×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


メイン・インデックス歌謡曲の砦>さくさくレビュー アン・ルイス


さくさくレビュー アン・ルイス


cover ナペプロらしい歌手、いわれてわたしが真っ先に思い出すのは、男なら沢田研二、女ならアンルイスだ。
芸能界の匂いと音楽の匂いの絶妙なバランス感覚。 どっちにも軸足を持っていて、そしてどちらがメインでもない。むしろ両足かけておいしいところだけいただいちゃっているという立ちまわりが見ていて気持ちいい。 そんなところが二人は似ていて、ナベプロらしいなぁ、と私は感じる。 ジュリーがロックをお茶の間に普及させたのと同じように、アン・ルイスはHR/HMサウンドをお茶の間に普及させたしね。 ――ちなみにこのふたりは84年頃に「Ann-Julie」というユニットを組む計画もあったのだが、沢田研二の事務所独立で立ち消えになっている。

アンルイスといえば、「六本木心中」「ああ無情」のヒットに代表される歌謡ハードロック路線をイメージをする人がほとんどだと思う。 『遊女』『女神』『My name is Woman』といった歌謡ハードロック時代のアルバムももちろん痛快でカッコいいんだけれども、 その歌謡ハードロック路線に到る以前の作品もなかなか面白いなとわたしは思う。 ずぶの歌謡曲な「グッバイマイラブ」の頃はともかく、歌手としての自覚が生まれたものの暗中模索の「甘い予感」から「ラ・セゾン」の頃は、もろジュリーになったり、湘南サウンドになったり、 ヤマタツ・竹内夫妻なアメリカンポップスになったり、髪を染めてニューロマやってみたり、と千変万化。
歌謡ロックの世界をつくった後もKim Bulladをプロデューサーに迎えて、なかなか面白いプロダクトを残していて、興味は尽きない。

それにしてもアッパーでイケイケでいつもハイテンションに見えるアン・ルイスがパニック障害に陥るというのだから、つくづく人というのは外見では判断できないですね。 今回はセルフプロデュースのきっかけとなった「女はそれを我慢できない」直後のアルバムからスタート。


cover ◆ Think ! Pink !  (78.09.25/24位/6.6万枚)
1.Think ! Pink ! (instrumental) 2.女はそれを我慢できない 3.女の顔にスリルが走る 4.もう少し 5.約束 6.チープなうわさ 7."ごめんね"と云わせて 8.湘南の男たち 9.Please Tell Me 10.光る渚 11.女にスジは通らない 12.Think ! Pink ! (instrumental)
目指せ「女・ジュリー」。 「甘い予感」(作詞・作曲 松任谷由実)でオケ録りの段階から様々なディレクションを飛ばすユーミンに刺激を受け「私も自分の音楽を作りたい」と一念発起したアン・ルイスのはじめの一歩。 目標設定は、当時、ビジュアルを戦略に組みこんで日本人にもわかり易いロックを展開して一大ムーブメントを起こしていた事務所の先輩、沢田研二。 ジュリーのプロデューサーのひとりであった加瀬邦彦作詞・作曲のシングル「女はそれを我慢できない」のヒットに続くアルバムがこれ。演奏はアニーズ・バンドと表記されている。 フュージョン〜ディスコなオープニングののインスト「Think ! Pink !」にはじまり「カサブランカダンディ」+「絶体絶命」のような「女はそれを我慢できない」、微妙に桑名正博チックな「女の顔にスリルが走る」、唐突にメロウでジャジーな「もう少し」、 さらにビーチボーイズ風の「湘南の男たち」や、ゴダイゴのトミーシュナイダーの曲もあったり。手探り状態のごった煮という感じだが、ポップス遊びに興じる彼女の姿がなんだか楽しげだからそれでいいか。 この遊び心は70年代の日本の歌謡曲にあって異色。7点。


