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高河ゆん「アーシアン」

今日もまたくだらない悩み

(集英社版/2002/1〜4巻)
(新書館版/1988〜1994/1〜5巻<未完>)


人生くだらないことで悩んだりするものですが、今自分の悩みの中でいっとうくだらないのが、「高河ゆんの同人誌買おっかなーーー」って、悩み。

お前正気かっッッ。
それは地雷だ。絶対、地雷だ。
それでもいくのか、いこうというのか……。
心のWarning Bell鳴りまくりなのに、突き進んでいくというのか……。
そして少年は荒野を目指すのであった……。
少年じゃないけど。

いやーーー、だって、「アーシアン」のいままでの同人発表作品や商業誌でなし崩し的に連載中止になった作品まで掲載されている完全版の同人誌「The Secert Garden」が出たんだもんーーー。
2度と高河ゆんにお金は落とさんと誓ったわけですが、ちょっと、迷っちゃいます。
というわけで、さりげに集英社の完全版「アーシアン」を買っていないわけだがな。

だってさーーー、昔のちはやが見れるッッッ。し。
やっぱ気になるのよーー。

て、いきなりファントーク(なのかコレは……)してしまった。
あーーーーー、「アーシアン」……。
それは初恋の味にも似て、ちょっぴり甘くて、かなりビター。

この書き方。高河ゆんという作家と「アーシアン」という作品を知っているものならわかるけど、シラネーーーーッ、って奴にはなんの説明もしてないね。
ということで、説明。

えーーー、円高不況がいつのまにかバブルに切り替わる87年、ひとりの同人界の雄が新書館発行「ウイングス」でデビューしたわけよ。
それこそ、高河ゆんであり、そのデビュー作が「アーシアン」なわけ。
で、そんな彼女はデビュー曲が初登場第1位のジャニタレのごとく仕込みのファンを大量動員して、いきなり漫画業界を席巻、ベストセラー連発。
新書館をはじめとして、秋田書店、講談社、角川書店、光文社、学研と出版社の枠を越えて活動。
その多くの作品がOVAやイメージアルバムなど、メディアミックス化され、少女漫画界で一種のブームとなる。

が。

91年(だっけ??)の最初の休筆をはじめにズルズルと色んな意味で、落ちてゆく。
その理由は、色々あるが、まあ、だいたいの作品が冒頭にハッタリの効いた設定や萌えキャラや伏線らしき物を散らばらせておいて人気が出るのはいいが、いよいよ話が進んでいくと、休載連発、その間に画風はものすごいスピードで変わり、結局未完。もしくは初期設定を破壊し、かつ伏線全く回収せずに無理やり終了というやり方なのだから人気が維持できるわけがないだろう。
羊頭狗肉・竜頭蛇尾という言葉はまさしく彼女の作品のためにあるという。

個人的には萩尾望都、大島弓子、山岸涼子が少女漫画界の頂点だとすれば、高河ゆんとその同時期デビューの尾崎南、CLAMPがその最下層だとおもっとります。
24年組の息の根を止めた、ひいては少女漫画を潰したのがこいつらだ、と。

と、今となってはそんな私怨もあるわけなのだが、10年くらい前には私も萌えていたのよ。恥ずかしながら。
でもって、ほとんどの当時のファンがそうであるように、特に「アーシアン」を、ね。

「アーシアン」は簡単に言えば、設定を手塚治虫の「W3」と萩尾望都の「スター・レッド」から頂き、そこにやおいとキャラ萌えを足しました、みたいな作品。
(ちなみに高河ゆんは「You're my only shining star」(もち、タイトルはミポリンの歌からのイタダキ)でも「スター・レッド」から色々と頂いています)
もちろん、手塚・萩尾と比べると色んな意味ではてしなく落ちます。
で、そんなキャラ萌えの最右翼が「ちはや」。
いまでもファンサイトの人気投票ではぶっちぎりらしく、「アーシアン」はちはやのための作品であったといっても過言ではない。
といいきっちゃ、ダメ???

