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「年間チャート回顧」 ―1991― その3

アルバム編 (2)

シングル編
アルバム編 (1)


■90年代女性ボーカルの雛形になったドリカム

T:というあたりで、ドリカムに行きましょうか。
M:もう1組のこの年の大物ですね。
T:いやぁ90年代前半といえば、な人達が次々出てきますね。チャゲアスB'zドリカムと。
M:象徴的ですよ。ほんと。
T:ここでは「WONDER3」と、「MILLION KISSIES」の2枚がランクインしているんですが、「WONDER3」は前年43万枚売れていて総計はミリオン。 「MILLION KISSIES」は次年度で125万枚売れているので、ダブルミリオンになってます。もう大ブレイクっす。
M:ドリカムは毎年11月にアルバムリリースしていたので、集計が割れちゃってこんな羽目になっている。
T:「MILLION〜」ってこれ11/15発売ってことは、2週間の売上?
M:えーと、1週だけでこの数字かな。
T:このへんから初動で馬鹿みたいに売れていくんですよねぇ。
M:そうですね。初動型もこの年から過激になってくる。
T:過激だよねぇ。1週間で百何十万とか200万枚とか狂ってるし、今思えば。気持ち悪いですよ。
M:ねえ、なにみんな待ち望んでいるの?と。お前らの自宅の隣はCD屋なの?と。
T:日本で200万人が同じ週に同じCD買っているって、怖いよ。
M:まぁ後年の浜崎・宇多田合戦で、この戦いも終焉してしまったわけですが。
T:そんなミリオン戦争に参戦していたドリカムですが、ドリカムは前年の「笑顔の行方」で火がついたのかな。
M:そうね、この年のドリカムは「The Swinging Star」までの道程の最中って感じですね。 これまたB'zと同じく前年からのブレイクからぐわーーっといった1年。データを見ると、全アルバムが動いているのね。
T:2ndの「LOVE GOES ON」とか、ものすごく長い間チャートに入ってなかった?
M:うん。4年以上チャートインした。229週。
T:4年!すげえ。B'zもミスチルもブレイク時に過去作が売れまくったりしたんだけども、229週というのは記録かな?
M:あぁそうかも。
T:ミスチルの「Atomic Heart」もかなり長いこと入っていたけど―
M:100週くらいだよね。
T:たしか96週。「未来予想図II」が入っていたからかなあ。
M:ブレイク以前のアルバムって、チャートインが長い傾向はあるんだけれどもね。ユーミンの「ひこうき雲」(98週)とか井上陽水「断絶」(163週)とか、ミスチルも「KIND OF LOVE」(159週)が最長チャートインだったかな。
T:たしかそうだ。後追いで売れるのね。
M:とはいえ200週っていうのはただごとでない。
T:まあそれぐらい凄かったもんね人気が。国民的、というぐらいの勢いで。
M:うん。ただ、ここまでの人気に膨れ上がった理由って、ちょっとわからないよね。非常にソニー系って感じで、 歌うまいし、洋楽センスとかいい感じだし、自意識寄りの歌詞も売れるだろうなぁとか、色々とツボを心得てはいたけれども。
T:なんかこう、ユーミンより曲も吉田美和のキャラクターもカジュアルで、 ユーミンに入れない中高生とかにはうってつけの存在だったのではないかと。間口が広いというか。
M:私としてはなんか渡辺美里と被るんだよね。
T:うーん、美里かぁ。
M:音楽的にはちょい色違うけれども、吉田のキャラが。
T:自分好き系だよね。自分ガンバ!系。
M:で、歌バリうまという。
T:でもちょっと美里のほうが文学少女入っているかなという気がするんだけども、どうよ。部屋で小説とか読んでそう。
M:確かに内に入っているかな。吉田は「うれしいたのしい大好き」だから、思いっきり外向的。そこは違うよね。
T:吉田美和のほうがもっとなんかどこにでもいる、フツーに学生生活エンジョイしてますみたいな、あけっぴろげな感じが。 そこが入りやすかったのかなあと。
M:ああー、そうね。それはあるかもな。あんまり難しいところないし、自分大好きぶりもマッキーのような息苦しさがない。
T:どこにでもいる感じ、というのは大きかったと思う。そんなに美人でないし。友達になれるんじゃないの?みたいな親近感。
M:そうね。一緒にカラオケボックス行って盛りあがれそうな感じ。
T:あけっぴろげな感じで、普通に話をしてみたい感じ。キャラクターとして非常に間口が広かったというのはあるかも。
M:ただ、正直言ってここまで売れるとは私は思わんかったなぁ。夜ヒットで「うれしはずかし朝帰り」を見たときは―
T:「うれしはずかし〜」は垢抜けないよね(笑)。あの当時のルックスも含めて全くイケてない。
M:うん、なんか恥ずかしい歌だなぁと思って。
T:ふははは。
M:そう思ってスルーしたら、「笑顔の行方」でびっくりした。っていうかその場で買った。
T:あ、「笑顔の行方」でビビビときたわけだ。
M:うん。
T:あの曲かっこいいよねぇ。
M:アレは完成度高いです。
T:歌謡曲的なつくりではないよね、構成が。
