メイン・インデックス歌謡曲の砦>小林麻美「Cryptograph」(映像版)

小林麻美
「Cryptograph 〜愛の暗号〜」

(映像版)

(1984.??.??/CBSソニー)
1.哀しみのスパイ 2.TRANSIT 3.恋なんてかんたん 4.SUGAR SHUFFLE 5.アネモネ 6.グランプリの夏 7.月影のパラノイア 8.雨音はショパンの調べ 9.TYPHOON 10.哀しみのスパイ(Reprise)


同名タイトルのアルバムの楽曲を収録した映像作品。ヨーロピアンでデカダンスな洗練された映像世界が広がっている。

この作品がリリースされた頃はまだ日本ではプロモーションビデオという概念が定着していなかった時期で、 実際これも今どきのプロモ作品群と比べたら、そんなに金をかけて作られているという感じはしないし、実際そういった予算的な匂いの漂う長尺のショットが多いんだけれども、 それを冗長にかんじさせない圧倒的な存在感の小林麻美おねェ様が素晴らしいです。

ただ、淡々と廃墟を闊歩したり、砂漠を直線に突っ切るハイウェイを飛ばしたり、風呂あがりの乾ききらない髪の毛をばっさばっさしながらくわえ煙草でまったりしたりという、ただそれだけでアンニュイな、なんともいえない独特な雰囲気がたちこめます。

そのなかで「恋なんてかんたん」で年若い初々しいホテルの給仕を誘惑するシーンは白眉。ワインを注ぐ少年の目の前でわざとフォークを足元に落とす。それを拾おうとかがんむ少年、その瞬間に麻美はさりげなくドレスの裾をあげ、あらわなふくらはぎを見せつける。思わず顔を見る少年。―――エロイ、エロいよおっ。

そのあと思わせぶりな表情でエロティックに海老をほおばったり、レモンを思いきり少年の顔にめがけて絞ったり、と、やるだけのことはやったっすって感じ。あーっ、俺も麻美おねェ様に誘惑されてみてェ―――。
オープニングの「哀しみのスパイ」の謎の白人将校に取り囲まれる麻美おねェ様も素敵。やばいぜっ、やばいくらいに妖しいぜっ。
キスした後、口の端からたら――っと血が滴りおちる「雨音はショパンの調べ」も色っぽいし、プールサイドで豪華な黒のドレスのままアンニュイに横たわる「TYPHOON」もエロイッッ。大ぶりの首飾りが妖しく光っているのが印象的。
ただ、妙にシリアスな顔でボクシングジムを挙動不審気味に視線をあたりに巡らせながら歩き回る「アネモネ」は現地の男を漁っているみたいで、なんかへん。

それにしてもこのひとは太ももに存在感があるひとだなぁ、不健康なまでに細く、それでいて滑らかそうな太ももが、男の劣情を誘わずにはいられませんってば。 ラストの、自家用小型ジェットにドレスの裾をまくりあげて乗りこむ、その時の露わな太ももと、勝ち誇ったような不敵な微笑み。あれがいいんだよねぇ。任務を遂行した女スパイの勝利の笑みに見える。

このビデオはなんと来月にはDVDで再発売されるそうなので、お好きな方、興味を持った方は是非是非どうぞ。 (――――と、ここまで書いたところでDVD版の発売が中止とのこと。ガーーーン。なにゆえー――――っっ)



それにしても、こういういかにも「美人」な雰囲気を持った人って近頃芸能界にいないよなぁ。影があってミステリアスで危険な感じでっていう。 ちょっと小奇麗でスタイルがいいってのはいくらでもいるけれども、なりより美人特有の匂やかさがないし、簡単にバラエティー番組で素顔の自分をさらけ出しちゃってつまらんですわ。

この時期の小林麻美の正体不明の正業が見えないやたらスノッブでセレブなタレントっぷりというのを今のタレントで探せば、叶姉妹がそのラインになるんだろうけれども、あれはどうみても「小林麻美のパロディー」であって、格は確実に10段階で5くらいは落ちるしなぁ。
多分麻美嬢は向こうの女優の―――特にハリウッド全盛時代の女優の仕種や表情、彼女らが持っているアトモスフィアを研究して自分流に組替えているんだろうけれども、 今「ファッションリーダー」なんて立ち位置でもてはやされているそういった女優やモデルさんたちも、バラエティーでうすっぺらな自分をさらけ出すのはやめて、もっと研究してもらいたいものです。

2004.10.23
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