おおっと、気がついたら3月も半ばだ。 とにかく今を逃したらできない企画モノだしぃ。とはいえ、書きさしのものをそのままにしておくのはもったいなしぃ。 ってことで、見切り発車で今日もアップしてしまいます。 今日は古今東西アイドルポップス・卒業ソング特集。 ・松任谷由実「卒業写真」(1976) 「最後の春休み」(1979) アイドルポップスなのになんでいきなりユーミン??。 いやいや、アイドル系の卒業ソングは彼女が源流でしょう。 というか、70年代アイドルって卒業テーマの曲って思いつかない。 新3人娘も中3トリオもPLも宏美もそういうのって、あったっけ?? キャンディーズ「微笑み返し」は春で別れがテーマなので卒業にもフィットするけどこれは知っての通り解散テーマの曲だし。 太田裕美の「木綿のハンカチーフ」も別れがテーマだけれども、むしろこれは「その後」がメインだし。 「卒業写真」はあまりにも有名なので説明不用でしょう。 ただ、この曲は卒業後数年経ってたまたま懐かしいクラスメートを見かけて、というの追想がテーマなので正確には卒業テーマではないけどね。 ただ「話しかけるようにに揺れる柳の下を通った道でさえ今はもう電車から見るだけ」の部分なんて上手いよね。 誰しもがすっと感情移入できる。 第一次ユーミンブームの白眉であるアルバム『COBALT HOUR』(76)収録。 そのまま卒業テーマのユーミンの曲なら、こっち。「最後の春休み」。 こちらは『OLIVE』(79)に収録。 卒業式の後、ロッカーの忘れ物を取りに学校に行って、というテーマ。 春休みのロッカー室に 忘れたものを 取りにいったいやーー、うまいっすねーー、ユーミン。アイドル卒業ソングはここから始まった、と勝手に私は断言。 でもって次に来るのはやはりこれ。 ・松田聖子「制服」 (1982) 82年の「赤いスイトピー」のB面。作詞松本隆、作曲呉田軽穂ことユーミンで、聖子のカップリング曲の中はダントツの人気曲。 ファンの曲の人気投票でも多くのA面楽曲をおさえ、たえず上位に食い込む曲だけど、実際この曲って「夜ヒット」とかで歌ったことあったっけ??。 わたしゃ、ベスト盤聞くまで全然聞き覚えがなかったのよね。 大概80年代の聖子の曲ってちゃんと聞いたことがなくっても、サビに来ると、あぁ、どっかで聞いたことがある、って感じでまさしく流行歌ってものばかりで、 でもって、同じB面曲でも「硝子のプリズム」とか「夏服のイブ」はめっちゃ聞き覚えがあったのに。 卒業証書を抱いて肩を並べて歩いている隣の男の子が明日から東京へ行くのだと思った時にはじめて自分はその男の子が好きだったことに気づくという内容。 校舎から校門までの数分間、見なれた学校や級友達の風景がまるで違ったものに見えるその瞬間を見事に歌っている。 と、ここまで書いて、あ、この曲って、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」と斉藤由貴の「卒業」を繋ぐ曲なのだな、と今始めて気付いたよ。 とにかくここでの手応えが斉藤由貴「卒業」を産み出すのは確実でしょう。 関係ないが、聖子の中では「制服」って異質のような気もしますね。佳曲には違いないけど当時の歌を始め映画やCMなど「法人・松田聖子」の戦略全体から見てみると、シングルにもなれそうにもないないし、アルバムでも浮いちゃう。 だからこそ、B面って感じ。 ・柏原芳恵「春なのに」 (1983) ユーミン陣営がやるならばとばかりに中島みゆきが描いた卒業ソングといえばこれ。 「会えなくなるね、淋しくなるね」と右手を差し出した男のクラスメートに、「この前言った『卒業しても今まで通りにいつもの白い喫茶店で会える』といった君の言葉はなんだったの???」というまったくもって中島的恨みがましさ爆発な曲。 そして「この別れは卒業だけが理由でしょうか」と聞き返す。 ハイ・ティーンの頃の恋人ともとれない淡い関係も中島にかかれば男と女のどろどろの色事なわけですね。 厄介な女だなぁ。 と、詞だけを見ると中島の「勘弁していただきたい女」路線なのだが、曲を伴うと抒情が漂ってそれほど気にならないから不思議。 