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さくさくレビュー 水上シン


cover 以前、同人作家紅水月の「盲雨鬼嘯」の話の時に「金瓶梅」の話をチラッとしたのを、その「金瓶梅」をモチーフにしたやおい漫画があるというので、早速手にとって見たわけですね。
水上シン「金瓶梅奇伝 炎のくちづけ」って作品。ふーん、結構画風が好きかな。なんて思って、気がついたらいつのまにか彼女の単行本全てに目を通しているわたしがいるわけで。 というわけで、少女漫画バージョンの初の「さくさくレビュー」は水上シンさんと相成ったわけです。はい。

この人の作品は良くも悪くも「やおい」以上でもそれ以下でもないというものですし、そもそもご都合主義で安易なやおいクリシェで横溢されている物語ばっかだったりで、お好きな方でないとまったく楽しめないと思いますが、 今月はどうも「やおい」の神様がわたしの元に降臨しているようで、実は密かにやおいばっかな日々でして。 ま、たまにはこういう人の作品を紹介してもいいよね。
なんか画風が好きなのよ。でもって、この典型的なやおい世界もなんか自分的には結構愛しやすいのよね。や。さすがにこれはやりすぎだろっつうのもありますが。

作者がどういう嗜好の持ち主かわたしゃまったくわかりませんが、もし編集サイドの意向で作品を安易な方向にハンドリングしているというのなら、編集はそれを改めるべきなんじゃないかなぁ。 もちょっと繊細で硬質な漫画が描ける人なんじゃないかなぁ、と思ったりもする。「赤い鎖」とか「汐騒」とかこっちの方向を伸ばすといいんじゃないかなぁ、と。この方向で行くとやおいから外れる可能性は大なんだけれどね。
また、やおいエンタメで突き進むにしても、もっと晴れやかで向日性に溢れた作品のほうがいいのでは。と。「弟達の追跡事情」とか「葉隠の恋」とかのラインね。
なんかもうひと皮向けて大きな作家になってもおかしくないような気がするんだよなぁ……。一回「やおい」という枠を取っ払って自分の好きな作品を描いてみたらいかがでしょうか。




■ 弟達の追跡事情  (2001.01/ビブロス)  

中華ラブコメJUNE。
受けと攻めの微笑ましくも絶妙なバッドチューニングっぷり。これです、これ。 ラブコメやおい路線に必要なテイストってのは、これでしょうが。 恋愛なんてよくわかんねぇーよっっ、のまだまだ青い果実の蒼功ちゃんと色事はとんと苦手な武人の朴念仁景梁サマが 好きあっているのに、ちょっと臆病大きく勘違いですれ違いまくりという。 好きだなんていえない2人がぐずぐずしているのを楽しめるかとどうかが評価の分かれ目。 わたしゃそりゃ楽しめましたさ。恋ってのはセックス前のあやふやな時期が1番贅沢なのよん。
ただ絵はどんどんこなれて達者になっていくにつれて活きが悪くなっている気がするなぁ。 あとこの人、現代物は描かないほうがいいと思う。


■ 前門の虎・後門の狼  (2002.02/ビブロス)

うわっ、嘘臭い話っっ。1冊まるまるの中華やおい長編だけれども、リアリティーゼロ。ごめん。これは嘘が強すぎて楽しめない。舞台のハリボテ感が見えすぎる芝居というのはどうしても寒々しい。 長編には長編なりの、それなりに本当らしさが必要だと僕は思うな。


■ 千年に1つの恋  (2002.12/ビブロス)

中華ロマコメJUNE。
これはかなり伝統的な少女漫画だな。
好きなの。だけども素直になれないの。顔をあわせると赤くなっちゃうの。でも一緒にいたいの。なセックス以前のあやふやな恋愛のためらいの世界の果てに結局ハッピーエンド。 ―――あ、ちなみにラブコメとロマコメの違いだけれども、ラブコメは「すれ違い」でロマコメは「ためらい」だとわたしゃ思う。
べつに受けが少女でも問題ないやおいで、もはやこういうのって古典かもしらん。 ともあれ「偽りの言葉・本音のキス」の臙脂とか、「純愛路線」天良とか、めっちゃ萌えるんですけれども。ヤバイくらいにかわゆいんですけれども。ノートにこいつらの落書きとかしちゃダメですか。後日談を小説にしちゃダメですか。そうですか。


