丸の役名)の次は工藤の静香さん。 近頃評論視点なので、今回はちょっとベクトル変えてファン要素強めで書こっかな。 工藤静香『rosette』。 この時期の工藤静香が気迫に満ち満ちていたってのは「黄砂に吹かれて」の回で書いたと思うけれど、このアルバムも気合入りまくりです。 前作がフィンランド録音のオーケトスラをバックにしたコンセプトアルバム『カレリア』で、大貫妙子の詞とか、これはこれでよかったんだけれどやっぱり静香の歴史の中では番外編。 でもって、その前が『Joy』―――これは失敗作でいいよね。「天使みたいに踊らせて」「奇跡の肖像」「夢うつつジェラシー」などの楽曲は好きだけれど、トータルではあんまりよくなかったと思う。 実際頭から尻尾まできちんと聞くこと、あまりなかったなぁ。 ということで、『ミステリアス』や『静香』みたいなアルバムを―――って思っていたところに届けられたのがこのアルバムでした。 一曲目「断崖」のイントロ無し静香の「Crazy」の一声でいきなりやられ、その後「Mirageの虜」も一気に疾走、コーラスの掛け合いがものすごい。声の応酬。―――ちなみにコーラス担当は中島みゆき班でおなじみ、杉本和世、坪倉ーB.B.クイーンズー唯子、にRAJIさん。 このオープニングの流れは最強ですね。自編のCDとか作るときもいまだにこの流れは壊せません。 で、そんなミステリアスな流れに乗って「Unbeliever」でデカダンスに酔い、とここで段落。 次の「瞬間の海」から「月曜日の失踪」はおにゃん子・うしろ髪時代の系譜が感じられる「陽」の静香で攻めていきます。 この明るさとぶっちゃけ感と「まあ、色々あるけど、顔上げていこうよ」と友達の肩叩くような爽やかさは彼女独特の武器ですね。 そして、大ヒット曲「くちびるから媚薬」とアルバムのクライマックスとなる大曲「愛の漂流者」、最後は静香本人の詞による「素直に言って」でアルバムは幕となります。 「愛の漂流者」はこのアルバムで一番「重い」曲だなぁ。 「奇跡の肖像」やこの曲をシングルで切らないで、アルバムに持ってくるところがこの時期の彼女。贅沢ですね。 「素直に言って」は歌詞だけみると「ちょっと散漫かなぁーー」という印象ですが、曲が伴うとなんとなく雰囲気に流され、いい曲かも。なんて思ってしまいます。 それにしてもこのアルバム、バックトラックの充実しているよなあ。 元々工藤静香って歌手は声量もあまりなく、音程も不安定で、そんなに歌手としてポテンシャルが高いとは私はあまり思わないのですが、――ファンの人、ごめん、 そういった彼女の実力をひとまず置いておいて「とにかくこの娘をいっちょ『女』にしてやろうじゃないの」といわんばかりに意気込んで、スタジオミュージシャンたちが最上の仕事をしている、そんなように私はこの音から感じますね。 アイドルというシンデレラストーリーの背後を支えるスタジオミュージシャンの矜持を私はここに感じるのでした。 ちなみに全作曲担当はもちろん彼女の当時の音楽監督である後藤次利氏、アレンジは彼を中心としたスタジオミュージシャン連「Draw4」――後藤次利、門倉聡、藤井丈司、菅原弘明、村瀬範恭。 ということで、そんな工藤静香の『rosette』の話でした。 |
2003.11.29