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さくさくレビュー 郷ひろみ


こういうこというとオタクくさくっていやだけれども、もうサイトで自分がずいぶんなオタクであることをばらしているから言っちゃう。 郷ひろみの真価はアルバムによってこそわかるものだ、ってね。
や。彼はアルバムアーティストだと思うのですよ。 シングルで「ここぞの一発勝負」を行なっている一方、アルバムでも実に芳醇で濃密な世界を構築している、とおもうのね。

ま、これは70〜80年代のトップクラスの歌謡曲歌手であればたいていそうなんだけれどもさ。明菜とか聖子とかジュリーとか百恵とか。 しかし、明菜・聖子・ジュリー・百恵なんかに比べて、あんまりアルバムが評価されているように見えないのよ、郷ひろみは。
そもそもアルバムタイトルを検索にかけてもレビューや作品データの仔細がほとんどでてこないなんて淋しすぎる。 アルバムの発売日を調べようと思っても、ネットの検索でひっかからないなんて……。

70〜80年代にヘンテコなのにとても魅力的で優秀(?)な「郷ひろみ」というひとりの歌手がいた、ということを忘れて欲しくないのです。 ってこういう言い方はまるでなくなった人に対するものだな。
ま、とにかく郷ひろみの過去のアルバムが手に入らないなんてどうかしているんじゃないの?と私は思っているのですよ。郷ひろみに対する認識甘いんじゃないの、と。 沢田研二が今年の春ついに3度目の全オリジナルタイトルのリイシューをするというのに、ソニーはなにをやっている、と。歌謡曲の再販は山口百恵だけなのか、と。 「比呂魅卿の犯罪」だけで済むと思っているの?と。

と、エラソーなことを言いつつ、ジャニーズ時代の彼のアルバムは持っていない私なのですが。 いやぁ、なんか楽曲構成とかタイトルから感じるコンセプトといい、なんか「ウィスパーカード」的ヤバサを感じてしまって。 べつに郷ひろみの部屋に招かれて一緒におしゃべりとかしたくないし。そういうドリームは持っていないし、みたいな。 聞いてみたけれども、そういうアルバムじゃないよ、というならご一報ください。




cover ◆ ヒロミック・ワールド  (75.11.21/5位/5.1万枚)
1.午后のイメージ 2.20才を過ぎたら 3.恋のハイウェイ 4.宇宙のかなたへ 5.君のおやじ 6.雨にひとり 7.ウイスキー・ボンボン 8.ライト・グリーンの休日 9.青ひげの男 10.誰もこない世界へ 11.ガラス張りのエレベーター
ユーミン+筒美京平の初期郷ひろみの名盤。午後の陽射しに彩られた表参道を見下ろすとそれは15世紀のロンドンのよう、という1曲目オープニング(「午後のイメージ」)にして既にどうしようもなくユーミン。このハイセンスな少女趣味を持つ者が当時の日本のポップス界には彼女しかいなかった。 ユーミンはこのアルバムで「コバルトアワー」の歌謡曲乃至美少年版をやってみようと思ったんじゃないかな。ウォルナッツアイスクリーム、赤いハーレー・ダビットソン、カティーサーク、クラーク・ゲイブル、レオンラッセル、フットボールの試合……。歌詞中に出てくる単語ひとつを取っても当時にはないもの。
それにしても「美少年とはこういうものさ」とでもいいだけなユーミン御大の危うい美少年描写に少女趣味検定2級のわたしなどは思わずその場で平伏してしまう。 「ウィスキー・ボンボン」のイタイケさ。「青ひげの男」の妖しさ。「ガラス張りのエレベーター」のハードボイルドチックな浪漫。24年組の当時のコケシ体型美少年漫画と一緒に楽しみたい。
筒美センセもユーミンを意識したのかいつもよりも一層繊細なペン使いをしている。筒美京平はスピッツの草野マサムネのメロディーセンスを「自分に近いものがある」といったことがあるけれど、このアルバムを聞くと少し納得する。 藤井隆の「ロミオ道行」はこのアルバムの続編のつもりで作ったんじゃないかな。そこんとこどうよ、松本センセ。9点


