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斉藤由貴 LIVE Premium meets Premium 2008

(2008.12.23/東京・浜離宮朝日ホール)


1. Ave Maria   2. プラハリアン 〜子供部屋の宇宙〜   3. 自転車に乗って   4. 土曜日のタマネギ   5. 3年目   6. ひまわり〜ひまわり(「いちご水のグラス」のメロディー Ver.)〜 いちご水のグラス  7. 卒業(Vintage Ver.)   8. MAY (Vintage Ver.)   9. AXIA 〜かなしいことり〜(Vintage Ver.)   10. 夢の中へ(21C Ver.)  11. 12月のカレンダー   12. Winter Wonderland   13. Christmas Night   14. 予感   15. ケ・セラ・セラ   16. 家族の食卓  


 「やな家」ではじけて以来、にわかに歌手活動が増えてきた斉藤由貴。08年は春にパルコでライブを二回、さらにリニューアルベストもリリースした。 昨年は手嶌葵で訪れた浜離宮朝日ホールの、今回は斉藤由貴の"Premium meets Premium"、同日に谷山と手嶌のジョイントライブのある関係で昼の部のみ私は訪れた。 わたしの斉藤由貴のライブは07年の谷山浩子の猫森集会でのゲスト参加時以来の二度目の参加。はたして今回は、どうなることやら。

 開演30分ほど前に到着。入口の花束を見ると「松本隆」。おお、御大の名が(――夜公演には観覧されてたそうで)。客層は20代後半〜40代前半あたりがメイン。斉藤由貴よりも年下のほうが若干多い。比較的新規の、アイドル時代をリアルタイムで知らなさそうな層もちらほらいる。 男女比は6対4で、男のほうが比較的多いか。男性は斉藤と同世代、女性はそれよりも年若い者が多い感じ。
 席に着き、入口でもらったチラシやアンケート用紙をぱらぱらと見る。アンケート「今後"Premium meets Premium"出演を期待するアーティストは?」 ああ、そういえば去年、手嶌葵で訪れた時、ここの欄に「斉藤由貴、書上奈朋子、谷山浩子、中森明菜」って書いたな、おれ。私以外にも、彼女の名をあげたものが多かったのだろうか。 確かに、普段はクラシックのコンサートに使用されるこの浜離宮・朝日ホールは、醸し出す雰囲気といい、規模のほどよい大きさといい、斉藤由貴の音楽とぴったり来る感じだものな。 昼公演にもかかわらず、全552席のほぼ満席で、定刻14時半。ライブがスタートする。



 客電落ち、舞台向かって左のクリスマスツリーの電飾がつき、「Ave Maria」のB.G.M.とともにメンバーが登場。 キーボード、ピアノ、ベース、ドラム、コーラス、の五人編成。どうやら春コンサートの、上杉氏、日高氏など(――明菜のライブでお馴染みの)メンバーとは違うよう。
 一曲目「プラハリアン」。舞台下手から斉藤由貴登場。ひとつ、ふたつ、と、歌詞に合わせるように一歩ずつ中央に寄っていく。 衣装は白いレースのワンピースにスウェードのブーツ、茶色のファーの肩掛け、頭と首にも同色のひれひれとしたものを巻いている。結構ロリータ調と言うか、少女漫画な趣き。 ボーカルは、意外にも(――といったら失礼かもしれないが)、安定している。もちろん元々、豊かな声量とか確かな音程・リズムとか、そういうものに拠っていた歌手ではないけれども、 歌手として本格的に活動しなくなってから10年以上経った者のボーカルには聞こえない説得力がある。
 さて、オープニングMC。
「皆さんこんにちは、斉藤由貴です。とうとうこの日がやってきてしまいました。とても緊張しています」
 しきりと緊張している旨を伝える。さらに、ぼやき。
「それにしても、なんで私だけ二回公演。そんなに歌えるんですかね。ま、旅の恥は掻き捨てということで――」
 とはいえ、そこはいつもの度胸のある斉藤由貴。
「クラシックのホール、いろんなことができると思い引き受けたけれども、結局私らしく歌うだけ」
 決然と言い切る。
 このあたりの、彼女の苦笑いとテレと脱線が入り混じりながらのトークは、その昔、ラジオ「猫の手も借りたい」などで見せたのとまったく同じ。ああ、変わらないなあ、彼女。
「わたしの歌はぬるっとした、たるーいのが多いんですが」と自嘲しつつ、「最初は我ながら好きだなぁ、この曲歌いたかったなぁ、という歌」 ということで「自転車に乗って」「土曜日のタマネギ」と谷山浩子作品が披露される。本当に斉藤さん、谷山浩子のコアなファンなんだなぁ。
 「自転車に乗って」は、合間に入るパーカスのポコって音がなんだかファニー。「土曜日のタマネギ」は、ハケのドラムとぶっといウッドベースがとってもジャジーで色っぽい、ライブで聞いていつも驚くけど、案外谷山作品ってジャズの匂いがあるんだよな。
 斉藤由貴はジェスチャーをまじえ芝居をしながら客席にむかってアプローチ、演じながら歌う、という感じだ。このあたりは昨年の猫森集会と同じ、最近の彼女はこういうスタイルなのだろう。
 時折の涙まじりの声も、またはひっくり返りそうな危うい声も、素のようにも芝居がかっているようにも、どちらとも云えるし、どちらとも云いきれない、いわゆる虚実皮膜の演技。 どうもMC時の声の様子だと咳したり鼻をすすったりと、すこし風邪気味のようだけれども、それが気にならないほど"舞台人として"仕上っている。「土曜日のタマネギ」の「要らない女になりました」の部分なんざ、惨めさが悲劇にも喜劇にも受け取れる迫真の演技だ。 この人は、演じることが本当に好きなんだなぁ。



