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さくさくレビュー  沢田研二編


KING OF ROCK&POPS、沢田研二。彼の歩んだ歴史はそのまま日本のポップスの歴史とイコールといっていい。特に日本におけるロックのポップス化という歴史において彼の存在を抜きには考えられないだろう。
彼の残した作品はあまりにも膨大であるし、存在自体が偉大であるが、彼はそんな過去の遺産など気にせずノンシャランと次の「来るベき素敵」に向けて今でも疾走している。ちょっと年老いて重くなった体で。

彼の長い歌手活動を大きく分けるとこんな感じになる。

70年代前半は妖しい美少年時代。G.S.界のトップアイドル時代をひきずっていて、まだ声が若く歌も拙い。成熟という面には一歩劣るが、不安定な少年の魅力を味わうには格好の素材であるので、その道の方ならたまらないものがあったろう。

70年代後半は歌謡曲歌手トップ時代。阿久悠―大野克之とのトリオで大ヒットを連発、声もできてきて、百恵ーPLとともに歌謡曲黄金時代を築く。ただ、アルバムに関しては阿久悠のオーバープロデュースが目立つ。

80年代前半はトップよりも更に上へ。「TOKIO」以降の彼は常に時代の一歩先を読み、時代の水先案内人の役割を果たすことになる。アルバムも名盤ラッシュ。この時代が私は一番好きだ。

80年代後半は急転直下の内省の時代。今までの事務所を独立、不倫発覚を経て離婚と再婚、と公的私的ともに色々あった時期でもある。バックバンドは「CO-COLO」、アルバムも気難しく文学的な作品が多くなり、ヒットからもどんどん遠ざかっていった。

90年代は勝手に院政時代。セールスとは関係ないところでその時折のポップを睨んだ佳作を発表し続ける。ポップスがどんなに変わろうとも振り向けば必ずジュリーがそこにいる。そんな盤石の姿勢。様々な芸術家、アーティストを取り上げたアンダーグラウンドな音楽劇「act」を行ったのもこの時期である。

2000年代は、ご隠居の趣味の時代。「スーパースター=ジュリー」稼業を勝手に定年退職。勝手に好きな歌だけ歌っていくからついてくる人だけ勝手についてくれば、という「頑固親父のラーメン屋」状態にはいっていく。つまりは定年サラリーマンの悠々自適セカンドライフみたいなものだ。これをどうこういうのは野暮というものであろう。だっておじいちゃんはあんなに頑張ったんだもの。


ちなみに各アルバムの売上枚数はLPと表記されているものはLPのみの売上。表記なしはLP、CD、CT含めた総売上。順位は「告白」まではLPのランキング、「彼は眠れない」からはCD・CT・LP総合ランキング。



cover ◆ JULIE 2 〜IN LONDON 〜  (71.12.21/第13位/3.4万枚)
1. 霧笛 2. 港の日々 3. おれたちは船乗りだ 4. 男の友情 5. 美しい予感 6. 揺れるこころ 7. 純白の夜明け 8. 二人の生活 9. 愛に死す 10. 許されない愛 11. 嘆きの人生 12. 船出の朝
タイガース、PYGと来ていよいよソロデビュー。ナベプロの王子様だけあって、ソロデビューアルバムで既に海外録音を敢行する。―――ちなみに「ジュリー1」はタイガース時代にリリースしている。
これはストーリー仕立ての作品。船乗りの男とその妻、その二人の前に現れる美少年JULIE、それは妖しい三角関係劇。若かりしジュリーの若いツバメっぽさ、囲われもの感が爆裂してます。 イギリスの古城をバックにひれひれのブラウスを着て物憂く木に凭れるお姿が、また、これがなんというか。やりすぎでしょ。6点。


cover ◆ JULIE 4 〜今僕は倖せです〜 (72.09.10/第5位/4.8万枚)
1. 今僕は倖せです 2. 被害妄想 3. 不良時代 4. 湯屋さん 5. 悲しくなると 6. 古い巣 7. 涙 8. 怒りの捨場 9. ひとりベッドで 10. 誕生日 11. ラヴ・ソング 12. 気がかりな奴 13. お前なら
今回は、国内録音。全作詞作曲、プロデュースが沢田研二。ほとんど私小説というか、かなりプライベートなつくり。 前作の妖しい魅力とはうってかわって、野球と喧嘩がめっぽう好きな京都の純朴少年、沢田研二のアルバムって感じ。
敬愛する内田裕也を歌った「湯屋さん」、京都時代を追想した「不良時代」、素朴な言葉でスターとなった今を感謝する「今僕は幸せです」など。
食い足りなさは残るものの、ほのぼのとした気持ちになる。ちなみにソロ・デビューしてしばらくはアルバムに関しては海外録音盤→国内盤→海外録音盤という交互のリリースとなる。7点。


