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さくさくレビュー  山口百恵編


山口百恵の歌手としての開花はなによりも阿木燿子・宇崎竜童夫妻の手によるものが大きいと思う。 個人的には「横須賀ストーリー」以前の作品はあまり評価できない。――直前の作曲担当佐瀬寿一、三木たかしらはかなり善戦していたが、やはり阿木、宇崎コンビの作品は段違いの出来に聞こえる。 もちろん、このゴールデンコンビに引きずられるように他の作家陣の作品もその後ぐんと伸びてきたが、やはり阿木燿子・宇崎竜童をなしに彼女の音楽活動は語ることができないようにわたしは感じる。

山口百恵は、引退までシングルを年4枚、アルバムを年3枚の超ハイペースでリリースを重ねたが、歌手としての成長もそれと同じように眼をみはるほどのものすごいスピードであったようだ。 作品をリリース順に聞いていると、1年前のアルバムがゆうに2、3年前ほどに感じるほど、彼女の表現力、歌唱力は伸びていったこと、また彼女が表現する世界も大きく広がっていったことがしっかり確認できる。

またアルバムも、「プレイバック part2」「美・サイレント」などギミック満載のシングルをヒットさせながらのハイペースな制作であったにもかかわらず、夜更けにじっくりと聞き込むことのできるしっかりとした作りのものが多く、 78年末作の『曼珠沙華』から引退までの作品は平岡正明氏が「菩薩」と評したのも頷けるほど宗教的で深甚でかつ壮大な作品が多い。 ピンクレデイーVS沢田研二VS山口百恵の70年代後半の歌謡曲トップ3にあって作品のクオリテイーと多彩さ、その量に関しては山口百恵がもっとも優れていたのではなかろうか。 はたして引退・解散時に「不死鳥伝説」のような「イントロダクション・春」のような生と死を、過去と未来を包括するような壮大な歌を歌う歌手が果たして今後生まれるだろうか、と私は思う。

もちろん、これだけの多作であるから、思わずずっこけるような駄曲やイメージの合わない曲もアルバムに潜んでいたりするのだが、そうした玉石混交状態のまま一気にパワーで駆けぬけた果てに咲いた大輪の花が山口百恵という歌手なんじゃないかな。 私が所有しているのは『横須賀ストーリー』からであるのでそこから評したい。



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 横須賀ストーリー  (76.08.01/第3位/9.1万枚)

1.陽炎 2.GAME IS OVER 3.横須賀ストーリー 4.自転車の上の彼 5.クラブ・サンドウイッチはいかが? 6.風たちの午後 7.いま目覚めた子供のように 8.ひとにぎりの砂 9.赤い運命 10.それでも明日が… 11.愛の暮色 12.甘い裏切り
一曲目「陽炎」からしてもう、何かが違うアルバム。 A面が阿木ー宇崎、B面が千家。A面の鮮度の高さとB面の型にはまった退屈さがくっきり。このアルバムで完全に百恵戦略のハンドリングが変わった。きちんと彼女の持ち味である物憂さを残しつつも16の娘としての可愛らしさを追いかけた阿木、ロックなビートに溜息のようなメロディーの宇崎、そこに百恵の魂が初めてのった。7点。


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 パールカラ―にゆれて  (76.12.05/第6位/5.9万枚)

1.パールカラーにゆれて 2.ある1ページ 3.嘆きのサブウェィ 4.君に涙のくちづけを 5.雨に願いを 6.モノトーンの肖像画 7.赤い衝撃 8.愁いノート 9.青春の翳り 10.涼やかなひと 11.オレンジブロッサムブルース 12.走れ風と共に
千家和也、最後の輝き。佐瀬寿一のリズミックな楽曲を演歌的に色付けしている。全体的に冬ざれて憂いの漂うアルバム。作詞家デビューしたての来生えつこの名前も。「嘆きのサブウェイ」「愁いノート」といったあたりも佳曲だが、 とはいえ「オレンジブロッサムブルース」一曲でアルバムを引っ張ってしまう阿木―宇崎コンビにはまいってしまう。あまりにも引きが強すぎる。7点。


