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メイン・インデックス歌謡曲の砦>中森明菜 「LIVE TOUR 2006  〜The Last Destination〜」

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中森明菜 「LIVE TOUR 2006」

 〜The Last Destination〜

(2007.01.17/UMBK-1115/ユニバーサル)

1.花よ踊れ  2.The Heat 〜musica fiesta〜  3.月華  4.落花流水  5.赤い花  6.LOVE GATE  7.紅夜 -beniyo-  8.嘘つき  9.眠れる森の蝶  10.Grace Rain  11.Heartbreak  12.MOONLIGHT SHADOW〜月に吠えろ  13.APPETITE  14.愛撫  15.原始、女は太陽だった  16.TATTOO  17.飾りじゃないのよ涙は  18.1/2の神話  19.ミ・アモーレ(Meu amor e ・・・)  20.TANGO NOIR  21.少女A  22.DESIRE 〜情熱〜  23.花よ踊れ  24.MC〜スローモーション(アカペラ)  25.GAME 
上杉洋史(Key)/松本淳(Dr)/須長和広(Bs)/日高恵一(Gt)/竹上良成(Sa) /小林太 (BIG HORNS BEE)(Tr)/Ebony Michelle Fay(Cr)/Olivia Burrell(Cr)

〜06年8月8日 東京国際フォーラム ホールA 収録〜


 中森明菜の06年の全国ツアー「 The Last destination 」の最終公演を収めたライブDVD。06年8月8日(火)東京国際フォーラム ホールAにて収録。

 気、気のせいなのだろうか……。
 それともこれは夢なのか……。
 明菜が、中森明菜がっ、女王に見えるよ。
 どうしよう、どうしよう。どうすればいいんだろう。
 思いもかけない展開におろおろしてしまう。

 94年のライブ作品「歌姫」、あるいは05年のライブ作品「歌姫 EMPRESS」のわたしのテキストをご覧になっていただければわかるように、 わたしは再三「明菜は、変わった。ゆえに明菜のライブもまた、変わった」といいつづけてきたのだけれども、 なんですか、これ、まるで昔みたいじゃないかぁっっ。
 あの時の明菜が、変なトラブルに巻き込まれないで、歌手として成長を遂げてたら、どんなだったろう、 きっとこんなライブでしたよ、という、そんなオルタナティブなライブDVDです。ホントに。



 とにかく、このライブは、派手。
 バックに大型モニターを配置し、視覚的に派手なら、 音響的にも、トランペット・サックスと少数ながらホーンセクションを今回は追加、 プラス、コーラスには、アルバム「Destination」に全面参加しているオリビア・バーレルが参加し、黒っぽいゴージャスなボーカルを披露と、こちらも派手派手しい。
 02年以来、メンバーを少しずつ変えながらも明菜をサウンド面でサポートしつづけいてる上杉洋史バンド(――と勝手にわたしは名づけている)、気がつけば80年代の明菜のプライベートバンド"Fantastics"に次ぐコンビとなっている。 このバンドは、ギターとキーボードのみのバッキングだったり(05年ライブ「Empress」)、弦カルテットを組み込んだり(03年ツアー「I hope so」)とライブのコンセプトによって、さりげなくサウンド編成を変えているのがポイントだけれど、 その中にあって、今回のツアーは今までで一番派手な編成といえる。

 周りが派手に決めているのに焚きつけられたのか、明菜はそれ以上の派手さで決めまくっている。 もう、歌い倒す、踊り倒す、魅せ倒す。あらゆる角度からおのれの魅力を振りまき倒す。
 エスニック系・ニューアルバムコーナー・ヒットメドレーの三部構成となっているけれども、これがもう、 オープニングからエンディングまで気の緩む間の一切ない怒涛の展開。
 ボーカルの衰え ? どこが ? という感じ。
 こんなにぎらぎらした中森明菜、何年ぶりだろう。
 「今の明菜の枯れた魅力」とかいっていたのがまるで嘘のよう。
 もう、どういうことよ。
 今までみたライブビデオの中で、明菜が、一番自信に満ち溢れていて、一番笑っている。
 全盛期ですら、この感じはなかったよ。
 80年代のライブの明菜って、高慢ともいえるほど自信は漂っていたけれども、それと同じくらいに緊張感、刃のきっ先に立っているような危うさが漂っていた。 が、このライブの明菜は、そんな危うい自信ではなく、実に力強く、包容力のある自信にみちているのだ。聞き手は安心して、彼女の歌に身をまかせられる。