cover ◆ Pink Pussy Cat  (79.08.05/49位/1.5万枚)
1.Dream Boat Annie 2.Love Magic 3.Just Another Night 4.ウォッカ or ラム 5.太陽神 〜恋の女神〜 6.Alone in the Dark 7.バスルーム 8.シャンプー 9.Lost in Hollywood 10.I'm a Lonely Lady 11.Dream Boat Annie (reprise)
ひそかに山下達郎全面プロデュースのアルバム。パーソネルを見ると、YMOのお3人がプレイヤーで参加していたり、吉田美奈子、椎名和夫らが作家として参加していたりかなり豪華な作りなのだが、あまり知られていない。こういうのがレアグルーブっていうの? 後のハードロック路線とは違った味わいだけれども、楽しめます。アメリカンポップスオタク山下達郎の面目躍如。音は70年代後半のフュージョン期典型といった感じ。YMOがらみでもテクノ成分はまったくございませんのであしからず。個人的には「Love magic」「Alone in the dark」の吉田美奈子作品がツボ。 このアルバムの流れで「恋のブギウギトレイン」という傑作が生まれる。 ちなみに中国題は「粉紅色的小猫」ってなんで中国題がついているが意味は不明。ジャケットはなぜかトロフィーにかぶりついているアン姐ぇさん。裏ジャケではピンクのシースルーのネグリジェで過激に挑発、誰のアートディレクションかいなと調べたら、早川タケジでした。やっぱりね。7点。


cover ◆ Linda  (80.07.21/29位/8.9万枚)
1.プラネタリウムの惨劇 2.おとぎのダンス・ホール 3.Time of the season 4.ちょうどいいレディー 5.Navy Blue Afternoon 6.恋する二人 7.Pink Bologna 8.Me 9.LINDA 10.New Rising Star 11.Time Limit 12.Good-bye My Love (Short Ver.) 13.Why 14.LONDON DAYS 15.Travelin' Band
Blood Shootなるバンドとの共同作品なのだが、どうにも音の薄さが気になる。ジューシィーフルーツとかあんな感じの系統の音の作り。タイトル曲「リンダ」だけ竹内まりやのオールディーズ趣味のハチロクモノでこのラインナップのなかで浮いておりまする。 おそらくジュリーの「TOKIO」でのイメージチェンジを念頭に入れた路線なんだろうけれどもどうも今聞くと「プラスチック」という感じ。 うむむむ。裏ジャケのキヨシローみたいなメンバーのお化粧といい、今聞くにはちょっとつらい作品です。アン・ルイスは元々存在感が軽い人なのだから、あえて軽く演出する必要はなかったかな。5点。

cover ◆ La saison d'amour  (82.08.21/8位/13.4万枚)
1.Photograph 2.Baby, Let me stay tonight 3.さよならスウィートハート 4.La saison (Album Ver.) 5.Shake Down 6.Don't smile for me (part.1) 7.Can you light my fire 8.All mixed up 9.AちょっとHOTみだら 10.つかのま スターダスト 11.Double Vision 12.Don't smile for me (part.2)
出産休暇明けの一発ということで、敢えてど派手に勝負。髪の毛を金髪に染め、作詞・三浦百恵、作曲・沢田研二による先行シングル――ってこれで話題にならないはずなく、大ヒット記録。 続くアルバムはLea hartとの共同プロデュース。ロンドンから現地のミュージシャンを呼んでの制作となった。他、作家陣はLeaとアンをはじめ、ダチの竹内まりや、当時の旦那桑名正博、後輩の大沢誉志幸など。結果、もろニューロマでシックでポップな作品になった。 ほんとに今聞いてもまったく錆びていなくて、思わず何度も聴いてしまうアルバム。 モノトーンなUKロック好きには今でも充分薦められるものじゃないかな。 ただこのアルバムってほとんど洋楽なんだよね(――ってそりゃ、演っている人間全員外人だから、そうなるか)。だから、確かにカッコイイんだけれども、ちょっと歌謡指数が薄めすぎで日本で発売するにはいかがなものか、と一方で思ったりもします。 ちなみにアルバムのジャケット写真は宇崎竜童の手によるもの。それにしてもアン・ルイスってのはつくづく人の組織の仕方が上手いよなぁ。 本人曰く、このアルバムの成功で、事務所やレコード会社などからプロデューサーとして認められ、以降はある程度自由に楽曲制作できるようになったのだそうだ。9点。

