中島美嘉って、実にソニーらしいアイドルだよなあ、と思う。 彼女が出てきた時に、いよいよソニーも久々にアイドルを作るかっっ、とわたしはちょっと嬉しかった。 彼女の魅力って、まず楽曲にあると思う。 あくまで歌手は素材、本人と作品とは完全別物で、そのかわり本人のボーカルを120%活かす鉄壁のプロダクションワークが構築されていて、ハイセンスな楽曲を連打する。 それも、avexのつくりあげたファクトリー制をもちいつつもそこにソニーらしいエスタブリッシュメントが感じられて、――まあ、簡単にいえば品がよくって質がいい。 avexアイドルにただよういんちきっぽさ、安物っぽさってのが、中島美嘉にはまったく感じられない。 そんなどこにも隙がない見事なまでの作り物っぽさ、がいいな、と。 それにホント作家陣が多彩で豪華、でもって歌謡マニアに「おっ」と思わせるところで攻めてくる。 おちまさと、秋元康、松本隆、吉田美奈子、湯川れい子、伊秩弘将、テイ・トウワ、河野伸、 川江美奈子、松本良喜、大沢伸一、五島良子、清水信之、加納秀人……。また田島貴男や久保田利伸、ベットミトラーのカバーなんかもしたり。 楽曲も色々なジャンルを多岐にわたってこなしているしね。 そしてもうひとつの魅力、それは彼女の、ほどよくちょっとヘタなボーカルにあるんじゃないかなぁ、と思う。 あ、ここで音軽く外したほうが気持ちいいかも、ってところでふらふらと危うくなる。 そんな絶妙なヘタさ。不安定さがふしぎと全て魅力になっちゃう。そんなお得なボーカルだと思うんだよね、彼女って。 これはテクニックというよりも偶然の産物に近いものだと思うけれども、でも聞く分には彼女の不安定さって、本当に心地いい。まるで想いが溢れすぎて思わずという感じで声が拠れるのよ。 本人の志向を無視した完璧なプロダクションワーク、魅力のあるヘタさ。このふたつってのは、私のなかでは実に「ソニー」って感じなんだよね。 ひとことでいえば「松田聖子」みたい。と。 ――ほら聖子って基本は上手いんだけれども、時折出てしまうヘタっぴなところが妙に可愛らしく聞こえる歌手だったじゃない。でもって楽曲は本人の志向とは関係ないが、当時の一流どころがズラリと並べた超豪華版。と。 80年代でいったら中島美嘉って松田聖子の位置なんじゃないかなぁ、と私は思ったりする。 じゃあ、中森明菜は今ならば誰になるっていうと、やっぱりセルフプロデュースでビジュアル戦略な浜崎あゆみになるんじゃないかな、と(――や、明菜ファンとしては不本意なんだけれどもね)。 宇多田ヒカルは……っていうと、こりゃユーミンかな。寡作で自作でしかし一作ごとのインパクトが高い東芝の歌姫ってあたりが。二人ともわりとオタク体質だしね。 中島みゆきの位置は、と考えると、Coccoや椎名林檎、鬼束ちひろあたりが候補なんだけれども、いまいちどれも決め手が欠けるかぁ。 ――ってまあ、そんな安易なあてはめはいいとして。 ただ、中島美嘉ってアルバムのセールスこそ好調だけれども、大ヒットシングルってまだないんだよね。 今のところ、デビュー曲の「Star」と一昨年年末の「雪の華」あたりが代表曲といえると思うけれどもどちらも50万枚を越えるヒットにもなっていないし、彼女には10万枚以下のセールスのシングルがごろごろあったりする。 このシングルの弱さを解消して、年間チャートベストテンに食いこむようなビッグヒットが生まれたなら、完璧なのになぁ、と私は思っている。 そうなったなら、松田聖子のように妙な自我に目覚めない限り安泰なんじゃないかなぁ、彼女は。 |