それにしてもサビの「春なのに お別れですか」は上手いねぇ。 なんで春なのに別れなくちゃならないんでしょうねぇ、と、ふと沈思してしまうほど。 柏原芳恵もこの辺りから歌がぐんと上手くなりました。 でもってついにやってくるのがかの有名な「85年『卒業』戦争」。 四曲の「卒業」が同時期リリース。 まず、デビュー2年目、前作「雪に書いたラブレター」が大ヒットした菊地桃子の「卒業」が秋元康作詞・林哲司作曲の大ヒット確約陣営でリリース。 同じくデビュー2年目欽ちゃんファミリーでわらべの倉沢淳美が売野雅勇作詞・林哲司作曲で「卒業」リリース。 でもって、ズブの新人、斉藤由貴が松本隆作詞・筒美京平作曲の「卒業」でデビュー。 ちなみにもう一曲は尾崎豊の「卒業」だが、もちろんこちらはアイドルポップスではない。 ・菊地桃子「卒業」 (1985) 売上げから見ると菊地桃子の大勝利。初登場第1位で売上げは39.4万枚。彼女の最大のヒットとなる。 しかし、「雪に書いたラブレター」での余勢を買っての売上げであるし、作品的にはあくまで凡庸。 四月になるとここに来て卒業写真めくるのよ秋元の作詞の姿勢がメタ的であることは論を待たないが、結果できあがる作品の退屈さというのは、これはもうフォローのしようがない。 2番の「贈られたサンテグジュペリの本の1行おきに好きだよと書かれていた」という部分に到っては気持ち悪いの一言。 多分秋元康批判はこのホムペで一度すると思うので小出しにするが平岡正明が面白いことを言っている。 要約すれば秋元康の作詞技法は松本隆から内容を引いて人相見を加えたものである。・斉藤由貴「卒業」 (1985) で、その内容のある(といったら失礼か)松本隆作詞陣営のこちらである。 結論を先に言えば大名作。 最高位6位、26.4万枚で当時のアイドルデビュー曲としては異例の大ヒットとなる。 (ちなみにおにゃん子登場以前は「女性アイドルの初ヒット曲は二曲目以降から」という謎のセオリーがあった。デビュー曲即ヒットという公式は珍しい。斉藤由貴以前だと80年アイドルでは三原順子と松本伊代くらい??しかも両者ともデビュー曲が最大のヒット曲なのでどうもアイドルにしては一発屋くさい所がある。しかも、二曲目が初ヒットのアイドルは大成するというジンクスもあったりする。 セカンドシングルがオリコン初ベストテンランクインのアイドルは以下のとおり。 松田聖子、中森明菜、山口百恵、岩崎宏美、菊地桃子、中山美穂、あとだれかいたっけ??) 内容は言わずもがなだが、 卒業前後の情景を少女の視点で淡々と描いている。 この詞のいいところは、この主人公の少女は卒業式前後の周囲のテンションの中からちょっとだけ醒めてそれらを見つめているところだ。 卒業式で泣いているクラスメートには「冷たいといわれるかもしれないけど、私は涙はもっと悲しい時にとっておきたい」と思い、「卒業しても友達ね」とクラスメートにいわれて、「確かに嘘ではないけれど過ぎる季節に流されて逢えないだろう」と思い、人気ない午後の教室で机に名前を彫るクラスメートには「刻むのは思い出だけにして」と呟いている。 かといって彼らを否定しているわけではない。 制服のボタンを下級生にねだられ頭かきながら逃げるクラスメートに「ホントは嬉しいくせに」と感じる優しい視線を見ればわかる。 ただ、陶酔の渦のなかで半身だけはみ出ている。そこが上手い。そしてそれは斉藤由貴の凛とした佇まいに似つかわしい。 しかし、秋元康は口惜しかったろうなーー。 ここまで作品の差をつけられると。 で翌86年、秋元康は憂さを晴らすようになんと3曲も卒業ソングをリリースする。 ・おにゃんこクラブ「じゃあね」 (1986) ・河合その子「青いスタスィオン」 (1986) ・杉浦幸「四月列車」 (1986) でもって、これらは小粒だがなかなか。 「じゃあね」は中島美春の「青いスタシィオン」は河合その子のおにゃん子卒業ソング。 ちょうど86年1〜3月期はおにゃん子ブームの最高潮期で、2曲ともそれぞれの最大ヒット曲となる。 