       ←こいつがちはや。


で、このちはやが、相手役の影艶といっちゃらいっちゃらしながら、「アーシアン(地球人)は滅ぶべきなのか」とかやっているわけ。
そうそう、こいつらは天使という名のエイリアンで有史以前から地球を監視しているらしく、アーシアンがいいことしたらプラス1、悪いことしたらマイナス1みたいにカウントしてて、マイナス1万になったらアーシアンを滅亡させましょうと取り決めているわけよ。
で、そんなプラス項目の調査員がちはやで、マイナス項目の調査員が影艶なのね。
で、そんな監視する天使たちにも色々問題があるらしく、羽が黒くなり、やがて死に至る謎の病気「黒色ガン」が蔓延したり、出生率が劇的に低下したり、と。
で、そんな黒い羽を持ちながら、何故かいたって健康な天使がちはやであって。
……って、こう書くとえらく社会的な作品だな、おい。
いや、だから実際はただ二人がいちゃいちゃしているだけなのだが。
設定はあくまで「借り物の設定」ってだけで、ただひたすらに本当に「やまも、おちも、いみもなく」話は進んでいきます。


      ←金髪のが相手役の影艶。

正味な話こいつらのラブラブっぷりを楽しむ作品なわけね。

……あっ、ちなみにちはやは、「男」です。
ポニーテイルが似合っても、リボンが似合っても、コサージュやドレスが似合っても、肩が細くて首が細くてもとにかく、男なんです。
なんで、とか、いうなッッ。
それがやおいだっ。
でも実のところ、いくらやおいキャラでもここまで「美少女」なのは、ついぞお目にかかったことないなーー。
あらためて見ても「萌え」だわ。
やっぱり、ちはやLoveかも……。
コレで頭が良くって、でもちょっとドジで、だけど健気で、ってあざといぜーーーッ。これで人気が出ないはずがない。

で、この二人の他にもラファエルとか、ミカエルとか、萌えキャラ満載なんですわ。
萌える以外の楽しみはないが、萌えだったら誰にも負けんッッ。そんな作品なんです。

……と、それだけなら、「わが青春の萌え作品」で話が済むんだけど、もちろん高河ゆん作品なので、この「アーシアン」もある地点から休載連発、画風大変化状態に入るわけです。
まぁ、このへんは「仕様」だからなぁ……。
と今なら諦めつくが、うーん、俺も一時期ずいぶんもにょったもんよーーー。

で、ともあれ、色々あった末にひとまず94年に連載が完結。
そこから長い、長すぎるほどの紆余曲折の末、前年、やっと単行本が出版、同人誌の完全版が先月発売という流れなんですわ。

ま、私は運良く連載を追っかけていたので、早い段階で「アーシアン」のことは「昔の画風のちはや萌え」以外全てなかったことにしていたけど、単行本で追っていた人は他人事ながら色々大変だったろうなーー。
あらためて、完全版の表紙とかを本屋で見るに、過激なほどに絵は下手になっているし、話は、メロメロだし。
ゆんが「エヴァンゲリオン」みたいな完結を望んでいたっつうなら話はわかるけど、そういうわけでもないし。

ま、いいけど、さ。
完全版もブック・オフで100円になるまで買わないし。
ただなーーー。
同人誌が……。
昔の画風のちはやが……。
でもなーーー。
高河ゆんに金を与えるという行為自体が許せないしなーー。
でもちはや、かーーーいいしなぁーー。
……(以下、無限ループ)……

というわけなのよーー。
ああ、馬鹿な悩み……。

関係ないが、この一連の「アーシアン」出版が『高河ゆん 最後の打ち上げ花火』という気がするのは気のせいだろうか。
いい加減、読者を袖にするようなやり方をやめりゃいいのに……。
さすがに本気で客離れしているように私の眼には映ります。

はっきりいって、こういうのをいままで業界にのさばらていた読者と漫画業界が奇跡だったわけで……。
だって、作品に落とし前をつけるのは作家として最低限のルールなのにそれが出来ないんだから。
あんた「アーシアン」の連載終了から単行本出すのに何年書けているのかと(……ここから説教が延々と続く)。


あ、そうそう。
このページだから、これに触れておかなきゃ。
「アーシアン」のイメージアルバムが3枚出ていますが、結構聴けます。
プロデュースは濱田金吾で、濱田金吾そのものなシティーポップスしています。
角松敏生とかオメガトライブみたいなアレ系ね。
ワゴンセールで見つけたら拾ったってやってください。

2003.02.27


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