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メイン・インデックス歌謡曲の砦>風見りつ子 『Aventurier(アヴァンチュリエ)』

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風見りつ子 『Aventurier』 〜アヴァンチュリエ〜

隠れたポスト岩崎宏美


(1986.08.22/東芝EMI/CA32-1264)

1.幻の馬 2.彼女と踊って 3.時おりヴァイオリンの音が 4.ある微笑 5.女友達 〜レイラの場合〜  6.仔猫の情事 (プティ・シャ 1) 7.アヴァンチュリエ 8.乱れたベッド 9.French Beer 飲みほして (プティ・シャ 2) 10.黒のクレール 11.終幕(ピリオド)


近頃よく聞いているアルバムが、これ。
贔屓にしている高橋幸宏・大貫妙子が参加しているということで入手したものだけれど、なかなかいい。
いわゆる80's擬似ヨーロピアンポップスの系譜で、安心して聞ける。

でも、この風見りつ子って人、誰さ。
と、調べると……なるほど所属事務所が芸映だったのね、納得。
だってこの人の声、ものすごく岩崎宏美にそっくりなんだもの。
実の妹の岩崎良美よりも、また岩崎宏美路線を継承した河合奈保子よりも、はるかに岩崎宏美声。

声の安定感と声量はもちろん、折り目正しく丁寧に言葉を歌にこめるところや、岩崎宏美の最大の特徴である高音がぴぃーんと伸びきった時に出る独特の甘さであるとか、ゆったりと歌う時にでるまろーんとした雰囲気とか、そんな細部に至るまでそっくり。
このアルバムを「これ、昔の岩崎宏美のお蔵入りの音源なんだ」といって聞かせても多分相当の岩崎宏美ファンでない限り、信じてしまうんじゃないかなぁ。
ほとんど物真似の領域ですよ。

例えばタイトル曲「アヴァンチュリエ」なんてほんと物真似王座決定戦でも見られないそっくりぶり。

まず、サビ前ブリッジ「1人そして2人」の部分で半紙に文鎮を置くように軽く声に重しをつける。 そして「悔やむより忘れたいだけ」のサビは一気に高音の張りのある声で魅せて、そのまま「あらそうよ私だって」の「てー」は1番高い高音のロングトーンで甘く決め、これで決まったと思ったら、次のフレーズすぐさま「平凡な幸せが」の「が」で低音で濡れ落ちてフィニッシュ、という。
こういった端々で見られる歌唱テクニックが、本当、岩崎宏美なんですよぉ――。
岩崎宏美ならこう歌うであろうという、そのものを見事に再現している、という。

岩崎宏美ってのは驚くほど正統派の歌手で、声の出し方にも色らしい色がなく、物真似するのは実は難しい歌手なんだけれど、それでここまでやるというのは、ある意味感服。
本当、当時の芸映の素材選びってすごいよなぁ。

ただし、こうなると「果たして風見りつ子のオリジナリティーはどこに?!」という疑問がどうしても出てくるわけですが。
調べたところ、彼女はオリコン週間売上げ100位以内にも入らない売れないアルバムとシングルを数作を残しただけで芸能界を去っているらしく(――あ、シングルの「アヴァンチュリエ」は最高47位、2.3万枚とほんのちょっとだけ売れたみたい)、そういった意味では決して正しいプロデュースワークとはいえなさそう。
岩崎宏美の独立で、岩崎宏美に歌わせる予定だった楽曲をひとまず風見りつ子にあてがってみただけなのかも、という妄想すらちらちらしてしまう。

いいアルバムなんだけれどなぁ。

公式見解的な大貫妙子の「黒のクレール」のカバーはちょっと味気ないけれど、心中を歌った「終幕(ピリオド)」、西風の吹く避暑地の夕暮れのような物憂い「彼女と踊って」、岩崎良美の「雨の停車場」のようなワルツ「時おりヴァイオリンの音が」などなど。傑作というには小粒だけれど、なかなかいい良作なのに、見事に埋もれちゃってます。
相当運がよくなければ聞くことはできないと思いますが、そんな強運なかたは一聴してみてくださいな。
あ、そうそう岩崎宏美のアルバムで言えばこの作品は、ヨーロピアンよりな『10カラットダイアモンド』に1番似ています。参考までに。

2004.06.13
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