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メイン・インデックス歌謡曲の砦>年間チャート回顧 ―1985― アルバム編

年間チャート回顧 ―1985― 

アルバム編 
シングル編
■ 1985年 アルバムチャート

 売上(万枚) タイトル  アーティスト
1105.49.5カラット井上陽水
279.8Make it Big !WHAM
377.8抱きしめたい安全地帯
476.6kamakuraサザンオールスターズ
574.1もっと ! チェッカーズチェッカーズ
660.7NO SIDE松任谷由美
759.1D404ME中森明菜
859.0Like a Virginマドンナ
955.6BITTER AND SWEET中森明菜
1054.3毎日 ! チェッカーズチェッカーズ
1151.9Windy Shadow松田聖子
1251.1The 9th Wave松田聖子
1350.9TAN TAN たぬき映画 サウンドトラック
1449.3ANOTHER SUMMER杉山清貴&オメガトライブ
1547.1We are the WorldUSA for AFRICA
1640.4Be True中村あゆみ
1739.2Celebration小泉今日子
1833.8御色なおし中島みゆき
1933.6NEVER ENDING SUMMER杉山清貴&オメガトライブ
2033.5INNOCENT SKY吉川晃司


■ 再びトップに立った井上陽水――「9.5カラット」

TSUKASA(以下 T):それでは、アルバム編です。
まこりん(以下 M):はーーい。
T:1位は井上陽水先生の「9.5カラット」。
M:ををを。「氷の世界」ぶり?
T:ぶりの、ミリオンセラーですね。
M:かつ、年間1位。
T:第2期黄金期。
M:ってまぁ、このアルバムしか売れなかったが。
T:っていうかこの時期は安全地帯と明菜への曲提供で再注目されたという形で。
M:まあ、そうね。
T:このアルバムもセルフカバー集で、「ワインレッドの心」も「飾りじゃないのよ涙は」も入っております。つまり便乗した?
M:まぁ、そうともいえるわな。ベストテンヒットシングルが五曲はいっているし、まぁ、売れるよね、これは。
T:まあ、このタイミングで出せばねぇ。
M:ちょうど「飾り」・「恋の予感」・「いっそセレナーデ」がチャート上位を席巻している時期のリリースだし、2〜4位が陽水作品という週もあった。一位がチェッカーズだったけれども。
T:なぜか大ブレイクの陽水先生という。
M:ね。ホント青天の霹靂。いきなり踊り出た。
T:まあ、NM勢のアイドルへの楽曲提供という流れに陽水先生も乗り出したという。
M:昔からぼちぼちと書いてはいたけれどもこのアルバム前後に提供したのが一番多いね。
T:そういう意味でこれもクロスオーバーなこの年のチャートの1位としては象徴的ではありますね。
M:歌謡曲とNM系の対立構図の終了、そのメルクマールとして再びトップにたった「井上陽水=NMの象徴」。こういう解釈ってのもあるかなと。ちょうどそれが歌謡曲歌手へのカバーがメインのアルバムというのもまた意味深いというか。
T:NMと歌謡曲のごっちゃ化というのもあるし。
M:ハイブリットしているという。
T:シングルのチェッカーズとともに、非常に納得の1位というか。
M:そうですねこの年の一位という感じ。
T:まあアルバム自体はほんとに陽水さんが歌っています、というだけで陽水のアルバムとして聴くと物足りなかったりするけれども。
M:そうだね、全体的に薄味。ファンとしては「ライオンとペリカン」とか、ああいうアルバムが聞きたい。
T:やっぱ毒気がねぇ。ダークな陽水というのがないと物足りない。
M:一般ユーザーに訴求するのはこういうアルバムなんだろうな。でもジュリーにあげた「ABCD」とか好きだけれどもな。相当シュールだし。どんな病気だよという。
T:はははは。薄味でよそ行きではあるけれど、しっかり陽水ワールドではあるんですよね。
M:夜でシュールという陽水ワールドではある。
T:なんか歌詞の意味を探ろうとするとはぐらかされるみたいな感じが。
M:だから、このアルバムは「陽水さん、自分の立ち位置みたいなものを客観的に見ているな」という印象がある。
T:「飾り〜」も「ワインレッド〜」も「いっそ〜」もいい曲だしね。
M:明菜にも安全地帯にも陽水にも意義のある全ての側にとっていい形のコラボではあった。
T:ね。だからこの年は、チェッカーズと明菜と、もう1人、陽水の年でもありますよね。
M:そうですね。ひっそりと陽水の年でもあった。
T:サングラスの裏でにやりと笑っているという。
M:なんにも考えていないようなそうでもないようなよくわからない。
T:そんな陽水の年でもあった。と。


■ 歌謡曲を下支えしてきたNM系アーティストたち――中島みゆきの「御色なおし」

M:あといきなり話が飛ぶんだけれども下位の18位、中島みゆき「御色なおし」。
T:あ、そうね。
M:これもまったく「9.5カラット」と同じ意味合いのアルバム。
T:これもフォーク出のセルフカバーという意味で同じですね。
M:これもここで触れようかな。
T:「かもめはかもめ」が入ってるやつですね。
M:そうそう、まぁみゆきの場合、ご乱心時代でもあるからただ単純なカバーではないんだけれども。
T:とはいえこれは「9.5カラット」よりは"みゆきのアルバムとしても"結構意味合い大きいですよね。アレンジで実験しているので。
M:そうですね。ここで甲斐よしひろとの出会いと後藤次利との再会があり、彼らとの製作による「miss,M」と「36.5℃」がそれぞれ生まれるわけだし。
T:さらに乱心で突き進むという。まあでもこの時期のみゆきは凄い。
M:おっ。そうすか。
T:ご乱心時代好きだなあ、私は。
M:TSUKASAさんは90年代のみゆきが好きというイメージがあるから意外。
T:あ、90年代は90年代で大好きよ。80年代はサウンドがやたらアグレッシブで凄い。
M:なんか不思議な空気感があるんですよね。かぐろい塊というか硬質で深い感じ。
T:前のイメージとか関係ない、という。ここまでやっちゃう人というのもあんまりいないでしょ、フォーク出で。
M:ひっそりといっちゃうと、多分ご乱心のみゆきさんは「cat nap」以降の浅川マキを参考にしたんだと私は思う。
T:へぇ。浅川マキさんなんだ。
M:82年頃からマキさんはゴツグやボビーワトソンや本田俊之とアルバム作ったりしていたんだけれども。
T:刺激を受けたと。
M:そう思えるほど音のタッチが近い。「あ、みゆきさん、これ聞いていたな」と私は一聴して感じた。
T:いま打ち込みやってもこうならないな、という音ですよね。
M:そうそう。こうくるかぁ、という。
T:あの時代独特な。といってピコピコテクノポップではないというすごく面白いです、この時期のみゆき様。
M:なんかこう、金属のサッシをばしばしたたいるているような。
T:あー なんかそうかな(笑)。
M:妙にメタリック。
T:メタリックですね。うん。「36.5℃」の音とかなかなかないですよね。
M:分類不可能な音楽ですよね。素晴らしいです。
T:まこりんさんは「36.5℃」推しなんですよね。
M:そうなんです、ってまあ、そういうみゆきファンは珍しいかも。
T:一番極端なアルバムだしね。
M:普通なら「臨月」とかあのあたりを推しそう。
T:まあ 「生きていてもいいですか」も極端だが。
M:ただ、あれはもう、なんというかホラーだから。
T:ははは。
M:歌として冷静に見て、どうよ、という。その点「36.5℃」はそういった面においてもクオリティー高いと思う。
T:まあ、ともあれ「地上の星」もいいけれどもこの時期のみゆきも聴こうと。
M:そうですね。というか「御色直し」から離れている。
T:ははは。いつかみゆき様でも対談やりましょう。
M:はい。みゆきさんはいつかやりましょう。ともあれここの陽水とみゆきはNM系が歌謡曲の下支えも担っていたということを象徴するような2作品といえるかな。