cover ◆ 街かどの神話  (76.12.05/12位/2.6万枚)
1. 街かどの神話 2. あの地平線 3. もう会えません 4. 夏のページ 5. 小さな友情 6. 寒い夜明け 7. あなたがいたから僕がいた 8. 限りなき愛の日々に 9. 桜の五線譜 10. 南の果実 11. 青いサンダル 12. アメリカより愛をこめて
 全12曲中、8曲が筒美京平作曲、内4曲がなぜか楳図かずおの作詞。のこりは大兼佳也、荘久也がそれぞれ作曲。 この時期、ジャニーズ事務所からバーニング・プロダクションに移籍。
 いかにもジャニーズ謹製といった少年的な華やかさと痛々しさから脱却しようとした結果なのだろうが、野口五郎が歌ってもおかしくない、いかにも70年代らしい泥臭い雰囲気がただよっている。 近所のボロアパートに下宿している浪人生というか、「うさぎや」の次男坊、宇崎拓郎という感じ。 異世界に生きるスター・HIROMI GOでなく、どこにでもいるようなワン・オブ・ゼムの平凡な青年、原武裕美の世界なのだ。
 ジャケットの、ジーンズにざっくりとしたセーターというひろみのいでたちといい、そっけないアートワークといい、この飾り気のない感じは狙いなんだろうな。 フリークスなひろみが大好きなわたしとしてはちょっと求めているものが違うんだけれども、これはこれでいいかも。なんだかんだいってひろみの一番美味しい部分を知った筒美せんせーのメロディーラインは心地いいですし。 フツーすぎるところがむしろひろみにおいては浮いてしまう、そんなことを確認する一枚。7点。


cover ◆ アイドル NO.1  (77.10.01/7位/3.5万枚)
1.洪水の前 2.水色の渦 3.MIND反比例 4.Plastic Johnnie’s Face 5.悲しきメモリー 6.ひろみのララバイ 7.それが愛 8.雨のロマン 9.バックシャン 10.悲恋 11.銀河の騎士 12.虹を追いながら
シングル以外はピンクレデイーでお馴染みの都倉俊一づくし。このあたりから筒美京平の磁場から離れることになるのか。都倉センセの曲って当時の歌謡曲にしてはリズムで作っているようなところがあるから案外郷ひろみのテイストにあうんだよね。 郷ひろみの良さってとことん無内容でだけれどそのぶんノリだけは抜群にいいって所だからさ。久世ドラマでいうならば「悪魔のようなあいつ」と「寺内貫太郎一家」と「ムー」だったら「ムー」なわけよ、やっぱり郷ひろみは。スラプスティックでネタ中心で活きの良さが命、でもってとくに意味無しのストーリー、と。
ここで登場の島武実さんの詞も郷ひろみにほどよくあった軽目で無内容の詞でいい感じ。この人は橋本淳の系譜だよね。島さんはこの業界でいろんな仕事しているけれども近頃は詞作を見ないので残念。近田春夫はこのアルバムの「Plastic Johnnie's Face」から「郷ひろみのプラスチック感覚」を思いついたのかな。6点。


cover ◆ ピラミッド・ひろみっど  (77.12.21/24位/2.1万枚)
1.禁猟区 2.ときめきの午後 3.A.M−P.M−P.S 4.ブラック・ジャック・サンデー 5.ストン・STONE 6.お化けのロック 7.SECRET SPACE2001 8.帰郷 9.TWO PAIR 10.ピ・ラ・ミ・ッ・ド 11.寂しさの果てなん国へ
駄洒落かよ、と思わず三村ツッコミしたくなるタイトルとおいといて(――あ、このタイトルはドラマ「ムー」からのいただきなのかな。あの番組で「ピラミッドパワー」とかネタをやっていたような)。酒井Pは今度は百恵でお馴染みの阿木・宇崎コンビに発注、前作からわずか2ヶ月のタームでリリースしている。
パーソネルをちゃんと見るまで「お化けのロック」はPLのアク−トク作品かと思っていた。阿木・宇崎・萩田トリオだったのね。このチームも一度はピンクレディー路線を作ってみたかったのかな。
「Time でいえば今は午前の刻さ」ではじまる「A.M-P.M-P.S」の馬鹿馬鹿しさにまいってしまう。どうしてこの人って頭のカラッポな歌を歌わせるとここまでいいのかなぁ。 タイトルにもなっている「ピ・ラ・ミ・ッ・ド」はなんとラジオのDJを主人公にリクエストはがきの読み上げとリクエスト曲で構成している意欲作。いかにも阿木・宇崎なトリッキーな歌だが、山口百恵のような成功はしていない。っていうかひろみにこういうデコラティブなのは似合わんでしょ。
阿木のフェミニンな詞は岩谷時子の年上バージョンという感じで郷ひろみにあうものの宇崎の歌謡ロックはそこまでの相性はなく。よって阿木は以後もこれからしばらく郷ひろみに歌詞を提供するが、宇崎とはこれっきりに。6点。


