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安曇もか 「ロマンセ」シリーズ

(「ロマンセ 大人のキス」/98.04.10)
(「ロマンセ 2 甘くも危険な秘密」/00.07.10)
(「愛しく冷たい君」/04.6.10)


 春なので、発情してやおいを読む。
どうせわたしが好感を持つやおい作家は「あっちゃん(はぁと」とか「はいでぃー(はぁと」とか、のたわまるV系バンギャルだったりするのはいつもなので、驚かないもんっっ。 ということで、今日取り上げるのは、爆竹大好きの安曇さんなんですが(――どんなまくらだ、いったい)、 これはもう18世紀おフランスのロココ調の豪奢なコスプレと、主人公アントワーヌのツンデレっぷりを楽しむ作品かと。

 あーた、少女漫画といえばロココでおフランスですよ。 アビにジレにキュロットで、 ひれひれレースに模造宝石にみちみち刺繍ですよ、おじょーさん。
 「ベルばら」から遠くを離れて、こういう少女漫画のヨーロッパ貴族趣味路線ってのも、すっかり廃れてしまったけれども、 わたしはやっぱり好きなんです、布っきれのしわとか、花びらとか、髪の毛とか、ぐわーーっと細かく描かれると萌えるんですっ、ごめんなさい。

 アントワーヌの、女のように美しく、やさしく紳士的で、完璧主義者で、 花の微笑みで会う人の誰しもを酔わせる、けれども誰にも本心を見せない、チョモランマのごとき誇り高い貴公子っぷりが、けれども恋人の前では、わがままで、怒りっぽく、涙もろく、子供のようなことを言って困らせて―― って、ベタだなおい。でもいいの、ツボだから。



 恋人・ジュールがアントワーヌそっくりの珍しい組み立て人形に興味を傾けて、目の前のアントワーヌに目もくれないのを 「目の前にこのわたしがいるのにっっ」と、ご立腹して、 強引にくちびるを奪うアントワーヌさま。

 ジュールに淡い恋心を寄せているジュールの幼馴染の少女とジュールをみずから引き合わせたくせに、 いざふたりがいい雰囲気になると、不安になり出す自分勝手なアントワーヌさま。
 「娼館にでも行け」
 激しく求めようとするジュールを罵って喧嘩して、でもすぐにそのひとことを後悔し、今度きちんと謝ろうと思っていたのに、数日ぶりに会って、
 「娼婦でも買ったか」
 といってしまうアントワーヌさま。
でも、最後には、夜更けにジュールの家に訪れて、悔しそうな泣き顔で、
「…私は…おまえに…抱いて欲しくて…来た」
と、いってしまうアントワーヌさま。

 「卑怯だっ さっきは愛しているなんて言ってあんな…ことまでしたくせに。なのに用が済んだら突き放すのか、もう嫌だっ いつまでこんな苦しい想いをしなきゃならないんだ」
勘違いでいきなりぶち切れのアントワーヌさま。

あふあふあふあふ。俺を悶え死にさせるつもりかっっ。



後半は、どたばたラブコメ臭が強く、 このまま坂田靖子の「バジル氏の優雅な生活」のやおいラブコメバージョンみたく、有閑貴族がサロンに集ってぐだぐだしているノリでつきすすんでくれればいいなぁ、と思っているのだけれども、 近頃このシリーズの新作、お目にかかってないんだよなぁ。
 アントワーヌさま、シリーズがすすむにつれてどんどんかわうくなっているのにぃ。
 もかさんの和モノ歴史・時代漫画の単行本とともにひそかに待っているんですが、どうなんすか、ビブロスさん。 歴史・時代モノやおいって、今のご時世は受けないのかなぁ。


2006.03.03
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