cover ◆ JULIE  6 〜ある青春〜  (73.8.21/第4位/7.6万枚)
1. 朝焼けへの道 2. 胸いっぱいの悲しみ 3. 二人の肖像 4. 居酒屋ブルース 5. 悲しき船乗り 6. 船はインドへ 7. 気になるお前 8. 夕映えの海 9. よみがえる愛 10. 夜の翼 11. ある青春 12. ララバイ・フォー・ユー
再びロンドンでレコーディング。
こっぱずかしくなるほどの古めかしさを伴った感慨が「青春」という言葉に閉じ込められている。それだけでまさしく森田公一のペンによるものであるなという事がわかる。
繊細で骨っぽい男の浪漫の世界。沢田にはまだちょっとはや過ぎたかもしれない。身についてないものを憧れで歌っているところがある。5点。


cover ◆ JEWEL JULIE 〜追憶〜  (74.09.10/第2位/7.5万枚)
1. お前は魔法使い 2. 書きかけのメロディー 3. 親父のように 4. ママとドキドキ 5. 四月の雪 6. ジュリアン 7. 衣裳 8. ヘイ・デイヴ 9. 悲しい戦い 10. バイ・バイ・バイ 11. 追憶
白黒写真を彩色したジャケットのけばけばしさと妖しさにまず驚く、久世光彦が栗本薫が夢を見たまさしく「魔少年・ジュリー」。この時期からアートディレクションは早川タケジとなったようだ。
ただし、曲はお馴染み井上堯之バンドとのいつものリラックスした世界。PYGの延長のような作品でもある。ラブ&ピースな部分あり、仲間内での熱い結束を感じられるところもあり、年上の女性の誘惑されているいつものジュリーあり。この時期のジュリーらしいアルバム。7点。


cover ◆ 愛の逃亡者 (The fugitive)  (74.11.21/第22位/3.6万枚)
1. The fugitive (愛の逃亡者) 2. GO SUZY GO 3. Walking in the City 4. Saturday Night 5. 悪夢の銀行強盗 6. Monday Morning 7. 恋のジューク・ボックス 8. 十代のロックンロール 9. 傷心の日々 10. I was born to love you 11. L.A.Woman 12. Candy
歌詞は全編英語詞。ロンドンでのレコーディングによる英国デビュー盤。これは隠れた名盤だぞ。
オールディース風味の直球ロックンロール、余計な音を殺ぎ落としてソリッドな仕上がり。「The fugitive」「Candy」「Run with a devil」など佳曲が並ぶ。イギリス進出は失敗に終わったが、このアルバムは残る。このアルバムがあって後に『G.S. I love you』がくると私は見る。8点。


cover ◆ いくつかの場面  (75.12.21/第12位/4.9万枚)
1. 時の過ぎゆくままに 2. 外は吹雪 3. 燃えつきた二人 4. 人待ち顔 5. 遥かなるラグタイム 6. U.F.O. 7. めぐり逢う日のために 8. 黄昏のなかで 9. あの娘に御用心 10. 流転 11. いくつかの場面
大ヒット曲「時の過ぎゆくままに」に引きずられてのアルバム。ブレイク以前の大瀧詠一、ゴダイゴのミッキー吉野、さらに加藤登紀子、河島英五、西岡恭蔵などいつもと毛色の違うアーティストが楽曲提供。石川浩二なる者のプロデュースであるが、彼のプロデュースする作品―――「思いきり気障な人生」「Love 愛とは不幸を恐れないこと」など、はどれもどこか暗い。 作品全体から演歌・フォーク的なドメスティクな泥臭さが漂う。聴いていると当時のATGの映画を見ているような気になる。70年代の重ったるい閉塞的な雰囲気を味わうにはいい作品かもしれないが……。6点。


