94年秋の「ミュージックステーションスペシャル」のこと。 リクエストトップだった「難破船」と「月華」を「月華」の衣装のままで明菜は連続で歌うことになった。 「月華」の衣装はいわゆる「DESIRE」系のNew着物なのだが(「DESIRE」がラシャメン風だとすれば「月華」は女郎風という感じ)、この衣装で「難破船」ってのはいかにもミスマッチ。 これで明菜はどう歌うのだろうと思った。 と、明菜。そのまま後ろに持ってっていたセミロングの髪をひとまとめにして、右の肩から前に垂らした。 でもって、うなじを強調するように顔をカメラに向かって右に向け、少しうつむきかげんになった。 と、それはもうどうみたって「難破船」の明菜なのである。 薄倖そうな、そのまま消え入りそうな「難破船」の明菜。 髪の毛とほんの少しの仕草だけで彼女は姿を変えてしまった。 「プロだな、明菜」と思った、そんな一瞬だった。 誰に教えられたわけでもないのに、こういう玄人芸がすっとできる。 だから、明菜は怖い。 歌にあったフォームというの瞬時に判断して、その場で出来うるベストを必ずだしてくれる。 これはコンサートなどでもよく見られる光景で、髪をあげる下ろす、またその髪の結び位置、それに衣装や小道具の扱い、さらに視線に至るまで瞬時で細かいところのフォームを作り変え、自らを演出していく。 天才ですね、やっぱ。 と、今日はべた褒めで話を落とそう、時間もないし。 |
2003.07.15