cover ◆ Narci-rhythm  (78.07.21/15位/3.5万枚)
1.ZONE・亜熱帯 2.METAL POINT 3.HELL OR HEAVEN 4.SIDE ONE SIDE 5.HIGHWAY TROUBLE 6.NARCISSUS 7.FLASH 8.ホルス伝説 9.奇しくもはかなくもおかしくも悲しい物語 10.林檎殺人事件
タイトルは「ナルシリズム」と読む。
今回はキャンディーズ担当だった穂口雄右の全作曲。ここまでのアルバム3作は「筒美京平からの卒業」がテーマだったわけだけれども、前2作の都倉と阿木・宇崎は百恵陣営だし、今回はキャン陣営とどれも酒井政利さんが関わっていたわけで、そういった意味では使いまわし?とも受け取れる。 が、この盤は結構好きよ。好き。今までのなかでもっともディープな音作り。ディスコ、あるいはフュージョンの方向へぐぐっとせまったアレンジ。とくにA面の質は褒めたい。ウエストコースト〜な感じで、70年代後半の日本の洋楽事情がよくわかる。
「Highway Trouble」ってなんのトラブル?高速で飛び出てきた子猫を轢いちゃったっよって、なんじゃそりゃ―――。 ディスコ調でやたらスリリングで煽ったバックトラックにこういう馬鹿馬鹿しい詞というのは郷ひろみだからこそ成立するわけで、ある意味スタッフはよくわかっている。 万華鏡の見方を講釈する「Side One Side」も相当ヘンだし。「Metal Point」の「OVER OVER〜〜〜〜」も相当笑える。どれだけロングトーンを伸ばせば気がすむのか、これは子供の喧嘩か。 「FLASH」の連呼も笑えるし、「NARCISSUS」も酒井さん狙いすぎですよ。 ラストを飾る「林檎殺人事件」が笑いどころのはずなのに、むしろこれが普通に聞こえてくる。
音自体は本格派で玄人好みのカッコイイものなのに、わざとチープでハリボテチックな演出をかけて聞き手を笑わせる郷ひろみ歌謡の世界はこのアルバムでひとつの完成に至ると見た。以後はこのアルバムの路線を強化させることに。 そうそう。「Hell or Heaven」をどっかで聞いたことあるよなぁ、と調べたらドラマ「ムー一族」での挿入歌とのこと。 当時1、2歳で覚えている自分に驚く。自分の歌謡魂にちょっと感心。9点。


cover ◆ アポロンの恋人  (79.04.01/14位/2.6万枚)
1.追憶の嵐 2.抱かれた花嫁 3.DEMON WALK 4.TATTOO 5.BLUE FRIDAY 6.アポロン達の午後 7.D-TYPE 8.サーカスの少女 9.地上の恋人 10.ダイアナ行進曲
前作の成果をもっていよいよ「筒美京平学校」の卒業。これはいうならば卒業記念制作みたいなアルバムだな。全編筒美京平づくし。
ギリシア神話に仮託させてゴシックな詞が目立つが、妙なホモっぽさが気持ちわりぃなと思ってしまう私はダメですか。って俺、郷ひろみを美少年だと思えないもんなぁ――。 アポロンがどうちゃら、エーゲ海でうんぬん、ゼウスの神にオリーブ色の髪がプシュケプシュケに愛しきデーモンって、もうおなかいっぱいです。
これはCBSソニー海外戦略路線の番外編みたいなのものか。神秘主義はお任せとばかりに阿木燿子大活躍。そのなかにあってなぜか久世光彦はひとり「サーカスの少女」で寺山修司してしまっている。
あ、音自体はいわゆる当時の「筒美」って感じ。特に幻想的な紗をかけたり、荘厳な装飾ってのはありませぬ。 筒美と郷はどこまでもそつないなぁ、ということで7点。


