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さくさくレビュー  和久井映見


cover 歌う女優さんというのもいつまにかいなくなったなぁと思う今日この頃。そんな女優歌手のひとりを今日は紹介。
90年代前半に歌手活動を行なっていた和久井映見さん。

レコード会社はポリスター、プロデューサーは元ジャックスの水橋春夫、ビジュアルプロデュースはSeigen kyu(邱世源か?)、メインアレンジャーは門倉聡。
当時のWinkのプロデュースとほとんど同じ面子で、彼らは和久井映見の音源を語るに重要な人材であるが、それをおしてもっと重要なのがこのふたり、作詞担当の康珍化と作曲担当の亀井登志夫である。

康珍化は菊地桃子、オメガトライブなどのトライアングル−バップ系の作品をはじめ、中森明菜「ミ・アモーレ」やら中山美穂「人魚姫」やらヒット作連発のヒットメーカー。 一方の亀井登志夫もまた松本伊代「抱きしめたい」、斉藤由貴「土曜日のたまねぎ」、南野陽子「接近」などのヒット曲をもつ著名な職業作家であるが、 このふたりは大学以来の友人だそうで、和久井映見の初期の作品はほとんどが彼らの携わった作品になっている。
――ちなみにこのふたりの作詞・作曲で作られたものはクレジットの名義がCANCAMAYになっている。カンとカメイでカンカメイ、と。しかも、和久井映見のプロデュースで勢いがついたのか、93年にCANCAMAYはユニットとしてCDデビューもしてしまう。

和久井映見の作品の多く、特に初期の作品のほとんどがこの二人の手によるポップス――ということで、簡単にいっちゃえばメロウなAOR系のシティポップスを装いつつも、その表層を剥ぐとそこにはなんとも歌謡曲の淫靡な匂いがたちこめて、って感じで、や、これがなんともいいのよ。

和久井映見のボーカルも手放しで上手いとはいえないけれども、歌との距離の取り方がなかなか上手い。情に溺れてべったりでもなく(――女優歌手の多くはこの傾向が強い)、あきらかなお仕事感で無味乾燥にこなすというわけでもなく。暑苦しくならない程度のほどよい情感がこめられていて、これが実にしっとりといいのよ。 歌謡曲マニアであれば否定できない作品なんじやないかなぁ。

彼女の歌手活動はセールス的にはあまりふるわなかったけれども、良作が多いと私は思う。 セールスのわりには結構ブックオフの投売りコーナーとかにもよくあるので、機会があったら、ちょっと聞いてみたらいいよ、とわたしは薦めたい。



(――こっからひとり言)

それにしてもなんで彼女歌っていたんだろうなぁ。
多分スタッフの狙いとしては今井美樹戦略――歌うことで女優としての格を上げていく戦略だったのかなぁ、と思われるけれども、和久井映見って今井美樹ほどキャラのわかりやすい女優じゃなかったし、今井美樹のF1層直球のナチュラル路線に比べて、和久井映見の歌はあまりにもドメスティックな歌謡だったし。
当時の私も「なんだかよくわからないけれども、なぜか和久井映見のアルバムが定期的に出ている」という程度の印象しか受け取ってなかったし。そもそもの必然が、よくわからないっていうか。
確か彼女は音楽誌の取材を受けるであるとか、歌番組に出る、コンサートツアーを行なうなどといったレコードリリース以外の表だった歌手としての活動もほとんどなかったと思う。
女優仕事は脇役から準主役、主役へとどんどんステップアップしたのに、一方歌に関してはそれが影響を受けることなくまったく鳴かずとばず、それでも結構長々と7年近く歌手活動続けていだのだから不思議。