■ ものすご哀愁――ワム「Make it Big !」

T:次がワムなんですが洋楽はやる?
M:あーーー、私聞いてないからなあ。ま、ここはつかささんの独壇場で語ってくさい。
T:いやーでも日本で売れた経緯とか知らんしな。
M:「ケアレスウィスパー」がはいっているアルバムだよね、これは。
T:えーと、そうだ。あとユージ・オダさまがカバーしたことで有名な「ウェイクミーアップ」「ビフォーユーゴーゴー」も。
M:って、カバーしていたんだ。「ラスクリ」しかしらん。
T:「ラストクリスマス」のカップリングだったんですよ。
M:なる。
T:あと有名なのは「フリーダム」かな。まあ、ワムといえばこれというアルバムなのかなあ。
M:ってワムって活動期間って短くない?なんか気が付いたら解散していたというか。
T:まあまともなオリジナルアルバムこれぐらいしかない。
M:結構一発屋的な感じなわけ?
T:一発屋ではないけども線香花火のように短い間にヒット曲連発して。
M:せめて「打ち上げ花火のように」といってあげれ。
T:SPEEDみたいなもんじゃないすか(笑)
M:はははは。でも「ラストクリスマス」はスタンダードになったし、ワムの役割は果たしたかと。
T:まあ、ぶっちゃけ解散つってもアンドリューがいてもいなくても・・・っていう実質全部ジョージ・マイケルだという。
M:っていうか2人組なん?そっから知らん。
T:はははは。2人組みよ。
M:そうなん。ってそんな知識で語っているまこりんです。よろしくぅ。
T:っていうかやっぱ洋楽いらなくね。
M:でもその縛りだとマイコーとか語れなくなるシィ。
T:あーー、でもマイコーもスルーでいいやん。
M:えーーーーーっっ。なんでやーーーーっ。
T:あーでもMTVはスルーできんか。「スリラー」は日本の状況と絡めて喋れればいいわけだし。
M:あー、でもワムのブレイクもMTV抜きには語れない感じでもない?
T:どうなんだろ。「ベストヒットUSA」ってもうやってんのかなこの頃。
M:余裕でやっているよ。
T:あ、じゃあそれもあるのかな。でもワムのPVは別にいたって普通だった気がするけども。
M:確かにマイコーとかマドンナとかと比べるとちょっと印象劣るよね。
T:マイコーと比べるのは酷ですけどね(笑)。ま、曲の良さでしょうねやっぱり。
M:「ケアレスウィスパー」の湿り気ってほとんど歌謡曲だったしね。
T:「ケアレスウィスパー」は日本人ツボですよねぇ、これは。
M:そりゃ、ゴーも秀樹もカバーするよ、みたいな。
T:ものすご哀愁という。
M:涙モノのメロディーライン。筒美先生も早速パクるし。
T:日本人に大人気という。
M:ちょうど秋のリリースだったのがね、これまた、私の心に枯葉散る、という。そういうタイミングも抜群だったかも。
T:まあ、「ケアレス〜」のカバーで一番良かったのはHydeが「LOVE LOVE あいしてる」で歌っていたやつだな。
M:しらね―――。
T:色気むんむんで ツボだった。という感じでワムはもういいや(笑)
M:結局それかい。つまりはhydeは色気むんむんだったと、みずみずしいまでにしたたっていたと。
T:隠れた名唱でしたよ、と。で、次。


■ 玉置浩二はメロディーメイカー――安全地帯「抱きしめたい」

T:安全地帯「抱きしめたい」
M:ってこれまた。
T:聴いてねーー。
M:二人して聞いてね―――。だめぽ。
T:こんなんでいいのか(笑)。「IV」と「V」は聴いてるんだけどなあ。惜しい。
M:安全地帯とワムってのは俺の中で「哀愁」で繋がっている。ってすげーいいかげんな自説でまとめて次いくかい?
T:ははは。まあワムで哀愁って「ケアレス〜」と「哀愁のメキシコ」ぐらいだけども。
M:ま、ともかく安全地帯ですよ。
T:「恋の予感」は名曲です。ということで。
M:明菜のカバーもよかった。
T:あ、「歌姫3」の。
M:そうそ。
T:あれも好きです。
M:陽水版もいい。やっぱ、メロディーメイカーとしてたまきんは素晴らしいですよ。
T:ね。グッとくるメロディ書きますね。
M:日本人の琴線を知っている。
T:というあたりで、恐縮ですが。
M:次かい。
T:次へ(笑)


■ ニューウェーブ時代のサザン・オールスターズ――「kamakura」

M:サザン。
T:きたーー。「kamakura」です。
M:これは休業直前のアルバムだよね。
T:ある意味この年いちばん話題になったのはこのアルバムなんじゃないかな。
M:あ、そうなん?
T:わからんのですけど、2枚組の大作で、しかもあのサザンが、超実験作で、しかも売れてというリアルタイムだったらちょっと衝撃だったろうなと。
M:ちょっと俺サザンは弱いんで。っていうかこのアルバム聴いていない。
T:あー、これは聴いて下さいまこりんさん。80年代テクノ好きならば。
M:マジっすか。ならば聴かねば。
T:みゆきさんの「36.5℃」に似た面白さがあるんじゃないかな。
M:「ミス・ブランニュー・デイ」 で打ち込み多用していたよね。あれをもっと過激にした感じなの?
T:うん。「ミス・ブランニュー・デイ」が一番わかりやすい。あそこからテクノになっていって、ここで全開という。1曲目からアレンジがすごいです。 売れなきゃいけないサザンがここまでやっていいのかという。アレンジの作りこみがちょっと異常なくらいで、変拍子の曲とかあったりでもうやりたい放題。しかも2枚組、という。
M:いわゆるうちらの世代が「サザン」として知っている「サザン」って、ドリフとか巨人とか、そういうのと同じというか、結構様式美化されている「サザン」なわけだけれども、このアルバムに関してはそういうのではないのね。
T:「綺麗」「人気者で行こう」「Kamakura」の3枚はみゆきで言うとご乱心時代かな。かなり面白い。この3枚はニューウェーブかなあ、という気がする。
M:確か、この時期桑田さんは海外デビューも考えていたという話をチラッと聴いたことがあるけれども。
T:ああ、「綺麗」を向こうのプロデューサーに聴かせたとかしてたみたいですね。で、あんまりいい反応じゃなくてがっかりしたとか。
M:そういったものも影響していたりするのかな。KUWATA BANDをアルバムでは全編英語にしたのもそういった意味合いがあったとかそんな話を聴いたことがある。
T:サザン本体でも「Tarako」で英語詞のシングル出したりね。まあともあれ90年代のサザンとはまた違うスリルがこの時期はあるかなという。その一つ頂点のアルバム。
M:バンドに歴史アリという感じですね。
T:このアルバムのあと5年開いたというのもまあ、わからんでもないかなという。
M:今度聞いてみます。
T:小室哲哉もなんかいちばん売れてるバンドが、いちばん実験的なアルバムを出して売れたのが衝撃だったとか言ってたな。
M:このアルバムをそう評価していたわけ?
T:って言ってた。
M:だから「concentraion20」を作っちゃうわけだ。
T:ははははは。あれはそうね そうかも(笑)。ありえないアルバムだしね。人気絶頂の安室で何やってるんだお前!っていう。
M:でも、まぁ、今思えば「その心意気やよし」って感じ。
T:アルバムとしては「人気者〜」のほうが好きだけれども、ともあれいろんな意味でこの年を代表する1枚かなという「kamakura」でした。