cover ◆ KENJI SAWADA  (76.04.21/第11位/2.5万枚)
1.MON AMOUR JE VIENS DUBOUT DU MONDE (巴里にひとり) 2.JULIANA 3.SEUL AVEC MA MUSIQUE 4.GO SUZY GO 5.追憶 6.時の過ぎゆくままに 7.FOU DE TOI 8.MA GEISHA DE FRANCE 9.ITSUMI 10.RUN WUTH THE DEVIL 11.ATTENDS-MOI 12.白い部屋
何故かフランスで一発ヒットしてしまった沢田研二。その流れでひとまずフランスでもアルバム発売となる。雑なつくりではあるが、フランス録音の作品はいい。擬似おフランスな「追憶」では食い足りないという本格派のあなたに贈るフランス人から見たオリエンタリズムとフレンチが混ざり合った奇妙で華麗な世界。ある意味貴重なドキュメントであるかもしれない。 ところで「ワタイネ」ってなんなんでしょうか。8点。


cover ◆ チャコール・グレイの肖像  (76.12.01/第22位/2.9万枚)
1. ジョセフィーヌのために 2. 夜の河を渡る前に 3. 何を失くしてもかまわない 4. コバルトの季節の中で 5. 桃いろの旅行者 6. 片腕の賭博師 7. ヘヴィーだね 8. ロ・メロメロ 9. 影絵 10. あのままだよ
「時の過ぎゆくままに」ヒットのご褒美か。再び全作自作曲のアルバム。プロデュースは久世光彦。作詞は小谷夏(久世光彦)、桃井かおり、荒木一郎など、個人的な付き合いなのか、一風変わったところにオファーしている。
ミュージシャンを廃業し、俳優転向した沢田の盟友、岸部修三(現・一徳)作詞の「あのままだよ」に最後ほろりとさせられる。6点。


cover ◆ 思いきり気障な人生  (77.11.15/第1位/36.6万枚)
1. 思いきり気障な人生 2. あなたに今夜はワインをふりかけ 3. 再会 4. さよならをいう気もない 5. ラム酒入りのオレンジ 6. 勝手にしやがれ 7. サムライ 8. ナイフをとれよ 9. 憎みきれないろくでなし 10. ママ……
新幹線暴行事件後の復帰アルバムは大ヒットシングル4枚にCMソングとなった「あなたに今夜はワインをふりかけ」を入れた超強力盤。全作阿久―大野―船山のゴールデントリオ。「ジュリー復帰」のイメージづけに事務所は必死だったんだなぁ。とはいえタイトル曲「思いきり気障な人生」やラスト「ママ……」の暗さには正直驚いてしまう。シングル重視のハーフベストなのでアルバムトータルのバランスは悪い。6点。


cover ◆ 今度は華麗な宴にどうぞ  (78.08.10/第4位/10.9万枚)
1. ダーリング 2. 酔いどれ関係 3. ハッピー・レディー 4. 女はワルだ 5. 探偵(哀しきチェイサー) 6. ヤマトより愛をこめて 7. お嬢さんお手上げだ 8. グッバイ・マリア 9. スピリット
ダーリングの衣装のはしゃいでいるジュリーのジャケット写真が印象的。作家陣は前作と同じゴールデントリオ、作風も同じ。「酔いどれ関係」の「ねんねのくせしておいらのことを『坊や』と呼ぶとは行きすぎだろう」は「勝手にしやがれ」の返歌であった山口百恵の「プレイバック Part2」へのさらなる返歌ととっていいだろう。ラストはまたまたずしりと重い「スピリット」。6点。


cover ◆ Love 愛とは不幸を恐れないこと  (78.12.10/第7位/7.6万枚)
1. TWO 2. 24時間のバラード 3. アメリカン・バラエティ 4. サンセット広場 5. 想い出をつくるために愛するのではない 6. 赤と黒 7. 雨だれの挽歌 8. 居酒屋 9. 薔薇の門 10. LOVE(抱きしめたい)
阿久はアルバムではジュリーに「懺悔の値打ちもない」とか「さだめのように川は流れる」あたりの世界を求めているのかもしれない。「ママ……」「スピリット」ときた暗黒演歌の系譜がこのアルバムのトーン。暗いですぅ。阿久も多作が祟ってちょっとバテ気味の感がある。5点。
cover ◆ TOKIO  (79.11.21/第8位/12.4万枚)
1. TOKIO 2. Mitsuko 3. ロンリー・ウルフ 4. Knock Turn 5. ミュータント 6. Dear 7. コインに任せて 8. 捨てぜりふ 9. アムネジア 10. 夢を語れる相手がいれば 11. Tokio (Reprise)
阿久―大野コンビ、井上堯之バンドから離れたジュリーの新たなプロジェクトの始動をしらしめる意欲作。とはいえ70年代の重さが至るところにまだまとわりついていて、ど派手なジャケットワークのわりに案外おちついていますね。ただその中でタイトル曲「TOKIO」だけが段違い。これをシングルカットするしかないよね。7点。


