クリエイターであれば、その人格や行動ではなく本業の成果だけで判断するのが正道であろう。 しかし、そこまで人間ができあがっていない私は、そういった端々のことで気にかかり、作品すらもまともに取り合わなくなることがままある。 そういった器の小さい私の話。 ある日、「はなまるマーケット」という番組に作家の辻仁成がトークコーナーのゲストに出演していた。 ちょうど中山美穂と結婚してしばらくの頃だと思う。(今調べたら2002.12.03だった) と、出たはいいのだが、彼のしゃべりがどうも歯切れが悪い。 その歯切れの悪さは、テレビ慣れしていない人の要領の得なさであるとか、作家ゆえの言葉選びの熟慮とかとは少々違うように私には映った。 元々彼はエコーズというロックバンドをやっていたのであちらがわの人間であるし、まったく慣れていないということなどありえない。 要は、あまりしゃべりたくなさそうなのだ。 そして司会者の二人に結婚生活や中山美穂のことを聞かれると「ディレクターは絶対、プライベートなことは聞かないと言った」と言い出す始末。 正味な話、何故、今トークコーナーのゲストに出ているかということがこの男はわからないと見える。 相手は当代トップクラスの美人女優だ。しかも、結婚後彼女もあまりプライベートを口に出していなかったし、なによりマスメディアにもあまり顔を出していなかった。 これで彼女の事を聞かないほうが間違っている。 だいたい、この番組のメインの視聴者である主婦層などは「中山美穂の旦那」としか辻仁成の事を知らないのだから。 プライベートをまったく世間に知らせたくないのならトーク番組など出ないことである。 それを受け入れたくせに、「聞かない約束だ」などというのはまったく世の中をわかっていない。 だいたい、ワイドショーの記者会見でなく、主婦相手のゆったりしたトークコーナーなんだから10聞かれたら1教えてあとは適当にジョークとユーモアで斬り返せばいいのだ。 それができないで、作家というのだからまったく呆れる。 と、大変私の心証を悪くしたのだが、話は更に続く。 この番組ではゲストが撮った写真と共にトークを進めていくのだが、その写真がまたいやらしい。 なんか巴里の自宅の薔薇かなんだかの一輪挿し(記憶曖昧)かなんだかが妙な感じで咲いているのをおしゃれっぽく小奇麗に撮ったので、でそこでくだらない能書き垂れる垂れる。 私生活語りたくない言ってその矢先にこういった「意図的に演出されたモデルハウス的日常」をだされて、もう、虚飾の匂いがぷんぷん。 で、次の写真は、ワープロの写真で。 で、彼曰く「日本語を大切にしたいから、パソコンでなくワープロがいい」とか激しく意味不明なことをおっしゃる。 お前、日本語大切にしたいなら手書きだろ、ひとまず。 「パソコン・ワープロ」と「手書き」の違いはわかる。 パソとかワープロだと漢字の部分と仮名でひらく部分がだいぶ変わる。 これは実感として知っている。あと、漢字でも例えば同じ「あか」の表記でも赤と紅と朱とがあるのにパソ・ワープロだと安易に一発で「赤」しか出てこなくて「新規登録」しなきゃならん、とか。 私も「既う」とか「搏つ」とか登録単語でいれているし。 がね、ワープロとパソの文章入力における違いってなによ。 おまえ、自分のパソに対する適応能力をものすごーーく都合のいい解釈で済ませていないか?? と、ここで元々それほどいい印象持っていなかったこの作家、私の中では完全に作家気取りの勘違い野郎に決定です。 となると、彼のやたらとつとつとしたしゃべりも鼻についてくる。 文士気取りで深刻ぶって眉をひそめて、人生とはとか愛とはとか唸っていればそれで商売事足りるとでも思ってんのか。 こういうのはその実、耳が腐るようなくさい台詞言っておねェちゃんを口説き落とすくらいしかできないのだ。 その昔、純文学が流行っていた頃はきっとこういう奴が掃いて捨てるほどいたのだろうなぁ。 と、そこまで思わせたのであった。 ちなみに司会が「中山美穂さんは原稿読みますか」との質問に「結構、厳しいですよ。本が好きな人だから」と応えた彼。 「アドバイスは?」と聞かれると「シロウトに……」とあきらかに我が妻を侮蔑したような発言にビックリ。 お前は太宰か芥川のつもりか。 だいたい、そう思っていたとしてもテレビで言うべきでない、むやみに敵を増やすだけだ。 どういうつもりで彼が小説を書いているのかしらんが、プロってことは飯のタネなんだから、不用意に作品以外の部分で評価を下げるようなことやったりいったりするは慎むべきだろ、おい。 嘘でもいいから『面白いアイディアなんかは次作の参考とかにしますね』くらい言えないのか?? とはいえ、わかってないともいえるわけで。 本好きの20〜30代女性が文学のベストセラーを引っ張っているという事実をお前知らないな。 春樹もぱななも俵も柳美里だって、お前の奥さんぐらいの層が火をつけたんだぜぃ。 ま、彼の作品は崇高な純文学だから売上げなんかに目は奪われないのかもしれませんがね。 ともあれ、私はこのトークによって、絶対彼の小説を読むことはなくなったので、別に私の人生と接点は永遠にないだろうし、好きなだけ自己陶酔の純文学していただいてかまわないのですが。 という、作品以外で、作家を嫌いになったという、どうでもいいそんな話であった。 もちろん、この話には「よくもみぽりんをっっ!!」という嫉妬が多少あることを最後に付け加える。 |
2003.09.19