M:あーー、そうかもな。でも非常にドラマチックで、日本人の琴線に触れる作りだったかと。
T:洋楽的だけど日本人の好きな感じという。Aメロ→Bメロ→サビのリピート、という段階的な構造じゃなくない? なんか同じAメロでも2回目は違うAメロになっているというか。サビもどこがサビかわからんっていう。
M:そうそう。ドラマで1番だけ聞いて、CD買ったら2番とかちょこちょこ変えていて、驚いた記憶がある。
T:AメロBメロサビで起承転結、というあざとい盛り上げ、っていうのはないんだけども、1曲通してすごくドラマチックだという。 言ってみればA→B→C→D→E→F・・・とどんどん盛り上がっていくという感じ。これは今聴いてもかこいいですよねぇ。 「うれしはずかし〜」とは雲泥の差で(笑)。
M:この曲でヒットして、色んな意味で掴んだという感じですよね。
T:もう後は突き進むだけ、という。「WONDER3」も「MILLION KISSES」も、やたらテンション高いし。 この2枚どうですか?まこりんさんは。
M:っていうか、ドリカムですよ、という。「ザ・ドリカム」という王道っぷりですよね。
T:ははは、そうとしか言いようがないという。「The Swinging Star」まではもう、王道王道で突き進んでますよね。
M:うん、ドリカムといったら想像する色んなあんなんやこんなんやがそのまんまという。吉田美和の大口とか、 ニマニマしている中村さんとか―
T:はははは。ダチョウの肥後とか。
M:絵が見えるもの。俺のまぶたの裏でドリカムが歌っているよ、と。
T:「MILLION KISSES」のジャケットがもう、ドリカムの全て、という感じがする。
M:あーー、そうね。
T:吉田美和というお姫様がいて、「私大好きーッ 歌好きーッ」という笑顔を浮かべていて。 両脇の男2人がその嬉しそうな吉田を見て嬉しい、という。これがドリカムだなあと。
M:うん。
T:この構造は90年代の女性ボーカルの王道になっていきますよね。ELTとかジュディマリとか、 あとブリグリとかは代表的だけども、小室プロデュースなんかもお姫様的な要素があるわけで。
M:そうね。まぁ小室はちょっとアレだけれどもね。
T:最後必ずアレになるけれどもね(笑)。
M:女性ボーカルの立て方は、こういうのがスタイルになりましたよね。仲間由紀恵ウィズダウンローズとか。
T:ふははは、あれは・・・。
M:っていうかまぁ、ああいうパロディーが出来るくらいの完全なるフォーマットになったと。
T:なったねぇ。ドリカムスタイルという。
M:女1人に男2人だと「ドリカム状態」って言うものね、合コンとかでも。
T:女性にしたら最高に気持ちいい状態だよね(笑)。「けんかをやめて〜」の状態だよね。
M:ってなんだか、関係ない方向へ行っている。ってかさりげに吉田美和批判?
T:ええっ、そんなことないッス。やっぱり中村正人の吉田美和への献身的な姿勢っていうのはもう 素晴らしいなあと思うし。全ては吉田のために、という。 それになんだかんだいってやっぱし吉田美和の歌ってるところ好きだしね。 紅白とか出てきたらやっぱ盛り上がるし。フェイクとか、うざい人にはうざくてたまらないんだろうけども(笑)。
M:途中、海外目指して本格的になり過ぎたり、黒くなり過ぎたりとか。
T:ああ、あれはねぇ。ちょっとまあ・・・。
M:ヒップホップみたいなのもあったり。
T:「The Swinging Star」で一つ極めてしまったから、ああいう方向に行ってしまうのはわかるんだけども。
M:90年代後半はちょっと彷徨いましたよね。
T:ちょっとわけわからなくなっていた。ジブラと組んでみたりとか、ちょっと痛かった。
M:とはいえ、安易なバラードシンガーになるよりはいいかなと思ったいたよ私は。
T:うんそれはもうね。歌上手い人って、なぜかバラードシンガーになっていくからね、日本って。不思議なことに。
M:和田アッコとか岩崎宏美の頃からそうだもんね。気がつくとみんなバラードばっかになる。
T:今も小柳ゆきとかMisiaとかさぁ。ケミストリーとかさあ。バラードは代表曲1曲あればいいのよ。
M:Misiaとかね、ほんとドリとコラボしたりとか、むしろいい位置にいたのに、何故かバラード攻めだしねぇ。
T:ほんとさぁ。もっとトラック凝ったりしても耐えうる存在なのに、ほんと勿体無い。ある意味バラードって安易なんだし。 そこに行き着いてしまうと非常にがっかりする。
M:安易にヒットしたくなるのよ。水は低きに流れるというか。外さずに回収できるもの。
T:ヒットするしねぇまた。音楽的にはいちばん退屈だと思うんだけど・・・。なぜバラードは売れるかねぇ。
M:まあ、ドリカムは日本中心に回帰しても、安易な道に行かなかったわけだし。まだまだがんばって欲しいなと思う。
T:そそそ。ここのとこのドリカムはまたいい位置にきてくれましたよ。
M:良質ポップでいいんだぞ君たちは、と。
T:チャートに入っても古びた感じしないし。
M:そうね、そのへんは90年代後半の試行錯誤も糧になっているのかもしれない。
T:うん、正直ここまでいいところに戻ってきてくれるとは予想していなかった。嬉しい誤算です。
M:ということでがんばれドリカムということで、次いきましょう。