cover ◆ Bad Tuning  (80.07.21/第27位/2.0万枚)
1. 恋のバッド・チューニング 2. どうして朝 3. WOMAN WOMAN 4. PRETENDER 5. マダムX 6. アンドロメダ 7. 世紀末ブルース 8. みんないい娘 9. お月さん万才! 10. 今夜の雨はいい奴
ジュリー、弾けました。いいなぁ、この能天気さ。「したくないこと したくなぁい」というリフに思わず笑ってしまう「どうして朝」、「俺は世界一いい男」といいきってしまう「世紀末ブルース」、まんだぁ〜むというジュリーの歌い方がアホっぽい、歌詞もはちゃめちゃな「マダムX」などなど。電気椅子でまどろんでいるアンドロイドジュリーのジャケ写も最高にイカしています。8点。


cover ◆ G.S. I love you  (80.12.23/第23位/4.8万枚)
1. HEY!MR MONKEY 2. NOISE 3. 彼女はデリケート 4. 午前3時のエレベーター 5. MAYBE TONIGHT 6. CAFEビアンカ 7. おまえがパラダイス 8. I'm In BLUE 9. I'll BE ON MY WAY 10. SHE SAID 11. THE VANITY FACTORY 12. G.S.I LOVE YOU
ジュリー自己遡及の旅。佐野元春がジュリーのロック魂に火をつけた。「Vanity Factory」「彼女はデリケート」の2曲だけでもこのアルバムを出した意味があるというか。これをシングルにしないのはもったいないなぁ。長年のパートナーの一人であり、アルバムプロデューサーでもある加瀬邦彦もいい仕事している。架空の60's幻想紀行だ。いいなぁ、ぎらぎらしていて、気迫にみちみちている。9点。


cover ◆ Stripper  (81.06.10/第13位/11.0万枚)
1. オーバチュア 2. ストリッパー 3. Bye Bye Handy Love 4. そばにいたい 5. Dirty Work 6. バイバイ ジェラシー 7. 想い出のアニー・ローリー 8. Foxy Fox 9. テーブル4の女 10. 渚のラブレター 11. テレフォン 12. シャワー 13. バタフライ・ムーン
まだまだつづくジュリー自己遡及の旅。スーパースター・ジュリーの攻撃はまだまだやみそうにない。「BYE BYE HANDY LOVE」「DIRTY WORK」「テーブル4の女」とビシバシの豪速球で決めていく。王者の余裕と迫力。「シャワー」「テレフォン」などで能天気さの影に苦みばしった30男の憂鬱な横顔もちらりとするのもいい。9点。


cover ◆ A Wonderful Time  (82.06.01/第14位/9.4万枚)
1. おまえにチェックイン 2. PAPER DREAM 3. STOP WEDDING BELL 4. WHY OH WHY 5. A WONDERFUL TIME 6. WE BEGAN TO START 7. 氷づめのHONEY 8. ZOKKON 9. パフューム 10. 素肌に星を散りばめて
いつもの通りぎらぎらしているが、前作前々作でのノウハウを活かした「こなし」という感もある。タイトル曲「Wonderful Time」をはじめ「Stop Wedding bell」 「ZOKKON」「素肌に星を散りばめて」など全てにおいて危なげがない。この年は「タイガース復活」に力を入れて、ソロ活動は守りの状態であったことがここからもわかる。色々取り揃えたいつもの素敵なジュリーということで、8点。


cover ◆ Mis Cast  (82.12.10/第11位/13.1万枚)
1. News 2. デモンストレーション Air Line 3. 背中まで45分 4. Darling 5. A.b.c.d. 6. チャイニーズ・フード 7. How Many “good Bye” 8. 次のデイト 9. ジャスト・フィット 10. ミスキャスト
ジュリーmeets井上陽水。70年代のロック&ポップスターとフォークのスターの奇蹟の邂逅。婉曲的な陽水の手管に分裂症気味ジュリーが楽しめます。正味の話、奇跡の名盤。全てが完璧。ただ、このコラボどちらが得をしたかといったら陽水の方なんじゃないかなぁ。井上陽水は大麻不法所持で逮捕後いまいち吹っ切れなかったがここでやっと壁を破ったように見える―――彼自身のアルバムでなかったというのがなんとも皮肉である。ここがあって2年後の陽水の再ブレイクがあったと私は見る。10点。