cover ◆ Lookin' for Tomorrow  (79.08.01/20位/2.6万枚)
1.いつも心に太陽を 2.Hot Shower 3.衝撃の夏 4.ジゴロ 5.八月の恋人  6.It was almost like a song 〜憧れは果てしなく〜 7.My Life 8.Forever in Blue Jeans 9.Shame 〜クイーンを口づけ〜 10.Keep love in your soul 〜闇に消えた少女〜 11.Honesty 〜心の絆〜
PL旋風吹き荒れる頃に都倉俊一に曲を頼んだり、あるいは阿久悠でPL風の詞にキャンディ―ズの穂口雄右に作曲をかけあわせたり、あるいは百恵陣営の宇崎―阿木コンビに発注かけたり、と筒美京平から離れた郷ひろみは結構やったもんがちでなんでありのラインで曲を作っているけれど、 彼のキャラクターがそれに勝つのか、不思議と二番煎じいう感じがしない。このアルバムのタイトルになった「いつも心に太陽を」にしたって、ゴダイゴ全盛期のミッキー吉野に発注でスポーティーで爽やかでフェミニズム讃歌風ってつまり布施明の「君は薔薇より美しい」だよね、なのだが、そこまでいただいている感は漂わない。
それはカバーにしても同じで、後半のビリージョエルやロニー・ミルサップなどのカバーも結局ストレンジでゲーノーカイな「郷ひろみ」の世界に塗り替えてしまう。
「Hot Shower」は「みんなのうた」風の「サンバ」で、これこそ郷ひろみという感じ。これが「お嫁サンバ」につながると見た。これをシングルに切らなかったのは不思議。 一方「衝撃の夏」あたりは「ナルシリズム」から「プラスチックジェネレーション」への系譜かな。7点。


cover ◆ Super Drive  (79.12.21/27位/2.4万枚)
1.朝陽のプロローグ 2.マイレディー 3.WANNA BE TURE 4.地平線の見える時 5.Someone Like You 〜君に似た誰か〜 6.Feel Like Goin' Home 〜夢が住む街へ〜 7.夜遊び 8.入江にて 9.哀愁ニューヨーク 10.LONELY NIGHT
NY録音。24丁目バンドの強力なバックアップによる1枚。ジャケットは横尾忠則。
「歌謡曲でもっともアメリカ的な歌手」といわれた郷ひろみの本領発揮。ざくざくと非歌謡曲の領域に向かう。 オープニング「朝陽のプロローグ」のあっけらかんとした爽やかっぷりにはまいってしまう。これが郷ひろみの「80年代」。プラスチックで無味乾燥で表層的でパワーに満ち溢れていて、病的に見えるほど健康的。 沢田研二の『TOKIO』と対で聞くと、歌謡曲の80年代への助走がどういったものだったのかがドキュメントでよくわかる。
ここからしばらく編曲は萩田光雄にほぼ固定。歌謡ロック、あるいは純正歌謡曲やクラシカルな弦アレンジに定評のある彼だけれども、 郷ひろみのような洋楽すれすれのアレンジも手札にあるのね、彼ってば。
ちなみに平岡正明氏はこの盤を「紐育のプエルトリカンのサルサのよう」と絶賛。ふつーに今でも当時のフュージョン系のアルバムとして楽しめます。9点。


cover ◆ MAGIC  (80.08.21/20位/3.6万枚)
1.How many いい顔 2.The song for you 3.Trick 4.夏の幻 5.Fragile 6.Magic 7.Splender Dancer 8.D.N.A. 9.Oriental Screen 10.Last Scene
歌手としての躍進目覚ましい郷ひろみのこゆーい1枚。
前作の成果が彼のなかで何かの確信となったのか、国内盤のこれもまったくテンションは落ちていない。これまでやりたいと思っていたことを今やっている。そんな充実感に溢れている。 70年代後半のPL・百恵・ジュリーの三竦み状態に1番抑圧を受けていたのはもしかしたら彼だったのかもしれない。 「百恵がいなくなってもひろみがいるじゃないか」の酒井政利Pの声が聞こえるよう、周囲の気合も充分。「時代の波を超越したポップセンス」という帯コピーも満更嘘じゃないぞ。
郷ひろみはここでようやくジュリーとサシで勝負できる位置に来た。ここから85年あたりまでの郷ひろみのアルバムは沢田研二のアルバムと対比で聞くと面白い。
「D.N.A」のようないつもの笑えるアレもあり、「やっぱりひろみはディスコだよね」の「Oriental Screen」や「Splender dancer」(ともに浜田金吾作曲)も良し。「Fragile」のサビは思わず「スマァーイル・フォー・ミー」って歌いたくなる(笑)。8点。