■青い放課後の名盤「LINDBERG IV」

T:ではチャゲアス、B'z、ドリカムという90年代の巨頭たちを語ったところで、 あとはいくつかのカテゴリーに分けてざっと見ていこうと思うんですけども。
M:そうしましょう。キリがありません(笑)。
T:まずはバンドものということで―。プリプリ、LINDBERGという女性ボーカルバンドが上位にランクインしていますが。
M:二組とも自身最高セールスのアルバムですね。っていうか早速ちょっと話はずれるけれども、いい? この2つのアルバムが自身で1番のセールスになる理由ってわかります?私にはいまいち見えないんだけれど。
T:LINDBERGはわかるかな。ヒットシングル入りまくってるし。ものすごい勢いでシングル切っていたからこの頃。
M:ベストだっけ?
T:いやオリジナルだけど、ええと、5曲シングル入ってる。
M:うわっ。エイベックスみたいだ。
T:「Dream On 抱きしめて」「ROUGH DIAMOND」「OH ANGEL」「GLORY DAYS」「BELIEVE IN LOVE」という、どれもLINDBERGでは 外せないだろう、という強力な曲が入っているから。内容的にも代表作だと思うし。
M:「今すぐKiss me」以降のシングルがどどっと入っているんだ。なるほど、納得。
T:そうそう。ほんと浜崎のようにシングル切りまくっていた(笑)。
M:いや、ブレイクポイント去年なのに、何で売り上げががっと上がっているんだと思ったから。
T:ああ、「今すぐ〜」で得たファンをシングルで引っ張り続けて、ここでもう一段階ドカーンと、という感じじゃない?全部タイアップついていたしこの5曲。 もうエースコック!という感じ(笑)。
M:これだけ詰め込みゃ売れるかぁ。
T:うん。でまたさぁ、青さ満載でややもすると恥ずかしいんだけど―
M:それがリンドバーグだし。
T:もう自分ガンバレ!全開なんだけど、キュンとなるのよこれがー。このアルバム大好きです。
M:地方の女子高校生向けつつうか、放課後に聞きたいって感じだよね。
T:ふはは。いやもうモロ中高生ターゲットだよね。ほんとに放課後って感じ。あの頃の青春をもう一度、という感じ。
M:そこがね、狙いが明確だっただけに、トップアーティストになれなかった感じがあるんだけれども。
T:この後実際「進研ゼミ」のCMに出たりするしね。「胸騒ぎのAfter Scool」で。まあわりと94年ぐらいまではコンスタントに売れてましたよね。 ちょっとへっ?って曲でも売れてたりするし。
M:リリースペースが凄いよね。93年は6枚シングル切っている。
T:うん(笑)実はすごかった。そんなに中身変わらないんだけどね・・・。何をそこまで、というぐらいリリース早かった。
M:ターゲットが明確な分、その狭いところへ何度もがんがん仕掛けるという、アイドルとかアニメ系によくあるパターン。
T:そうね。アルバムも1年に2枚出してたりするし、アイドルのタームだ。
M:そうだねぇ。戦略は完全アイドルだ。
T:まあ、この頃のリンドバーグは輝いていたよ確かに。「SUNSET BLUE」とか「GLORY DAYS」とか今聴いても胸キュンします。 「もっかい学生服着てえええ」って感じ。 ま、今それやったらコスプレなんだけれどもね。
M:うーーん、わたしはどうもファンでなかったから、覚えていないんだよ。そういう小さい市場でやっていて、 大ヒットって「今すぐKiss me」と「恋をしようよYeah!Yeah!」「胸騒ぎの〜」くらいしかないじゃないですか。
T:いやあそれはまこりんさんクールな子供だったから。おれなんかもうほら、ピュアだったじゃないですか。 もう胸キュンなわけですよ。
M:なんだよそれーー。俺もピュアだったらLINDBERG聞いていたって言いたいわけ?
T:いやわからんけど(笑)。これで胸キュンできる時代がおれにもあったんだなぁと。
M:なんだかなあ。あと「もっと愛し合いましょ」は何故か覚えているが。
T:「もっと〜」はあの振り付けがなあ。あれはもう行き詰ってテコ入れしたらあらぬ方向に打球が飛んでしまった感がありありで。
M:女教師みたいな衣装だったよね、確か。
T:眼鏡かけてたな。でなんかこう、ギクシャクした振り付けをやりながら歌っていた。
M:や、でもなんかとち狂ったなというのを私は覚えている。
T:ふははは、とち狂った(笑)。
M:でもあれ、そこそこ売れたよね。
T:そうなのよ。あれでちょっと盛り返して、「every little thing every precious thing」とか 超長いタイトルのシングルがそこそこ売れたり。ま、売上的にはそこまでだったかな。
M:アレはオリンピックのタイアップだったかな。局ごとの中継のタイアップの一つだったような。
T:ああ、そうだったかも。ま、89年の対談の美里のところでも語ったんですが、いつまでもこういう青い世界を歌い続けるのは無理があるので。やっぱ難しいよね。
M:その末に「もっと愛し合いましょ」だったんでしょ、きっと。
T:はははは、出した答えが女教師だったと。学生の立場が無理なら教師になってしまえ。
M:このまま青いままじゃまずいよ→ふりつけ+コスプレ
T:ぶはは。ファンに怒られるな(笑)。
M:でもその前のシングルが「水着とビーチとボーイズ」という、もう聞く前にLINDBERGというわかりやすい青春路線だったから、 これが売れなくって決心したのでは。
T:まあねえ、アルバムとしてもやっぱ、そのへんの時期までかなぁという。