彼女の歌手活動のぼんやりさ加減ってアイドル冬の時代のひとつの象徴かなぁ、と私は思ったりする。
音楽専業でない歌手って、90年代に入ってごく少数のパターンを除いてほとんど淘汰されていったじゃない。 その彼女もパターンに嵌っちゃったのかなぁ、と。



cover ◆ FLORA  (90.07.21/50位/1.7万枚)
1.MOON 2.瞳のボサノバ 3.夢で会いましょう 4.マイ・ロンリィ・グッバイ・クラブ 5.ヨコハマ・ステップ 6.神様がいない土曜日 7.むずかしいあなた 8.偶然の旅人 9.空においでよ 10.マイ・ラブ
彼女の歌の良さってアンバランスなところにあると思う。 恋の危うい綱渡りを歌っていても、どこか頭ひとつぶんくらいの背のびが感じられて、微笑ましいのだ。 そんな彼女の歌を絵で表すとしたら「ずり落ちそうになったドレスの肩ひもを不器用に直す妙齢の美女」。
それにしても「マイ・ロンリィ・グッバイ・クラブ」の展開って好きだなぁ。「ヨコハマ・ステップ」のひと昔前の夜遊び人風は康珍化の憧れの世界なのかなぁ、と思ったり。 それにしても康珍化さん、各曲タイトルからして、本気モード全開。音的にはここから3枚はフィフティーズ、GS風味を散りばめられたなつかし歌謡ポップスの世界。8点。


cover ◆ LUNARE  (91.07.25/48位/1.3万枚)
1. カサノバ・サーカス 2. アキラが可哀想 3. 手紙をください 4. 挑発的なダンス 5. Sixteen 6. スピンして、ガールフレンド 7. Count Down Moon 8. 花で言えばバラのようなあなた 9. さわがしい情熱 10. シャワーでも、コロンでも
あやうい。危ういよ、映見ねぇさん。
次の瞬間には壊れてしまうかもしれない、今だけのスリル。だけど、どうしても惹かれてしまう。 あなたと一緒に甘く堕ちてしまいたい。……。
扇情的に男を誘惑するも、その手管がちょっと不器用にみえるあたりがよりいっそうあやうく、妖しく。成熟しきった女性を演じながらも、どこか少女のような無邪気さ、ぶっきらぼうさが垣間見える。そんなフラジャイルな魅力たっぷり。 今晩はこの娘についてやらないと危なっかしくって仕方ない、男をして騎士気分にさせてしまうアルバム。
あんまり幸福な恋愛をしていなさそうな女の夜更けの起こる男がらみの色々を綴った世界。各曲のクオリティーも総じて高いが、その中でも「アキラが可哀想」は良い。ロカビリー歌謡の傑作。月をモチーフにしたジャケットワークもなかなか。9点。


cover ◆ なぜ愛しているふりをするの  (92.01.25/90位/0.4万枚)
1. わかっているわ、ダーリン 2. 逢いたかった 3. なぜ愛されてるふりをするの? 4. 情熱 5. 雨の日に電話して 6. 拒めると思った 7. ことりのテーマ 8. あなたを想う夜のソネット
綺麗なおねぇさんと一緒に雪山で心中したい――そんな少年時代の妄想を今だひきずっている世の多くの男どもにとってはまたとないアルバム。
結末はとっくに見えている束の間の恋にそれでも身を焦がせる、映見ねぇさん。 ――拒むことなんて出来ない。選択肢のどちらを選ぶなんてのはもうとうに決まっている。一緒に堕ちていくしかない。紳士淑女面はもう、できない。 終わりが見えているからこそいっそうふたりは切なく燃えあがり……。
前作の世界観を引き継ぎつつもぐっとシリアスな様相を呈している。 だいたいタイトルからしてぞっとするよね。「なぜ愛しているふりをするの」って。そんな直球な言葉を投げられたら、男はみんな困ってしまう。
それにしてもこのアルバム、どの曲とっても全編、歌う女優。 「でも こうなると思っていた」(「わかっているわダーリン」)とため息まじりでゆれ落ちたり、「あなたに代わる人なんて もう私には見えないの」(「逢いたかった」)と身も世もなくにじり寄ったり、「なぜ愛しているふりをするの?」(「なぜ愛しているふりをするの」)と冷たく言葉を突きたてたり、女ごころの千変万化。 「拒めると思った」なんて、タイトルからしてもう語っております。オーラスの「ことりのテーマ」は反則じゃないのか。
隠し味のエスノ・ハウス成分も効いていて、傑作。CANCAMAYが彼女でやりたいことはこのアルバムで充分果たしたんじゃないかな。10点。


