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はじめまして (84.10.24/1位/29.7万枚) |
1.僕は青い鳥
2.幸福論
3.ひとり (Album Ver.)
4.生まれた時から
5.彼女によろしく
6.不良
7.シニカル・ムーン
8.春までなんぼ
9.僕たちの将来
10.はじめまして
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とうとうご乱心時代に突入。先行して行なわれたツアー「明日を撃て」の成果を受け、いままで水面下で進行していた「サウンド強化」が明確に全面に表れたアルバムをリリースすることになる。
の、だ、が。今の耳で聞くと、結構ギターの音がペラッとしてしてフォークにもロックにも行けず中途半端に聞こえたりも。
「彼女によろしく」とか「ひとり」、「僕は青い鳥」のようないつものサウンドの作品のほうがよく聞こえる。
ともあれ不安の種が徐々に育っていくような印象のある「シニカルムーン」から「僕たちの将来」までの流れは秀逸。「1984」の予感である。ラスト「はじめまして」で唐突に解放されるのはよくわからないが。6点。
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御色直し (85.04.17/1位/33.8万枚) |
1.ひとりぼっちで踊らせて
2.すずめ
3.最愛
4.さよならの鐘
5.海と宝石
6.カム・フラージュ
7.煙草
8.美貌の都
9.かもめはかもめ
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ご乱心はより一層のところへ向かっていく。二度目の提供曲のセルフカバーアルバムだが、今回はセンチメンタルシティロマンス、クリスタルキング、甲斐よしひろ、後藤次利、クニ河内にそれぞれサウンドプロデュースを依頼。
このアルバムは歌いなおしで提供した楽曲を自分のものにするという意味合いよりも、今後のサウンドの方向決定のための実験の場として既存の素材を使って遊んでみたという感じが強い。
今の耳で聞くと、加藤登紀子のブレーンであるセンチメンタルシティロマンスの告井延隆のアレンジが1番危なげなく聞こえるが、更なるサウンド強化を図る中島みゆきは甲斐よしひろ、後藤次利に目星をつける。8点。
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Miss.M (85.11.07/1位/23.2万枚) |
1.極楽通りへいらっしゃい
2.あしたバーボンハウスで
3.熱病
4.それ以上言わないで
5.孤独の肖像 (Album Ver.)
6.月の赤ん坊
7.忘れてはいけない
8.ショウ・タイム
9.ノスタルジア
10.肩に降る雨
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後藤次利の強力なバックアップによるアルバム。ただの女の恨み言ではない、今までにない強固な世界観を感じる。よりシニックに客観性と虚構性をもって語られる言葉は悪意すらも感じられるほど力強く、そして華やかですらある。
彼女が作家としてより一段上に登ったことを実感できる。「愛しているといってくれ」でフォーク歌手として成功を収め以降、様々な局面で試行錯誤を繰り返していた彼女であるが、ここである一定の成果を得たといってもいいだろう。ギラギラして黒光りして、あらゆる光を飲みこむ強力な磁場を持っている。
特に「極楽通りにいらっしゃい」から「あしたバーボンハウスで」の流れはしどけなく妖艶で最高。デビュー10年の確信を感じる1枚。9点。
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36.5℃ (86.11.12/2位/23.7万枚) |
1.あたいの夏休み (Album Ver.)
2.最悪
3.F.O.
4.毒をんな
5.シーサイド・コーポラス (Short Ver.)
6.やまねこ
7.HALF
8.見返り美人 (Album Ver.)