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 百恵白書  (77.05.21/第3位/7.8万枚)

1.I came from 横須賀 2.鏡の中のある日 3.いたせくすありす 4.赤のシリーズ・四人の少女に捧げる約束 5.間奏曲 6.二十歳前夜 7.お菓子職人 8.ボーイッシュ・ベイビー 9.ミス・ディオール 10.歌い継がれていく歌のように 11.「スター誕生」アゲイン
私小説アルバム。高校卒業のここで百恵の中間総括という意味合いかな。 全作阿木ー宇崎コンビで百恵の私生活に焦点を合わせて制作――阿木はアルバム制作にあたってテレビ局やコンサート先など付きっ切りでついて周り、彼女と色々と話したのだとか。低血圧な彼女の物憂い起床を歌った「鏡のある日」、自らが演じた赤いシリーズのヒロインたちへ向けた「約束」、彼女の性的自伝「いた・せくすありす」、横須賀出身の彼女の足、京浜急行電鉄の道中歌「I came from 横須賀」、本番を前に舞台袖で控える彼女の一瞬の緊張を歌った「間奏曲」などなど。そつがない。ただ「歌い継がれていく歌のように」のような大きな歌はちょっと時期尚早だったかな。7点。


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 GOLDEN FLIGHT  (77.08.21/第3位/6.8万枚)

1.Made in UFO 2.Black Cab 3.Liverpool Express 4.Air Mail 5.Check out Love 6.愛のトワイライト・タイム 7.ポートベロの銀時計 8.嵐ヶ丘 9.セーヌより愛をこめて 10.イミテーション・ゴールド (Album Ver.)
ロンドン録音のロケンローンなアルバム。百恵の魅力は「ロック」でなく、あくまで日本的にカスタマイズされた「歌謡ロック」だったのだな、ということを再認識できる。シングルの萩田光雄のペンによる色彩感鮮やかでスリリングな「イミテイションゴールド」とこのアルバム収録の単色で硬質な「イミテイションゴールド」を比べるとそれは如実である。沢田研二が事務所のご褒美で趣味まるだしで作ったアルバムのようにも聞こえる。6点。


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 花ざかり  (77.12.05/第7位/6.4万枚)

1.花筆文字 2.陽のあたる坂道 3.悲願花 4.言はぬが花 5.青い羊歯 〜アジアンタム〜 6.飛騨の吊り橋 7.秋桜 8.あまりりす 9.ドライフラワー 10.1 2/3 11.最後の頁 12.寒椿
日本情緒で花づくしがテーマのしっとりしっとりしたアルバム。百恵のもっとも保守的な部分の良さがつまっている。王朝主義まるだしの「花筆文字」、心中の道行のような「寒椿」などやはり阿木―宇崎コンビが強いが、少女の自殺を歌った大正浪漫の「悲願花」、霊南坂を歌ったしとやかな「陽のあたる坂道」なども良い。このアルバムがあって初めて「曼珠沙華」「夜へ……」の名曲が生まれたと私は見る。このアルバムに参加した松本隆はこれを参考に薬師丸ひろ子の「花図鑑」を作ったのではないだろうか。8点。


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 COSMOS 宇宙  (78.05.01/第8位/5.6万枚)

1.OPENING(TAKE OFF) 2.乙女座 宮(Album Ver.) 3.SPACE OPERA 4.銀河カフェテラス 5.宇宙旅行のパンフレット 6.銀色のジプシー 7.ただよいの中で 8.COSMOS(宇宙) 9.軌道修正 10.ROCKET JACK 11.時の扉 12.TIME TRAVEL
前作のおしとやかさから一転、躍動感に満ちた1枚。60年代SFというかスペオペというかそんな古めかしいSFがテーマ。とはいえ、テクノでピコピコすることもオーケストラで壮大にすることも、ニューエイジっぽく宗教的になることもなく音はいつもの歌謡曲。ジャケは何故か横尾忠則のコラージュで百恵の姿はない。「時の扉」「銀色のジプシー」など聴衆を引きずり込む力強さが歌に出てきた。8点。