cover ◆ Heavy Moon  (83.03.21/31位/7.0万枚)
1.Cinderella 2.Glass cup upside−down 3.Dot in my heart 4.Sick in Bed 5.IN PUT−OUT PUT 6.LUV−YA 7.Feeling Blue 8.Psychedelic TOFU 9.I HAVE A SECRET 10.Navy Blue 11.LULLER 12.HEAVY MOON
今度はCharをプロデューサーに迎えて今度は自らロンドンへ。タイトル通りヘビーなギターサウンドがメインのアルバムになった―――らしい、って持っていないのよ、このアルバム。 ファンの間ではこのアルバムをベストに推す者も少なくないようです。

cover ◆ I Love You より愛してる。  (83.10.21/26位/3.0万枚)
1.女・Tonite 2.Driftin' in the Morning 3.Imagination 4.Close to you 5.少しだけ Remember 6.Genki Juice 7.Surrender 8.Time Sometimes 9.You And I 10.I Love You より愛してる
ふたたびロンドンレコーディング。今回は西慎嗣プロデュース。前作からのCharをはじめ、Jeff Beck、Simon Kirke、Scott Gorham、Jim Copleyが参加しているというが、歌詞カードに細かいパーソネルがないようっ。 タイトル曲は「ラ・セゾン」に引き続き、三浦百恵。百恵の詞は阿木燿子直伝なのか、妖艶で高慢で危なっかしい女性描写がうまい。作詞家としてやっていく能力は充分あったと思える。とはいえ「作詞をしているなら公人でしょ」と適当にかこつけて押しかけるファッキンなワイドショーレポーターに辟易して、作詞など表に出ることは一切おりることにしたのだそうだ。もったいない。 「女・Tonite」は翌年早見優が「Tonight」としてカバー。二人の友情の出発点でもある。「六本木心中」のヒットへ結びついたハードロック歌謡路線はこのあたりから彼女の本流になるのかな、危なげない作品です。「Imagination」や「Surrender」などなど、純粋にカッコいいです。7点。

cover ◆ Romantic Violence  (84.05.21/50位/1.7万枚)
1.LONDON無宿 2.GET AWAY 3.BUT STILL… 4.SET ME ON FIRE 5.ROMANTIC VIOLENCE 6.薔薇の刺青 7.IN PLEASURE 8.薔薇の奇蹟 9.BREAK THE RULES 10.HOLIDAY 11.MOONLIGHT DRIVE
全曲伊藤銀二編曲によるポップンロックなアルバム。さらにUltra thanx として北島健二の名前も(――「You were the STAR of this album」と最大の賛辞をおくられている)。いかにも80年代なジャパニーズニューウェーブ臭が漂い、これはこれで好きかも。ちょうど「遊女」と「La saison d'amour」の中間の位置にあるアルバムかな。 とはいえ個人的に1番好きなのは1番HR寄りな「IN PLEASURE」だったり。ただ「ワムで朝までDancing tonight」(「LONDON無宿」)という歌詞にはちょっと笑ってしまった。そうかぁ、ワムで踊ったか、一晩中。 北島健二は以後、アンのアルバムで常にハードでキャッチ―ないいプレイをしまくり、彼女にとって重要な片腕のひとりとなるが、もうひとりの片腕、 湯川れい子ともここで出会いとなる。母語が英語である彼女にとっては、彼女の感覚を的確に日本語詞として翻訳できる手練の作詞家が必要だったのだな、ということに湯川の登場で気づかされる。 海外のアーティストとのインタビューなどを数多くこなす音楽評論家であり、多くのヒット曲の作詞家であり、英語曲の日本語詞や洋画の翻訳などもこなししている彼女はアン・ルイスの詞に適任である。彼女の出逢いがあって「六本木心中」が生まれる。7点。