■ とにかく仲直りしなさい――「もっと!チェッカーズ」「毎日!!チェッカーズ」

M:再びチェッカーズです。「もっと!チェッカーズ」。
T:2枚目だっけ?
M:そうね。
T:1stが「絶対!チェッカーズ」で2枚目がこれで、3枚目が「毎日!!チェッカーズ」で、10位と。
M:この年は「TAN TAN たぬき」もあるね。13位。
T:「TAN TAN〜」は主演映画のサントラね。
M:これもフミヤのオールディーズが聞けるからファンの皆さんは買った。
T:もうめちゃくちゃアイドル売りされているという(笑)。
M:もう、ばかばか出してばかばか売れた。
T:アルバムはちょこちょこオリジナル曲入ってるんだよな。
M:そう、半分くらいはメンバーが関わっている作品。
T:でも、この時点ではシングル曲とそんなに齟齬はない。
M:そうね。
T:まあ、この時期「NANA」みたいな曲もってきても却下されただろうけども。
M:聞く分でカラーの違いというのは感じられないよね。だから、まあ、うまくプロデュースされているんだろうな、という、実際メンバーの作品は書き直しや補作がいっぱはいったみたいだし。
T:だからまあ自作期前のアルバムは「もっと!」しか聴いてないんですが、そんなに面白くはない。きちんとアメリカングラフィティ路線という。
M:そうね。その枠内でいろいろやっている。
T:個人的には自作以降のが断然おもろいです。
M:もともとチェッカーズはドゥーワップとかキャロルがスタート地点の人達だから。
T:だから、この時点では、そこからそんなにはみ出したところはないですね。
M:むしろ、何故自作がああなるのかというのが不思議なわけで……。
T:チェッカーズはアルバム曲にいいの多いからここだけでも宣伝したいなあ。
M:あ、じゃあ、オススメアルバムなどあげちゃってください。宣伝しちぇえYO !
T:「GO!」も「I HAVE A DREAM」も「Blue Moon Stone」もいいんですが、中古屋でよくおっこちてるのは「Blue Moon Stone」かな。
M:「SEVEN HEAVEN」が一番って話をよく聴くけれども?
T:「SEVEN HEAVEN」もいい。というか各アルバムのカラー差がそんなにないので。解散の時にだした3枚組ベストにアルバム曲たくさん入ってるので見かけたら拾い上げてください。 なんかほかに例えようとするとあんまりないんだよ。 チェッカーズみたいなの。
M:うーむ。
T:なんか洋楽の影響も邦楽の影響もあるんだけどどっちっぽくもないという。一時期のチャゲアスもそうかな。
M:とはいえポップス的な色気というのはしっかりあるんだよね。
T:フミヤのボーカルがやっぱりねぇ 色気ある。
M:確かに聴いていても出自が見えない感じではある。
T:そそ。そんな感じ。
M:まあ、メンバー構成も変則だしね。
T:そうね。そっから独特だし。
M:デビュー後の歴史も解散後の歴史も独特だし。
T:はははは。哀しくなっちゃうよほんとに。哀しくてジェラシーだよ。フミヤとタカモクがすれ違い、だよ。
M:あーーー、でもタカモクはぶっちゃけあまり必然性のない人だったからなぁ。
T:♪フミヤと鶴久が〜か。
M:鶴久はなーー。いい曲いっぱい残しているのになんでこうなったのか、という。
T:ねぇ 鶴久の曲いいのに、って、まあ、現在はいいですよ みんな大人だし。 チェッカーズが面白かったのは、「みんな曲書く」というのもあったかも。
M:そうね。実際メンバー内コンペとかあったみたいよ。当時のインタビュー見ると「僕の曲がいっぱい採用されて嬉しかった」とか鶴久が言っていた。
T:ただ誰がどれ書いたってあんまり聞いてもわからないのがまた独特だけども、やっぱメンバーがみんな曲書くバンドって面白いですよ。
M:やっぱりそこで磨かれるのですよ。内部競合ってのはデカイ。ただ、その場に入れないタカモクは可哀相だが。
T:アルバムもわりとノンジャンルな感じで、ということでチェッカーズ再評価きぼん。
M:セルフ以降の話ばかりで盛り上がってしまいました。
T:この年のアルバムとは関係ない話になってしまった。
M:っていうか再評価よりも、仲直りして……。
T:再結成?
M:そして皆で「素直にI'm sorry」を歌うんだ。
T:はははは。なんてオチだ。お後がよろしいようなので。
M:次。


■ 来るべきバブルに向けて着々と準備――松任谷由実「NO SIDE」

T:ユーミンです。「NO SIDE」。
M:またユーミンだよ。
T:毎回出てくるユーミン。
M:いつもこの企画でユーミンについて語っているよ。
T:80年代から90年代中盤までずっと出てくるので語らざるを得ない(笑)。
M:「ノーサイド」もこれまたいいアルバムなんだよね。参る。スルーできない。って、TSUKASAさん的にはそうでもない?
T:いや好きですよ。ちょーっと今聴くと音が・・・って曲もあるけれど。
M:それは打ち込みの音?
T:でも「ブリザード」のアレンジとか凄い。
M:壮大だね。
T:あのシンセは絶品ですよ。
M:ダイアモンドダストって感じ、って星矢ではないが。
T:鳥肌立つね。ほかにも「ノーサイド」に「DOWN TOWN BOY」に「サラームモンスーン」に「SHANGRILA・・・」って。
M:このアルバムは詰め込んでいるよね。
T:普通ならアルバムの代表曲レベルな曲がどかどかと。このアルバムはすごく肉体的というかそういうテーマなのかな。
M:あ、なんか本人はそういっていたね。
T:オリンピックだっけ?84年。
M:そうそう「ロス五輪を見ていて肉体の美しさに感動して作った」みたいなそんなこといっとりました。
T:冒頭の「サラームモンスーン〜」がそんな感じだな。人間の肉体と自然の一体化、のような(笑)やたら壮大。
M:あーー、そうね。「大自然と私」みたいな。
T:「♪ 天は大地に注ぎ 大地は天に溶け 私はうでを広げ 世界抱きしめる〜」ってどこいっちゃったんだ、という。
M:まあ、それがユーミンですから。
T:ユーミンでしかポップスに出来ない、という歌が多々ありますよね。
M:「破れた恋の〜」とかもオカルトチックで好きだな。
T:ああ、あれもいいですねぇ。呪術の手法を逐一説明するという、どういうポップスだ。ユーミンの声がまた似合っちゃうから困る。
M:ユーミンはあの声の説得力で何でも乗り切ってしまうからね。このアルバムは、オカルトアリ、リゾートアリ、青春モノアリ、OLモノアリ、とユーミンの全ての手札が入っていて。
T:「一緒に暮らそう」とか「午前4時の電話」あたりの小品もいいし―つうか、小品のほうが少ないのだが、全体的にやっぱレベル高い一枚ではありますね。
M:うん。
T:クライマックスだらけ。
M:「ノーサイド」と次の「ダディダ」は詰め込みまくっている。
T:無敵のオーラが出てる。
M:前作の「ボイジャー」もつめているか。
T:その前の「リンカ」も詰まってる。
M:って、結局全部やん。ま、この辺はバブルへ向けての助走期と言う感じでありえない勢いあるね。
T:あのユーミンマークが出来たのもこのアルバムからでしたっけ?
M:あーーーそうね。
T:どーんとジャケットに自分のロゴマーク載せてしまって「もう私はブランドだ」と。
M:そうね。絶対的な自信だ。あと打ち込みメインのアレンジにしたのはこのアルバムからだよね。
T:ああ そうですね こっから打ち込みだ。
M:ここからはベーシックを打ち込みで作ってから、おかずでいろいろ足してという作りにしたとか、そういうマンタさんのインタビュー読んだ記憶がある。それも、変わり目なのかな。
T:ただユーミンは、というかマンタさんの打ち込みの場合は今聴くとちょっと薄っぺらいなあというのも結構あるね。
M:あーーー、確かに。まあ、だからその辺が今のユーミンの音にも影を落としていてちょっと時代からずれているかな、というそういう部分もありまして。
T:ちょっとありますね、そういうの。なんかちょっとイマじゃないなぁという。
M:そこがむずがゆいんだよね。ただ、この変化がバブル期の「シュールでスペイシーなユーミン」のイメージ強化へ繋がったというのは、ま、事実でないかな、と。
T:そうですね。超人間的なユーミンね。
M:これがバブル時代のユーミンへの呼び水になったかなと。
T:あ、あと1年に2枚出したりしてたのがこの年から年末固定になってしばらくイベント化するわけで。
M:前作「ボイジャー」からここで完全に定着するんだよね。
T:12月はクリスマスとユーミン、という行事ですよ(笑)。そういう意味でもユーミン王政の始まりという感じかな。
M:本当にバブルへ向けて着々と準備していますなユーミンは。ぬかりない。