■青さの壁、とプリプリ

T:で、もう一方のプリプリなんですが。
M:これが売れた理由はなんです?
T:んー、これも「ダイヤモンド」で得たファンが「OH YEAH !」と「ジュリアン」でがっと掴まれて、って感じでない?
M:シングルは「ジュリアン」くらいだよねこのアルバムは。
T:うん「ジュリアン」しか入ってない。でも「ROCK ME」とか「HIGHWAY STAR」とかライヴの代表曲的なところが入ってます。 ・・・まあプリプリも、リンドバーグと同じような命題を抱えているわけで―
M:89年の対談で言ったものね、それは。
T:うん。で、次の「DOLLS IN ACTION」あたりからちょっと試行錯誤するようになるので、 プリプリらしい勢い、という意味ではここがピークかなあ。ま、悪くはないんだけど。
M:個人的な勝手な意見からすれば、プリプリはブレイクするまでかなぁと思ったりする。「LOVERS」までっつうか。
T:うーんまあおれも、厳しく見積もればそこまでかなあ。「PRINCESS×2」も「DOLLS〜」も好きは好きだけども。
M:っていうか2ndの「Here We Are」と3rdの「LET'S GET CRAZY」でプリプリのやることは全部やっているような。
T:うーん切ない青春路線というのはね。全部詰まっている。
M:この2枚のアルバムでライヴのセットリスト組んでなにか問題あるのか、という。
T:いやそうかも。
M:「M」もあるし、「MY WILL」もあるし。
T:「19GROWING UP」あるし、「GO AWAY BOY」も「GET CRAZY」もあるし、という。まあでもその後の楽曲でもいい曲あるよ。 「ONE」とか名曲だし、「SEVEN YEARS AFTER」とかさ。
M:まぁそうなんだけれども、結局デビュー時点からやっていることってあんまり変わっていなくて。
T:まあねえ。
M:そこから外れると「プリプリっぽさ」が加速度的に失われていく、という。
T:変えようとするとちょっとうまくないんだよね。かといって変えないとマンネリであるという蟻地獄は、 LINDBERGと通じるものがある。このへんのアルバムになると、初期の青い切なさが減退している分、 ちょっと痛いところが見え隠れするようになっていたりもする(笑)。
M:結局そこまでのタマじゃなかったといえばそれまでなんだけれどもね、残酷な言い方だけれども。
T:まあねぇ・・・。まあたとえ限定的な煌きであったとしても、それはそれで素晴らしいし失われるものではないんだけどね。
M:ともあれ青さの壁を越えるのは並大抵のものじゃないですね。凄い才能だ、と思っていても10枚くらいアルバム出すとなんか退屈になったりという。 そういうアーティストはいっぱいいる。
T:星の数ほどいる。というか、10枚出してもまだ面白い人のほうが稀なわけで。それは選ばれた人だよねやっぱり。
M:うん。ヤマタツも10枚目あたりから辛いんだよ、とか言っているし。
T:普通出尽くすよね。
M:デビュー前までのストックっていうのはなくなるね。
T:しかも同じことやってたらマンネリだっていわれるし、変えたら変えたで「こんなの○○じゃない」っていわれるし、 大変だ(笑)。ま、われわれリスナーはいつもそうやって好き勝手なこと言ってるんですけど。
M:確かに、いちいちああだこうだというのはアーティストにとっていいことではないのかもしれない。 黙って聞いとけという。
T:うーん。今なんかねぇ、ネットがあるからさらに、誰でも言えちゃう状況で。 やっぱり作り手側もこう、Googleで検索したりするのかな(笑)。新作の評判とか。
M:する人はするだろうな。
T:見たくないけど見てしまう、という。ま、難しい問題だな。
M:ってわけでまあ、青さとプリプリはこんなもんでいいっすか。
T:はい。