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 ドラマチック  (78.09.01/第6位/17.6万枚)

1.サンタマリアの熱い風 2.幻へようこそ 3.蜃気楼 4.絶体絶命 5.水鏡 6.ヒ・ロ・イ・ン 7.空蝉 8.或る女…或る日 9.霧雨桜 10.ラストソング 11.プレイバック Part2
コンセプトアルバム3作続いた後なので今回は幕の内式アルバム。言葉をバリバリ噛み砕くように力強く歌うかと思うと、次の曲はしっとりと嫋嫋と泣いてみせたり、声の表情の多さに驚かされる。ここからが歌手としてもっとも脂の乗っていた時期なんじゃないかな。いつもの阿木―宇崎コンビによる娼婦の世界を歌った「霧雨楼」、谷村新司作の「サンタマリアの熱い風」、「ラストソング」あたりがいい。8点。


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 曼珠沙華  (78.12.21/第7位/21.4万枚)

1.いい日旅立ち 2.シュルード・フェロー 3.惜春通り 4.ジェラシー 5.夢のあとさき 6.曼珠沙華 7.横須賀サンセット・サンライズ (introduction) 8.プリティー・ハーロット 9.ひとふさの葡萄 10.十五の頃(紅梅集) 11.ひといろ足りない虹のように 12.横須賀サンセット・サンライズ
ジャケットからはもはや神聖な佇まいすらも感じさせるものがある。白い闇をバックに半眼で微笑む百恵菩薩。20歳の記念ということで今回は自叙伝式アルバム。B面の無垢の章の物語性には圧倒させられる。アナクロともいえる文学性がはまるのは大映ドラマ影響か。ワンアンドオンリーの世界。彼女の最高傑作だろう。「曼珠沙華」「横須賀サンセットサンライズ」「いい日旅立ち」「ひと色足りない虹のように」のような壮大で重い歌もいいが、「ひと房の葡萄」「紅梅集」「ブリティーハーロット」などの小品もいい。10点。


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 A face in a vision  (79.04.01/第3位/12.6万枚)

1.マホガニー・モーニング 2.愛の行方 3.悲しきドラマー・マン 4.おだやかな構図 5.美・サイレント 6.ディ ドゥリーム 7.ギャルソン・アミ 8.喰べられてしまった貘 9.水曜日のクオレ 10.想い出のミラージュ 11.夜へ…
「NHK特集・山口百恵激写」と連動したアルバム。とにかく「マホガニー・モーニング」と「夜へ……」が格段にいい。アイドルというにはあまりにも研ぎ澄まされた世界。その他、「デイドゥリーム」「想い出のミラージュ」なども光っている。好き嫌いはあるだろうが、簡単には否定することができない圧倒的な存在感、息苦しいほどに濃密な世界がある。夜更けに聞こえる音楽、という感じ。妖しい。9点。


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 L.A. Blue  (79.07.21/第2位/12.6万枚)

1.GET FREE 2.喪服さがし 3.A GOLD NEEDLE AND SILVER THREAD 4.タイトスカート 5.CRY FOR ME 6.センチメンタル・ハリケーン 7.BACK TO BACK(背中あわせ) 8.猫が見ている 9.WIND & WINDOW 10.DANCIN’IN THE RAIN
今回はL.A.のフュージョンサウンドと百恵。休暇がてらにじっくりと録音したアルバムで、久しぶりにゆったりとした気持ちで聞くことができるが、サウンドとの齟齬は少々いなめないものがある。 東洋的な湿り気が彼女の最大の魅力にあって、アメリカ西海岸はちょっとあっていなったかな。ちょっと足踏みの作品。 とはいえバラードの「Cry for me」「Dancin' in the rain」は思わず引きこまれる。「タイトスカート」吐息まじり歌唱ははエロ過ぎじゃないか。7点。