cover ◆ Dri・夢・E・T・C  (85.03.21/46位/2.7万枚)
1.JUMP ! アニーとロックSHOW 2.ピンク・ダイヤモンド (Ver.2) 3.LOST PARTY 4.TRUE TO ME 5.DANCE W/ME 6. Dri・夢・E-T-C 7.セクシャルダイナマイト 8.Mr.MONDAY 9.Wonderful Night 10.Dirty Fingers
前作から引き続いて全曲伊藤銀二編曲。タイトルは「ドリーム・エクスタシー」と読む。第二次ディスコブームの最中、「Mr.MONDAY」のカバーなど、そっち方向への色気を感じる作りなのだが、ギターの重い音への愛も捨てきれず、というそういう印象。 焦点が定まらず、ディスコ風味な音の作りのちゃらちゃらしさが、むしろ悪い影響を与えている。よってディスコというよりもノベルティーグッズのような結果に。 直後の「六本木心中」の大ヒットもあってか、もっとも印象の薄いアルバム。 とはいえバカみたいにベースがボコボコいっているタイトル曲「Dri・夢・E-T-C」や、磐石なバラード「Wonderful Night」、もろ西海岸〜なAOR「LOST PARTY」など、いい曲もあるけれどもね。 ただピコピコキラキラなテクノポップに当時三歳の美勇士の声をサンプリングした「JUMP ! アニーとロックSHOW」はタイトルからして既にちょっとイタい。6点。

cover ◆ 遊女  (86.05.21/3位/17.4万枚)
1.Honey Dripper 2.立ちっぱなしのBad Boy 3.Other Side Of The Night 4.SAMISHISA’S On My Mind 5.あゝ無情 6.Slumber Party 7.遊女のCrazy Love 8.Tell Me That You Love Me 9.Sweet Temptation 10.TRIANGLE BLUE
キタ―――っ。「六本木心中」「ああ無情」の連続ヒットでいよいよイケイケ状態に入ったアン姐ェさん。 1曲目「Honey Dripper」から飛ばしまくりの80'Sハードロック歌謡の名盤。オープニングからエンディングまで一気につきぬけていきます。バラードの配置も絶妙で全体の起伏がほどよくまさしく捨て曲なし。ギラギラギトギト迫っていきます。 それまでのアルバムにあった「私は音楽をやっているのよ」という気負いがこのアルバムからまったくなくなり、自然体で、わかりやすくてチープで泥臭くって、だけど豪華でカッコイイ、という彼女の目指した「The KAYO-Rock」の世界がここで完成。 「女はそれを我慢できない」以来、「女・ジュリー」を目指した彼女はこのアルバムでようやくホンモノの「女・ジュリー」になったといえるかもしれない。 全面ショッキングピンクのジャケットもけばけばしく、このアルバムで自己最高のセールスを記録。 作家はANNIE自身に、湯川れい子、柴山俊之、うじきつよし、高橋ヨシロウ、織田哲郎、西田昌史など。編曲は佐藤準。 以後のしばらくはここでの面子がメインとなって作品を制作、この路線を邁進する。それもあってか、アルバムはここから4作タイトルに「女」がはいり、シリーズ化。これはそんな「女」シリーズ第1弾ということになる。 ――ラスト『Triangle Blue』は彼女のブレイクポイントとなった「六本木心中」が主題歌となったテレビ朝日系深夜ドラマ「トライアングルブルー」(主演 とんねるず)からだろうか。9点。