9.白鳥の歌が聴こえる |
ご乱心ここに極まれり。プロデュースは甲斐よしひろ。ミキサーにラリー・アレキサンダー。レコーデイングはニューヨークはパワーステーション。
アレンジャーは後藤次利、船山基紀、萩田光雄、椎名和夫、久石譲と超一流どころのものすごい面子で、一大アレンジャー大会の様相を呈している。このデータだけでどれだけの盤かというのは想像つくが、
想像に違わぬ名盤。攻撃的で妖しく、シニックで情念に溢れ、冷徹でほの暗いエロティシズムを放っている。
ラストを飾る「白鳥の歌が聞こえる」は寒気がくるほど。命の灯火の消えかけたひとりの女が夜の海のブイの向こうにゆらめく彼岸を静かに臨みている。
他、輪廻の恋を歌って悲劇な「HALF」(―――松任谷由実の「REINCARNATION」や谷山浩子の「再会」との聞き比べを薦める)、壮絶な女の半生を壮絶なボーカルで歌いたおした「やまねこ」(―――中森明菜にはこちらを渡したほうがよかったんじゃないの?)、日本の小市民的生活とその裏にひそむ階級制をさらりと告発した「あたいの夏休み」、裏社会に生きる女の業の深い恋を歌った「毒をんな」、男の側から恋にかける女の鬱陶しさを描いた「最悪」「F.O.」など強烈な楽曲が並ぶ。
ご乱心時代は詞にも実に大きな変化があるように見える。意識的にわかりやすいいつもの「フラレ歌」の世界を避け、詞の虚構性を強め、より客観的で普遍的な物語を紡ごうと努力しているように見える。非情で硬質、ハードボイルドタッチなものが目立つ。10点。
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「中島みゆき」 (88.03.16/3位/16.5万枚) |
1.湾岸24時
2.御機嫌如何
3.土用波
4.泥は降りしきる
5.ミュージシャン
6.黄色い犬
7.仮面
8.クレンジングクリーム
9.ローリング |
アレンジャーは前作から椎名和夫、久石譲をピックアップ。前作の系譜で作られたのであろうが、前作よりもいくぶん鋭いところが丸くなっているように見える。
前作、前々作のようなギリギリのスリルはなく、余裕をもって歌を構築しているように見える。安定感は感じるがそれが少々物足りなくも感じたりして。
シニックなメッセージを裏に秘めた「黄色い犬」「クレンジングクリーム」や、フラレ歌歌いの本領発揮の「泥は降りしきる」の演劇性もものすごいが、
「ミュージシャン」や「ローリング」「仮面」のようなわかりやすい同世代へ向けた応援歌が最後に耳に残る。このアルバムをもって「ご乱心時代」の終了。7点。
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グッバイガール (88.11.16/1位/13.7万枚) |
1.野ウサギのように
2.ふらふら
3.MEGAMI
4.気にしないで
5.十二月
6.たとえ世界が空から落ちても
7.愛よりも
8.涙 -Made in tears-
9.吹雪 |
この時期のユーミンと彼女はとにかく歌のストーリーの組み立て方が圧倒的に上手い。
「ご乱心」時代を通りすぎたこの頃の中島みゆきはデビューからしばらくのように自分を切り売りして粉飾しているような直感で作ったストーリーという感じはなく、実に丁寧にフィクションを練り上げている感じがある。
それはまるで舞台の一幕や短編小説のよう。
このアルバムは「ふらふら」「十二月」「涙」「野ウサギのように」など、久々に婉曲的な女のフラレ歌の世界がメインに据えられているが、それは実に緻密に物語が練り上げられていて、好き嫌いを別にして思わず感心してしまう。
「気にしないで」のラスト「まぁ いいじゃないの」には思わず舌を巻く。「吹雪」の預言めいた語り口も実に巧み。
ちなみにここから現在に至るまでずっと瀬尾一三との共同制作になる。
しかしご乱心期を通りすぎた彼女のアルバムタイトルが「グッバイガール」とは……。つまり「ご乱心」時代ってはただの少女の反抗期ってことなのか?8点。
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1.黄砂に吹かれて
2.肩幅の未来
3.あり,か
4.群衆
5.ロンリー カナリア
6.くらやみ乙女
7.儀式(セレモニー)
8.未完成
9.春なのに |
アイドルへの楽曲提供を定期的に行なっている彼女だが、こうして歌いなおすのを聞くと、それなりにキャラクターにあわせて作っているのだな、という事に気づく。
「春なのに」「肩幅の未来」「未完成」など、作家としてもそれなりにがんばっているんだな、と素直に感心する。その分このアルバムに関しては中島みゆきがこれを歌うのかぁと思ったりも。
やっぱり自分の地の出せる歌手への提供がやはり1番のようですね。このなかで工藤静香へのみ以後も提供を続けるその理由がわかる。
アレンジと歌唱はほどよく安定していて可もなく不可もなくというところ。ちなみに「黄砂に吹かれて」は一部歌詞とメロデイーを変えて歌っている。7点。
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夜を往け (90.06.13/3位/17.0万枚) |
1.夜を往け
2.ふたつの炎
3.3分後に捨ててもいい
4.あした (Album Ver.)