cover ◆ HOW MANY いい顔  (80.12.21/41位/2.3万枚)
1.How many いい顔 2.聖少女 3.Nazo Nazo 4.ペルソナ(仮面) 5.ポーカー・フェイス  6.Hold Me 7.Ready For You 8.魔女裁判 9.Don't Want To Say Goodnight 10.若さのカタルシス 11.Empty Page
全体のテーマが「HOW MANY いい顔」で後「処女の章」「少女の章」「娼婦の章」「淑女の章」と4章立てになっている。とはいえ以前以後のアルバムと比べて全体の練りこみが足りなくちょっと食い足りないなあ、と。 これは意匠倒れな企画といっていいんじゃないかな。シングルの「HOW MANY いい顔」がヒットしたからそれに後ノリしましたって印象。
「魔女裁判」など笑える曲はしっかり用意しているし、「ペルソナ」とか「HOLD ME」とか無条件にノレる曲もあり、また グラハム・ラッセルの「Don't Want To Say Goodnight」カバーも羽根のような軽さで捨てがたく、とそこそこいい曲あるけれどもね。6点。


cover ◆ Plastic Generation  (81.05.01/20位/5.6万枚)
1.禁句S 2.パピリオ 3.P-Generation 4.モノクロームGirl 5.10Years After  6.Stardust Hotel 7.Only One is Number One 8.Lonely Dancer 9.お嫁サンバ 10.スターダストメロディー
郷ひろみのディスコの名盤といえば「ナルシリズム」も捨てがたいけれどもやっぱり、これで決まり。
ただひたすらに豪華でカッコよくて、だけれどもチープでキッチュ。本格派のようでバッタモノのよう。決して正体を見せない郷ひろみ歌謡の真髄といえばこのアルバムしかないと私は推したい。
ここまで有線とコップ酒の似合う「カッコいいニセ洋楽」を作り上げたスタッフの努力と郷ひろみの素質には正直頭が下がる。
全10曲、全て隙がなく、そしてやっぱり笑える。ただシングルの「お嫁サンバ」だけディスコ風でなくこのアルバムで継子的なのが残念。

歌詞の英語の部分をどう解釈するかっていうのは日本のポップス歌手にはひとつの大きな命題で、優秀な歌手であればあるほど独自の解釈が見られるものだけれども、郷ひろみのそれもまた非常に特異。
郷ひろみの英語詞部分ってのは歌全体を強烈に無化するベクトルを持っている。彼のやたらめったら滑らかな英語の部分を聞いていると、どんな歌でも真面目に聞いているのが馬鹿馬鹿しく感じられるのだ。 この彼の「無意味化へ強い意思」というのはあらがえられないモノがある。
「難しいこと考えるなよ。今がノレればそれでいいんじゃない。どうせ音楽なんて全部バッタモノなんだからさ」と、はたと一人悟ってしまうのだ。
しかも、当の本人はなぁんも考えずに「お仕事」しているだけっていうのがまたなんとも小憎らしい。 10点。


cover ◆ アスファルト・ヒーロー  (81.12.21/33位/2.3万枚)
1.哀愁ヒーロー Part1〜Part2 2.恋愛特許 3.ポケットの春 〜11Fのマリア〜 4.I'm Sorry 5.Vivid Girl  6.存分Lady 7.口紅嫉妬 8.もういちど思春期 9.狙撃手(スナイパー) 10.アスファルト・ヒーロー
売上低迷もなんのその、どんどん突き進み、井上鑑プロデュース。
「哀愁ヒーロー(part 1 part2)」の良さがわからん郷ひろみファンは郷ひろみファンじゃないやいっ、とといたいけれどもこうした煮詰まった曲をシングルに切っちゃうあたりにライトユーザーは息苦しく感じるのだろうなぁ。
「Plastic Generation」の世界をそのまま追求して、むちゃくちゃカッコいいやんといいたい。いいたいけれども、このままアーティストになられてはまたちょっと困るわけで。やっぱり笑えてこそ郷ひろみだろ、ってのはあるわけで。 「恋愛特許」とか詞とメロとアレンジのそれぞれがものすごい緊張関係にあって成立していて、ちょっと感心してしまうほどなのだが。
「口紅嫉妬」のみ馬鹿馬鹿しいサビでほっとさせるが、あとはなんとも構築しきった音でつけいる隙がない。 またまた郷ひろみの歌唱もいつもの「内面のなさ」で迫ってくるのだが、それがいつものあっけらかんとした明るさを感じさせるだけでなく、フリークス的不気味さも少しばかりあって、なんとも。 非常に評価が難しいけれども、ファンのわたしは、8点。


