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小倉千加子 「結婚の条件」

あなたはそれでも結婚できますか

(2003.11.30/朝日新聞社)


今日のホームラン的一言。
「JJ」が好きでもないのに「女として勝負する」という資格はないのだ。
いやぁ、笑わせていただきました。―――私が編集なら帯のコピーはこれで決めるなってくらい決まってました。

今回は現代の女性像を大学の頃に読む女性誌で大まかに分類。女の子は集英社系と光文社系に分類される、のだそうで。
そして「JJ」→「CLASSY」→「VERY」→「STORY」という系譜から「結婚」という名の階級闘争という現実を著者は暴き出していきます。
さらにそうした現代女性とその結婚観のケースとして、倉田真由美、西村知美、梅宮アンナなどを俎上にあげていきます。
って、ここまでの説明で、もう読みたくなったでしょ。

この人は芸能人とか雑誌とか、いわゆる女性の井戸端会議のネタのようなところから社会を分析する能力が本当にすぐれているな。相変わらずの腕に感心することしきり。
学術的な部分をミーハー的な部分で砕いて話してくれるから、すいすい読めるし理解できる。理詰めなんだけれど、エンターテイメントしているって感じ??

とはいえ、読後には非常に陰惨な気分になったのですが。
20代後半から30代で未婚で結婚予定のない、しかも結婚意欲のある男女にはカウンターパンチのような1冊ですよ、これ。
あぁ、俺は結婚しないんだなぁ、としみじみ思いましたよ、思いましたとも。 今の時代、結婚するも地獄、しないも地獄。ってところ。
ま、それもこれも結婚という制度自体が問題なのではなく、その背後に広大に広がる社会的規範とそれに伴って生じる個々の心の中にある「幻想」と現実社会がねじれているから問題なのであって 、はいみなさんで考えを改めましょう、皆さんで結婚して仲良く暮らしましょうとお偉いさんが号令かければ済む問題ではない。

というわけで、「理想的な結婚生活」など現代では一部の特権階級だけが掴む夢のまた夢でしかなくなり、だから誰も結婚しなくなり、子供は生まれない。そして国は滅びる。 ああ、こんな日本に誰がした。

――――男も女もみんながみんな眠り姫で、いつか愛と金と自由と自己実現の全てを無限に与える「王子様」がやってくることをひたすら待ち続けながら仮初め暮らしをしているのが今の日本だなんて、そんな悲しい事実をお父さんは知りたくなかったな。まあ、そんなお父さんも夢見る眠り姫なわけですが。


個人的には「日本一のドラ娘・岡田美里」にもぐぐっと深く分析して欲しかったかな、というのはあるけれど、良書であることには変わりません。


そういえば「くらたま批判」のおかわりを本サイトでやろうと思っていたけれど、この本にあらかたいうべきことは書いてあったので、やる気が失せてしまった。 もし「くらたまって愚かな女の典型だよね」と思っている方は読んでみてくださいな。


2004.10.30
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