「じゃあね」はおにゃん子らしい陽の魅力に溢れた別れの歌。平板な印象は拭えないが、何かというと湿っぽくシリアスになりがちな卒業ソングのなかでこうした能天気さと、軽さいうのはある意味貴重かも。 ま、「卒業」なんて実際はどってことない通過儀礼なわけだし。 あと、翌年「うしろゆびさされ組」のラストソング「かしこ」も卒業ソングとして同系統でいいかな。 この歌は「かしこは最後の『I love you』」の部分がいいよね。 「青いスタシィオン」はサビの「思い出だけそっと着替えて」の部分が印象的。 詞作は小説の一説のような丁寧な描写に終始しているし、後藤次利の曲もさすが後年彼女を妻として娶っただけある本気っぷりです。おにゃん子随一の美少女、河合らしい上品な仕上がりといえるでしょう。 一方、杉浦幸はおにゃん子のライバル、モモコクラブ出身のアイドルである。対抗する勢力にも参加しちゃうあたり、この時期、秋元氏が時代の寵児であったことがよくわかる。 杉浦本来のキャラとは違う清純な歌詞なのだが、やはり「君が悲しい5文字を呟いた」の部分はうまい。 やっぱり、「なごり雪」あたりからの翻案なんだろうなぁ。きっと。 「青いスタシィオン」といい「四月列車」といい、秋元の良さというのは、フォークっぽいところ、センチメンタルな部分に出てくると思う。 これに関してはよいと素直に認めちゃう。 ただ、彼が得意だ勘違いしている、コミックソングモノ、業界暴露系ネタバラシモノ、長渕的負け犬の怒り爆発モノ、に関しては全く私は支持できない。 私にはこれらの秋元の詞作は粗悪品としか見えない。(秋元のもうひとつの得意技、おしゃれで都会チックモノに関しては微妙、いいものと悪いものがある) もいっこ、86年の卒業ソングとして忘れちゃなんね―のが。これ。 ・南野陽子「春景色」 (1986) 南野のファーストアルバム『ジェラート』の一曲目。ファンの人気の高い名曲である。 彼女の歌手としての歴史のスタートが卒業テーマの楽曲なわけです。こういう演出っていいよなぁ。 (あ、ちなみに斉藤由貴のファーストアルバム『アクシア』の一曲目も「卒業」です) この歌詞はなかなか関係が微妙。 どうやら卒業したはいいものの、彼氏はどうやら大学を落ちてしまい浪人するらしい。 卒業式が終わって 春休みが過ぎてけば、四月からあなたよりひとつ上級生になると、そんな二人が春休みにデートをする。が、もちろん、彼氏は元気がない。 ジェラートを舐めてても やっぱりあなた元気ないそれを軽く馬鹿、と彼女はたしなめる。一緒に過ごした季節は一瞬で消えるわけないじゃない、と。 が、歌は最後にはこう締められる。 いつの日かこんな風にいられなくなるとしてもさりげない情景のなかで、この二人がいつかあえなくなるということを、過ぎてゆく時の流れの無常を、もう彼女は充分気づいている。そこがいい。 勝気さと、凛とした感じと、ちょっと後ろ向きのセンチメンタルと。南野陽子の全てがここにあるといってもいい。 作詞担当のイノ・ブランシェ、恐るべし。 ちなみに歌詞に出てくる二人が待ち合わせた「神戸線のホームから遠い海が見える駅」というのは南野陽子の母校、松蔭女学院の最寄駅、阪急神戸線の王子公園駅である。 こういう小技の利かせ方、ナイーースです。 南野は他にも卒業にぴったりの楽曲をそりゃもうたくさん持っています。 「わたしたちのメリーゴーランド」「黄昏の図書館」はそのまんま卒業テーマだし、旅立ちがテーマの「楽園のDOOR」、別れがテーマの「曲がり角蜃気楼」「さよなら夏のリセ」等もいい感じ。 南野の歌はたえず感傷的で少女趣味な世界なので、卒業という感傷的なイベントに最も合う歌手なのかもしれません。 その他、アイドルソングの卒業モノといえば小沢なつきの「卒業」とか、ま、最近ではSPEEDの「my graduation」、ZONEの「卒業」、松下萌子が斉藤由貴の「卒業」をカバーしたり、と、まぁ色々あるけれど。わたし的に思い入れもないのでこの辺で。 みなさんは、どの卒業ソングがお好きですか。 |
2003.04.01
加筆・修正 2004.03.11