■米米クラブの「上半身」と「下半身」

T:で、あとは米米クラブなんですが。米米が一番面白かったのってこの年かなあと思う。
M:この「K2C」は前年の「浪漫飛行」のヒットでトップに立ってのアルバムだよね。セルフカバーで、ハーフベスト的な内容。
T:うん。マニア筋や評論家には前から評価高かったんだけれども、一般的に浸透してきてというタイミングですね。 で、当時の米米はもう完全にライヴというかショーが軸足にあって、CDはよそ行きというか別モノになっていて。 ライヴでしか演奏してない曲が山ほどあるんですけども、これはCDで発表した曲も、してない曲も含めてセルフカバーしたアルバムですね。
M:タイミング的にも内容的にも、売れないはずがないと言うアルバムですね。
T:これは比較的ポップな曲を集めているんですけども・・・・ これねぇ、3ヶ月後に「米米クラブ」っていうアルバムを出しているんですけども。これも48万枚売れているんだけども。
M:ちょうど対になっているんですよね。「K2C」が上半身で、「米米クラブ」は下半身、だっけ?
T:そうそう(笑)。
M:「米米クラブ」のほうは下品で悪乗りで、っていうやつだよね。下半身というだけあって。ノリと勢いだけという。
T:そそそ。これがもうね、ライブでしかやってないトンデモな曲ばっかりライブ録音したアルバムで、ひどいんですよ(笑)。 でもこれが米米なのよズバリ言って。
M:米米クラブを語るには欠かせない部分ですよ、これは。「浪漫飛行」と「君がいるだけで」で語るものじゃないという。
T:あ、まこりんさんこれ聴いた?
M:あーー、昔友達んちで聞いた。持っていないんよ。でもなんか覚えている。
T:これね、無性に人に聞かせたくなるのよ(笑)。
M:ヘンな昭和歌謡みたいのとか、ホモの語らいみたいなのとか。
T:カールスモーキー石井が延々一人芝居してるのとか(笑)。こんなものCDにして売っていいのかという。 だからまあね、「浪漫飛行」のヒットのあとに、 「K2C」とこの「米米クラブ」をセットで出したというのは、米米の本質だよなあと。 石井も的確に舵とってるなあと。ここまでは。
M:「ここまでは」って。
T:やっぱり「浪漫飛行」「君がいるだけで」のバンドだと思われるということは、自分の首絞まるわけですよ。 とはいえ単なるコミックバンドでもないわけで。
M:でもその前に「KOME KOME WAR」とか「FUNK FUJIYAMA」とか売れているから、 その表面/裏面ってのはもっと一般的に知られているのかと私は思っていた。
T:うーんでもやっぱり数字が・・・いきなり100万枚だからなあ。当時のインタビュー読むと、 本人も必死に「浪漫飛行」のイメージを払拭しようと振舞っている。それはもうけなげなぐらいに。
M:確かに以降シングルで「KOME KOME〜」や「FUNK〜」の路線ってのはないからねぇ。縛られた部分ってのはあったのかな。
T:だからこの「上半身」「下半身」という打ち出しは、このタイミングでは実に的確な打ち出しだったと思うし 、ざっくり言っちゃえばこの2枚が米米だよな、というのがある。 それがねぇ、「君がいるだけで」のときは変なほう行っちゃったんだよなぁ。
M:以降は上半身がメインになってくるわけだ。なんか胴長だよ、という。
T:なんであそこまでバランス感覚失ったのか謎なんですけど。映画撮ったり、やたら箔付けしようとしていた。 本来そういうものへのカウンターだったはずなのに・・・。
M:なんか「いいひと」なシングルが並ぶんだよね。「愛は不思議さ」とか「ORION」とか。
T:そうそう。なんか、よそ行きだったはずのものがメインになっていて。 なんだかディナーショウ臭漂うクリスマスアルバム出したりとか。こりゃなんか違うだろ、と。
M:「聖米夜」だっけ?
T:そうそう。やたらパッケージ凝っていて、写真立てとかついてた。
M:って俺も結構覚えているな。ファンでもなんでもなかったのに。
T:なんかね、このバンドがもっていた無邪気な悪意というかな。そういうものが失われてしまったかなという。
M:子供の悪ふざけみたいなね。小学生かよ、みたいなノリ。
T:ものすごい金かけて小学生みたいなことやってんのね(笑)。 その壮大なナンセンスがねぇ、なんで「ときの旅路」とか「手紙」とかになってしまうのか。
M:でも、売れても馬鹿なことやるって結構勇気がいることだと思うよ。少なくともレコ社とかは期待するわけだし。
T:うーんまあその、本人達の意思以外にも、でかくなったスタッフチームも食わせなきゃならんとか、 そういう苦慮は石井さんあったみたいだけど。
M:そうそう。しがらんでくるよ、そりゃ。
T:そう思うと、「君がいるだけで」って曲としては好きなんだけども、米米、 ということを考えると憎らしい曲だったりするな。
M:あそこで米米の寿命は縮まったのかもね。
T:うーん、なんかね。縮まったと思う。まあそれは次の年の話なのでこのへんにするかな。 とにかくこの2枚は、っていうか「米米クラブ」は是非聴いて欲しい(笑)。