cover ◆ 女神 −Joshin−  (87.05.21/6位/11.7万枚)
1.JOSHIN 2.INSANE 3.Glass Heart 4.Do or Die 5.Love Machine 6.Guys and Dolls 7.TOKYO Bay Blues 8.Heartbeat 9.Four Seasons 10.天使よ故郷を見よ 〜The Regrets of Adam+Eve〜
「女」シリーズ第2弾。 徹底してサイケでフラワーチルドレンなジャケットに、わかりやすいハードロックな世界。作家、アレンジャー(全曲 佐藤準)、エンジニア(Aldo Bocca)ともに全て前作と同じだが、こちらのほうがよりギターが前へ前へと主張しているかな。 アッパーな楽曲の連打にぼんやり聞いていると、アン姐ぇさんに取って食われるでは、とそんな惧れさえも抱いてしまう。堅い肉を歯で食いちぎるかのようにバリバリとベビーな楽曲をアンさんは咀嚼していきます。まさしくロックの女神様という感じ。 「ちょろいもんだぜ」なんて言葉が嵌まるのはアン姐ぇさんくらいなモノですよ。爽快なほどのビッチぶりがたまりません。そんなイケイケの一方で 情事を女性の内面から描写したシリアスなロックバラードの「Love machine」や、「ホントは怖くて淋しい」なんて弱気な部分がちらつく「Glass Heart」はアン・ルイスの素顔が見えるような気がしてこれまた素敵。 緩急の使い分けが鋭く、飽きのこない作り。 シングルの「天使よ故郷を見よ」とか、もうイントロから既に無駄に壮大で、これよこれ、という。最高です。 ひそかに当時の日本の歌謡界でもっともヘビーな音を聞かせていたのがアン・ルイスだったのでは? これはちょっとリスペクトせずにはいられないかも。9点。

cover ◆ 女息  (88.05.21/8位/7.2万枚)
1.MEIKI 2.SIREN 3.月下の獣達 4.女念’S 1988 5.NEVER FOREVER 6.W/HORE(惚れ)てしまった 7.UWAKI 8.殉愛 9.HIT and RUN 10.STRANGER IN THE DARK 11.KATANA (Ver.2)  12.今、FAR AWAY
「女」シリーズ第3弾。もう「ギターリフ・命」といわんばかりの、わかりやすくスピード感溢れる一曲目「MEIKI」から、もうお腹いっぱいなアンルイスの濃厚なハードロックアルバム。 ほとんどセックスそのものという扇情的なきわどい歌詞に雄雄しく肉感的なハードロック。アンルイスの音楽はもはやセクシャルなバイオレンスですよ。 洋モノAVの過激なプレイに思わずお口あんぐりしてしまうように、聴いていると呆けてしまいます。 とはいえ「殉愛」など聴いていると、セックスに溺れ溺れて溺れきって心も体も溶けきったその先に見つかる愛というもあるのかしらん? と思ったり、非常に勉強になります。 しっかし、「KATANA」って、それ、男性器の隠喩にしては直球過ぎますってば。「KATANAを振りかざせ あなたにそれができるなら 私でどうぞ試し斬り」って。そのまんまやん。8点。