5.新曾根崎心中
6.君の昔を
7.遠雷
8.ふたりは
9.北の国の習い
10.with |
「これからの夜は中島みゆきに任せなさい」リリース時のインタビューでこんなことを言っていた。実際このアルバムは夜露の冷たさと闇の妖しさの感じる佳盤である。しっとり程よくこちらに染み渡ってくる。
力強いビートで疾走するタイトル曲「夜を往け」にはじまり、「しんで」の脚韻が「死んで」と響くように巧妙に作られた「新・曽根崎心中」、エロティックな不倫の一景を描いて見事な「遠雷」(―――今剛のギタープレイも印象的)、聞き手の首をを真綿でギリギリと締めるように「妬んでいる」を連呼する「君の昔を」、北国の生まれの女性の薄情を諧謔的に描いた「北の国の習い」、「36.5℃」の世界の延長ともいえるクールで妖しげな「3分後に捨ててもいい」、
「夜会」の演劇性を象徴するような「ふたりは」、ラストを飾る静かなメッセージソングの「with」など、一つ一つの楽曲の粒が立っていて安定感は抜群。「これぞ中島みゆき」といいたくなる。
とはいえこのアルバム以降、彼女の夜の匂いを感じる作品は加速度的に少なくなっていく。9点。
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歌でしか言えない (91.10.23/4位/19.6万枚) |
1.C.Q.
2.おだやかな時代
3.トーキョー迷子
4.Maybe
5.渚へ
6.永久欠番
7.笑ってよエンジェル
8.た・わ・わ
9.サッポロSNOWY
10.南三条
11.炎と水 |
全11曲ながら収録時間70分オーバーと長大曲がずらりとならぶが、大曲ばかりという感じはなく正直冗長という印象は否めない。「Maybe」「南三条」など「夜会」の影響であろう演劇性が上手い具合に噛み合った楽曲は良いが、それ以外は意匠倒れが目立つ。
「C.Q」は声の演出が過剰でちょっと引いてしまうし、感動の名作になるはずの「永久欠番」はサビの「永久欠番」の部分が飛躍しすぎで消化不良に聞こえる。ゴスペル風コーラスが大胆にフィーチャーされた「おだやかな時代」も悪くはないが、これはちょっと長すぎやしないか。
「炎と水」は男女を象徴として歌ったものだが、淡々としている分だけ真に迫ってくる。これはいい。タイトルからして既に力み過ぎな作品。5点。
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EAST ASIA (92.10.07/2位/35.5万枚) |
1.EAST ASIA
2.やばい恋
3.浅い眠り
4.萩野原
5.誕生
6.此処じゃない何処かへ
7.妹じゃあるまいし
8.ニ隻の舟
9.糸 |
セールスと作品のクオリティーというのはあまり相関関係がないものだが、「浅い眠り」大ヒットによる久しぶりの好セールスとなった今作は、90年代の中島みゆきの決定打のアルバムといえるんじゃないかな。
89年以来続けてきた「夜会」の成果がこの作品に大きく現れているのかもしれない。
「EAST ASIA」「誕生」「二隻の舟」「糸」といった彼女のキャリアの集成ともいえる超重量級の名曲が各所に散らばりながらも、その間を埋める「やばい恋」「萩野原」「此処じゃない何処かへ」などの小さな歌も程よく決まり、アルバム全体に絶妙なうねりがあって何回聞いても飽きない。
無条件で感動できます。このアルバムで泣かないといったら嘘だよ。中島みゆきのマストといったらこれで決まりでしょう。最高傑作といっても過言でない。このアルバムは聞かないと損だよ。
それにしても「誕生」、「二隻の舟」「糸」あたりは偉大過ぎる。もはや彼女の歌うべきテーマは「生」そのものという高次で普遍的なところまで行きついてしまっている。10点。
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1.時代(New Arrenge Ver.)