■ 親友返上  (2002.12/ビブロス)

出たっ。やおい少女の心の中にだけ存在するという「全寮制ホモ学園」モノ。 生徒がみんなホモでパラダイスだよ、というアレ。ここまで夢が見れないわたしにはこの世界は理解不可能。


■ 罪人のキス  (2003.03/芳文社)

中華、学園、オカルト、ファンタジーなんでもありのJUNE短編集。ただしどれもご都合主義の匂いが濃厚。やおい雑誌の編集って作家に何を強要しているんだろ。ふと気になった。 「汐騒」はJUNE定番のせつな系という感じで結構好きだけれども。


■ 利火羅  (2003.11/ビブロス)

タイトル作はもともと長編だったものの内容を削りすぎた作品に見え、消化不良。同人作品みたい。 「牢獄に咲く花」は受けの白兎ちゃんががツボだったのでそれだけで充分。こういういつもマイナー気分でひねてる子が好きなの。「未練」は主人公がタイトル作と同じ利火羅という名前なのに、まったく別の作品で驚いた。これは凡ミスか。 後の2作は……だからこの人の現代モノは微妙なんだってば。
絵は上手くなってると思う。とはいえそれに比例して全体的にセックス描写が濃厚になってちと戸惑うのですが。


■ 金瓶梅奇伝 炎のくちづけ  (2004.02/ビブロス)

ボーイズ「金瓶梅」ということで「金瓶梅」の主人公である毒婦・金蓮を美少年に変じての物語。 今までの中で1番エロースな仕上がり。濃厚なエロシーンをみなさまに提供しております。
物語の骨格はかなり大胆に改変されているけれど、もともとの「金瓶梅」が「水滸伝」を元にしたアニパロ小説のようなものなのだから、さして気にすることもなさげ。 とはいえ、最後はラブでハッピーエンド。武松と金蓮が結ばれて、めでたしめでたしってなんでやねん。ってコレがやおいだっっ。コレがやおいなんだよぉっっ。
女のピカレスク・ロマン、性を武器にした女性の淫欲サクセスストーリーがやおいの手にかかると一途な純愛物語になるのです。これぞまさしくやおいマジック。「やおい」ではエロスと暴力と純愛は同時に成立するのです。
「水滸伝」の武松の物語(第23回〜26回)と金瓶梅のあらすじを知っているとより楽しめます、いろんな意味で。このネタ元はどちらかというと「水滸伝」寄りなんじゃないかな。
この話は金蓮がセックスに対して主体性を持ち得ているからこそ成功しているように見える。でなければ武松と金蓮の2人はやおいの典型である「愛のある強姦ファンタジー」の世界に陥ってしまう。
この頃になると、一瞬、篠原烏童か波津彬子と思わせる画力を見せるけれども、いまいち安定感に欠ける。それがおしい。


■ 葉隠の恋  (2004.10/芳文社)

時代劇JUNE短編集。 山本常朝サマもよもや自らの分身ともいえる著書が数百年後に腐女子達の萌えのネタ元になるとは思うまい。
主君に苦言を呈して今や傘張り浪人の"不器用ですから"な元春と彼に懐いてTPO関係なく求愛しまくりで色気も糞もあったもんじゃない与次との2人が微笑ましくもかわういというタイトル作はげっつ好き。萌え。あと「夢のかよい路」もなかなか。 ただ今作はどれもキャラクターの顔がきちんと定着していないように思う。途中で「アレ、こんな顔だったっけ」と思うことしきり。
あとの作品は「愛のある強姦でハーレクイン」という典型的やおいファンタジーな世界でサゲ。愛のある強姦なんてどうやってもこの世にありません。絶対。 ただ、時代劇ってのは彼女の画風にあっているな、と感じた。この路線は続けていいかも。