cover ◆ Julie Song Calender  (83.03.05/第5位/4.3万枚)
1. 裏切り者と朝食を 2. ボンヴォワヤージュ 3. 目抜き通りの6月 4. ウィークエンド・サンバ 5. Sweet Surrender 6. CHI SEI(君は誰) 7. YOU’RE THE ONLY GIRL 8. ラスト スパーク 9. 一人ぼっちのパーティー 10. SCANDAL!! 11. す・て・き・にかん違い 12. Free Free Night 13. BURNING SEXY SILENT NIGHT
TBSラジオ「NISSAN ミッドナイトステーション」から生まれた企画アルバム。作詞は全て女性のタレントや著名人によるもの―――研ナオコ、アンルイス、落合恵子、里中満智子、青島美幸、竹内まりや、原由子、多岐川裕美、微美杏里(藤真利子)、名取裕子など、全作曲は沢田研二である。 とはいえオリジナルアルバムと見て充分のクオリティー。当時の女性が「沢田研二」という素材にどんな幻想を見ているか、というのがよくわかる。憎みきれないろくでなしの国外逃亡を歌った「ラストスパーク」(青島美幸 作詞)、馬鹿馬鹿しさ炸裂の「SCANDAL !」(微美杏里 作詞)が特にいい。8点。


cover ◆ 女たちよ  (83.10.01/第12位/5.6万枚)
1. 藤いろの恋 2. 夕顔 はかないひと 3. おぼろ月夜だった 4. さすらって 5. 愛の旅人 6. エピソード 7. 水をへだてて 8. 二つの夜 9. ただよう小舟 10. 物語の終わりの朝は
ジュリーmeets筒美京平。舞台は源氏物語。ここまでくるとほとんど異種格闘技ですな。ジュリーなんでもあり状態。トップの作曲者とトップのエンターティナーが繰り広げるアンダーグラウンドの世界。息苦しくなるほど濃密でエロティック。ポップスターがここまで濃密になっていいものなのか、と疑問に思いつつ、9点。


cover ◆ Non Policy  (84.06.05/第23位/2.6万枚)
1. ナンセンス 2. 8月のリグレット 3. 真夏のCONVERSATION 4. SMILE 5. ミラーボール・ドリーマー 6. シルクの夜 7. すべてはこの夜に 8. 眠れ巴里 9. ノンポリシー 10. 渡り鳥はぐれ鳥
事務所は吉川晃司にかかりっきりなのかしら。いいアルバムだけれども吉川の『La vie en Rose』と作家、作風共にあまり変わりませんぜ。「雨になっても晴れになろうと問題なのはシャワーを浴びる温度くらいだよ」(「Non Policy」)ここの秋元康、冴えてるっ。ジュリーってこういうやつだよね。8点。


cover ◆ 架空のオペラ  (85.09.21/第10位/6.2万枚)
1. 指 2. はるかに遠い夢 3. 灰とダイヤモンド 4. 君が泣くのを見た 5. 吟遊詩人 6. 砂漠のバレリーナ 7. 影 〜ルーマニアン・ナイト〜 8. 私生活のない女 9. 絹の部屋
事務所独立して、バックバンドも解体して、レコ社も移籍。心機一転の今作は原点回帰、阿久―大野コンビ復活。ただ全体のトーンはヨーロピアン。この声の湿り加減がなんとも。「LOVE 抱きしめたい」のエスニックバージョンといった「吟遊詩人」、明菜の「SAND BEIGE」のような「砂漠のバレリ―ナ」、東西冷戦下のルーマニアでの諜報員同士の暗闘を描いた「影〜ルーマニアン・ナイト」など、秀作ぞろい。これは酔えます。成熟した大人のアルバム。ジュリーは日本のルドルフ・バレンチーノか?10点。


cover ◆ Coco-lo 1 夜の淫らな鳥たち (86.06.25/第26位/2.9万枚)
1. "B"サイドガール 2. 夜のみだらな鳥たち 3. 無宿 4. ドシャ降り、ぬけて… 5. あの女(ひと) 6. 幻影(イリュージョン) 7. 流されて… 8. 時の街角 9. 闇舞踏
ギンギラのジュリーはもういいんじゃないのかな、というセルフプロデュース。エスニック的なテイストを散りばめつつもどこまでもストイックな音作り。「無宿」ではスーパースタージュリーの今まで隠していた心の底にある皮肉が思わず溢れ出しまう。沢田研二をどこまで深く理解しているかを試されるような作品。6点。