2.風の姿
3.ローリング
4.あどけない話
5.夢みる勇気(ちから)
6.あたし時々おもうの
7.流浪(さすらい)の詩(うた)
8.雨月の使者
9.慟哭
10.孤独の肖像 1st.
11.かもめの歌 |
「回帰熱」以来のセルフカバーアルバム。今回は提供曲と自身で歌った曲を半々。彼女のスタンダードとなった「時代」や工藤静香のヒット曲「慟哭」などを収録。
「孤独の肖像 1st」の世界観の違いに驚いたりもするが、全体的に見て、前作の極みから軽くクールダウンして余力で作ったような作品に見える。
その中で、吉田日出子へ提供した「あどけない話」、パトリシア・カースへ提供した「かもめの歌」がダントツにいい。彼女のこういった歌は実にゆるぎなく大きく、聞き手の煩悩を浄化し、抱擁する力がある。7点。
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Love or Nothng (94.10.21/1位/36.4万枚) |
1.空と君のあいだに (Album Ver.)
2.もう桟橋に灯りは点らない
3.バラ色の未来
4.ひまわり“SUNWARD”
5.アンテナの街
6.てんびん秤
7.流星
8.夢だったんだね
9.風にならないか
10.YOU NEVER NEED ME
11.眠らないで |
デビューから永らく連綿たる女の恨み言を重ねていた彼女であるが、そんな怨念が気がついたらほろっと取れていた。そのことを痛感する作品。
かつての色恋における救われない情念の世界を再現しようと試みているが、以前のようには成功しない。
このアルバムの白眉である「You never need me」は壮大な報われない愛の歌だが、彼女の歌う姿はゆるぎなく、既に性愛のこまごまとした世界を超越していて、かつての痛々しさはそこにはない。
オーケストレーションの壮麗さと言葉の説得力に感動こそするが、なんとなく「解脱しきった人が今だ救われぬ衆生に向けて歌っている歌」という感じがする。
「ひまわりsunward」などの性愛の関係ない世界を歌ったメッセージソングのほうが掴みが強く聞こえる。6点。
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10WINGS (95.10.21/8位/21.9万枚) |
1.二隻の舟
2.思い出させてあげる
3.泣かないでアマテラス
4.Maybe
5.ふたりは
6.DIAMOND CAGE
7.I love him
8.子守歌
9.生きてゆくおまえ
10.人待ち歌 |
「夜会」vol.1〜6のオリジナル楽曲を収録した作品。しかし、アレンジ面では不満が多し。「夜会」時のアレンジに近いほうがいいなぁ、と思うものばかり。
世良公則とのデュエットの「ふたりは」はトゥーマッチだし、「二隻の舟」も新たなアレンジの必要はなさげ。「泣かないでアマテラス」や「I love him」は「夜会」時の感動を再現できないアレンジで残念過ぎる。
ちょっと音の舵取りをミスってるんじゃないの?
とはいえクライマックスを飾る10分を越える大曲「生きていくお前」には参った。感動しすぎる。この1曲だけで意味があるアルバムといえる。「生きていくお前」で+2点で、7点。
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パラダイス・カフェ (96.10.18/7位/20.1万枚) |
1.旅人のうた(2nd Version)
2.伝説
3.永遠の嘘をついてくれ
4.ALONE,PLEASE
5.それは愛ではない
6.なつかない猫
7.SINGLES BAR
8.蒼い時代
9.たかが愛
10.阿檀の木の下で
11.パラダイス・カフェ |
なあんか、妙に歌い方が体育会系っぽくなってません?声に力こぶが見えるというか。
雄雄しく仁王立ちする中島みゆきのボーカルで「それは愛ではない」なんて一喝されちゃうとごめんなさぁーいと尻尾を巻いて逃げ出したくなる。「Love or Nothng」の続編のようなアルバムで開放的で陽性の楽曲が並ぶが、
「Love or Nothng」と同じくどうにもいまいち入りこめない。上手いなぁ、と思うことはしきりであるが、不思議と心にはいっていかない。やはり「もうあがっちゃた人の歌」という感じ。
それにしても「歌でしかいえない」以降、L.Aでのレコーディングを富みに行なっているが、L.Aの乾いた空気感って中島みゆきには似合わないように思えるんだけれどなぁ。UKとか、アメリカでも東海岸の湿った空気の方があっているように思えるけれども……。
ともあれ太平洋戦争を歌ったと思われる「阿檀の樹の下で」は泣ける。今後はこっちの方向なのかなあ。6点。
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私の子供になりなさい (98.03.18/11位/10.3万枚) |
1.わたしの子供になりなさい
2.下町の上、山の手の下
3.命の別名
4.清流
5.私たちは春の中で
6.愛情物語
7.You don’t know
8.木曜の夜
9.紅灯の海
10.4.2.3.
