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メイン・インデックス歌謡曲の砦>谷山浩子コンサート 猫森集会 2011 (ゲスト 山川恵津子)

谷山浩子 猫森集会 2011

Bプログラム

「過去を知る女」

(2011.9.24/全労済ホール スペースゼロ)
1.お早うございますの帽子屋さん 2.風を忘れて 3.河のほとりに 4.すずかけ通り三丁目 5.赤い靴 6.不思議なアリス 7.水蜘蛛 8.やまわろ 9.DEAR MY FRIEND 10.テングサの歌 11.見えない小鳥 12.初恋の頃 13.猫が行く 14.猫の見た夢 15.てんぷら☆さんらいず 16.カントリーガール 17.ねこの森には帰れない 18.エッグムーン
Vo,Pf:谷山浩子 Syn:石井AQ  Key,Cho:山川恵津子 (Guest)


 ふたたび猫森集会!!
 猫森集会・10回目記念、さらに芸能活動40年目を迎えた谷山浩子、今回のゲストのある意味目玉、山川恵津子さんがついに登場!!というわけで、この回にも参加。今年二回目だぜっ。
 さて。なぜ山川恵津子さんが特別なのか。
 世間一般では、80年代中期から編曲家として数々のヒット曲を送り出し、日本レコード大賞編曲賞を女性ではじめて受賞(小泉今日子「100%男女交際」)するなど(――70年代後半から80年代にかけてのポップスのサウンド洗練化に、萩田光雄・船山基紀・大村雅朗などのヤマハ出身の音の建築家達が多大な貢献をしたわけだけれども、その一群の紅一点が彼女。85〜87年のいわゆるおニャン子クラブブーム時に、一気に飛躍。個人的な山川恵津子ワークスの白眉は、渡辺満里奈の諸作。デビューアルバムの「MARINA」から89年の「TWO OF US」まで、メイン編曲家として山川女史はホント良質なサウンドを構築している――と、いきなりの閑話休題)、編曲家としての八面六臂の活動をする以前、彼女は谷山浩子のコンサートのサポートミュージシャンだったのだ。
 正確に言えば、77年の本格デビューから80年にメンバーを抜けるまで(――「みずいろの雨」「パープルタウン」などのヒットで売れっ子となった同じヤマハ所属の八神純子のサポートに重点をおくための離脱だったのかな?)。言い換えれば翌年に橋本一子と出会い、以降芋づる式に藤本敦夫・石井AQ・斉藤ネコらと出会い、自らの世界を本格的に構築する以前、唯一(――と言い切っていいだろう)の谷山浩子の音楽の理解者が、彼女だったのだ。この時代に谷山浩子が出会ったミュージシャンで、その後もアレンジを依頼するなど、強いつながりのある者は、彼女しかいない。一時は、同じアパートに隣同士で暮らしたとも言う。だからタイトルも「過去を知る女」と。
 前置き長すぎだが、そんなこんなで、まさにアニバーサリーだからこその、温故知新、そんなゲストなのである。

 つーわけで、なつかしのファンも期待しての来場だろうほぼ満席でライブはスタート。一曲目はもちろんヤマハからリリースした一発目「お早うございますの帽子屋さん」。
 ちなみに谷山さんは白黒のボーダーのインナーに白シャツ、ベージュ系のチェック(――だったかな)の大きなスカーフをかるくゆわえた格好。一方の山川さんは「ネコっぽい感じで」ということで、豹柄っぽいふわふわのデカ帽子が目立つ目立つ。
 さらに続けて、まずはファーストアルバム「ねこの森に帰れない」から「風を忘れて」「すずかけ通り三丁目」「河のほとりに」。「河のほとりに」は間奏の語りも珍しくしっかりとこなし、なつかしの谷山浩子・セブンティーズ、の方向でがっつりと攻めていく様子。
 谷山浩子と今の相棒・石井AQと昔の相棒・山川恵津子、という、いわゆる石野真子「春ラララ」状態(――って、このたとえわかる?)な三人な関係性、もちろん恋人ならば修羅場確定だけれども、ミュージシャンだから無問題。三人キーボードの特殊編成も意外と無問題だ。
 今日のAQさんは山川さんに敬意を払ってか、わりと抑え目。かなり山川カラーな雰囲気になっている。当時のライブを知らない私だけれども、大体こんな音の質感だったのかなと、想像。