cover ◆ My name is Woman  (89.09.21/7位/9.4万枚)
1.復活−REVIVAL− 2.LONELY LOVE 3.WOMAN(X−10ed MIX) 4.HEAVEN OR HELL 5.(NO MORE)GAMANしたくない 6.SURRENDER YOUR HEART 7.MY NAME IS WOMAN 8.美人薄命(DIFFERINT MIX) 9.FEED BACK 10.愛してくれる女を愛せ 11.RUNNING OUT! 12.SAGA 13.BIRD OF PARADISE
「女」シリーズ第4弾でラスト。ヒットシングルとなった「Woman」をはじめバラードのイメージの強いアルバムといえるかな。 ギターバリバリ全開でゴリゴリ押すばかりでなく、シンセのおかずも適当に配置され比較的まったりとした、これなら工藤静香が歌ってもおかしくないぞ、という歌謡感に溢れた聴きやすい作品。 アップトゥデイトな作りでこのアルバムが一番好きという人も多いだろうなぁ。 中崎英也と松田良がアンの歌謡ロックからメロウさを引き出しております。 もちろん「MY NAME IS WOMAN」のアンルイス節全開のハードなオールドロックも最高。 ラストを飾る「BIRD OF PARADISE」は女性の業を歌った六分半に及ぶ壮大なロックバラード。名曲。脳みそが筋肉でできているような、マッチョで能天気で陰影なしのHRばかり歌っているように見えて、 こういうシリアスな面を臆面もなく出してしっかり嵌まってしまうのだから、アンって凄いよなぁ。 「女」シリーズはアンの「ロイヤルストレートフラッシュ」という感じで、どのアルバムも実にアンっぽくって磐石で外しがない。8点。

cover ◆ RUDE  (90.10.21/10位/7.3万枚)
1.BOYS GET READY 2.SEVENTH HEAVEN 3.A・BA・YO 4.欲望 5.WAITING 6.RUDE 7.FINISH!! 8.BREAKDOWN 9.接吻 10.DON’T WORRY 神様 11.ASIAN BLUE
相変わらず「ギターリフ命」なアン姐ェサン。オールドHRチックな雄雄しくうねりまくるヘビーなギターを相手に女ライオンのごとく咆哮のごときシャウトで挑みまくっております。 ほとんど異種格闘技のよう。 このアルバムから「女シリーズ」からは外れるものの、このアルバムに関しては、前四作とさほど大きく変わったところはない感じかな。アレンジもいつもの佐藤準さん。 「女シリーズ」と比べると歌謡曲的な湿り気が若干薄く、いかにもアメリカン〜〜な、あけっぴろげさと乾いた感触が違いといえば違い。 その面に関してはより本場志向になっているかな。タイトル曲「RUDE」とか、日本のアンルイスが歌う必然がないほどだし。 とはいえ、蓮っ葉に「あばよーー」といってのけて決まっている「A・BA・YO」や、 イントロのギターリフが「スピニング・トゥ・ホールド」(――っていうか「テリーとドリーのテーマ」)な野村義男作曲の「SEVENTH HEAVEN」、 ハードな中に、日本人のツボをつく涙もののメロディーラインがいい中崎英也作の「欲望」など、やっぱり日本向けの歌謡ロックな部分が冴えている。磐石な一枚。7点。

cover ◆ K-ROCK  (92.09.23/7位/11.5万枚)
1.いらいらさせないで 2.Foolish Prisoner 3.Mr.Rocker 4.夜に傷ついて 5.Poison 6.消えゆくままに… 7.夢の果てまでも 8.ほっといてよ 9.銀色の涙 10.Take Me Back 11.Middle Of Eden
91年は20周年記念のシリーズベスト「Womanism」をリリースして1回休み。 仕切り直しの今回は原点回帰で、タイトルもズバリ「K-ROCK」―――もちろん「歌謡ロック」という意味。 プロデューサーは元レベッカの土橋安騎夫。もちっとレベッカっぽくなるかなぁ、と思ったがそうでもなく、 かといっていつものいかにも肉食人種のロックというのでもなく、結構自制的なアルバムかなあ。 いつもの荒っぽいところが、幾分やすりがけされているような感じがする。これが「歌謡」ということなのかなぁ。 今の耳で聞くと「K-ROCK」というよりも「J-ROCK」っていう感じ。アンの作品にしては珍しく「J-POP」臭が漂っている。 アン・ルイスのロックはもっと破天荒でもっと泥臭くっていいと思う。6点。