 一方、90年代以降の中森明菜のコンサートは、ひと言で言えば、内省的だった。
 表現が自分に向かって収束する傾向が強く、 ついていける人はどうぞ、そうでない方はごめんなさい、っていうね、そういうスタンスだったと思う。
 それは「芸能」というよりも「芸術」という感じで、表現としてはかつてより随分高度になったけれども、 とはいえ、それって大衆性からかけ離れたところだよなぁ、明菜は変わったよなぁ、と。
 まあそんな感じで「歌姫」ライブとか見て、わたしは思っていたのですがっ。
 だから、わたし、現在の中森明菜に対して、「歌姫」とか「歌謡界の女王」って言葉、あんまり適していないなあと思っていて、だから実際サイトではその呼称をあまり使わなかったのですよね。
 んがっっ、このライブの明菜の、大衆の耳目を無理やり引きつけるような、訴求力。攻撃性。聴衆を牽引せんとする力強さ。
 これは「芸能」の明菜ですよっっ。
 「歌謡界の女王の中森明菜」ですよっっ。
 おっかしいなぁ。
 こっちの歴史に流れない選択肢を明菜は選んだはずなのに、どうしてここにたどり着いているんだ。
 とはいえ、私の勝手な明菜史解釈などものともせず
 「え? わたし、ずっーーーと、日本の歌謡界の女王でしたけど、なにか」
 と、いわんばかりの威風堂々たる佇まい。
 かつてのスキャンダルやトラブル続きの日々、迷い憂うる姿を隠すことすら出来ずにいた日々を、この映像の明菜は、まるで感じさせることなく、 聴衆の前に仁王立ちになり、「どうよ ? どうなのよ ? なんだったら受けてたとうじゃないのよ」と挑発する。



 てっきり、とうの昔に手放したであろうと思っていた表現スタイルを彼女は今、ここで、突然みせつけた。
 さらに90年代以降培ってきたものも、臆面もなく彼女はここで表現している。座りながら歌った「嘘つき」「眠れる森の蝶」など「Destination」コーナーにそれは顕著に表れている。
 全てを糧にして中森明菜は歌手として成長した。
 アルバム「Destination」とともに、ひとつの到達点といえるライブといいだろう。

 それにしても――。
 本当に明菜は、美空ひばりになるのか ?
 なっちゃうのだろうか ?
 ここまで来ると、それが真実味を帯びてくるけれだけれど。
 そこんところ、どうなのよ、 明菜。



 そうそう。このライブ。セットリストを見ると、近年まれに見ぬほどにバラード色が低いんだよね。
 バラードは、ニューアルバムからの「Grace Rain」、ツアー未披露の昨年のシングル「赤い花」の二曲のみ。 ともに新曲・準新曲といっていいもので、いわゆる"ファンお馴染みのバラード"(「駅」とか「予感」とか「難破船」とか「セカンド・ラブ」とかね)は一曲もない。
 ここに明菜、好調の徴を私は感じたりもする。
 林哲司がその昔いっていたように、明菜って、本質的には、バラード向きのスロースターターだと思うんだよね。
 明菜自身もそれを自覚しているのか、90年代以降は、ライブの前半はバラードで様子をうかがって、後半のアップテンポのシングルメドレーで爆発、ってセットリストが多かった印象があるのですよ。 アップテンポでスタートを切っても、中盤でバラードコーナー置いたりしてさ、そうやって、ある程度余裕をもたせた構成を組んでいたような印象があるのね。
 それが、今回、これですよ。 スタートから全力疾走で二時間突っ切れる、という自信があってのこの構成。

 「このツアーでホールツアーは最後」 なんておっしゃっている明菜サマですが、 このライブを見るに、今後のライブ活動に関してなにか新しい戦略を練っているのは火を見るよりも明らか。
 楽しみにしております。