 さらにセカンド「もうひとりのアリス」のA面「赤い靴」「不思議なアリス」、トーク挟んでB面から意外な二曲「水蜘蛛」「やまわろ」。
「赤い靴」「不思議なアリス」では山川さんのコーラスが印象的。山川ボーカルは、谷山さんのボーカルとの親和性が非常に高いっっ。トークだと、かなりハスキーめな山川さんだけれども、歌うと結構七変化。「テングサの歌」の「♪トマトっ」の一声をはじめ、ロリロリな声を中心に結構なんだってやっちゃいます。山川・谷山コンビ時代の魅力のひとつに二人の声のハーモニーってのもあったんだろうなぁ、とこれまた想像。
 「水蜘蛛」は、谷山さんのこれまた語りが、二十歳そこそこそで吹き込んだスタジオ盤よりぐっとおどろおどろしく、ホント化け物が水底からぬをををっと現れる雰囲気。やっぱコレは年の功? そして意外とジャジーな難曲「やまわろ」も、今回もびしっと決まりました。

 ――というわけで、おっ、もしかして今回、山川コンビ時代の80年までのアルバム順披露? でもそしたら次、黒歴史「鏡の中のあなたへ」に触れるけど、いいの? とおもったら、やっぱりここで段落。今回の目玉コーナーに。
 今回は三人キーボードという変態編成なので、それぞれの使っているピアノ・シンセを交代して使ってみよう、と。見た目的には「ごきげんよう」のサイコロトーク。プレイヤーの位置を曲ごとにぐるぐるチェンジ。
 まずは谷山→山川・山川→AQ・AQ→谷山となり、山川恵津子作・編曲で西田ひかるに提供した「DEAR MY FRIEND」を山川さんのボーカルで披露(――こんな曲かいたっけ? と、今回のライブのために楽譜起こししてもまったく気づかなかったというのだから凄い)、山川さんいるならコレやらなくっちゃね、の人気ナンバー「テングサの歌」。
 結構音の質感が変わって面白いね。これだけでいつもの猫森っぽさががらっとかわった。というか、猫森集会ってやっぱり、マスターである谷山浩子のピアノの音が全体の基調となっていたんだな、と。
 さらに続いて今度は谷山→AQ・山川→谷山・AQ→山川に位置にうつり、「見えない小鳥」「初恋の頃」。AQの機材に慄きつつ、歌い始め――うん、やっばり、やったね谷山さん。「ごめんなさい」で歌い直し。見てて「マイクの位置、あれで大丈夫?」と思ったもの。
 今回のこの企画で谷山さん「私が一体化できるのは生ピアノだけと痛感した」と。確かになー。ぐだぐだ覚悟の企画――でも猫森って年に一度の谷山浩子・感謝祭でもあるんだから、ま、いいか。
 それにしても、猫森集会は、回を重ねるごとに遊びの要素がどんどん増えてきて、いいよね。これからもこの方向で、もっともっと自由になっていいとわたしはおもうぞっ。