cover ◆ 哀愁のカサブランカ  (82.09.22/2位/17.9万枚)
1.哀愁のカサブランカ 2.時にはきみが、時には僕が 3.ロマンス 4.終着駅の女 5.Goodbye Day  6.Street Doll 7.さよならロンリー・ラブ 8.若草の萌える頃 9.Lazy Moon 10.長雨
シングル「哀愁のカサブランカ」の奇蹟の大ヒットによるカバー主体・バラード主体のアルバム。この成功に「いざとなったらバラ―ド」「いざとなったらカバー」という郷ひろみの方程式が生まれる。
とはいえ個人的には笑える部分が少なくって好きじゃないんだよなぁ。このアルバムでのいっちゃん好きなのは「Street Doll」の過剰ボーカルだし。
ま、このアルバム1枚で済んでいたらよかったんだけれども、「TAILORED SONG」までシングル・アルバムともに結構続いたからなぁ。バラードモノで1番好きなのは来生たかおのカバーの「Goodbye day」かな。 「禁じられた遊び」カバーの「ロマンス」が結構珍品。笑いまではいかないけれどね。それにしても、この時期のベストテン番組の拒否は今考えるとみっともなかったな。7点。


cover ◆ 愛の神話  (82.12.21/9位/11.2万枚)
1.さすらい夢人 2.愛の神話 3.哀しみの黒い瞳 4.狂おしきマドリー 5.白い伝説  6.愛と青春の旅立ち 7.悲しい悪魔 8.愛の場面 9.BABY,IT'S YOU 10.さらばわが愛
矢継ぎ早で出された「哀愁のカサブランカ」第2弾といった趣のカバー主体のアルバム。
編曲担当の川口真と若草恵はわざとポールモーリア系の古めかしく華麗な歌謡曲アレンジにしているようにみえるし、作詞担当も岩谷時子、山上路夫、なかにし礼とひと周り前の面子。「アスファルト・ヒーロー」以前の作品から見るとあまりにもの転向に驚く。 唯一笑える部分は「哀しみの黒い瞳」のアウトロの科白ぐらい。ってそういう楽しみを求めるわたしがいけないのだろうけれど。
や。いい曲多いんですけれどもね。ただ郷ひろみがこれらの曲にどういう接点があるのか、と考えると答えが出ない。っていうかこれは彼でないほうがいいんじゃないかなぁ、というものが多い。 こういうディナーショー向けなのは布施明にでも任せましょうよ。6点。


cover ◆ 比呂魅卿の犯罪  (83.04.01/6位/10.4万枚)
1.比呂魅卿の犯罪 2.君の名はサイコ 3.愛の空中ブランコ 4.夢中 5.独身貴族 6.やさしさが罪 7.美貌の都 8.毀められてタンゴ 9.毎日僕を愛して 10.だからスペクタクル
坂本龍一プロデュースによるYMO陣営強力バックアップの1枚。痛快の一言。
彼等にして生音重視のオーケストレーションというのは珍しい。この時期こういったスタイルの作品は、他に加藤和彦の「あの頃マリーローランサン」くらいじゃなかろうか。これを指示した人(―――酒井政利さんなのかな)はえらいっっ。
中島みゆきに眠る乙女的妄想が暴走したタイトル曲「比呂魅卿の犯罪」(メロに科白をスリリングにからめるあたりが中島みゆきだよなぁ)をはじめ、ホーンセクションがめっちゃスリリングな「やさしさが罪」、 「誘われてフラメンコ」第2弾のようなタイトルなのに気品ありつつアグレッシブなピアノとロマンチックなヴァイオリンに酔っぱらう「嵌められてタンゴ」、シュールレアリズムな詞にほとんど現代音楽なピアノがカッコイイ「愛の空中ブランコ」、忌野清志郎+坂本の「夢中」はいかにも2人の競作という出来、矢野顕子の奔放なスキャットがいい「毎日僕を愛して」もいいなぁ。 「君の名はサイコ」が「君の名はセイコ」と聞こえてしまうのはご愛嬌。
このアルバムのアウトテイクと思われる「愛されラテン」(「黄金郷」収録)や「美貌の都」のB面「Scene 21 祭り街」も一緒に楽しみたい。それにしても唯一歌謡感が高い「美貌の都」が先行シングルってのはよくわからない。10点。