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 春告鳥  (80.02.01/第5位/13.7万枚)

1.春爛漫 2.イノセント-純粋- 3.娘たち 4.抱きしめられて 5.愛染橋 6.愛の嵐 7.ほゝえみの向こう側 8.NAVY HILL 9.夕暮からあなたへ 10.しなやかに歌って -80年代に向かって-
つまりはこのアルバムは「結婚します」という宣言だ。通過儀礼を歌った「娘たち」、橋を渡ることと嫁ぐことをかけた「愛染橋」、結婚する妹に向かって警句を吐く「ほほえみの向こう側」、故郷の米軍基地の街にさよならを告げる「Navy hill」などなど、結婚直前の彼女のプライベートが垣間見える楽曲が見事なまでに並んでいる。ジャッケットの自然体とともに、百恵にして珍しく多幸感が漂っているアルバム。鈴木茂の派手なギターが聞ける「春爛漫」がベストかな。7点。


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 メビウス・ゲーム  (80.05.21/第6位/14.0万枚)

1.ロックンロール・ウィドウ(Album Ver.) 2.哀愁のコニー・アイランド 3.のぞきからくり 4.ペイパー・ドリーム 5.アポカリプス・ラブ 6.テクノ・パラダイス 7.恋のホットライン 8.ワン・ステップ・ビヨンド 9.E=MC2 10.ヴァイオレット・ラプソディー
「結婚引退なんて、そうは簡単に許さないぜ」といわんばかりにスタッフはさりゆく百恵に挑みかかる。それを力技でねじ伏せる百恵。彼女にとって歌うことは戦いなのであろう。テクノがテーマであるが、YMO的ピコピコテクノポップでない。「One step beyond」―――この歌では「赤いポルシェ」でなく「白いフェラーリ・ディノ」が登場する、や「E=MC2」、「アポカリプス・ラブ」のハードさを買いたい。最後の力技という感の漂う勢いのあるアルバム。8点。


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 不死鳥伝説  (80.08.21/第6位/13.3万枚)

1.序曲 2.海から零へ 3.不死鳥伝説 4.Miss Boy 5.ブラックボール 6.テレパシーナ 7.WHO 8.スペース・トラブル危機一髪 9.ダンシング・スターシャイン 10.死と詩 death and poem 11.さよならの向う側 12.空から無限大
新宿コマ「百恵ちゃん祭り」用に書き下ろした楽曲のスタジオ録音盤。いきなり天地創造をテーマにした「海から零へ」から始まる。「海はイザナギ 波はイザナミ」だって。すんごいですね。この頃の百恵に託した阿木燿子の宗教的世界観は面白い。芝居仕立てのダイジェストなのでアルバムだけ聞くとへんてこな曲もあるし、ハードスケジュールで声が疲れているのがちょっともったいなかったり、というのもあるけれども、ともあれタイトル曲はものすごいです。1年で4枚もオリジナルアルバムを出すCBSソニーの鬼畜ぶりに驚きながら、6点。


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 This is my trial  (80.10.21/第4位/13.0万枚)

1.輪廻 2.あやつり人形館 3.想い出のストロベリーフィールズ 4.琥珀の季節 5.闇の薫り 6.Crazy Love 7.Jigsaw Puzzle 8.神様のおぼし召し 9.幕間の風景 10.恋は千里眼 11.This is my trial-私の試練-
やっとオーラス、ラストアルバム。もうタイトルからして「終わりです」という作品。 総集編ということで様々な作家から楽曲提供を受けているが、やっぱり阿木ー宇崎コンビの一吼え(「神様の思し召し」)に全てを持ってかれてしまったという感じ。井上陽水作の「Crazy love」もいいけれどね。「輪廻」はもっと上手く歌えるはずだけれどなぁ……。タイトル曲「This is my trial」はちょっとベタすぎかな。7点。


2004.08.25
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