cover ◆ 告白  (87.05.25/第48位/1.1万枚)
1. 女びいき 2. 般若湯 3. FADE IN(inst.) 4. STEPPIN’STONE 5. 明星〜Venus〜 6. DEAR MY FATHER 7. 青春薮ん中 8. 晴れた日 9. 透明な孔雀 10. 護り給え
元ザ・ピーナッツの伊藤エミとの離婚後初のアルバムでタイトルが「告白」というのだから意味深過ぎる。不精髭を生やし、髪の毛ぼさぼさのジュリーが毒づく毒づく。30男の恨み節だ。「女びいき」はちょっと耳に厳しすぎるかな。昔の悪ガキぶりを追想した「青春藪ん中」が一番いいかな。宗教的な「明星〜Venus〜」「護り給え」もいい。けれど、ちょっと心が荒みすぎてますよ、これ。6点。


cover ◆ True Blue  (88.07.24/第67位/0.1万枚)
1. TRUE BLUE 2. 強くなって 3. 笑ってやるハッ!ハッ! 4. 旅芸人 5. EDEN 6. WALL IN NIGHT 7. 風の中 8. 痛み
砂漠の中に立っている。そこは乾いた大気と射るような陽光、風の音と砂が流れる音しかない。心の中にあるあらゆる欲望が無化していく。残るものは遥かなるものへの祈念のみ。もはや、宗教的な啓示すら感じるストイックなアルバム。Co-coloで目指したのは自己救済だったのだろうか。ここまで追いつめられていない聞き手は戸惑うしかない。6点。


cover ◆ 彼は眠れない  (89.10.11/第39位/1.1万枚)
1. ポラロイドGIRL(NEW REMIX)   2. 彼は眠れない 3. 噂のモニター 4. KI・MA・GU・RE 5. 僕は泣く 6. 堕天使の羽音 7. 静かなまぼろし 8. むくわれない水曜日 9. 君がいる窓 10. Tell Me...blue 11. DOWN 12. DAYS(NEW REMIX) 13. ルナ
またまた転向。ぎんぎらジュリー突然の復活。エキゾティックス以来の旧知の仲の吉田建をプロデューサーに迎えて、超ど派手に決めています。作家陣もユーミン、忌野清志郎、徳永英明、奥居香、鶴久政治、大沢誉志幸などなど豪華。Co-coloは一体なんだったのだろうか、という疑問は残るが、ジュリーはやっぱりこれだよね、ということで8点。


cover ◆ 単純な永遠  (90.06.20/第72位/0.4万枚)
1. a,b,c...i love you 2. 世界はUP & FALL 3. Planet 4. プライド 5. 光線 6. NEW SONG 7. この僕が消えるとき 8. 不安にさせよう 9. 気にしてない 10. ジェラシーが濡れてゆく 11. 月のギター 12. 単純な永遠
イケイケジュリー。「TOKIO」の能天気さ再びのアルバム。ずらっと並ぶ秀作群。ぶっ飛ばしまくっています。この頃時代もバブルで全国総アゲアゲ状態でしたな。「この僕が消えるとき」では「トキオシティーも住みにくい世の中だ、注目されなきゃパラシュートも開けない」などと自らを自嘲気味に歌っとります。また「光線」の90年代ビジュアル系っぽさなども笑える。表題作「単純な永遠」は名作。9点。


cover ◆ パノラマ  (91.06.14/第68位/0.5万枚)
1. 失われた楽園 2. 涙が満月を曇らせる 3. SPLEEN 〜六月の風にゆれて〜 4. 2人はランデブー 5. BACK DOORから 6. 夜明け前のセレナーデ 7. STOIC HEAVY 〜盗まれた記憶〜 8. テキーラ・サンセット 9. 君の憂鬱さえも愛してる 10. 月の刃 11. Don't be afraid to LOVE
ちょっとしっとり。フレンチっぽさの漂う「SPLEEN」、昭和初期のような雰囲気の「2人はランデブー」Winkみたいな「涙が満月を曇らせる」、PANTA(「月の刃」)や泉谷しげる(「STOIC HEAVY」)の純情さがなかなかどうしていい。余裕と貫禄のデカダンス。8点。


cover ◆ Beautiful world  (92.06.10/第63位/0.6万枚)
1. alone  2. SOMEBODY'S CRYIN' 3. 太陽のひとりごと 4. 坂道 5. a long good-bye 6. Beautiful World 7. 懲りないスクリプト 8. SAYONARA 9. 月明かりなら眩しすぎない 10. 約束の地 11. Courage
「僕は今 幸せです」「チャコールグレイの肖像」に続く私生活アルバム。ジュリーの孤独で優雅な大人の休日、ってこういう「森のコット」みたいな自然体路線のジュリーは澤田研二であって僕らのジュリーじゃないやいっ。個人使用にとどめてほしいな。ということで5点。

