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森川久美のコミックス解説文について

(「青色廃園」/1977.04.20/白泉社)
(「ヴェネツィア風琴」/1978.01.20/白泉社)
(「十二夜」/1978.05.20/白泉社)



近頃、また昔の少女漫画ばかり読んでいる。
ちょうど大学に入学する前後、わたしは昭和50年代の少女漫画を爆読していたのだが、その頃に読んでそれっきりという作品も多く、それを再読してはこの時期の少女漫画のレベルの高さに舌を巻いている。
昨日は森川久美の「シメール」を一気読みした。
森川久美さんってのは、ある意味デビュー時からほとんど変わっていない人だなぁ、ということを再確認した。
や。画風は「南京路」前後に劇的に変わったけれども、漫画で表現しようとしていることというか、世界観というか、そういったものはデビュー時とほとんど変わっていないなぁ、と。

と、森川作品をぼんやりつらつら見ているところに不意に飛び込んできたものがある。
「花とゆめコミックス」の折り返しの解説文。―――なんだかただ事ならない感じで微笑ましく思えるんですけれども。 ちょっと抜書きしてみましょか。

まず初の単行本「青色廃園」

鋭い美意識と感受性、歴史に関する豊富な知識に支えられて独自の官能美の世界を追い求める森川久美の初の作品集。…(略)…現代少女漫画界にまたひとつ大いなる新星が誕生したことを明らかに告げるだろう。
なんか、ものすごい。「告げるだろう」なんて予言しちゃっているし。

ついで2作目「ヴェネツィア風琴」になるとほとんど作品の世界をぶっ飛ばして完全にポエムしてしまっている。
癒えることない過去の傷を内に秘め、カゲの世界にその心を永遠(とわ)に閉ざした若者たちは、しばし醒めた陽光の中、愚かしい真実を求めて華麗な生命を燃やし尽くす。逝ってしまったものたちよ!彼らの生きた時間よ! 限りない愛惜をこめて森川久美は優しい鎮魂歌(レクイエム)を奏でる。

ここまで来ると、ラスト締めの森川久美がマリス・ミゼルでもサイコ・ル・シェイムでもいいような気がするわけで。むしろ『マリスミゼル、ニューシングル「再会の血と薔薇」絶賛発売中』とかのほうがよっぽどしっくりくるわけで。


シェークスピア原作の短編「十二夜」をタイトルにした3作目も凄い。
森川久美はこの世界的古典に真正面からとりくみ、現代漫画表現の粋をこらしてその完全漫画化という至難の業をやってのけた。読者の惜しみない拍手を期待する。

「読者に期待する」なんて上から目線も気迫に押されてしまってなんとなく許せてしまう。

それにしてもこれが当時の「ぱふ」とか「だっくす」とかの漫画評論誌のレビューだっつうなら別にわからんでもない。 しかし、これがコミックスの折り返しに乗っているというのだから、面白い。
当時の少女漫画ブーム――一カウンターカルチャーとして少女漫画が大きな役割をになっていたということが顕著に表れている資料だと思う。
あれから随分時が経ちました。
少女漫画が、文学表現の先端のひとつだったことなんざ、もうほとんどの人は覚えちゃいないでしょうねえ。……。 ちょっと肌寒い午後に、紅茶でも一杯淹れたくなる、そんな気分です。
って、勝手にメランコリーしてもしょうがない、がんばれ。誰に対していっているか、わからないが、とにかくみんながんばれ。俺もがんばるから、って、俺は何をがんばるんだっちゅうの。


2005.02.23
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