■ レコ大歌手は過渡期です――中森明菜「D404ME」「BITTER&SWEET」

M:明菜様だ―――。「ダシオシミ(D404ME)」です。
T:しばらくそういう意味だと知らなかったw どういう意味のタイトルだこれはと。
M:あ、「ダシオシミ」は裏意味です。
T:表は?
M:ニューヨークの倉庫かなんかの名前。
T:あ、そうなん。
M:このアルバムは確か物語仕立てだったのよ。ニューヨークのロフトで暮らすママと少女明菜がうんちゃら、という。
T:そういうコンセプトがあると聴いてもわからんけども。
M:ぶっちゃけわたしもわからん(笑)。
T:はははは。その設定は必要なのか、と。まあ、気分ということで。
M:そんな感じ。
T:気分的にはそうです、と。
M:で、明菜様はこの年「BITTER&SWEET」も第九位にランクインしているね。
T:ですね。
M:って、まあ、私は明菜様については語り尽くしているのでTSUKASAさんのこのアルバムに関する意見が知りたい。聴いているみたいだしね。「この二枚のアルバム、どうよ」と。
T:あ、でも明菜様はそんな聴きこんでない。
M:それがファイナルアンサー?
T:すまん。一通り聴いた感じでは「Stock」が一番好きだったりした。
M:それかい。まぁ、あれは素晴らしいですよ。
T:ボツ集かいっていう。
M:最高ですよ。
T:や、「Bitter And Sweet」も好きだったかなあ、でもぼんやり覚えてるぐらいにしか聴いてない。
M:薄い印象しかないのね。
T:すまんス。まこりんさんを前にして許されざる行為。
M:ははははは。
T:切腹!
M:私見を言わせていただければ、85年の明菜はアルバムに関しても過渡期かなぁ、という感じ。以前のツッパリソングの明菜でもなく、かといって「女王・明菜」までにはまだ完全に到っていないというか、ちょうどその過程というか。女王成り立て、という。
T:あー。「Stock」とか「CRUISE」あたりになるとね、貫禄十分な感じだけども。
M:この時期はまだ若いでしょ。明菜は86年の「不思議」からアルバムもセルフプロデュースするようになるけれどもまだ、この時期はそこは任せているわけで。
T:狭間という感じですね。
M:ただ、わかりやすさという意味合いでは「ビタスイ」は10代の明菜のベストかな、と。
T:一枚の作品としてちゃんと出来てるしね。
M:そうね。トータルとしての色がある。シングル没曲で作ったという印象はない。
T:「出し惜しみ」は?
M:「ビタスイ」の延長戦かなぁ、というところだけれども「ビタスイ」より決まらなかったかなあ、って、俺論やん。TSUKASAさんのお言葉が……。
T:や、こっちは前作でちゃんとアルバム作れたので、よしアルバムに力いれちゃうぞーという意気込みがなんか空回ってる気がしたんですが(笑)。
M:あーーーー。正直、そうね(笑)。それはある。なんか、無駄に肩肘張っている。
T:やる気ありすぎてあれやこれややりすぎたというか。
M:結果、トータルでの魅力が出せなかったよね。
T:そういう意味では過渡期的で まあ面白いちゃあ面白いかもですが。
M:まぁでもこれが、売れたんだから、正味の話、何が売れるかよくわからんですわ。
T:まあそれはアーティストパワーもあったのでは。
M:明菜だし買っちゃうか、みたいな。
T:でもアイドルでアルバムも売るのは立派だよね。この後もしばらくコンスタントに売れているし。
M:明菜と聖子は別格だからそういうのが足枷にならない。ま、他のアイドルももちっとアルバム売れてもバチあたらんよな、と思ったりするが。
T:まこりんさんは80年代の明菜だとどれが一番なの?アルバムでは。
M:あ、「Stock」です。
T:ぎゃふん。
M:なんでぎゃふん?
T:や、さっき俺が「Stock」と言ったら「それかよ」と言っていたから(笑)
M:「やっぱりそれかよ」という意味での「それかよ」です。
T:あーそうか。やっぱあれがベストなわけですね。
M:で、次に好きなのが「不思議」と「Femme Fatale」かな。
T:「CRIMSON」は?
M:その次くらい。ってTSUKASAさん、聞いているの?今言ったタイトル。
T:「不思議」と「Femme Fatale」はない。
M:「Femme Fatale」は「ストック」の延長戦みたいな感じ。ギターサウンドではないけれども。「不思議」は一言でいえばゴスです。
T:おお。ゴスというだけで聴きたくなる私。
M:エスニック・ゴスって感じで、ビジュアル系に通じる世界観を持っているアルバム。
T:おお それは聴きたいな。というわけで明菜様いいですか。
M:次いきましょ。
T:まあ、明菜様はまこりんさんのサイトで詳しくやっているしな。まこりんさんのレビュー参照ということで。


■ マドンナとフェミニズムの関係――「Like a Virgin」

M:マドンナです。「Like a Virgin」。
T:うーんマドンナか。
M:ってまたまた、TSUKASAさんがんばってくさい。わしゃ、このアルバムでは「マテリアルガール」と「ライカバージン」しか知らない。
T:このアルバムはまあ、内面が出てくる前という感じで、まだアイドル期なので曲はいいけど、まあ、そんな面白くない。語ることもない、という。
M:なんだかなぁ。
T:まあ、このアルバムも「マテリアルガール」と「ライカバージン」に全て集約されているわけで、エキセントリックで奔放という。
M:ただ、新時代のセックスシンボルっていう、そういうマドンナの役割は語っとくべきでは。松田聖子さんも浜崎あゆみさんも憧れたわけだし。
T:うーん そこのリアルタイムの感覚がわからん。PVとかもそんな普通だし。まあこのアルバムは 「Crazy For You」が入ってないのが解せんという。
M:そっちかい。まぁでも、自己の女性性を大胆にセルフプロデュースするっていうのは、この時期だからこそ現れたという印象は受けるなぁ。
T:ああ、洋邦問わず女性アーティストに影響及ぼしまくったのは事実でしょうね。
M:フェミニズムの成熟というかそういうのは、あるかな、と。
T:シンディ・ローパーとかもそうなのかな。
M:あーーー、でもシンディは違う感じする。シンディからは戦略性を感じない。
T:シンディはもっと無邪気?
M:そんな印象。
T:まあマドンナほど強い自我は見えないですね。
M:それまでのフェミニズムって言うのはセックスを売り物にするのは「男性原理に拝跪する行為」と否定されていたところを真逆のベクトルで新しい可能性を示したのがマドンナかな、と。 「セックスを使って男性を操る」ということだってできるのよ、とポップスではじめていったのがマドンナというか。
T:ああ。それが極まって「Erotica」まで行ってしまったと。
M:マドンナってフェミつぽさって感じない?
T:田嶋陽子みたいなってこと?
M:や、たじまんは旧態依然としたフェミニズムでちょい違うんだけれどさ。
T:うーんどうだろ。
M:まぁそういった系統に通じる気配を感じるんだよね、私は。「マテリアルガール」も資本主義賛歌なわけでしょ。
T:ああ。まあそうだね。
M:それまでの「金=不自由」って価値観をひっくり返して「金=自由」、つまりゃ、資本主義万歳とひっくり返したのがあの歌かなぁという印象があって、 それと同じように、逆説的に女性性万歳という示唆を彼女は行ったのでは、という。それは彼女のセックスアピールにも通じるなぁとおもったりもするのね。
T:俺はマドンナというと、ファザコンとか母親不在とかそっちのがでかい気がしてたからなあ。
M:それもあると思うけれどもね。
T:で、それをレベッカが丸パクリしたという。
M:ははは。そこで話を落とすわけ?
T:いや(笑) まあレベッカがパクった事例を見ても女性性の抑圧から解放されたい女性のメルクマールではあるかなと。