 今回のライブのセットリストは、3月のパルコライブの後、事務所宛に届いた様々な「こんな歌を歌ってほしい」というメールや、あるいはweb上で斉藤由貴に関して色々と語っているところなどをちょこちょこ盗み見して決めた、のだそうだ。昼夜で若干、曲も変更する。 20年ぶりに来た方、3月に来た方、今回昼夜両方見られる方などなど、曰く「バージョンの違う方、皆さんに楽しんでいただけるように」という計らいだという。今回のセットリストやら鑑みるに、結構、斉藤さん、ファン思いでバランス感覚があるんだよなぁ。
 そんなリサーチのさなか、意外に人気があった曲、ということで、「三年目」が披露される。ベスト盤にも収録されたこの曲、人気曲だというの認識が斉藤さんにはないのかぁ。まあ、ご本人「これは、わたしの作詞した曲でしたっけ?」というくらいなんですけど。 ちなみにリリース時「この歌のふたりは別れるの?それともまだ続いていくの?」という質問が多かったそうですが、ご本人「これはどう聞いてもむにゃむにゃ」と誤魔化していましたが、同時発売のビデオ作品の「PANT」見れば、一目瞭然。

 そしてついてに来た。ファン垂涎、今回のびっくりどっきりメカッッ。
 「3月のパルコはベストセレクションな選曲だったので、今回は『実験ライプ』、色々なことにトライしてみたい」ということでちょっと変わったことを、と披露されたのが――、出たっ。「ひまわり」〜「いちご水のグラス」メドレー。この曰くつきのふたつの曲についにトライですよっ。
 当時、MAYUMI作曲の作品に、谷山浩子作詞の「ひまわり」と斉藤由貴作詞の「いちご水のグラス」、ふたつの詞が、どういう経緯なのかは定かではないが(――谷山の仕上がりが遅かったとか、斉藤がこっそり勝手に作ってしまったとか、諸説ある)バッティングしてしまった。 結局、斉藤作詞バージョン「いちご水のグラス」が本採用となり、アルバム「チャイム」にそれは収録されたのだけれども、谷山作詞の「ひまわり」をボツで眠らせるにはあまりにも惜しい素晴らしい出来なので、「ひまわり」の詞先で、こんどは曲を崎谷健次郎に発注。そして生まれたのが「風夢」収録の「ひまわり」。
 これはもう、当時、谷山・崎谷・斉藤の三人がキャニオン長岡班のアーティストだったからこそで来たウルトラCの三位一体作品で、両曲とも斉藤作品で屈指の名曲なのは確かなんだけれども、 今回、この流れを元に「ひまわり」(谷山浩子作詞・崎谷健次郎作曲)〜「ひまわり(谷山浩子作詞・MAYUMI作曲)」〜「いちご水のグラス(斉藤由貴作詞・MAYUMI作曲)」と一気にメドレーで披露。 谷山浩子作詞・MAYUMI作曲の「ひまわり」は、以前、谷山浩子がライブで披露したことがあったけれども、もちろん斉藤由貴による歌唱は本邦初。ファンにとっては念願ともいっていい、ついについにの披露なのだっ。