■ヤンキーの青春のように駆け抜けたX

T:あとバンドものは、Xの「Jealousy」。「BLUE BLOOD」以来2年3ヶ月ぶりのメジャー2作目です。
M:叫んでみろ、エッーーークスッ !!!
T:ふはは。
M:ひとまずXジャンプしてみた。礼儀として。
T:(笑)なんかさ、この時点でまだメジャーでアルバム1枚しか出してないし、 特大ヒット、ってわけでもないのに、もうこの頃既に大御所、って感じでなかった?
M:っていうかさあ、なんか別枠って感じ。デビューから既に。
T:なんかね。規格外っていう感じで。
M:チャートの並びから既にオーラが出ている。紫色のオーラが。
T:静寂の狂気が(笑)。
M:たださぁ、このアルバムがこれまた唯一のミリオンで、最高売り上げなんだけれども――
T:Xは売上と存在感が別だよね、なんだか。
M:ていうか、Xは「BLUE BLOOD」と「Jealousy」で、もう既に終わっているというか。形として完成されているというか。
T:うーん、ああ。完璧すぎるよね、この2枚。
M:あのあと「ART OF LIFE」でブッチして、以後はもう余生という。なんかヤンキーの青春のように早いあがりっぷり。
T:もうやり切った感が早くも漂っている。
M:ねぇ。20歳で子供作って引退しましたという、そんな早さ。
T:ええとねぇ、俺の中では、この年の年末に東京ドームで3daysライヴやったんだけども、 あれで一回Xは終わったという感じかな。あそこで終わってたらめちゃくちゃ綺麗だなという。
M:「破滅に向かって」のやつ?
T:そうそう。「破滅に向かって」というライヴビデオが出てます。 あれを最後にTAIJIが脱退して、世界進出ぶちあげるわけで。でも後から振り返ってみると、 あそこである意味終わっていたなと。
M:あ、あそこで世界進出かぁ。
T:そう。X JAPANになる。だからまあ後付けだけども、あそこで終わっていたら完璧すぎるぐらい完璧だなあと。 ライヴももう集大成って感じだったし、タイトルも「破滅に向かって」でしょ。
M:ははは。改めて聞くとアレだなぁ。
T:もうストーリーとして綺麗。それにやっぱりTAIJIが好きだったからなぁ・・・。 どうしてもこの後は別物な気がしてしまう。
M:ていうか、アルバムもオリジナルはあと1枚だけだよね。
T:うん、「ART OF LIFE」抜かすと96年の「DAHLIA」1枚だけ。
M:結構だらだらとシングルは出していたけれども、それを詰めたアルバムが1枚だけ出て。
T:ちょっと散漫な活動になっちゃったのね、「破滅に向かって」までに比べると。 ここまではもうYOSHIを頭にして、特攻隊のように突っ走っていたという感じ。
M:ところで海外進出て実際どうだったの?話聞かないんだけども。
T:結局リリースなしだもん。
M:ないんかい。言ってみただけ?
T:だから最後のアルバムの「DAHLIA」がそれになるはずだったんだけど、 もう全っ然モノが上がらないから、立ち消えになったんじゃないかな。なかったことになっていた。 この頃は毎年「今年はアルバム出します」っていってた。
M:うーーーん。その後のHIDEの死とかTOSHIの洗脳とか、そういったものを考慮に入れても、 やっぱりなんか色々あったんだろうなぁという感じですね。
T:ねぇ。ちょっと晩節汚した感は否めない。バラードばっかになっちゃったし。
M:やめる時はスパッとやめたほうがいいのかもね。
T:まあねぇ・・・。
M:色々と都合があったんだろうけれども。
T:この時点ではまだまだ自信あったんだろうけども、ズルズルいっちゃったんだろうな。 アルバム出さなくても許される環境だったのだろうし、ていうかYOSHIKI様に誰も文句いえないし。
M:そういえばglobeのYOSHIKI加入も、あれも結局入っていないし。
T:あれもなんかなかったことになってるしょ(笑)。
M:結構YOSHIKIって、コントロール不能の位置にいるのかも。
T:なんかもう思いつきでパッと言っちゃうんだけども、具現化できなくなっているという。 完壁主義者だからさあ、完璧にしたくて時間かけてるうちに最初のモチベーションがなくなっていくのかも。
M:多分瞬間のひらめきというのはあるんだろうね。で、勢いでズバーッといくその瞬発力はあった。と。
T:その勢いがまだこの頃まではズバズバ決まっていたんだけども。
M:その時周りの人がうわーーっと巻き込まれて、形として成功したのがJapanがつく前のXの数年間という。
T:なんかね、ここまでは全てが上手く回っていたんだろうなという感じで。
M:今でも破滅型なのかなぁ、YOSHIKI様は。近頃メディアでのお姿見ないからわからない。
T:この前ヘイヘイ出ていたよ、ガクちゃんと一緒に。仲いいらしい。
M:あーー見たかも。
T:カレー食っていた(笑)。
M:ラーメンも食っていたね。
T:ラーメンも食ってた(笑)。
M:歌はなしでしょ。
T:ピアノ弾いてたね。外人の女性が歌っていたけど、まあ何がなんだか。
M:あ、そういうこと今やってるんだ。
T:うん、なんかねぇ。隠居しちゃうのは勿体無いんだけども。 カレーが辛くて仕事キャンセルしてしまう面白さが、この「Jealousy」以降存分に発揮されているとは言いがたいのが残念。
M:まぁ、この路線でずーっとやるのは、体力的なものとか精神的なものとか持たないというのはわかるけれどもねぇ。
T:破滅型だからね。まあ、もう一度YOSHIKI様が輝く日を、ファンのみなさんは長ーいこと待ち望んでいるのではと。
M:Mステの「UNFINISHED」みたいなYOSHIKI様をもう1度見ることを願っている、と。
T:あーあれカコイイかった。ザ・YOSHIKIという感じで。
M:血の雨でピアノですよYOSHIKI様は、と。
T:あんなYOSHI様を死ぬまでにもう一度でいいから見たいぞと。