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タイトルがすげえよなぁ。「私の子供になりなさい」って、いやむしろさせてください。マジで。慈母の言葉のようにも、SMの女王の言葉のようにも聞こえる。
色恋の世界から解脱した中島センセは「母親」の位置へ行くわけね、と納得。このあたりは加藤登紀子的かもしれない。
しかし、自己に渦巻く不条理がこれまでの彼女の創作の根本だったわけで、それがここまで他人事で理攻めっぽくなると、ちょっとさだまさしの世界なんじゃないの?と思ったり。
さだよりもハードな世界観を持っている分、受け入れやすいけれども……。とはいえ「何かの足しにもなれずに生きて 何にもなれずに消えていく 僕がいることを喜ぶ人が どこかにいて欲しい」(「命の別名」)とか
「狙うのは私だけでいい おびき寄せて遠ざかるわ」(「愛情物語」)なんてお言葉もらっちゃうとおとなしくおし抱いちゃうわけですが。
ほとんど報道ドキュメントな「4.2.3.」といい、やたらめったら強くなったボーカルといい、いつのまにか、今までとは違うどこか明後日の方向に向かいはじめている事に気づく。7点。
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I love you,答えてくれ (07.10.03/第4位/万枚) |
1. 本日、未熟者
2. 顔のない街の中で
3. 惜しみなく愛の言葉を
4. 一期一会
5. サバイバル・ロード
6. Nobody Is Right
7. アイス・フィッシュ
8. ボディ・トーク
9. 背広の下のロックンロール
10. 昔から雨が降ってくる
11. I Love You, 答えてくれ
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―――と、「私の子供になりなさい」までざっと流したのだけれども、その後、「ボロクソに云ってもいいので今の中島みゆきに関するテキストを書いてください」という意見をいただいた。ま、まるでわたしが中島みゆきのファンじゃないみたいじゃないか。――というわけで、現在最新盤で、一番好きな最近の彼女のアルバムであるのこれを紹介。07年発売。35枚目のオリジナルアルバム。
一聴「中島みゆきにちんこが生えていても、俺はべつに驚かないぞ」思わず叫んでしまった。それほどに男気のある、非常に骨っぽいアルバム。愛の荒野をひとり雄雄しく歩みつづける旅人・中島みゆきのたどりついたひとつの境地がここにある。
ストレートで、愛のしたたる、力強い言葉たちが、次々と彼女から放射され、そのたびわたしの心を射抜く。身のうちに眠る欺瞞を弱さを抉る。
わたしは、歌いたいんだ、伝えたいんだ、愛したいんだ、与えたいんだ。他に何もありゃしない。なにも見返りなんていらない、受け取ってくれればそれでいいんだ。ただそれだけなんだ。すべての歌が、そういっていた。ここにある、シンプルな言葉、シンプルな愛、しかしそれはなんて困難なものなのだうか。それほどに人は臆病で弱い。
今、彼女はとても強い。それは、借り物の頑強な鎧で護った強さではない。数限りない闘いの末に身についたはがねの霊肉の強さである。無防備ともいえるほどに自らを晒しつづけた末に身につけた本物の強さである。だから彼女は強くもあり、一方で途方もなくやさしく、暖かい。
彼女は偽りのない本当の心で歌っている。だからこちらも本当の心で答えるしかない。「I love you,答えてくれ」と絶唱する彼女に、聞き手であるわたしは覚悟を決めてうなづく。
矢つき、刀折れても、彼女はそれでもとめどなく愛しつづけるだろう。みゆき、お前ってのはつくづく馬鹿な奴だね。でもそんなお前が俺は大好きだよ。
名盤。必聴。9点。
(記・08.08.30)
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