cover ◆ ふたりは夢であいましょう  (92.07.01/61位/0.9万枚)
1. 夢で会いましょう 2. わかっているわ,ダーリン 3. Moon 4. 神様がいない土曜日 5. 手紙をください 7. アキラが可愛想 8. 情熱 9. シャワーでも,コロンでも 10. 雨の日に電話して 11. 天使にスリルをおしえてあげて 12. マイ・ロンリー・グッバイ・クラブ
CANCAMAYメインの時代を総括するようなベストアルバム。収録楽曲の外しは少ない。初心者はひとまずこのアルバムから入ったらいいんじゃないかな。 盤石のプロダクションワークに敬服。みなさんでCANCAMAYに萌えましょう。9点。


cover ◆ だれかがあなたにキスしてる  (92.11.26/84位/0.4万枚)
1. だれかがあなたにキスしてる 2. おかえりなさい 3. 抱きしめたいのはあなただけ 4. ずっとこうしていたい 5. 似合わないふたり 6. 空飛ぶシーツの日 7. 涙になりたかった涙 8. 雪になるかもしれない 9. 未来からの手紙 10. 離れても
CANCAMAYから少々距離を取りはじめたアルバム。代わりに投入されたのが、林哲司、楠瀬誠志郎、玉置浩二、芹沢廣明などなど。アレンジャーも門倉メインから鳥山雄司、菅原弘明が投入。
こうなるとなんか普通のポップスみたいになってしまって、これまでにあった面白味が薄まってしまったような気がする。彼女の女優としてのキャラクターにあわせようとした結果にも思えるが……。
このなかにおいて康珍化のもうひとりの盟友である林哲司作曲の「抱きしめたいのはあなただけ」や、いつもの亀井登志夫作曲のタイトル曲が光っている。やっぱり彼女の良さってこのラインの作家陣が1番よく知っているんだろうなぁ。
他、作詞の戸沢暢美ががんばっている。康の作ったそれまでの世界を受け継ぎつつ、『eifin』の頃の今井美樹をちょっと想起させたりもする感じで手堅い。7点。


cover ◆ PEARLY  (93.08.25/41位/1.1万枚)
1. 抱きしめたいのはあなただけ 2. むかえにこないで 3. 始まりの夏 4. さよならを言わなかった 5. いつか信じさせてね 6. Shining Day 7. フォト・スタンド 8. 近くて遠い人 9. どこにいてもだれといても 10. 抱きしめたいのはあなただけ
前作の世界を続けてより中庸ポップスの世界へ。前向きっていいことだよね。ってそれって本当か。うわーーん。なんだか私的にはどんどんどうでもいい方向に向かっていくよう。良くも悪くもJ-POPって感じ。なめらかだけれども、なんも取っ掛かりがない。美人女優のアルバム。それ以上でもそれ以下でもない。5点。



cover ◆ あなたが私にくれたもの  (94.04.25/47位/1.0万枚)
1. 結婚しないでね 2. 抱きしめたいのはあなただけ 3. プラチナ 4. カサノバ・サーカス 5. 離れても 6. おかえりなさい 7. むかえにこないで 8. さよならを言わなかった 9. 拒めると思った 10. 夢で会いましょう 11. あなたを想う夜のソネット
アルバム未収録曲やニューアレンジを含んだベスト。演歌歌手じゃないんだから、そんなにすぐにベスト出す必要ないじゃないの。門倉有希(――この人っていまいち正体不明。門倉聡の身内関係?)のリアレンジによる「カサノバ・サーカス」がカッコイイよね、というそれくらいで勘弁。楽曲選定も中途半端で必然性が感じられず、いただけない。彼女の歌手活動只今迷走中、そんなベスト盤。6点。