■ 「松田聖子物語」の破綻とその後――「Windy Shadow」「The 9th Wave」

M:あとちょっと聖子について語っていないところを軽く流していい?
T:あい。
M:えーと、この年は11位「Windy Shadow」、12位「The 9th Wave」と連続して聖子なんですが。
T:ですね。明菜と聖子は流石です。
M:って、ふたりに関してはそればっかいっていない?
T:まあ、この時期別格だからなあ。で、どうぞ続きを。
M:ただこの時期――84年くらいから?の聖子は、郷ひろみと結婚引退か? 結婚を振り切って海外デビューか? と本人の方向性が定まらない状態だったように思えるのよね。今振り返ると。
T:いくつかの分岐の選択を迫られていたと。
M:賞レースに参加しなくなったり、短期留学したり、ベストテンでも欠席したりというのが多くなったし。
T:曲がり角だったわけですね。
M:ま、そこでこの年、松田聖子はウルトラCレベルの決定をしてしまうんだけれども。
T:はははは。いくつか道が分かれていたところに、新たに道をひいてそこに進んでしまったというくらいの(笑)。
M:ただ、スタッフはその振幅についていってないような印象があるわけで――作品をきくと本人がめまぐるしく変わっているのに楽曲はわりといつものというか。
T:いや、いつものですよね。別にこの2枚は。
M:そのアンバランスさがね。それは90年代になって加速度的に強くなっていくんだけれども。
T:あーシングルでも言っていた。
M:ま、そういう話なんですが。
T:歌の内容と本人がぜんぜんちゃうやんという?歯医者とよろしくやりながら「♪ ママの愛で貴方を〜」とか歌ってるやん、って、歯医者でいいんだっけ?
M:歯医者は二番目の旦那。
T:あと、ジェフ?もうなにがなんだったかで。
M:あとアランとか、原田真二とか、って、いや、そのあたりのゴシップはもうお腹イッパイでいいんですが。 この時期までの松田聖子のシングルってひとつの長編ラブストーリーというか。
T:ああ、そういう風にも聴けますね。
M:四季の変化とともにひとつの大きな恋の物語を綴っているという、大河ドラマ「松田聖子・恋物語」っていうそんな感じだったように見えるんだけれども。
T:そうね。非常に季節感の強い曲が多かったし。
M:ずっーといつも一緒にいる恋人とともに四季の移ろいを楽しんでいますみたいな路線だったと思うのね。季節が移ろって、二人はまた少し成長しました、みたいな。
T:最初はフレッシュフレッシュフレッシュ!だったのが。
M:少しずつ成長して、デッキチェア―でリンゴ酒片手にウインクウインクウインクしたり、朝焼けの渚のバルコニーで待ったり、なんて進展し。
T:ははは。だんだんしっとりした情緒も入ってきたりね。あなたの胸に帰りたいけど帰れなかったりするわけだ。
M:ただ、その路線は一方で「郷ひろみとの長年のロマンス」というのがあってはじめて成立していた路線だったのかな、とわたしは思ったりするのね。 「いずれ郷ひろみと結婚してハッピーエンドなんだろうなぁ」という周囲の前提があって輝きを持っていたというか。
T:つうか、おれ知らないんですけどヒロミゴーとの関係って早い段階からおおっぴらだったんですか?
M:うん、デビュー時点から。
T:あ、そうなんだ。
M:なんか早い段階から世間でも公認という感じだった。
T:明菜とマッチといい、昔のファンの人は結構寛容なんですねぇ。
M:その直前に「百恵と友和」というドラマがあったからさ。
T:あーそっかそっか。
M:あれをなぞる形で容認してたんでないかな。
T:恋人が発覚したから某娘。を辞めちゃうような現在のほうが締め付け厳しいぞという(笑)
M:ははは。娘。はよくわからん。
T:まあいいんだけど。その、恋愛ドラマのサウンドトラックとしての聖子ソングというのがここで終わったと?
M:まぁ大雑把に言うとそんな感じ。デビュー時から連面と続いた物語がここで破綻したなぁ、と。しかも、本人がその破綻に気づかずにその後も突き進むわけで。なんか、残念なことになっていくなぁ、聖子、という。
T:まあ、90年代の彼女のリアリティをそのまま歌に落とし込んだらそれはそれですごい歌になってしまうような・・・。それはそれで面白いかもしらんけど(笑)
M:や、絶対面白いよ。
T:面白いだろうね(笑)。ただ明菜にはそれが出来るけど「聖子ちゃん」には・・・ってところはあるのかもしれないな。
M:その差はなんなんだろうなぁ。偽善っぽく「私だけの天使」とか歌わずにビッチ全開の歌を歌ってくれよぅ。
T:それこそマドンナのカバーしたりしてるんだから、聖子版「エロティカ」みたいなのやったらよかったかも(笑)。女王様になっちゃうとか、PVで。
M:ま、90年頃和製マドンナ目指して、それはそれでずいぶん残念なことになっていた松田さんなんですけれどもねっっ。
T:残念なこと(笑)
M:いやぁーー、残念だった……。ライブビデオでしかみていないが……。黒人ダンサー引き連れていた……。臍とか出してセクシーな衣装でがんばっていた……。ヘッドセットのマイクでくねくね踊っていた……。
T:あー。それが残念な感じになってたんですか。
M:「ヴォーグ」っぽい感じをイメージしていたのかなぁ……。そういうこともやっていたのよ、90年代の松田さんは……。
T:まあ、しかし90年代の聖子さんも結局ヒットしたのは「大切なあなた」とか「あなたに逢いたくて」とか至って80年代と変わらない、清潔で差しさわりのない歌で。
M:まぁ、結局そういうところに落ち着いちゃうんだよね。
T:本人は暴走してるのに歌には反映されないという。
M:まあ、そんな感じで。
T:だからまあ、ヨゴレの部分と歌と完全に使い分けてますよね。
M:テレビとか歌のときは、ヨゴレは割となかったことにしている感じだよね。
T:あれはあれとして別です、という感じだよね、歌ってるとき。意図的にかどうかわからんけど。って、意図的?
M:意図的なんじゃないかなぁ。松田さんはマッチとの不倫スキャンダルの時「なんなのよ」ってレポーターに食い下がって評判一気に落とした経緯があるから……。
T:へぇ。
M:しかもちょうど聖子が事務所独立する頃だったんだよね。で、その後、明菜はあんなことになっちゃうし。あれっきりそういう「悪・聖子」はテレビで披露されていないかも。
T:紙媒体だけだよね。
M:まぁ、いまや風評だけの悪・聖子という感じでその辺は見事なセルフプロデュースっぷりです。
T:紙媒体では悪聖子なのに、動いてる聖子を見るときはいつもブリッブリで変わらぬアイドルですという。まあでもスキャンダルに潰されずに利用してしまえるというのはすごいことですよ。
M:でも、ちょっとくらい歌でも悪・聖子もだしもいいんじゃないかとわたしゃ思うよ。やる気はあるんだから、そのあたりもがんばれ聖子、ということで。ってほんとワイドショーのネタみたいになっている。
T:スポーツ新聞みたいになったら嫌なので(笑)聖子ちゃんはこのへんでということで。
M:次に行きましょう。空気をかえるっっ。