■ 前世と現世と君と俺  (2005.02/ビブロス)

えー、フツーに凡作。凡の凡作。 古代エジプト、日本平安朝、と幾度も輪廻転生を重ねながらも決して結ばれない二人が、この現代日本ですれ違いを繰り返しながらもとうとう結ばれましたよ、という タイトルから想像するそのまんまの作品。とりたてていい部分も、悪い部分もないかと。輪廻モノって萌えるよね、という方はどうぞ。 おまけの短編「玉鏡の君」は母子相姦マザコン漫画だな、これは。ママが狐の妖怪で男だけれども。ママ、色っぽいよ、ママ。


■ 夢幻の楼閣  (2005.07/ビブロス)

短編集。中華風と現代風がまぜこぜのいつもの。
うーーん、水上さん、編集に恵まれてないのかな。 そんなに紙数を稼ぐ必要のない、わりとどうでもよさげな話が長くて、 みっちり丁寧に描いたほうがいいような話はいつも掘り下げ不足でなんか足早。
「金瓶梅奇伝 炎のくちづけ」の西門慶の少年時代を描いた「破滅の館」なんて、これ、どうがんばっても32Pでおさまるプロットじゃないだろ。 200P、単行本1冊分でやってなんとか、というつまったプロットを、大なたをふるってここまで短くしました、という感じ。 悲惨なシリアスエロやおいで、なんか昔のJUNEのようで、嫌いじゃないのに、もったいないなぁ。本来の魅力を発揮できてないよ。
身をひさぐ京劇役者・飛燕と暴れん坊の御曹司・青丈の恋を描いた「夢幻の楼閣」にしても、青丈が飛燕に弓矢を教えるシーンとか、いいところはあるのに、なんか、こういちいちねっとりと挿入されるエロシーンがその魅力を殺いでいるような。 や、エロもあってもいいんだけれども、なんかなぁ、着地点が違うような、と。 水上さんは、本質的にやおいの人であっても、あんまりエロな人でないんじゃないかな。 是非とも一度、古式ゆかしい、まさしく「JUNE」って感じのやおいをみっちり描いて欲しい。


■ うしろから抱きしめて  (2005.10/芳文社)

「反魂香」だけ中華風ファンタジーで、あとは現代モノな作品集。 いちお「愛は根性」「世界で一番リッチなハニー」の早川×香蔵がメインなのかな。 とはいえはっきりいって受の香蔵ちゃん、ただのハイテンションなおかまだろ、これは。 しかも香蔵の金持ちぶりな描写がかぎりなく「おぼっちやまくん」していて、 つまり、香蔵ちゃんは、おかまの御坊茶魔ですか?
あと、「Sweet Smell」の家庭教師の香ちゃんが、 ジルベールタイプの古式ゆかしい魔性の美少年で、なんか懐かしかったです。 まぁ、どの作品もわりと凡作風味くさいよ?


■ 恋の経穴  (2005.12/ビブロス)

ざっくりいって、エロコメ。 リリカルだったり、かわいらしかったり、いいところはあるんだけれども、ともあれ最終的には、鍼灸師・明秋先生の≪おめこレッスン1・2・3≫(――あぁ、自分のサイトにこういう言葉残したくない、でもそうとしかいえないんだもん )でめでたしめでたし、って、げ・ひ・ん。オヤジエロの世界だわ。 彗星とか月影とか、年下の子はみんなかわういだけれども、 それが相手役のエロエロおっさんキャラのエロス攻撃にあっふんあっふんいいよる、という、それって、どうよ? AVに出てくる子は、ちょっと不細工だったり、不潔だったり、下品だったり、やさぐれていたほうがいいように、 「こんな清楚で可愛い子が本番しちゃう」ってのは、わりと萎えるものなんですよ。 えーー、なんかかわいそ――って。朴念仁の孫海と純情一途な彗星のカプが一番ほっとしますです。

