田中裕子 「女が男を愛せる瞬間」
1.ジィ−ダンダ 2.北京秋天 3.砂に風 4.不祥寺 5.アハハのハ 6.HARD TIME LOVER
7.夢飾り 8.スロ−ダンスを夜明けまで 9.キャンセル 10.女が男を愛せる瞬間
人はそれをスキャンダルという (1987.05.21/CBSソニー/32DH-677) |
うわっ、すごい盤みつけちゃった。 女優の田中裕子の「女が男を愛せる瞬間」ってアルバム。1987年作で、プロデュースは沢田研二、ってもうこれで何がすごいかジュリーマニアのあなたならお分かりでしょう。 えー、沢田研二が元・ザ・ピーナッツの伊藤エミと離婚したのがこの年、その離婚の理由となったのが、女優田中裕子と沢田研二との不倫にあった―――もちろん2年後二人の結婚によってこの関係が事実であったことが裏付けられてしまう。っつーわけで二人は当時の芸能スキャンダル渦中にいたわけですね。 で、そんなスキャンダルの主役の出したアルバムが『女が男を愛せる瞬間』つーんだからただ事でない。しかもプロデュースがもう一方の主役なのだから。 戦々恐々でCDをトレイに載せてプレイボタンを押す、といきなり飛び出す「ジィダンダッダッダッ」と威勢のいいジュリーのバックコーラスにズッこける。 この2人、隠すつもりなんて毛頭ありゃしないよ。 しかもジュリー最後にゃ「ノーノー コメント」とかいっているし。 でもって、歌詞をよく見ると、これまた驚く。 風は今 私に吹きつけるスキャンダルの嵐は全て愛ゆえのことだ覚悟して今その風の全てを受けると宣言。更に続く。 好きか嫌いか奪うか棄てるか これは略奪愛だ不祥事だとマイクをつきつける芸能レポーターに「不祥事ってそれってお寺の名前?」とノンシャランと受けかわす田中裕子と見るのが正しい解釈だろう。 咲いたらあげましょ あぁ…… そしてこの愛はたったひとつの、何者にも勝る出会いなのだといい。 Main street 真夜中に抱きしめあう いっそのこと淫らな恋人だと噂になりたいとゴシップジャーナリズムを挑発しだす。 そしてラストはタイトル曲「女が男を愛せる瞬間」。 女が男を愛せる瞬間は 身を粉にする覚悟の時 そして曲最後は沢田研二と田中裕子の歌の掛け合い。 沢田が「When a woman loves a man」 と歌えば田中が「女が男を愛せる瞬間」と返す。これがいくとどなく続くとフェードアウトでこのアルバムは終わる。 もう、ね、ワイドショー記者会見のような作品。なにもいうことがありませんよ。フォロー不要。勝手に幸せに、という気分になる。 ちなみにこの時期、一方の沢田研二はこれまた『告白』なる意味深なアルバムを出していて、「You!昔なら三行半 あれは桜散る頃の別れ話」(「女びいき」)なんて歌詞にびっくりしたりする。なぁんか、正直な二人やなぁ。 正直過ぎて、伊藤エミの立場って一体……という気分にもなりますわい(―――もちろん伊藤エミは芸能界を引退しているので二人のような釈明作品はない)。 と、束の間梨元勝・井上公造気分が味わえる下世話ワイドショー感度が異様に高いアルバムなのでした。 ちなみに田中裕子の歌唱は、まぁ、女優の余技かなっという感じ。沢田研二プロデュースでふたりが結婚するまで4枚のアルバムを作ったが、まぁ、2人の自己満足指数が高いかな、と。彼女の声の1番低い部分で歌っているんだけれども、これがちょっと耳心地的によくないんだよね。芝居の時の田中裕子ほど声に魅力を感じないっつうか。決して下手ではないんだけれどさ。 もひとつちなみに、このアルバムでは高見沢俊彦が2曲楽曲提供しているんだけれども、「スローダンスを夜明けまで」はモロ「SWEAT&TEARS」風、「HARD TIME LOVER」はモロ「霧のソフィア」風で笑った。そういうオファーだったのかいな。 |