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上田知華+KARYOBIN 「全曲集」

(1988.03.25/ワーナー・パイオニア/30XL-270)

1.パープル・モンスーン 2.BGM 3.シティ・ガイド 4.RINGO 5.ひとり季節にとり残されて 6.アンダルシアの風 7.MAGICAL MYSTERY KISS 8.LADY’S BLUE 9.See You Again 10.さよならレイニー・ステーション 11.オープン・ザ・ウィンドウ 12.少年 13.バス・ステーション 14.卒業旅行 15.二人のディナー 16.ブルージー・モーニング 17.ラメント 18.あとは成り行き 19.ベンチウォーマー 20.メヌエット


いやぁ、世の中にはまだまだいろんな音楽があるんだなぁ。
78年にデビューした彼らの80年リリースのベスト盤を聞いた。

これは時代に早すぎたんじゃないかなぁ。
弦楽カルテットKARYOBINとピアノ・ボーカル担当の上田知華ととってもクラシカルな編成なんだけれど、あくまで方向は「ポップス」。 丁寧でやわらかい弦の音に当時のニューミュージックらしい自立した女性の浮遊した都市生活像が浮かび上がってくる。
そのアンバランスなバランスが今聞いても全くもって新鮮。リズム隊が入ったほうがいいような曲もあるけれど、このストイックさをそのままで愛でたい。
時代のせいか、下手すると弦がただの伴奏になってしまう嫌いがどこかにあってそれがちょっと惜しいかなぁ。 「ひとり季節に取り残されて」のようなボーカル・ピアノ・弦それぞれのパートが相対して拮抗しあっているような楽曲がもっといっぱいあると面白かっただろうなぁ。 ま、それだとほとんど現代音楽なわけだけれど。

他、気に入ったのは、小ヒットとなった「パープルモンスーン」(すぎやまこういちの品のいいアレンジが光っている)、 一瞬岩崎宏美?な声の「BGM」、はねた歌い方が爽快な「バス・ステーション」、「See you again」など。
弦楽のオケでめくらましになるけれど、メロや歌詞、歌いまわしなんかに注意して聞いてみると、 テクノ転向以前のコシミハルや、山下達郎との出会い以前の竹内まりやなんかのあたりに案外近いかも、と思う。

とはいえ、上田知華自身は美メロで聴かせるオーソドックスなポップスが本来の持ち味だと私は思う。
ということでこのユニットも数年で瓦解してしまうわけで、でもって以後上田知華は職業作家として自身の本来の質感をだして、大成するわけで、 そういった面からいえばこのユニットは上田にとってはただのまわりみちの時代だったのかもしれない。
確かに斬新さの更にもう1つ必要ななにかが足りないな、というところはやはり、あるのだ。

ただ、この方法論自体は今でもありだと思う。むしろ今、改めて21世紀の上田知華+KARYOBINが出てきてもおかしくないのではなかろうか。
「癒し系」というくくりでクラシッククロスオーバー系のアーティスト達が注目されている今、室内楽で徹底してポップスしてしまう上田知華+KARYOBINスタイルは全然アリですよ。 もっと再評価がされてもいいんじゃないかなぁ。
しかしこの時代のポップスは本当に人材豊富だなぁ。


2004.08.01
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