 これがこれが、もうとにかく、良かった。ただの余興に終わらない、圧倒的な存在感と完成度。 みっつのバージョンどれも情念がこもっていて素晴らしかったんだけれども幻になったいちご水バージョンになった「ひまわり」の、薄氷の上を歩くような、危険なまでの繊細さっっ。たまらんっっ。 「ひまわり」の一声で立ち込めるガラス細工のような透き通った感じが、「嘘なの」一言の告白でバラバラと崩れるところなんざなんっってもったいない、なぜこれがオクラに、と、わたしは思いましたよっっ。 これはもう、斉藤由貴の女優魂も大炸裂するしかっっ、という。一幕の舞台になっていたね。絵が見えたよ。 ――サビ部分のハメコミが前半の圧倒的な完成度と比べると、斉藤さんには歌いづらそうに見えたので、それがボツった原因なのかなぁ……。いやいやしかし、冥土の土産にいいモノを見たよ。
 しかしこの「ひまわり」と「いちご水のグラス」のふたつの詞。「届かないまますれ違う恋情」「別れ」というテーマも同じなら、言葉の選び方もかなり近しい。谷山浩子のほうが、作詞家として技術が勝っている分、設定が三角関係で複雑になっているけれども、やっぱり、ふたりはよく似ているんだなあ。



 と、いうわけで、前半のハイライトが終わり――、というところでバンドメンバー退場。すわ、何事。「えええ」と小芝居する斉藤さん。
 いや、なんてことない。今回は「実験ライブ」。この音の響きが素晴らしいことで有数の浜離宮朝日ホール、普段はクラシックのコンサートで使用するこのホールで、これから、わっざわざカラオケで往年のヒット曲を数曲歌ってみたい、という。
 これはねぇ、斉藤さん、暴挙。暴挙ですよ。
 スタッフも、それはどうかと留めたものの「当時の音源に今の自分の声はどう響くのか、試してみたい」と。
 元々斉藤由貴の楽曲は音源自体がエバーグリーン指数高いわけで、斉藤由貴も、声から当時の幼さはさすがになくなったものの、そのかわり説得力は演技力とほぼ比例する形で増したわけで、まぁね、ヘンテコには、なりませんよ。
 あるプロデューサーから「水戸黄門の印籠のようなもの」といわれた「卒業」も鉄板だったし、「MAY」の涙声の熱唱も、当時からさらに深化していた。当時のボーカルに全然負けていない、むしろ勝っているよ。 でも、これをわざわざやるというのが、前々からそう思っていたけれども、いやぁ、変わったお嬢さんだ。
 まあ、ファンの中には、昔のヒット曲を変にアレンジして欲しくない、っていう人が結構が居るようなので、ここでの披露が「卒業」「夢の中へ」「AXIA」「MAY」とすべて往年のヒット曲だったところからいって、そういう対策でもあったのかな。 あと、ネット情報などによると、ここが昼夜公演でセットリストを大きく変えたところだったらしく、バンドさん対策でもあったのかもしれないなぁ。
 ちなみに音源はすべて「Vintage Best」収録バージョン、こまかいニュアンスはそれぞれ変わっている。 というわけで、このパートの終わって「私ひとつ嘘をついていました」と。
 「夢の中へ」のあの当時のアレンジメントで歌うとなると当時の振りつきになってしまう。それだけは出来なかったらしい。ふむふむ。

