なんか今井美樹のリアクションええな、ということで、もう、ひとつ。 これは、89年発売のベストアルバム。 初登場はチャート5位だったものの、その後約二年間に渡りチャートイン、結果、彼女の初のミリオンセールアルバムになった。 このアルバムを契機に一気に女性アーティストのトップに踊り出た、という感じ。 このベストはもうひとえに選曲の勝利。 普通ベスト盤というとシングルコレクションになりがちだけれども、これは、そういうつくりになっていない。シングルは全14曲中わずか四曲のみ。 もともと当時の彼女はアルバム重視の音楽活動( 「(「Boogie-Woogie Lonesome High-Heel」は)好きな曲だからむやみにシングルカットしたくなかった」などと当時の彼女は雑誌のインタビューに答えていた )に傾いていて、 シングルリリース数自体が少なかったんだけれども、そんな少ないシングルもわざわざセレクション、デビュー曲の「黄昏のモノローグ」や「静かに来たソリチュード」をはぶいている。 このアルバムはきっと「今までのリリース楽曲を再編集して、極上のオリジナルアルバムを作る」ってコンセプトだったんじゃないかな。 とにかく曲の流れがべらぼうにいい。 「夏をかさねて」「とっておきの朝を」でふんわり爽やかに始まって、 続いて「ポールポジション」「彼女とTIP ON DUO」「オレンジの河」と歌謡感の強いキャッチーなナンバーで人の耳を掴む。 「キスより吐息より」以降中盤は彼女の王道のアンニュイでセクシーなミディアムナンバーが連発。前半折り返しの「野性の風」の位置もいい感じ。ここれで軽く感動的に盛り上がっておきましょ、という感じ。 後半は、「空に近い週末」「elfin」など癒し系のスローナンバーでまったり、 発売時期を考慮して、「ひとりでクリスマス」などクリスマス色をちょいと出して、ラストは「瞳がほほえむから」で感動のエンディング。 一曲目始まって最後までがっつり聞ける流れのしっかりあるつくりになっていて、それでいて、その一曲一曲が粒揃い。捨て曲ひとつもなし (――「彼女とTIP ON DUO」だけ、ほかのアッパーナンバーと差し替えてもいいかな、という感じだけれども、これ、彼女の当時の唯一のシングルヒットナンバーだものな。ご本人もこれを収録するか最後まで迷ったそうで)。 もうね、彼女のアルバム一枚といったらこれしかありえないという、そういう作りであります。 21世紀に聞くには、何様ぶりな今井美樹の自意識が鼻につく感じがしないではないが、なぁに、これが当時はカッコよかったのだ。 バブルという時代の証明として確かめるのもいいし、もちろんサウンドと彼女のボーカルの耳心地のよさだけでも充分楽しめる。彼女の一枚といったら絶対コレ。 今井は、佐藤準・武部聡志アレンジ時代が一番いいよね。 彼女の「Ivory」シリーズは、以後三枚リリース、彼女の伝家の宝刀的ベスト盤となったのだけれども、 その後の作品は、ヒット曲を雑多につめこんだいかにもベスト盤っぽいつくりのベスト盤になっていて、どうやら一枚目のコンセプトは失われているよう。実に残念。 |