最後に、いつものごとく曲ごとに萌え語り。

・「花よ踊れ」……音源だけで聞くとつまんなかったりするのが、ビジュアル込みになると途端に名曲度が増す"明菜マジック"が炸裂。シングル発売時に冷たくあしらったけれども、結構いいじゃん、これ。
 エスニックパートの衣装はバラの花びらのような真紅のドレスなのだが、スカートが水色。 色使いとフォルムから、朝鮮の民族衣装や、あるいは、日本上代の女性の装束(裳)のテイストも感じられる。 東洋的な部分と西洋的な部分が混交している明菜のエスニック路線らしい衣装。そのせいか、明菜が肩にかけた長いピンクの薄絹を袖を振るように何度も大きく振る、この振りがとても印象的。古代日本の貴婦人、まるで額田王のよう、といってもいいけれども、わたしは額田王を見たことがない。 ちなみに古代日本において「袖を振る」行為は、相手に向かって魂を飛ばす呪術行為であった。

・「The Heat」……全然カッコいい。リリース時よりも断然カッコいい。静かに熱く激しく燃える明菜。腰の小刻みに揺らすのがエロカッコいい。倖田來未なにするものぞ。オリビアとの掛け合いも楽しげです。

・「月華」……これも今までの歌唱の中でベストちゃうか ? 手の甲で左右の頬を何度もなでる振りも今までで一番決まっていたし、明菜の熱唱に安心して酔える。 

・「落花流水」……これまた"明菜マジック"炸裂。歌導入部の怯えと覚悟の入り混じった明菜の表情、もう、たまりません。振りも、かっこいいよう。これですよ、これ。王道の明菜。オリビアのスキャットもカコいいぞ。

・「赤い花」……わたしは"明菜、完全復活"を確信しましたね。絶望のバラードを歌いながら、背後に豊かな物語を感じさせ、あくまで印象は絢爛豪華。華麗な悲しみ、と言ったら変な言い方だけれどもこういう感じは実に「難破船」以来。シングル盤での歌唱でも、一昨年のライブでもこの感じは出せなかった。 これは、明菜が自らを完全に取り戻した証拠。自らに降りかかった悲劇を客観視できるようになったからこそ、こう歌えるのだと思う。エスニック色を強めたアレンジもいいぞ。個人的には「落花流水」〜「赤い花」がこのライブのベストアクト。

・「Love Gate」……こっから、「Destination」コーナー。ここでは90年代に養った"静"の魅力を明菜はみせる。これは、手堅い出来。

・「紅夜」……アルバムでは軽い打ち込みサウンドだったが、生音主体に。ベースの音がカッケェ。 バカスカ明菜をせっつくようなサウンド――ってか、ちょっと走りすぎだよね、これ、に、燃えまいと思いながらも熱くなってしまううらはらな明菜のボーカル。エロいっ。それにしても、この曲、意外と難曲だったのね。

・「嘘つき」……イントロでいきなり膝立ち、それだけで途端に世界を作ってしまう。先ほどの隠微な雰囲気が一転、一途で悲しい明菜に。こういうところはさすが25年選手。プロです。

・「眠れる森の蝶」……今度は、椅子に座りながらの歌唱。05年のライブ"Empress"で培ったことをしっかり応用。切々としているのだけれども、エロイ。

・「Grace Rain」……黒いドレスで猫背で、ブルースを歌う明菜。浅川マキの幻影が見えたよ。マジで。

・「ヒットメドレー」……後半は怒涛のヒットメドレー。明菜様、切れまくっております。動きがいちいちシャープ。なんつーか、"おれはやるぜ"オーラびんびん。 毎度お馴染みの一曲も、いい形でこなれている。楽しげで自信に満ちて余裕の表情で、しかし決してだれていない。 勢いあまって「TANGO NOIR」では転んでしまうが、ご愛嬌。 こんなパワー溢れる明菜様、ひっさしぶりです。
 メドレー冒頭に「Femme Fatele」からのアルバム曲「Heartbreak」を持ってきたのは、やっぱり「Destination」〜「Femme Fatele」の繋がりを意識してってことかな。 ちなみにワーナー時代のシングルは主に「Utahime D.D」バージョン。 決してナツメロ披露に終わらない力強さをそこに感じる。昔の私も素敵かもしけないけれども、今の私だって、結構悪くないでしょ、そういっているよう。

2007.01.27
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