この年、水上さん、四冊も単行本出しているのね。ちょっと筆が走りすぎているんじゃないかなあ、と思う。 いい部分はあるんだけれども、活かしきれてないと言うか、重要なところで編集の都合なのか、安易なエロに突っ走っている感じがして、あぁ、もったいないなぁ。 もっとプロットを練って、じっくり作品に取り掛かればもっといいものが絶対できると思う。 このままだと出版社の安易なやおいビジネスにすりきれちゃうんじゃないかなあ、と危惧する。


■ まだ恋とは知らずに  (2006.03/芳文社)

上野戦争直前の幕末・明治初期の江戸を舞台に、彰義隊に加わる旗本・本田宗則と、彼の拾った天涯孤独の少年・島村朱里の物語なんだけれども、 うぅっわーーーっっ、すっごいもったいないっっ。信じられない。じたじたばたばたしゃうっ。
感動の大河歴史やおいロマンになりうるプロットが、出版社側の細かい諸事情やら、作者の現在の力量やら見識で、わりとフツーの作品ってところに落ち着いちゃってるのが、あぁっもったいないよう。 このままこの設定で俺にくれっっ。俺が大河やおい歴史小説にするよ、マジでそう思うぞ。

わたしだったら、もうちょっと佐幕側のおたおたぶりとか、そういった歴史的な部分をきちんと中盤部分で物語に織り込んで、 本田宗則を武士の時代の終わりの予感を肌で感じながらも、武士としての生き方しか出来ない人間として明確に設定したなぁ。
そのほうが、作品全体にリアリティーと重みがでるのはもちろん、 本田宗則と、相手役の島村朱里の人物の対比――時代遅れの侍の生き方しかできない宗則と、時代遅れの侍に憧れる朱里という構図が明確になるし、 お互いがお互いに惹かれる理由も「激プリだったから、カコよかったから」以上の、精神的な部分がわかりやすく伝わるし、 宗則が朱里に武士道を教えこむという中盤部分ももっと意味が出てくるし、 このままではあまりつながりが密ではない作品の前半部分(――追い剥ぎの朱里が宗則の小姓となるまでの部分)と後半部分(――彰義隊に参加する宗則)がきちんとつながるし、 終盤、武士に憧れつづけた朱里が「俺は侍じゃない」と言い切って、死地に赴こうとする宗則を騙して眠り薬を飲ませるシーンも光ると思うんだよね。
とにかくこの紙数の倍使って、本格派歴史JUNEにしないと浮かばれない。と、鼻息荒い私。

あと、ラスト、これよくないよ―――。 もったいないよー。
ふたりが出逢いの場である神社で再会するのはいいとして (――しかし、出逢いの場で再会するという王道のおいしいところをきちっと書いてはいない。これ気づかないい読者は気づかないよ。あの神社だって。) 最後におまけのようにラブラブセックスして、って、そのシーン、心底なくてもいいだろ。ってか、どう考えても作品クオリティーを下げるタイプの蛇足だろ。 この一発ぬるいハメ絵がないと物語がしめられない今のやおい業界、というかやおい雑誌の編集者の見識には、ほとほと呆れる。 そんなにハメまくりでないと、満足できないですか? 欲求不満ですか?

そもそも「 ここはねっちりとおせっくすシーンを入れるべきなのかな 」ってのは、クライマックス直前の、 明日、上野に向かおうとする本田宗則が今生の別れと朱里を抱き、一方その時朱里は宗則を戦地に行かせまいと酒に眠り薬を仕込ませて、というシーンだけだと思うぞ。
ここは同床同夢と同床異夢の狭間でふたりが抱き合う、という物語上重要な、かつ色っぽいところなので、みっちりみちみちとエロスしてもいいけれどもさ、 他のところとか、や、そんなにエロスする必要ないだろ。特に前半二回の強姦シーンとか、明らかに二回も要らないだろ、と。
物語全体が色々と説明不足なところが多いのに、なんでエロスに関しては、こうもみっちり描写なの? お父さんわからないです。 あんまりにももったいないので、ラストだけ、改変してみた ( →) 。今は後悔している。

2004.12.16
追記 2006.04.10
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