cover ◆ TAILORED SONG  (83.12.21/19位/5.0万枚)
1.マイアミ気分 2.TRAP 罠 3.シャトレ・アモーナ・ホテル 4.アカシアの夜 5.暗闇のディーン 〜エデンの東〜  6.ヴァージン諸島 7.月下美人 8.悪く思うなよ 9.ひと夏のMarianne 10.そんな気がして
前々からカバーしていたフリオ・イグレシアスの元についに突撃をかました1枚。マイアミ録音。
が、これはどうなんだろ。「大人の歌手=バラード歌手」なんでしょうか、酒井センセ。ちょっとこのベクトルをここまで過度に追求するのは疑問だなぁ。 レコーデイングにお金がかかったのはよくわかるし、それなりにいい歌もあるけれども、それほどの意義があったかどうかは不明。とくに今回は外注だっただけに、歌に郷ひろみの必然がほとんどない。「愛の神話」のような擬古典風歌謡曲アレンジというギミックもないし。
歌い手のキャラクターによりかからない普遍的なポップスを歌うことでより聞き手の裾野を広げ、最終的には国民的大衆歌手の頂点へ、という道筋はわかるけれども、郷ひろみって一般的な歌の上手さを持った歌手じゃないし、彼の歌手としての自意識といったらほとんどフリークスすれすれなわけで、 こういったことは、布施明や沢田研二(―――彼はこの路線に向かわなかったけれどねも)あたりが適任。郷ひろみは郷ひろみの奇妙な自意識をじんわりと漂わせる楽曲が1番よ。 「哀愁のカサブランカ」からここまでは結局セルフプロデュース発動までの試行錯誤だっのかな、という感じがある。6点。


cover ◆ ALLUSION  (84.12.01/20位/4.4万枚)
1.M.9 (マグニチュード・ナイン) 2.CHARISMA 3.どこまでアバンチュール 4.ESCAPE 5.愛のEMPTY PAGE 6.美音 LANGUAGE 7.I Feel My Love With You 8.女してる? 9.CARELESS WHISPER
ついに自己プロデュース発動。全作詞、また作曲も約半数は自身が担当。作りは頑丈で精密。かなり手間がかかっているぞ。意外に自作曲も悪くないし。
吉川晃司あたりを意識した他の作家陣は少々アレだが、当時のニューウェーブ風味の陰影深さを自分のものに(――つまりほとんど冗談に)していると思う。全体のイメージとしては「やたらシリアスでカッコいいんだけれども、本人の意図しないところで微妙に笑える」
リバーブ深過ぎのボーカルはカッコつけが過ぎて笑いの方向に向かってしまっていかにも郷ひろみらしい。ラス曲後の無音状態、針をあげる直前のところで謎の奇声を発する郷ひろみもなんだかよくわからなくて笑える。 自作詞によるカバー「Careless Whisper」は直後の自身を予言してしまった。9点。


cover ◆ LABYRINTH  (85.10.02/13位/4.3万枚)
1.Cool 2.I Love Youの香り 3.サファイア・ブルー 4.LABYRINTH 5.サーティーズ・スコッチ  6.The Heart Beat 7.イージー・ハンター 8.ぎりぎり燃えて 9.Deep 10.バラードで泣かせて
松田聖子に手酷く振られた後のせいなのか、深刻なバラードに妙なリアリティーがある。あまり郷ひろみのバラードを認めていない私にしても「サファイア・ブルー」「バラードで泣かせて」あたりは認めざるを得ない。それにしてもこんな時にこういう曲を歌い手にあてがうってのもプロデューサーってのは因果な仕事ですね。酒井さん。
前作の聞き手を選ぶような音の敷居の高さは改めているものの、コアな部分では変わらず。タイトル曲をはじめ「The Heatbeat」「Deep」「Cool」などアップテンポモノはもちろん問題なくいいけれども、ミディアム・スローもいける。トータルバランスと個々の楽曲のレベルの総合力でいったらこのアルバムが1番かもしれない。
同名タイトルのビデオ作品も演出意図が不明でかなり笑えていい。アレ見た後「Deep」を聞くと頭のなかでフラッシュバックして笑えて仕方ない。8点。