 さくさくっとカラオケによる代表曲パートも終わったところで、次はお遊びコーナー。「斉藤由貴・カルトQ」――って、いよいよ猫森集会の様相を呈してきたぞ。 ――やるんですよ、谷山さんは、ライブ最中にクイズしたりじゃんけん大会してっていうレクリエーション。
 様々な斉藤由貴に関するクイズを出題して正解者には、斉藤由貴が自分で選んで買ってきたクリスマス・キャンディーをプレゼント、という趣向。
 「ドラマ『我輩は主婦である』のわたしの役名は?」 答・矢名みどり
 「ドラマ『おばんざい』に登場したフランス人の大工の役名は?」 答・ピエール
 「今年春に行ったパルコライブのラストソングは?」 答・家族の食卓
 「昔私が飼っていた珍しい動物は?」 答・アライグマ
 「そのアライグマとわたしが登場したドラマのタイトルは?」 答・Lucky 天使都へ行く
 「『おもいっきりいいテレビ』、私がこの冬、ゲスト出演したその回の特集は?」 答・インフルエンザ
 ――といった数々の質問があったのだけれども、いやあ、このパート、由貴ちゃんの真性サディストっぷりが大炸裂。
 正解者に賞品のキャンディー渡しながら、「そんなにおいしくないです。まぁ、子供だましですね」とばっさり云ったり、 一度正解した人がまた違う問題で回答しようとして「あなたさっきこたえたでしょう、ダメに決まってますよ」と問答無用で却下したり、 「おもいっきりいいテレビ」の問題を正解した中年の男性に向けて「こんな時間のテレビ見てて大丈夫なんですか」と、 斉藤さん、お客さんをもてなしているのか、あしらっているのか、まるでわからない。
 去年の猫森でも思ったけれども、母になっての彼女って、黒柳徹子的な傍若無人っぷりに近い。天真爛漫に、きっつい。 周囲への配慮まるでなしで畏れ知らずに、ど真ん中豪速球のボールを投げてくる。すごいなあ、こわいなぁ、素敵だなぁ。
 途中、後方席の小さな子供がはいっと元気よく手を挙げるのに、「じゃ、そこの奥の真ん中の小さな子――」と斉藤さん答えつつ眼を凝らしたら――「あ、ダメだ、あれうちの長女だ」。
 爆笑のうちに、クイズ大会も終了。



 曰く「さてさてコンサートも佳境――って、まあ、勝手にそういうことにしましたが……」てことで、 クリスマス・12月にちなんだナンバーを――「本当は天皇誕生日にちなんだ歌があればいいんだけれども」と、ジョークを飛ばしつつ、ラストスパートでダダっと披露。
 まずは「12月のカレンダー」。この歌、息継ぎがまったくなく、とにかく難しい。レコーディングに時間のかかった曲ベストスリーに入るほど、とか。歌えるかどうかわからないけど、とエクスキューズしたけれども、おけおけ、全然大丈夫。 パーカスの音が、これも効いていて、よかったなぁ。――つか、今回のライブはドラムとかベースとか低音が凄くよかった、うん。
 基本的に今回のライブ、できるかなぁ、大丈夫かなあ、と、斉藤さん、色々と弱音を吐きながらも、なんだかんだいってきちんといい仕事している。歌詞間違えも目立ったのは「卒業」くらいだったし、ぐぐぐっと表現力のあがってのびやかなボーカルは、アイドル時代を完全に凌駕していた。

 さて、次はクリスマスのスタンダードナンバー「Winter Wonderland」。実験ライブということで、色んなことにトライ、カバーもごりごりやりますぞ。
 横浜の自宅近くのスターバックスでこのライブの打ち合わせをスタッフとしていた時に、Goldfrappのカバーしたこの曲が流れてきて、これだ、と。 やぁ、相変わらずいいセンスしてます。伊達に谷山浩子や遊佐未森のファンじゃないぜっっ。ってわけで、アリソン・ゴールドフラップの繊細なボーカルをイメージしてって感じなんだろうけれども、斉藤さんの鈴の音のような高音が、凍てつくように冷え冷えとして、心地いいっっ。最高っっ。もし、歌手として新作を発表するなら、こういうマニアックなサウンドでやって欲しいよなぁ。 斉藤さんとエレクトロニカ、絶対あうと思う。