 ところで。
 今回の目玉でもあるのが、トーク。「過去を知る女」だけあって語っていただきましょう。谷山浩子の過去を――っと思ったら、山川さん、色々あった過去を忘れまくっているご様子。
 あー、でも、各方面からやってくるオファーを矢継ぎ早にこなしていく作・編曲家って、こんなもんかな―、と思ったり。今年だって八神純子さんのアルバム制作に取り掛かりつつ、岩崎宏美さんのライブをサポートしつつ、もちろんその他オファーもこなしつつ、んで今日は谷山さん、だもんなー。過去をどんどん水に流して忘れていかないと、数こなしていけないのかも。
 ――とはいえ、それでもボロボロと出てくるナツカシ話は、私の知らない時代というのもあって、やっぱり興味深い。
 アルバム「ねこの森には帰れない」を聞いたヤマハグループの当時の総帥・川上源一氏が「もうちょっとフツーの大人のラブソングのほうが」と言った、とか。山川・谷山のふたりが合宿かイベントかでヤマハ・合歓の里に訪れたとき、当時の担当ディレクター・細川ともつぐ氏にお化けの悪戯を仕掛けられ、山川さん泣きじゃくった、とか。昔はふたりともキーボード弾いている時、微動だにしなかった、特に山川さんはまるで勉強しているみたいに不動で、とか(――見た感じ、山川さんはわりと今も背筋のばして動かないけども、一方の谷山さんは、前後左右にローリングしたり、時に軽く上下もするし、かなり動きに表情あるよなー。動作から、あ、今楽しそう、ってわかるもの)。「カントリーガール」の四番は最初からあったけれども、ディレクターの細川氏の一存でシングルには収録されなかった、とか。ヤマハの奥島さんはGSのサベージに所属していた、とか。
 純粋にへー、そうなんだと思いつつ、しかし、いちいちの話が長いっっ。今回、トークが留まることを知らないのだ。
 トークなげぇっっ、と思った猫森といえば斉藤由貴ゲストの回が印象的だけれども、あちらはボケとツッコミの漫才大会、こちらは女子会というかパジャマトークというか、友達の家とかファミレスでだらだらしゃべっている風。
 内容も、芸能界とライター・ミュージシャンは近くて遠いというテーマの話でも、「木ノ内みどりさんと渋谷で会った」とか、「中島みゆきと渋谷西武であった」とか、なんかもー、一般人が町で偶然芸能人見かけてそれを友達にしゃべっているのとなにが違うのか、という。ホント茶飲み話レベル(――や、でも、晴れた日の渋谷西武の渡り廊下で赤い蛇の目の傘さして向こうから歩いてきた妙齢の女性=中島みゆきって、これ、ちょっとしたホラーですよ。顔くっつくほど近づけて「あ、えっちゃん」と微笑んだという、ここ含めて、マジ軽くホラー)。
 基本裏方、谷山さんとは旧知過ぎる仲、ってわけで山川さんがふわっとその場で思いついたことをそのまま話し出すのに、谷山さんもそのまま乗っかってつらつらつら〜〜っ。いいのか、こんな素で。
 「見えない小鳥」「猫が行く」と二回の歌い直しをはじめ、谷山さんも寛ぎすぎて、本気で段取り忘れる瞬間がちらほら。公開リハーサル?これ。

 ――というわけでそろそろクライマックス。山川さんいるんだからやっぱりコレやんなくっちゃ、という「てんぷら☆さんらいず」「カントリー・ガール」(――久々のシングルバージョン)を含めた四曲をずざざざっと盛り込んで、ラストは「ねこの森には帰れない」。今回は記念ということで最後は全部コレなのだとか。アンコールは「エッグムーン」。谷山は珍しく立ち上がりハンドマイクで歌唱。途中、山川のピアノのところにちょろちょろと入って連弾する谷山。放課後の女学生風のコケットリーをさらっと披露してライブは終了した。

 サウンドメイク的には、きわめてシンプルかつオーソドックスなもので、橋本一子さんとの出会い以降、よりコアに深化していった谷山浩子の世界とはちょっと違う雰囲気のライブだったけれども、この時代の谷山浩子があったから、今もあるんだなー、と、しみじみ感じた。
 そして、なにより思ったのが、ライブが大っ嫌いで、作る作る曲にダメ出しされて周りに(山川以外の)理解者がまったくいなかった谷山浩子が、30年近くなって、ここまで自由にライブができるようになったということ。それを当時の相棒とふたたび楽しみあうことができたということが、しみじみ、素晴らしいことだな、と。
 ホントね、かつてライブでは常に直立不動、ひたすら緊張しまくっていた人のライブとは、とても思えないもの。この場の空気を誰よりも谷山浩子自身が楽しんでいた。
 40周年を直前に控えて、どんどん自由になっていく谷山浩子。これからも楽しみ。そしてもちろん来年の猫森も、楽しみ。色々と記念の一年だし、今回同様のアニバーサリーゲスト、まってますよ。橋本一子さんとか、手嶌葵さんとか、中島みゆきさんとか(←さすがにこれはないか)。

2011.09.26
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