■ オメガはプレビーイング?――「Another Summer」「Never Ending Summer」

M:あと杉山清貴&オメガトライブが二枚(「ANOTHER SUMMER」、「NEVER ENDING SUMMER」)ランクインしておりますね。
T:杉山清貴とかベストしか聞いてないもんなあ。こんなに売れ売れだったんだな。
M:杉山清貴とかオメガトライブっていわゆるビーイングのプロトパターンだと思うんだよね。っていきなりはじめる。
T:サラリと入りましたね。
M:自作するけれども、全てがプロデューサーの管理下にあるところとか、存在の希薄さがセールスに繋がったところとか、そういうところとかビーイング臭いなぁ、と。
T:確かに曲聴いてもなんか通じるところはある気がしますね。
M:無駄に爽やかなんよ。
T:ははは、そうね。
M:「夏、爽やか」っていう。
T:キラキラーっていう。
M:本当にただそれだけ、という。
T:夏に海とか街頭でなんとなく流れるのに合っている感じ、それ以上でもそれ以下でもないという感じが似ていますよね。
M:でもってアーティストの自我ってないでしょ。ボーカルが杉山からカルロスになっても問題ない、という。実際後ろのメンバーなんて入れ替わったりとかもしたのに気づかないし。
T:はははは。おれが意識して歌番組見るようになった頃にはもうカルロストシキのほうだったんですけど、オメガトライブに関しては後ろの人たちがそうなんだな、ぐらいの認識で。
M:誰も覚えちゃいねぇ。
T:バンドとしてのアティテュードがどう、とかそういうのはどうでもいいというか、って相変わらずひどい言い草ですね、我々。
M:まぁ、いつもですから。実際オメガ・杉山は――あと菊地桃子なんかもこの中に入るんだけれども、トライアングルプロの藤田浩一って方がバップ・日テレと組んで、強固なイメージ戦略を練って売り出したグループなのね。 藤田プロデューサーの作るアーティストの自我のない、徹底してなめらかなシティポップスっていうのが当時は新しかったのですよ。それまでのNMにはないこの存在の軽さがいい、と。
T:それまでのNMというと、歌謡曲へのカウンターであったり、大衆への無意識や無関心を前面に押し出したり、なんらかの意識というか。
M:なんらかのメッセージ性というか、ともあれ「意味」が求められていた。けれども、オメガ系は本当に「ただ音が鳴っている」という。
T:そういうのもないですもんね 。
M:洗練されているけれども、何もない音がスルー―っと流れる。
T:無意味という意味性もないという。ほんとに音だけですと。
M:だから、余計なこと考えずにユーザーはひたすら音を消費さえすればいい、と。で、飽きたらソッコー捨てる、と。
T:J-POP的ですね。
M:現在におけるオメガ系の印象の薄さって非常にJ-POP的だなぁと私は思う。
T:前の対談でもこういう話したけど。
M:そうですね。まぁ、だからオメガもこの年の象徴するひとりのアーティストかなぁ、と思ったりする。ついにこういうのがチャート上位にでてきたぞ、と。
T:でもこう、ロック・NM勢のカウンター性という意味がともすると過剰に要求される流れの中にあって別の流れとしてアリじゃないかなあと思いますね。みんな意味、意味、意味じゃ疲れるもん。
M:確かにね。ある面そういった無意味性はそれまで「歌謡曲」が背負っていたものだとわたしは思うけれどもやっぱり泥臭かったからね。ここで、ぐっと洗練されたというかそんな感じ。


■ ガールズポップの源流は中村あゆみと見た――「Be True」

M:もうひとついつもこの対談で話している「J-POP的なもの」の話で中村あゆみの話をしていい?
T:ああ、シングルで出なかったので、ぜひ。
M:ガールズポップではじめてチャート上位に食い込んだのがこの年のあゆみだったのでは?と思うのですが、どうでしょ。
T:うん。ガールズポップって言葉が出てくるのはもっと後だけどガールズポップ的なものってどんなんよ?とやっぱり振り返ると中村あゆみ、次が美里って感じがするかなぁ。
M:ガールズポップの概念に当てはまるアーティストと考えた時に一番最初にヒット出したのは彼女ですよね。
T:「翼の折れたエンジェル」と「My Revolution」でガールズポップの礎が出来たという感じがあるな。
M:翌年にはレベッカのノッコと美里がチャートインしてくるけれどもこの年では中村あゆみだけ。
T:ああ、レベッカも翌年か。
M:だから85年を境にどっと出てきたという感じ。それまでNM・ロック系の女性アーティストって「大人」のイメージで売っていたけれどもティーンと同世代感覚で出て来るのはここから。
T:これらの共通点というとやっぱり、アイドルとロックのクロスオーバーという感じですかねぇ。オイシイとこどこりというと言葉は悪いけど。
M:あゆみもひそかにアイドル崩れなんだよね。アイドルデビューの話が最初にあったんだけれども、ぽしゃって……という。
T:へぇ、そうなんだ。美里もそうなんですよね。
M:美里は、受けたオーディションがアイドル御用達のミスセブンティーンだったとか、そんな感じ。 だってあゆみは明大中野高校の夜間部卒業で同級生がふっくんとか石川秀美とかだし。一年上には明菜と三田寛子がいたし。
T:詳しいなあ・・・前忠顔負けという。
M:って俺は芸能レポーターじゃないっつうのっっ。
T:だからまあ、それまでならアイドルになっていたような女の子が、ロックっぽいメッセージ性とサウンドでもって、大人の歌でなく思春期の痛みを歌うという。
M:そうね。
T:これはもう80年代後半から90年代前半にかけて大きな潮流として出来上がったわけで、「翼の折れたエンジェル」なんて、もうね、あのしゃがれた声で思いっきり切なげに青春の蹉跌を歌うわけだ。 悩んでるけどガンバレ自分、という系譜がここから築かれていくわけですね。
M:そうですね。その後の中村あゆみの歌手としての遍歴も非常に「ヒットを飛ばしたガールズポッパーのその後」という感じで、あとはもう、前回前々回の美里やプリプリ、ナガマリ、リンドバーグの章を参照という感じで。
T:青さの壁、というあれです、ってな感じで。だからあゆみ、美里の流れがバンドブームになると男子にも波及して、っていう感じもあるかな。
M:一方でバービーとか米米とかのデビューも85年だしね。ま、ともあれここの中村あゆみも85年がひとつの転向点である事の証左という印象があるね。
T:バンドブームの胎動がここに、という。
M:うん。


