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森川久美「危険な席」

(朝日ソノラマ/2004.02.28)



すんごい久々の新作。オリジナルの単行本だと「ジークフリート 勝利の楯」以来だから、8年ぶり? 気がつけば凄いブランクだけれども、それを感じることとない出来。ものすごい面白かったぁ。森川久美の歴史漫画の魅力は全然錆びてませんってば。

舞台はルネサンス期の地中海、その真ん中にぽっかりと浮かぶ架空の海洋神殿都市、エメラルラディーナ。 そこにアーサー王伝承の「危険な椅子(シージ・ペリラス)」を探しているという男が辿りつき……というお話。

アーサー王と円卓の騎士とか、錬金術師とか、異郷の民とか、海に沈む街とか、 バラバラに散らばった美しいイマジネーションの欠片をモザイクのように丁寧に一つ一つはめこんだような感じがあって、惚れ惚れする。
ひとつひととつがいかにも森川久美で、つまりいかにも優れた歴史エンターテイメント作品で、じっくり堪能できる。 これはいままでの森川久美の作品のなかでも相当上の作品なんじゃなかろうかと思うぞ。

特に水底に沈んだ幻の街とそこで争いも飢えもなく暮らす死人たちのラストシーンは決まっていた。 幸福でせつなくって。いい物語読んだなぁ、という気分になる〆めかた。

それにしても話の落とし方が結構直球の「やおい」だったので、驚いた。
ていうか、神殿騎士団団長のセバスティアンは、ヴェネツィアの元首、ヴァレンチーノ・チェリートのアストロツインなのかしらんという感じでほとんど男装の麗人で萌えた。 イサークの裏庭の菜園で無表情な顔で水やりしたり、イサークの作った手料理をもぐもぐ食べているお姿が素敵です。
そんな不遜なクールビューティーに食べ物で健気に釣っているちょび髭男のイサークは「ジークフリート」のクルトみたいでこれまたかわうかった。
そういえば似ているといえば、この主人公のアンリはモロに「ジークフリート」のジークでしょ、これ。 遊び人のジゴロで、豪華な金の巻き髪にがっしりとした体躯。ジークのご先祖様もお元気だなぁ、と勝手に思いこんで読みましたさ。

「はい 俺は卑怯者です。これまでもずっとこれからもきっと」
いいよなぁ、憎みきれないろくでなしさ加減が。


読み終わった興奮で森川久美さんのサイトをひさびさに訪れてみたら、興味ぶかいことが書かれていた。

http://www1.linkclub.or.jp/~mya/myroom/tontenkan/tonten.f.htm

ここの7月14日の日記。今回の「危険な椅子」の上梓に到る顛末の話。


商業誌からは足を一歩引こう。本当に描きたい作品を描こう。読み手が面白いと思ってくれる作品を描こう。そういう思いで私はこの作品をどこからの依頼もなく、勝手に描き始めました。 でもそういう作品を載せてくれる商業誌はないので、自分で印刷して販売しようと考えていました。


作者の純粋な創作意欲だけで作り上げた作品だったのね、「危険な椅子」は。
なるほど、そりゃファンならば面白いと思うはずだわ。一つ一つのシーンがしっかり練られているのはもちろん、こういう絵を書きたいという作者の思いで溢れているような感じを受けたのは錯覚じゃなかったのか。

それにしてもなんなんだろうなぁ。
森川久美ほどの作家、キャリアは30年近くあって単行本も30冊以上出している少女漫画界では一定の実績と実力とネームバリューを持っている作家(―――少女漫画を知らない人に説明。彼女はカドカワで全集が編まれたことだってあるほど「作家性」が立っている方なのよ)がここまで思いつめなければならないほどの現在の少女漫画事情って一体なんなんだろうか。

雑誌側の要請に「そんなことしたら読者が逃げるよ。止めたほうがいいよ」とこちらが言っているのに、編集者がきかなくて、しばらくしてから雑誌が潰れる…ということが続くようになって、いったい何だろう、これは。

読者のである私が感じていることはそのまま作家の側も感じているようで。なんだろう。つまり今の少女漫画界は読者と作家をおいてけぼりで「編集大暴走」ってのが現状なわけ?
不思議だなぁ。なんでこんなことになってしまったのか、意味が全くわからない。
これじゃ、読み手も書き手も同人に逃げるよなぁ……。と、ぐねぐねもにょって終わる。



おまけ。

さらに、森川久美さんのサイトをよくみてみたらもっと色々なことが書かれていた。

http://www1.linkclub.or.jp/~mya/koudansha/elisabeth.htm

(歴史ロマンDXについて――)
この雑誌は不定期刊としてはけっこう売れていて、「作家性」が強いせいかコミックスの売り上げもよくて、「売れないから潰れた」わけではないのです。

えーーっっ、マジっすか。
「歴史ロマンDX」大ッッ好きだったのにぃ。そ、そ、そんなぁ〜〜。
この雑誌がなくなって、ここに軸足を置いていた漫画家さん(森川久美をはじめ、白井恵理子、皇なつき、大竹直子、藤田あつ子、東山聖生などなど)のほとんどの方の活動がおぼつかなくなったというのに、 じゃあ「歴史ロマンDX」が商業ベースで成立していなったかというと、そうでもなかった、だなんてぇ。そんな殺生なぁ。

ご存知のように白泉社は定期的に作家を一新して雑誌を低年齢化するので、

森川久美さんが「LALA」・「花とゆめ」から離脱した前後の時期(85年頃)に山岸凉子、木原敏江、大島弓子、坂田靖子などなど、雑誌創刊時に大きく貢献した実力派の中堅・ベテラン作家が大量離脱したけれども、これは社風で、以後もずっとこういう無駄なホロコーストを定期的に行なっているのぉ。
出版業界が何を考えているのか僕にはもうわからないよ、ママン。

森川センセはこれからもとち狂った出版事情にめげないで、細々でいいので作品を発表してくださいね。

2005.02.23
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