cover ◆ Rockadelic  (93.09.22/15位/9.2万枚)
1.ROCKADELIC LOVER 2.LOVE SPECIAL 3.YA!YA! 4.砂塵 5.眠れない夜のBREAK 6.乱 7.邪魔(LOVE IS OVER) 8.VIRGIN LAND 9.愛してるよ 10.エロスで殺して 11.RED WINE & BLACK TATTOOS 12.LUCKY’S DOOR
サイケでフラワーチルドレンなジャケットに驚く一枚。 作家は毎度お馴染みな西田昌史、中崎英也、松田良らに、お久しぶりの吉田美奈子、大沢誉志幸、珍しく上田知華なんて名前も。 ここからしばらくKim Bulladとの共同プロデュースになるが、彼とアンの相性もなかなかのもの。 洋楽志向的な部分と歌謡曲的な部分のさじ加減が今っぽい感じで、カッコいいです。はちゃめちゃで泥臭くありながらも、洗練されている、という。 ともあれアンねーさんに「エロスで殺して」なんていわれちゃ、たまらんっ、ていうそんなアルバムです。 殺して、って先にこっちが殺されちまうよ。 いつものアンな西田昌史作の「ROCKADELIC LOVER」から吉田美奈子作の「LOVE SPECIAL」の流れも素敵過ぎます。7点。

cover ◆ Piercer  (94.11.23/53位/1.8万枚)
1.I'M IN LOVE 2.DO DO DO 3.KISS 4.PIERCED HEART 5.楽園 6.DA SILVA STAR(THE BOY THAT LISTENED TO HIS HEART) 7.HIPPIE HOTEL 8.KARADA 9.これ以上の愛 10.GIRL TALK 11.I’M IN LOVE(ENGLISH VERSION)
このアルバムは、Char作のレゲなシングル「I’M IN LOVE」ではじまる。いつもと違う味わいながらもなかなか色っぽく、これもこれでアリ。 続く元チェッカーズの武内亨の「DO DO DO」もちょっとアンにしては変化球。ルーズでちょっと不貞たメロディーが新鮮。 ジャズ風味のベースやラッパが心地いい「KISS」も意外な感じ。 Kim Bulladは今までのゴリゴリなオールドハードロックだけでなく、もっとアップトゥディトな形で今のアンルイスの魅力をひきだそうとしているように見える。 とはいえ、マブダチ早見優との共作(――コーラスにも優は参加)「Girl Talk」はいつものノリで、やっぱりこれにもヤラレマス。女性上位万歳。7点。

cover ◆ La Adelita  (96.09.21/91位/0.6万枚)
1.LA ADELITA 2.MESSY MARRIAGE 3.カナリア〜Like A Canary 4.SWAMPY DESERT QUEEN 5.泣かずにいられない 6.Be QUIET!! 7.FLOWER CHILD 8.眠れないMEDICATION 9.UNCONDITIONAL LOVE 10.THE CONQUEROR〜征服者 11.MOTHER EARTH
なぜかウエスタンのオープニング――かとおもったらいきなりダブっぽくラップしたり、と思ったらいきなりギターが咆哮したり、Kim Bulladはまたまたアン・ルイスに色々とチャレンジをもとめております。 前作からわかりやすいハードロックからあともうひと色なにかを足そうとしている努力は感じられるけれども、 このアルバムに関しては、それが大成功しているかというと、そこまではまだいっていないかなぁ。 タイトル曲の「LA ADELITA」は純粋に面白い作品だし、「Be QUIET!!」も16Beatがスリリングに迫って佳曲だし、全体からみて意欲作では充分あるけれどもね。 ただのこのあたりになると「K-ROCK」という範疇からこぼれてしまうな、という感じ。 あ、もちろん「THE CONQUEROR〜征服者」など、いつものギターのリフが主張しまくる楽曲もあります。 松井五郎―玉置浩二コンビの「カナリア〜Like A Canary」と、OL泣かせの名曲もしっかり用意。7点。