■ まずは「アイドル」としてひとつめの山――小泉今日子「Celebration」

M:小泉今日子「Celebration」ちょっと触れていい?
T:キョンキョンか。
M:これ、彼女の中で最高セールスのアルバムなんだよね。
T:つうか俺聴いてない。
M:ベストよ、これは。
T:あ、ベストか。
M:デビュー曲「わたしの16歳」から「ヤマトナデシコ七変化」まで。で、一曲田代マサシ作詞で「Celebration」って新曲がある(笑)。
T:ぬわわ。レアすぎる(笑)。この頃からそんな発注かけてんのかよ、Kyon2。
M:しかも、これがドゥーワップでテクノ。わけわからん。
T:ははははは。まあ、「ヤマトナデシコ〜」で初めて12インチも出したり。
M:なぞの中国語入りのね。
T:いろいろ試行錯誤してきたうえで、このへんからこう他のアイドル勢と一線を画す色を出してくるんですね。
M:あーでも、どうなんだろ。このあたりはまだ以後にあるメタ的な部分ってない感じする。わりと純粋にアイドルというか。
T:まあ、明確にメタなのは「なんてったってアイドル」以降ですかね。
M:そんな感じ。結構小泉って、後に語られるそういった部分よりもその前の微妙な83年後半から85年前半あたりが実際の人気の一番の山だったりする。シングルで言うと「艶姿ナミダ娘から「スターダストメモリー」あたり。
オリジナルアルバムのベストセールスもこの年の「Today's girl」(第21位/31.9万枚)だし。
T:そうなんですね。内容的にも、アイドル期の山と、その後の80年代後半のセルフプロデュース期の山と2回あるっていう感じがする。
M:この頃は以後のノリも感じられるけれども、アイドルそのものといわれれば、そうかも、という世界でもあったりして、微妙な感じ。
T:んで、90年代はドラマ主題歌2つ(「あなたに会えてよかった」「優しい雨」)をどかんと売って、結婚という。
M:アルバムは別として、シングルに関しては、この時期のものが一番好きかな。筒美先生と馬飼野先生の応酬がすばらしいです。
T:1曲っていったらどれです?
M:「渚のはいから人魚」の無理くりな展開がた、たまらんっっ。
T:あーそれか(笑)。ヘンな曲だよね。サビだけ聴いたら普通にポップだけど繋がりがおかしいという。
M:もう、どういうつくりだよ、これ、という。♪「Oh ダーリン」のあとの"じゃかじゃん"のところとか。
T:その「じゃかじゃん」がね(笑)。とってつけたような。グレートですよ。
M:「♪ 少し悪い方がいいの」のあとの"ずんどこずんどこ……"もゴイスーー。完全に別物ですよ。繋げようという意志がまったく見られません。
T:これでいいんだ、という開き直りがすごいです。
M:やぁーなんかプロは凄いなー―、と。面の顔厚いぜ、と。
T:でもこう、80年代前半は正統アイドルで、後半はバンドブームにコミットし、90年代はドラマタイアップにも乗っかり、って非常にこう上手いことやった人だなあと思うんですが。
M:事務所の力もあるだろうけれども、彼女自身、時代を読む嗅覚が優れているんだろうね。
T:ちょうどこうアイドルが衰退したころには別ポジション確立していたし。
M:ただ、彼女の場合は、そのぶん「結局この人って何やりたいの?」という部分があることは否めない。
T:その時その時でこう賑やかしたいというか。
M:歌モノも「おしゃれな大人のサークル活動」ってところで収まっちまう危惧が常にある。とかいってチャートインすらしなかった「dirivin' nite goin' on」が結構好きだったりする私なのですが。
T:リミックス繋げたマキシシングル出したりとかもう完全に趣味ですよね。
M:まぁ、事務所的にはそのイメージがCM仕事に跳ね返ってくるという戦略だったりするんだろうけれども。って厭なファンだな、俺。
T:ははは。斜め視点のファンという。ま、作品について言えばアイドル期のシングル曲も、アーティストごっこ期のアルバムも結構好きな私なので。
M:あ、それはわたしも好きよん。「Hippeies」とか「ファンタージェン」とか「KOIZUMI IN THE HOUSE」とか、素晴らしいです。
T:面白いもんね、その時期のアルバム。ってアイドル期のアルバムは聴いてないのだが。
M:まあ、わたしもこの時期のアルバムはちょこちょこ持っているけれども、あんまり聞いていなかったりする。「Betty」は全曲つつみんプロデュースだけれども、その後と比べるとなぁ、という。 ま、ひとまずこの年の小泉さんは「アイドル」としての人気が絶頂でしたよ、と。
T:特に異議なし、ということで。ともあれシングルはいい曲多いので3枚組ベストの「Kyon3」聴いてくださいということで。
M:そうね、あとはブクオフでサルベージできる80年代末から90年代のものから聞いてみるといいよ、という感じで。