cover ◆ Really Love Ya!!!  (93.11.17/第79位/0.5万枚)
1. COME ON ! COME ON ! 2. 憂鬱なパルス 3. そのキスが欲しい 4. DON'T SAY IT 5. 幻の恋 6. あなたを想う以外には 7. CHILD 8. F・S・M 9. 勝利者 10. 夜明けに溶けても 11. AFTERMATH
そうそう、だからジュリーはアゲアゲがいいのよ。一曲目からシングル「そのキスが欲しい」まで一気に駆け抜けて「幻の恋」(―――これ高橋幸宏のバラードみたい、作は弟子の高野寛だけど)でしっとり。そのあとも「F・S・M」で跳ねたり、「勝利者」では40男の肩で語りまくり。よかよか。これでいいのですよ。8点。


cover ◆ Hello  (94.12.14/第89位/0.5万枚)
1. HELLO 2. DON'T TOUCH 3. IN BED 4. YOKOHAMA BAY BLUES 5. 卑怯者 6. RAW 7. ダーツ 8. Shangri-la 9. 君をいま抱かせてくれ 10. 溢れる涙
吉田建から後藤次利にプロデュースをバトンタッチ。ゴツグとはちょっと相性が合わないかなぁ。ゴツグも工藤静香のプロデュースでアーティストとしての貯金を使い果たしたのだろうか、ここではあまり魅力を感じない。タイトル曲「Hello」はいい曲だけれどね。ちょっとテンション落ちて、6点。


cover ◆ Sur← (ルーシュ)  (95.12.13/第96位/0.4万枚)
1. Sur←(ルーシュ) 2. 緑色の部屋 3. ZA ZA ZA 4. 恋がしたいな 5. 時計〜夏が行く 6. さよならを待たせて 7. あんじょうやりや 8. 君が嫁いだ景色 9. 泥棒 10. 銀の骨
沢田研二本人プロデュース再始動。ここから最新作まで、ずっと本人のプロデュースとなる。 ジャケットの派手派手さほど作品は派手に決めていないのは残念。またタイトルほどシュールでもない。ジュリーならもっとシュールになれるはずでしょうが。シュールなら「夢二」の感じだよ、「夢二」の。ただし「銀の骨」は名作。6点。


cover ◆ 愛まで待てない  (96.09.19/第54位/0.6万枚)
1.愛しい勇気  2.愛まで待てない 3.強いHERAT 4.恋して破れて美しく 5.嘆きの天使 6.キスまでが遠い 7.MOON NOUVEAU 8.子猫ちゃん 9.30th Anniversary Club Soda 10.いつか君は
ジャケ写がつんく♂みたい、というのはいいとしてだ。まだまだジュリーはいける、と確信の1枚。そう、ジュリーは愛までなんて待てやしないのよ、というそんな「背中まで45分」なジュリーがやっぱりそこにいて嬉しい。特にタイトル作のつきぬけっぷりは最高です。 また吉幾三作のバラード「恋して破れて美しく」が意外とよくてびっくり。7点。


cover ◆ サーモスタットな夏  (97.06.25/ランクインせず)
1. サーモスタットな夏 2. オリーヴ・オイル 3. 言葉にできない 4. 僕がせめぎあう 5. PEARL HARBOR LOVE STORY 6. 愛は痛い 7. ミネラル・ランチ 8. ダメ 9. 恋なんて呼ばない 10. マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!
早川タケジとしかいいようがない、悪趣味すれすれのジャケット写真がかっこいい。 表題作「サーモスタットな夏」の馬鹿っぽくも過激なジュリー萌え。続く爆音ギターがかっこいい「オリーブオイル」も最高。このシュールさとエッジ感がアルバム最後の最後まで続いたらよかったんだけれど……。やっぱり50代でやるにはちょっと体力不足!?7点。


cover ◆ 第六感  (98.07.15/第76位/0.4万枚)
1.ホームページLOVE  2.エンジェル  3.いとしいひとがいる  4.グランドクロス  5.等圧線  6.夏の陽炎  7.永遠に  8.麗しき裏切り  9.風にそよいで  10.君にだけの感情(第六感)  11.ラジカルヒストリー 
「ホームページLOVE」などと、若者向けに狙った言葉選びが逆説的におっさん臭さを醸し出してしまうちょっと親父のペーソスが漂うジュリー、そのイタさを含めて愛して生きたい。 「永遠に」の宮川泰大先生の美しいメロディーを派手なギターオーケストレーションでぶち壊しするやんちゃロック小僧ぶりも健在。白井良明との相性もよく「グランドクロス」「ラジカルヒストリー」と佳曲が並び、なかなかでは。7点。