 最後は「クリスマス・ナイト」。88年発表で、実際クリスマスの夜にレコーディングされたという、曰くつきの曲。もちろん、斉藤由貴の自作詞。
 歌前、斉藤は、ハワイで家族と過ごしたクリスマスの話などを交えつつ、クリスマスの意味、家族の大切さを語った。
 「もしも、今、自分に余裕がない、愛にみちていないなぁと思っているなら、尚更、大切な人に、そのなけなしの愛を、かき集めてでも、贈ったほうがいい。それはとてもかけがえのないことになると思う」
 途中、脱線しつつ、おちゃらけつつ、毒を吐きつつも、最後の最後は、何事にもじつに真摯に向かいあう。このあたりもほんとう、ラジオ番組などで垣間見せた昔の彼女と全然変わらないなぁ。斉藤由貴は静謐に歌い上げ、ひとまず本編終了。

 真っ赤なスモックのような可愛らしい衣装をまとってのアンコールは、やはり来たっっ。「予感」。ファン人気トップクラスのナンバーだっっ。これも綺麗だなぁ。
 ライブを迎えるこの日まで、悩みの日々だった、しかし、結局なるようになるしかない自分らしくあるしかない。――ということで、次は、尊敬する母の言葉でもあり、彼女の座右の銘、「ケ・セラセラ」だ。これも本当にのびやかな、今歌いたい歌を歌っている――って云う楽しさの感じられる出来。ライブで披露するのは初めてだろうに、完全に自分のものにして自由に歌っている。聴いててこちらもふわふわと軽やかになる。心地いいなぁ。
 彼女の歌手としての素質は、確実にシャンソニエだね。喜怒哀楽すべてを演じながら、愉快に楽しく明るく真摯に、客席に向かってアプローチしていく。
 斉藤さんの家族も観覧したこのライブ、パルコと同じになってしまうけれども、最後はこれしかない、ということでのラストナンバーは「家族の食卓」。とつとつと日常のささやかな幸福の大切さを歌い、今回のライブのすべてが終了した。歌と楽しいトークで包まれた実に暖かな2時間強だった。



 まとめの感想。
 斉藤由貴、表現者として本物だなと、わたしは思った。
 歌手として積極的に新譜を出していた時代から15年以上経過した斉藤由貴の、コンサート。 聞き手はなにを欲してそこに集まるのか、それは、斉藤本人も恐らくライブ当日まで掴みかねていただろう。
 正直言って、このライブ、安易に仲良しこよしのナツメロ大会で終わらせることも出来たと、思う。 みんなの知っている歌を歌って、知っているからみんな満足。過去をノスタルジックに追認して、はい、おしまい。まあ、こんなものかな。そういう形で終わらせることは出来た。
 しかし、彼女は、逃げず惑わず、愚直ともいえるほどまっすぐにすべてをさらけ出し、「現在形の斉藤由貴」に挑戦した。
 様々なトライをする。歌ったことのない歌も、歌う。もちろん昔の歌も、今の自分の歌として、歌う。 聞き手の求めるものをできる限り想像して、それに真摯に応えつつも、それでいて、今の自分らしい形を模索し聞き手にアプローチする。その結果のセットリストであり、舞台での表現だったと、私は感じた。
 曲間にはラフで気の置けない会話を繰り広げながらも、それも含め、楽しんでいただこうという、その場をホストする斉藤由貴の矜持のようなものがそこに見てとれた。

 そのライブで披露されたかつての名曲は、よりすばらしい表現に磨きあげられていた、今回はじめて取りあげた曲は、新鮮な驚きがそこにあった。それが、なによりすばらしかったし、嬉しかった。
 「歌を歌うことも、芝居をすることも、詩や小説を書くことも、外に出る形が違うだけで、表現するということでは、同じ。私の中では区別がない」
 まだ独身だった頃、彼女はこのような発言をしていた。これは、彼女にとって、まぎれもない真実だったのだろう。
 歌手としては10年以上、活動はなかったが、表現することにおいて、怠ったことは一度もなかった斉藤由貴、役者として文章家としての活動でさらに彼女は深化し、そして、このライブがあった。
 錆びついてはいないどころか、むしろより研ぎ澄まされていた彼女の、いまの歌をもっと聴いてみたい。そう私は感じた。
 オリジナルアルバム、出して欲しいなぁぁぁぁぁぁっっ。


※ 今回のバンドメンバー、聞き取りで不正確ながら下記する。正確なものを知っている方、いらしたら是非ご一報を。
Pf.ミヤシタマサシ(バンマス) B.マナベイシイ Dr.カワグチショウジ Key.サイトウシノブ Cho.マリア

2009.01.10
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