cover ◆ FETISH  (98.02.21/ランクインせず)
1.Lust 2.VENDETTA 3.Fetish 4.豹柄とPINK 5.Sleeping Beauty 6.BLEU 7.Spooky 8.Missing You 9.Freak Heaven 10.Velvet Purple
今回もプロデューサーはKim Bullad。「Piercer」からkimの手によるアンルイスの挑戦が始まったという感じだけれども、このアルバムで一定の成果を得たというところか。 このアルバムは、いい。 アン・ルイスっていえば、立てノリハードロックでしょって、いやいややれば色々と私だって出来るのよ、と本人がいったのかどうか知らんが、 横ノリでグルービーなクラブ系で迫っていて、これがなかなか。なかなかどうって、なかなかエロい。エ、ッッルォい。 身も心も女王様のコスプレのアンねぇさんの過激な挑発にもう蕩けてしまうよ、っていう。吐息まじりの「Lust」には前立腺刺激されまくり。 「VENDETTA」「Fetish」もセクシャルで妖しい世界。眠れる森の美女の精神的SM世界を歌った「Sleeping Beauty」はエロでありながらもシリアスにこちらに迫ってくる。 SM女王に調教されたい御仁には是非の作品。しかし、ジャケットの写真がどれもこれも凄いです。 「SMスナイパ―」かとかん違いしちゃうよ。もうっ。8点。



このあとアンはデビュー以来の所属レコード会社との契約が切れたり、パニック障害に陥ったり、プレッツェル屋をプロデュースしたり、息子の美勇士がデビューしたり、と色々ありながらも、2003年の『Girls Night Out』で歌手活動を再開。



cover ◆ REBIRTH  (05.11.23/ランクインせず)
1. リンダ 2. グッド・バイ・マイ・ラブ 3. 甘い予感 4. Woman 5. 恋のブギ・ウギ・トレイン 6. 立ちっぱなしのBad Boy 7. ラ・セゾン 8. あゝ無常 9. IN PLEASURE 10. FOUR SEASONS 11. 六本木心中 12. Honey Dripper 13. 美人薄命 14. 天使よ故郷を見よ 15. Battlefield 16. Truth or Lies(本音と建前 日本男児) 17. ガラスの天使
 パニック症候群を発症してロスで隠居状態のアン・ルイスの05年に発売されたセルフカバーベスト。発売元はソニー。過去のヒット曲のセルフカバーと新曲ちょっと、という構成。
 セルフカバーの音源の約半数は前年にリリースされた「me-mySELF-ann-i“refreshed」(コロムビア)に収録のもの。前年とほぼ同じコンセプトのアルバムをレコード会社を変えてリリースするあたり、色々な事情がそこにはあるのだろうが(――その前年にはこれまた違うレコード会社でオリジナルアルバム出してたりするわけだしね――)、とはいえ音自体はとてもいい雰囲気。
 いわゆる「ザ・歌謡ロック」のアン・ルイスの「歌謡」を取っ払った、という感じ。日本産の「歌謡ロック」をロスの水に洗い直した、といってもいいかな。脂っ気が抜けてシンプルなオールドロケンロールに仕上がっている。地元の仲のいいミュージシャンともりあがって、ちょっと作っちゃいました的な気軽さがいい。
 「実はあたしちょっと前は日本でそこそこ知られたシンガーだったのよ」
 「へぇ、どんな曲、歌ってたの?」
 みたいなね。
 若い時は手のつけられなかった大型の猫科の獣が、今はほどよく年を重ねて身も心も丸くなって――でも時にはくわっと牙をむき出したりもするよ、という、今の彼女のありようも自然と伝わってくる。いい老後を味わっているんだな、と。
 とはいえ、一番彼女のありようがわかるのは、おまけの新曲のパートだったりするわけで。オリジナルもっと聞きたいなというのが正直な所。日本で積極的なプロモーションが出来ないから、こういう形なんだろうけれども。ちょっと勿体無い。


2005.09.20
アーティスト別マラソンレビューのインデックスに戻る