■80年代末期組と90年代J-POP組の交叉

T:次は女性のソロものがいくつか入っているんですけど、これは私が黙るところかな、と。 っていうかこのカテゴリーは前回89年で語ったのとあんまり変わらないのね。新顔は永井真理子ぐらいで。
M:そうね。ただちょっと話が大枠になっちゃうんだけれども、この年ってなぜかブレイクポイントでないのに、 セールスアップしているアルバムが多いんだよね。
T:というと?
M:プリプリ、渡辺、杏里、今井、このあたりはオリジナルでは自身の最高セールスだし。 今井は後で「PRIDE」が塗り替えるけれども。オリジナルアルバムはこの年のが最高売上というのが結構ある。
T:とはいえこの年にブレイクしたわけではないという。
M:そう、以前から数字は稼いでいて、でもなぜかここに頂点がきているという。 シングルヒットとかそういう要素が加味されたわけでもないのに。これは不思議だなぁと。
T:まあ全体的にCDが売れるようになったというのもあるんじゃない? みんな前年の作品の売り上げに少しずつ上乗せしているという。
M:結局そういうことなんだろうね。
T:前年度は80万枚でもう年間4位なわけで。みんなちょっとずつ上がってる。
M:全体が底上げされていているという。
T:まあ、とはいえこれ以降このまま増え続けないで、この年が最高売上になったというのは、 なんだろな、ちょうど作品的にピークだったってことなのかな。
M:それもあると思う、この面子は。
T:ちょうど重なったという。
M:アルバムは、これから出てくる人と、そうでない人の交叉みたいな感じになっているからね。
T:そうですね。この面子ってさっき言ったように80年代末の面子で、ドリカムやB'zやチャゲアスがどんどんセールスを増やしていくのに反して、この人達はここがピークだったという。
M:80年代末期ブレイク組はここでお役御免という人が多い。ただ、いきなりどたーっと売り上げ下がらずに、 以後もじりじりっと稼ぐんだけれどもね。このへんは89年ほどの壁はない。
T:そうだね。いきなり売り上げが落ちたというよりも、新参組がもうどんどん化け物みたいな売上になっていくから。
M:ついていけなくなるのね。
T:年間チャートでは下のほうにいくけども、それでもこの人達は次の年も50万〜60万売っているしね。
M:漸減していくけれども、という。
T:J-POP組のイケイケぶりと入れ替わるようにして、マイペースに移行していくという感じかな。
M:うん、影も形もという人はいないね。ってKANはアレだが…。
T:OTL
M:永井真理子も。

■生きながらやまかつイズムに葬られたナガマリ

T:永井真理子「Pocket」。これベスト盤だっけな。
M:そうね、ヒットしたものは全部入っていたかと。「ミラクルガール」「Zutto」などなど。
T:永井真理子は、やまかつが終わったら一緒に終わってしまったという感じがしてしまう。 ヒットらしいヒットは「ハートをWASH!」が最後でしょ。やまかつのOPテーマだった。
M:そうねー、生きながらやまかつイズムに葬られたね。
T:はははは、やまかつイズムって(笑)。
M:元気でポジティブで自分大好き、そんなやまかつイズム。この後「chu-chu」ってのが中ヒットしているけれども、 誰も知らないだろう。ナガマリ。
T:あー、あった。知らないだろうな。それ入ってるアルバム(『OPEN ZOO』)が結構良かったりするんだけども、一気に売上落ちているし。
M:自作に走るんだよね、そっから。
T:そう、バンドっぽい感じになっていった。ま、青さの壁(以下略)という感じで。
M:タイミング的には間違いなかったんだけれどもね。
T:そうねー、まあ自作になると引き出し勝負になってしまうからな。辛いよね。
M:そう。1発目上手くいっても大抵続かないんだよ、元々自作でない人は。
T:1枚でいっぱいいっぱいになっちゃうんだよね。1枚目はもうやりたいこと溢れてる感じで好き放題やるんだけども、そこで出尽くしてしまう、という。
M:そこでストック使い果たしちゃうという。哀愁ナガマリ。

■決起する今井美樹

M:あとは今井美樹「Lluvia」が、これが布袋寅泰との出会い直前のアルバムで。
T:だからねぇ、読めないんだよぉータイトルがぁ〜。
M:ジュビア。これはシングル入ってないんだけど、売れたんだよねぇ。わたしはここからちょっとついていけなくなった。
T:ここからなんか変化があったの?
M:ていうか、前作「retour」あたりから、今井様が「爽やかで海の似合う自然体の優しい今井美樹は本当の今井美樹じゃない」と言い出しまして。
T:ふはは。俺は俺じゃない、と。
M:「もっとわたしは、攻撃的でぎざぎざしていて、荒っぽくって闘っているの」と言い出しまして。
T:ご乱心だ。姫、ご乱心。
M:それまでの上田知華とか柿原朱美の世界から出ようと、このアルバムから蠢き出したのね。 「retour」までが初期の今井美樹の世界で、ここがちょうど端境という。
T:「retour」は完成形という感じがするな。
M:そうね、完成度高い。でも今井様は「retour」に納得行かなかったご様子で、 「いい作品だけれども、私の求めているものじゃない」とか言っとりました。
T:それはKANさんに不満だったということかっ。
M:ははは。
T:この次が「flow into a space」だっけ?あそこから布袋ワールドが徐々に・・・。
M:そう、そこで布袋様と出会って、「そう、あたしの求めているものってこういうものよ。こういう音なのよ」と、 今井様は布袋様大絶賛で。でその後はまぁいろいろ以下略で、「PRIDE」と。
T:ははは。
M:そして「♪ 私は今 南のひとつ星を見あげた」と。
T:もうそこまで何かくるものがあったわけだ、今井さんは。布袋さんの世界が。
M:みたいねえー。しらんけれども。
T:はははは、「しらんけれども」(笑)。
M:っていうか布袋と今井の食い合わせに未だ納得していないから。
T:うーん、なんかまあ元々今井さんの熱心なファンでなかった身としては、 「まあ二人が幸せならいいんじゃね」という感じなのですが。
M:ま、そういわれれば、その通りですなんですけれどもね。二人が幸せならって。
T:山下さんかわいそうだけども、あまりにも。
M:ははははは、山下さんはねぇ、がんばっていただきたいです。
T:はははは。まあゴシップ的な話をしてもしょうがないのでね。
M:ただ、ちょうど今井美樹が変わろうとしていますよというアルバムがここにある、という。 それは一応言っておこうかな、と思った。
T:でもさあ、変わったことでほかの杏里や美里らの80年代末組と一緒に沈まずに、90年代も輝けたわけかもしれないよね。
M:そうとも言えるかもね。
T:というわけでまあ、今井さんしたたかだぞと。
M:結局それかよ。
T:どういうまとめだ。まあ、そんな感じでいいですか。
M:ていうかまぁ、このアルバム自体好きくないしなぁ。こんなもんで。