cover ◆ LOVE of FINERY  (87.04.01/20位/2.6万枚)
1.Forbidden Fruit 2.Your love got a hold on me 3.You'll be back 4.Pretty lies 5.All dressed up  6.I'm a dreamer 7.DOCTOR L-O-V-E 8.Tonight is the right night 9.You are everything
洋楽志向とセルフプロデュース志向の果てに郷ひろみ全作曲、英語詞によるアルバムが出る。このアルバムの前後に二谷友里恵との結婚とN.Y.生活の開始があるわけで、そういった意味で自身の必然はたっぷり。 確かに筒美京平学校を卒業しての一貫の彼の活動はこのアルバムのためにあったといってもいいのかもしれないし、少なくとも前2作とは地続きのアルバムだと思う。
郷ひろみファンの私は大好きな作品なんだけれども、しかし世間一般的には厳しかったようで。
洋楽コンプレックスまるだしの「歌謡曲」とアメリカコンプレックスに凝り固まった「原武裕美」の双方の親和性で「郷ひろみのポップス」は成り立っていたことを考えると、本場モノに行くというのはある意味危ない橋だったのかもしれない。
でも、ホント結構好きな曲もあるんだよね。「Doctor L-O-V-E」とか「千年の孤独」とか結構今でも聞くんだよなあ。「郷ひろみファン」にとっては踏み絵の1枚。私としては8点はあげたい。


cover ◆ DRIVING FORCE  (89.06.01/47位/0.6万枚)
1.都会はBABY BLUE 2.あの夏の日 3.最終便にまにあえば 4.GIRL! 5.I WANNA DANCE TONIGHT 6.MY HOME TOWN 7.YOU ARE SUCH A… 8.さいはてBLUE WAVE BAY 9.変わらない朝 10.NEVER TO SAY GOOD−BYE
N.Yで方向感覚を失って帰国。で吉田建さんに頼ってアルバム制作って、まったく同時期のジュリーもCo-coloで方向見失って、旧知の吉田建さんで再出発しているんだよねぇ。 親密度の高さからいってもちろんアルバムの出来はジュリーの勝ちだし、そもそもデビュー以来ずうっとジュリーを意識しながら、ジュリーとは決して同じことをやらない郷ひろみだったのに、どうしたの?といいたくなる。
「ALLUSION」以来の世界から転向しなくてはならないと思いつつ、ズブの「歌謡曲」はやりたくないしなぁ、という迷いで、結果なんともぼんやりとした中庸ポップスの印象に。
「最終便にまにあえば」のほうにいくのか「You're such a……」のほうにいくのか。はっきり決めていただきたい。6点。


cover ◆ アメリカかぶれ  (90.06.01/42位/1.2万枚)
1.AMERICAかぶれ 2.Wブッキング 3.もう誰も愛さない 4.ナルシシスト 5.芝浦ゴシップ 6.君以外に好きな人がいる 7.どうする? 8.81〜eighty one〜 9.いつか愛した女たち 10.ALL MY LIFE 11.空を飛べる子供達
郷ひろみが「アメリカかぶれ」って、あざといタイトルだなぁ。秋元康でも絡んでいるんじゃないの?と思ってパーソネルを見たら全作詞が彼の担当。「芝浦ゴシップ」とかこういうタイトルセンスは当時でもう既に恥ずかしいレベルだったよね。
この作品は郷ひろみ向きというより田原俊彦向きなんじゃないかなぁ。だいたい「どうする?」なんて俊ちゃんのシングルにあったタイトルそのものだし。コンプレックスと笑いのレベルがトシとひろみでは段違いなんだよなぁ。そこ、わからないかなぁ。タレントを見る視線が浅いよなぁ、まったく。
「歌謡曲」がテーマというけれども80年代のアルバムのような破天荒なエナジーは感じられず、形骸の匂いたっぷり。「Wブッキング」「ナルシシスト」など不発弾の塊。狙いはわかるんだけれどもなあ。5点。


cover ◆ 準備万端  (91.04.25/68位/0.4万枚)
1.迷(マヨ)イズム 2.トウキョウ・ジゴロ 3.裸のビーナス 4.マイレディー 5.ナイーブな男達 6.よろしく哀愁 7.ハリウッド・スキャンダル 8.サディスティック 9.僕が独身主義者になった夜 10.セクシーユー 11.ケアレスウィスパー 12.Good Bye Day
新曲半分、セルフカバーが半分の20周年記念アルバムでタイトルは「Ving tans」の駄洒落。 「迷イズム」の馬鹿馬鹿しい歌詞にこれよこれ、郷ひろみってのはこの笑いが命だよねと、歌詞カードを見ると作詞・森雪之丞。やっぱ森センセはよくわかってらっしゃる。リスペクト。イントロの「シャッッッ」のGOの奇声も笑える。 歌いなおし部分は妙に自然に歌いこなしちゃって自分的には面白くないけれども、まぁ、円熟といってもいいわけで、簡単には否定できない。ただわたしはやっぱ昔のヘンな周波数出ているようなプラスチックボイスの方が好きかなぁ。7点。



2005.01.24
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