cover ◆ 愛しさのある場所  (94.11.26/89位/0.5万枚)
1.シャワーでも、コロンでも 〜overture〜 2.無印の休日 3.赤と緑のリボン 〜ambient pop dub〜 4.キスしたい 5.誰かをあなたは愛してた 6.予言 7.恋 8.特別はなくていいの 9.いつまでも愛せそう 10.あなたはひとりだけしかいない 〜acoustic ver.〜
「ずっとデートのたびにせつなくさせた人が、身軽に冷蔵庫をのぞく」なんて さりげない日常風景が巧みな「無印の休日」にはじまって、クリスマスにの恋人の風景を歌った「赤と緑のリボン」など、 現実よりも半歩ロマンチックで、半歩ラグジュアリーなF1独身層の理想的恋愛風景が続々。 ここまで来るとほとんど「歌うトレンディードラマ」そのもの。ユーミンや今井美樹の隣にそっと置いてなにも違和感のない、そんなアルバム。 「キスしたい」〜「恋」と続く、中盤のマイナードラマチック歌謡路線は、お得意のものという感じでいつものごとくいいけれども、 「あなたはひとりだけしかいない」とか「赤と緑のリボン」とかのあったかメッセージ系ラブソングもいい感じ。 「なぜ愛しているふりをするの」と「だれかがあなたにキスしてる」を足して2で割ったような、 磐石なプロダクションワークに、8点。


cover ◆ Singles  (95.06.25/82位/0.9万枚)
1. 抱きしめたいのはあなただけ 2. さよならを言わなかった 3. 毎日会いたい 4. わかっているわ、ダーリン 5. アキラが可哀想 6. 天使にスリルをおしえてあげて 7. キスしたい 8. 結婚しないでね 9. 赤と緑のリボン 10. マイ・ロンリー・グッバイ・クラブ
またまたベストアルバム。今度はシングルのみを集めた純然たるベスト。「天使にスリルを教えてあげて」だけニューアレンジ。あの下世話な原アレンジ好きなんだけれどもなぁ。アレだけそのままだとアルバムのなかで浮くからかな。
彼女はシングル歌手ではないので、特にいうことはなく、ま、よく出来ているよね、ということで。「キスしたい」はこの時期にあってCANCAMAYっぽいプロダクトでいいかも。後藤次利はよくわかっている。7点。



cover ◆ Dearest  (96.01.25/77位/0.4万枚)
1.離れても 〜introduction〜 2.いつか忘れましょう 3.コスモスの咲く道 4.Livin' in the town 5.ひとり旅 6.海辺の休日 7.Sweet Sweet Holiday 8.毎日会いたい 〜album mix〜 9.遠い空に 10.HOPE 〜新しい未来のために〜 11.忘れないで
宮内和之、高野寛、五島良子、鈴木祥子、西脇唯とそれまでの作家陣を一新。 これは、アレだね、WINKの「咲き誇れ愛しさよ」前後の路線変更とおんなじような傾向の変更だね。 生音重視のローファイサウンドが逆におしゃれでない? 的な90年代中期のJ-POP志向直球のアルバム。 これはもう「渋谷系」のひとことで通じるか、と。 そんなひそかにいいアルバム。クオリティー高い。これがセールスに響かないというのも、末期のWink的というか……。もったいないなぁ。8点。


この後は、芝居仕立ての『心に花が咲くように』(97年)を1枚リリースしているが、筆者は未聴。


2005.03.31
追記 2006.04.10
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