■男性ソロは安定勢力です

M:あとはなにかあります?男性ソロ?
T:残りはそうですね。といっても・・・
M:って語る意味あるのかという感じだが、男性ソロ。
T:ははははは。まあなあ、小田和正とKANはシングルで語ったし。
M:ハマショーとか語る?
T:ハマショーのこの売上はなんだこれ。
M:え、なんで驚く?
T:あ、でも「J-BOY」から脈々と売れてはいるのか。
M:うん。50万枚以上をキープしている。
T:よくわからんからハマショー。
M:俺もわからん。いつ何でブレイクしたのかもわからんし、誰が買っているのかもわからん。
T:今でもなんでだかチャートの上に来るしねぇ。
M:長渕との区別もわからん。
T:はははは。なぞだよね。そのグラサンの向こうに何が、という。
M:っていうかさぁ、二人とも興味ないものが被りすぎ。どっちかがフォローしないといけないのに。
T:ははは、前回もちょっとな。両者フォローなしというのがいくつかあったし。
M:でも、なんつーのかな、こういう不器用な俺みたいな路線って、1度売れると抜け目ないよね。 ずーーっとファンがついていく。
T:ガッチリ固定ファンがいるんだろうなあ。顔が見えないけども。 ミスチル桜井が影響受けているのはわかるけども、ミスチルの感覚で支持されているのかっつったらそれも 違うだろうしなあ。よくわかんないや。
M:カラオケでハマショーって人もいないもんね。
T:「悲しみは雪のように」は歌いますけども。うぉうぉうぉうぉうぉうぉーうおーって。
M:それは大ヒットしたやん。誰もが――って。
T:でもファンの人とかほら、「ゆうーべねむれずにぃー」とか歌ってるイメージがあるよ。 っていうか山崎邦正が真似してたイメージだが。
M:それかよ、っていうか俺もそれ思い出していた。それなんだっけ?タイトル。
T:「もうひとつの土曜日」だっけ。だからまあ私にとってはハマショーファン=山崎邦正というイメージ・・・ って怒られるなすいません。
M:確実に怒られる。
T:(笑)まあ、わからんものは語らないほうがいいという教訓を生かして・・・。あとヤマタツさんとかか。
M:男性ソロはわりとベテラン勢が並びましたね、ということで〆ちゃいます?
T:うん、当たり障りなく終わろう(笑)。

■というわけで1991年総括

M:ということで、1991年のチャートを見て回ったわけですが、どうですか感想は。91年ってどうよ、と。
T:90年代のメガヒット時代のいよいよ幕開けという感じで、同時に80年代の終わりっていうのもあるよね。
M:完全なる終焉だね。
T:次の92年から完全にもう90年代でメガヒットでJ-POPで、って世界でしょ。
M:89年で取り除けなかった残りかすも綺麗にここで掃除されという。
T:残りかすって、ヒドいっ。
M:えーー、じゃあ残滓とでも言い換えて。
T:ものは言いようだなあ。
M:って読み換えれば全く同じだが。とにかく、91年はスタートの年だなぁという感じがしましたね。 それがいい意味でのスタートであるかどうかというのは、微妙なんですが。
T:うーん、そうね。答えに窮するね。
M:「破滅に向かって」のスタートかもしれない、という。
T:エーーーックスという感じで。
M:飛べ飛べ飛べ――ッ、ということで。
T:屋根をつきやぶれーー、という感じで、
M:だからこういう一部でしかわからんギャグを入れるなと。
T:エックスジャンプをしながらお別れしましょう。
M:そうですね。ひとまず今回も長くなってしまいました。
T:毎度のことですが・・・ってこれはもうオフレコですか?
M:あ、じゃみなさん・・・
T:エーーックス(笑)。
M:ってこれが本当に締めかよ。
T:しめて、しめて。
M:なんだかなぁー。まあ、91年のチャートを振り返ってちょっと、聴いてみてくださいな。 非常に思春期を振り返る恥ずかしさがあって、二人してちょっとくすぐったかったというのを最後にそっと耳打ちして、終わりたいと思います。
T:さよーならー。


2005.06.28
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