中崎英也 「一千一夜」
安全地帯+佐藤隆=? (1985.10.21/CBSソニー/32DH-283) | 1.恋は微熱 2.夏は蜃気楼 3.ストップ・モーション 4.コレクター) 5.逢いたくて(早春物語) 6.ダンスで殺される 7.ジェラシー 8.胸さわぎ 9.パンドラの厘 10.時の途中に |
密かに好きな作家なんだよなあ―、中崎英也。 「あなたのキスを数えましょう」「The Only One」など、今でも職業作家として大活躍中の中崎氏の85年の作品。 昔は歌も歌っていたのです(むしろ、ニューミュージック歌手的な志向だったのかなぁ、この頃は……、わからん)。 原田知世の映画主題歌として注目を浴びた「逢いたくて(早春物語)」、斉藤由貴主演CFとして話題になった「青春という名のラーメン/胸騒ぎチャーシュー」(しかし、80年代なネーミングだなあ)のCF曲「胸騒ぎ」収録。 中崎氏のメロディーはロマンティック、ヨーロピアンテイストでありながらどこまでも歌謡曲的なウエットさを失わないところがわたし的なツボ。 これは出世作となった「早春物語」から今井美樹の初期作品「静かに来たソリチュード」や「クラブ・ロンリーハートエキゾティカ」、南野陽子「涙の海で眠りましょう」、池田聡「濡れた髪のLonely」、またアニメ『蒼き流星SPTレイズナー』主題歌「メロスのように」(この曲なんかに似ているよね、喉元まで出ているのだけど……「ボヘミアン」?、「サマー・サスピション」?、違うなぁ)など一貫した良さがある。 また、ロックバラードもなかなかのもので、アン・ルイス「WOMAN」、工藤静香「優」あたりも私のカラオケ定番。 しかし、中崎本人がメインとなってのこの作品は、いただけないなぁ……。 メロや、アレンジはロマンチックないつもの路線で本領発揮して問題なく、それに本人の歌唱が加わると佐藤隆みたいになる。そこはさしたる問題はない。 しかし、詞の面がいただけない。 既発作品である「逢いたくて(早春物語)」、「胸騒ぎ」を除く8作品のうち、5作が松井五郎作詞、3作が中崎本人による自作詞なのだか、あまりにもこの詞の世界が雰囲気モノじゃありませんかとわたしは言いたいのよ。 元々、松井五郎という作詞家の特性といったものなのだが、ほとんど無意味すれすれの歌詞なのだ。でもって、なんとなく夜の匂いで、都会のスノッブで、いい女の影がする、という。 そう、当時の安全地帯の世界。 ってまあ、松井五郎の世界=安全地帯なんだけれどもね。 だいたい、「胸元が、白夜だね」(「ダンスで殺される」より)なんて、一体どない意味やっちゅーねん。どれほどこの言葉に共感するものがいるのだろうと、私は思うよ。 いや、だから雰囲気モノだっちゅうんでしょ。そりゃわかるけどさぁ……。 雰囲気モノでもいいのだが、方向性がはっきりしないと、聞いていてなかなか入っていけないのよ。 安全地帯に関しては、玉置浩二のビジュアルや吐息まじりの歌唱でホストクラブ的な方向性がしっかり見えるから、聞き手としては田舎娘だったり、孤独な独身女だったりになりきれば、楽しむことが出来たけど、これではどうやって楽しめばいいのよ、という感じでして、 松井五郎で攻めるなら、もっとすけこましっぽくならなきゃ。 ジャケットもモノクロの外人の写真とかでお茶を濁さないでさぁ。 とどのつまりは松井五郎は完全な配役ミスと言う事なのだろうが、次作(?)の「water blue」でも松井五郎を詩作で起用しております。中崎さん自身は気に入っていたのかしらん。 南佳孝における松本隆のような作詞家が中崎英也にもいれば良かったんだけどねェ。 ちなみに92年に出したインストアルバム「Blue Days」。これは、名盤。哀切感漂うメロディーに、ストリングスが流麗。 |
2002.12.05
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