cover ◆ いい風よ吹け  (99.08.25/第86位/0.3万枚)
1. インチキ小町 2. 真夏・白日夢 3. 鼓動 4. 無邪気な酔っぱらい 5. いい風よ吹け 6. 奇跡 7. 蜜月  8. ティキティキ物語 9. いとしの惑星 10. お気軽が極楽 11. 涙と微笑み
長髪でオールバックのジュリーが武田鉄也に見えるような気がしなくも……。さすがにビジュアル面の劣化は仕方ないのか。美輪明宏と武田鉄也を足して2で割ったようなお姿に時の流れの残酷さを見てしまいます。作品もそんなところ、いつもの通り頑張っているが、 パワーダウンに気付かざるをえない。50代の壁か。6点。


cover ◆ 耒タルベキ素敵  (00.09.13/第53位/0.4万枚)
【Disc.1】 1. A・C・B 2. ねじれた祈り 3. 世紀の片恋 4. アルシオネ 5. ベンチャー・サーフ 6. ブルーバード ブルーバード 7. 月からの秋波 8. 遠い夜明け 9. 猛毒の蜜 10. 確信 11. マッサラ 12. 無事でありますよう
【Disc.2】 1. 君のキレイのために 2. Everyday Joe 3. キューバな女 4. 凡庸がいいな 5. あなたでよかった 6. ゼロになれ 7. 孤高のピアニスト 8. 生きている実感 9. この空を見てたら 10. 海に還るべき・だろう 11. 耒タルベキ素敵
20世紀のジュリーの集大成、二枚組の超大ボリューム。過去の作曲家陣を一堂に会しながら、ただの同窓会ではない、今のジュリーが躍っている。ジュリーはいつだって次の「耒タルベキ素敵」へ向けて疾走し続けるのだ。 オープニング「A・C・B」で汗みずくでほろっとさせ、陰影の深いラスト「耒タルベキ素敵」で心深い所で時を思う。 ジュリーマニアは涙して聴け。9点。


cover ◆ 新しい想い出2001  (01.06.20/第90位/0.3万枚)
1. 大切な普通 2. 愛だけが世界基準 3. 心の宇宙 4. あの日は雨 5. 「C」' 6. AZAYAKANI 7. ハートの青さなら空にさえ負けない 8. バラード491 9. Good good day
新しい想い出とはなにか。茫洋と広がる大海のジャケット写真にジュリーがまた新たな次のページをめくったであろうことがわかる。
ただ、それはわたしの求めている歌手「ジュリー」ではなく、「澤田研二」一個人の世界であった。つまりこれは帰ってきた「Co-colo」である。5点。


cover ◆ 忘却の天才  (02.9.01)
1. 忘却の天才 2. 1989 3. 砂丘でダイヤ 4. Espresso Cappuccino 5. 糸車のレチタティーボ 6. 感じすぎビンビン 7. 不死鳥の調べ 8. 一枚の写真 9. 我が心のラ・セーヌ 10. 終わりの始まり 11. つづくシアワセ
沢田研二が私生活を軸に置いた作品を作ると地味になるのは「僕は今幸せです」や「チャコール・グレイの肖像」「Beautiful world」で証明済みである。
忘却の天才―――忘却するのは澤田研二の演じたスーパースター「ジュリー」の記憶なのでは、という不安が過ぎる。5点。


cover ◆ 明日は晴れる  (03.4.25)
1. 明日は晴れる 2. 違いのわかる男 3. 睡蓮 4. ROCK 黄 WIND 5. 甘い印象 6. Silence Love 7. Hot ! Spring 8. ひぃ・ふぅ・みぃ・よ 9. 100倍の愛しさ 10. 夢見る時間(とき)が過ぎたら
3作続いたことで澤田研二が「耒タルベキ素敵」で「スーパースター・沢田研二=ジュリー」を封印し、これからはひとりの年老いたロック歌手として自分のしたいことだけをして生きていくつもりなのだろうということがわかった。
じゃあ、取り残されたジュリーマニアはどうなるの??という泣きごとをいいたい気持ちもあるが、好々爺然として幸せそうな彼を見ていると口篭ってしまう。ジュリーマニアのわたしは4点。

2004.09.05
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