■ 吉川晃司の無駄な男気だけはホンモノだ――「INNOCENT SKY」

T:やっぱりキッカワ語りますか?
M:そうねーーー。っていうか吉川は年間ベスト20にアルバムとシングルあわせてもここでしかランクしていないのでここで語らないと語れない。
T:あら、そうなんだ。
M:そんないまいちパッとしないセールスの吉川です。よろしくぅ。
T:ならキッカワさんはここで語らなければなりません。じゃあこれが最高売り上げなんですか?アルバム。
M:いや、94年の「Cloudy Heart」のほうがもちっと売れている。その次がこの「INNOCENT SKY」。
T:あ、そうか。でも相対的にランクインしてないと。
M:そうそ。90年代だしね。でも、このアルバムは個人的には吉川アイドル時代で一番好きくないアルバムなんよ―――。
T:うーん好きくないんすか。というか私はキッカワさんのアルバムはつまみ食いしかしてないので……。
M:うーーん、アイドル時代は前作の「ラビィアンローズ」が好き。
T:「♪ るぁーーびぇんろぉぉず」 かい。
M:そうそ。「♪ うぇみぇりゃるどぅのくぁくてぅえるにーー 消えるひくぁりのあわーー」ってまねるなっっ。
T:いや、どうしても吉川の曲名が出ると真似たくなる・・・。って、既に日本語かどうかもわからない(笑)。
M:で、この次の「モダンタイムス」から自作するので。
T:そっか、自作前の最後なのね。
M:そうそ。で、このアルバムから後藤次利さんが吉川のサポートに入りますです。
T:ちょうど曲がり角だ、じゃあ。
M:そうですね。俺の肩幅じゃアイドルなんてちっちゃな器は狭すぎるぜ、と言い出した吉川さんです。
T:はははは。肩幅広いっすからねぇ。さすが水球選手という。まあ、今回シングルのとこから延々話してますが吉川さんもチェッカーズと並んでこう、アイドルとロックorアーティストのクロスオーバーという点で、語らないわけにはいかない人ですね。
M:そうですね。ボウイをメジャーシーンに引き上げた功労者のひとりでもあるし、最終的にコンプレックスの結成まで行くわけですから。
T:実は重要人物なんですよと言いたいですね。
M:だから、本当に、「アイドル側」におけるそういうきっかけのひとりというか。
T:ぐっさんの物真似でしか知らない人には一言物言いたい、と。
M:ははは。
T:って、まあ自分ももっぱらカラオケの物真似ネタにさせてもらっているんですが。
M:ははは。あんたもそれかい。でも彼の歌唱法は初期は佐野元春の影響が強いみたいね。
T:えーっ。
M:って本人がいっていたよ。「佐野くんみたいに歌えるんだ」みたいなこといわれて事務所に拾われたとかそんなこといっていた。本人もそこそこ意識していたようで……。
T:うーん 確かにこう両者とも崩した歌い方だけどもやってみたら独特なものになってしまったという。
M:ってまあ、吉川さんのはアレだしね。どことなく笑いを誘発する。
T:むしろ氷室に近いと思ったんですけど。こう母音と子音をわける歌い方――「さしすせそ」が「すぁすぃすぅすぇすぉ」になるという。
M:あ、コンプレックス以降はそれこそヒムロック的歌唱って感じでだけれども、「すぁすぃすぅすぇすぉ」はデビューからだな。
T:確かにコンプレックス前と後では違いますね。
M:コンプレックス以降は変な低音オペラ歌唱というか。
T:変なビブラート入ってきたからね(笑)
M:「♪ カリカリカリーパぁン」という感じで。
T:ははははは。あれヒムロックじゃないっすよね!?
M:謎の歌手「ミスターK」だから、アレは。
T:びっくりしたよあれ。ええええ?って思ったもん最初。
M:でもアレは吉川だろうな。俺のアンテナが吉川と答えを出した(笑)。「ミスターK」と名乗ってああいう仕事を受けるのはこの世に吉川しかいまい。
T:えええ吉川さんなの?それはそれで衝撃・・・っていうか笑撃だわ。
M:「覆面歌手のミスターK」だもん。吉川しかありえないっしょっっ!!!!!
T:なにやってんだよぉ〜。
M:いや、アレでこそ吉川だよ。むしろ誇らしい。
T:まあでも「ヒムロック?」とは思ったけど吉川とは思わなかったから。
M:あ、そうなん?
T:やっぱボーカル似通ってる・・・というかヒムロックの物真似得意? 氷室にしかきこえんかった。
M:あーー、後期の作品には凄い似ている曲とかもあるよ。「Glow in the dark」とか、まんまやん、という感じ。
T:どんどん似てきてるんだ(笑)
M:相当のファンでないと聞きわけできない。
T:まあ、カリカリかリーパンの衝撃はいいんですけども。
M:ははは。でも図らずも氷室との相似性があらわになったわけで。
T:最初からロック志向はあったんですよね?吉川さん。
M:っていうかアマチュアバンドやっていたから吉川は。背中にギターを背負った硬派だったんだからっっ!!!! ギターを持った渡り鳥だったんだからっっ!!!
T:だからロックやりたいのがアイドルとしてデビューして、しばらくしてから自作してやりたいことやりだすというのもチェッカーズと同じ経緯ですね。
M:あー、確かにまったく同じですね。
T:リスナーや同業者からの受け取られ方というのも共通するものがあったんじゃないかな。「あいつはロックか、アイドルか」っていうロックとして認めるかどうかみたいな見られ方。
M:たまたまヒットしたのが自作でなかったから、とか、売り出し方がアイドルっぽかったから、とか、どんな番組でも歌っていたから、とか、今見ればそれは些細なものなんだけれどもね。
T:どっちにカテゴライズするかで図らずもその人のスタンスが表れてしまうという。
M:まあ、ともあれ、それは本当にこの時期までの現象でこれがここから10年くらいでぐずぐすと崩れていくんですよね。
T:どの雑誌に出たからロックじゃない、みたいなのもね。せいぜい90年代前半までですよね、そういう区分けって。
M:ま、ここで取り上げたアーティストたちの活躍もありーの、彼らの作った道筋でデビューした後輩がブレイクしーの、で、そういうわけ方はなくなってしまいましたね。
T:おっ、なんか上手くまとめに突入している。
M:えっ、ここでまとめなくちゃならんわけ?
T:あ、いや、そういつつもりでは……。続けましょう。
M:たださっき言ったようにこのアルバムに関してはあんまり萌え語りできないのよ。
T:シングルでいうとどのへんですか?これ。
M:このアルバムはシングルはいっておへん。リリースは「夕方チャンス」の頃。
T:萌えれない理由は何故。
M:えー、っていうか、以後の吉川イズムがあまり感じられないしぃーー。
T:吉川イズムつっても読む人はどんなイズムだよと思ってそうですけども(笑)
M:そこから説明しなきゃいかん?「♪ かりかりかりーぱぁん」みたいな歌をマジに歌う美意識ってことっすよ。つまりは。
T:ははははははは。それは美意識なのか?
M:そうですよ。それは男の美学ですよ。
T:「♪ かりかりかりーぱーーん」で感じろと。考えるな、感じろと。
M:吉川の熱いソウルを感じろ、と。
T:(笑)
M:この熱い思い、届けたいんや、と。それって素敵やん、と。
T:藤岡弘イズムと吉川イズムは違いますか?「漢」を貫く姿勢とか。
M:ああーーー、「特撮的」というところでは結構近い。共に石ノ森ヒーローっぽい。
T:そうそう。ヒロイズムですよね、吉川。
M:だから、なんというか、子供向けアニメのヒーローっぽい男気なんですよ。それは。
T:こうあるべきという理想的な「かっこいい像」を貫き通すという。
M:それが、めっさ、手垢がついていて、手垢つきすぎで逆に新しい、という。
T:それがわりとこう、見るほうにとってはファニーで違う面白がり方をしてたりするんだけども、本人は大真面目だという。
M:陳腐を通り越した向こうに見える美学があるのですよ、彼らには。
T:素敵ですよねえ。
M:確かに見る分には笑えるけれども、それって素敵やん、と。って思わず何度もシンスケになるのですが。
T:まあ、話を戻すと、このアルバムにはそういう吉川イズムが希薄だと。
M:そうそ。
T:つうか自作前のアルバムってそんなにイズム全開なのあるんです?
M:や、ないんだけれども、前二作は大村雅朗アレンジ萌えです。ニューウェーブ全開で素敵やん、と。神すぎる、と。
T:この年のシングルの「RAIN-DANCEがきこえる」とか非常にニューウェーブな感じで好きなのですが。
M:あー、「RAIN-DANCEがきこえる」は好きだわ。
T:なんか嘘くさいニューウェーブというか。
M:ズンジャンズンジャンジャンって、ドラムがバタバタするイントロが、もうニューがウェーブしているって感じ。
T:なんだ「ニューがウェーブ」って(笑)。ま、ニューウェーブってそんなもんだよね。
M:ははは。そんなもん呼ばわりされた。
T:かっこいいんだけどなんかうそ臭いぜという。うそ臭いけどかっこいいぜという。
M:うそなの? かっこいいの? どっちなのかはっきりしてっっ!!!
T:いや嘘でもかっこよさを貫き通すという、ってよくわからんけど。
M:まぁ、自作以前のシングルでも「レインダンス〜」と「ラビィアンローズ」と「キャンドルの瞳」は素晴らしいです。
T:そうですね。その3曲はいいなあ。「ユーガッタチャンス」とかも別の意味でいいが。
M:別の意味って……。
T:なんかこうファニーでさ(笑)。笑えるということで。♪ ゆーがったちゅわんす!ゆーがったちゅわんす!
M:♪ でぅないっ  ――ってやらせるなっつ―の。
T:文字で物真似して伝わるのかなあ。モニター前で実際やってるんですけどもね。
M:ふたりしてモニター前にして物まねしているこの馬鹿さがつたわるかしらん。って、まぁ、なんだか非常に先ほどから悪ノリの感じがしておりますが……。
T:じゃ、ちょっと真面目に。ここしか語るところないなら自作期も語っておかないと機会がないですけどもいいです?
M:まあ、語ると切りがないので。「INNOCENT SKY」にしたって「嫌い」いうても個々の曲では好きなものもいっぱいあるし。「心の闇」とか吉川っぽくって好きだし。ほら「少年犯罪の心の闇」って感じで手垢のついた言葉が吉川っぽいというか。
T:なんか誉めてんのかそれは(笑)。
M:タイトルも「RAIN DANCEが聞こえる」のあとに「踊れよRain」とか「Rain Beat」とか。
T:しつけえ! どんだけ雨なんだ。
M:似たようなタイトルの歌作っちゃうあたりもアホっぽくって素敵だし。
T:誉め言葉なんですよねそれは。
M:もちろんですよ。吉川さんは、パートパートをみると独自性がまったくないんだけれども総体でみた時に独自性そのもの、みたいな存在であるところがいいんですよ。
T:確かに吉川は吉川としか言いようがないなあ。
M:ってわけで、オススメアルバムは「HOT ROD」なんで、そこんところよろしく。
T:まあ、続きはまこりんさんのサイトで吉川ヒストリーを知れと。
M:はははは。またそれかい。
T:吉川の漢気に触れろ、と。
M:辛口キッスを感じろ、と。
T:「♪ かりかりかりーーぱーーん」の醸しだすイズムに耳を傾けろ、と。
M:そしてお前らみんな吉川に抱かれちまいな、と。


■ スリリングでセクシャル――大沢誉志幸「CONFUSION」

M:あとひとつ。大沢誉志幸「CONFUSION」(年間22位/31.6万枚)を取り上げたいよーっ。 
T:あ、「そして僕は途方に暮れる」はこの年か。
M:このアルバム、近頃しょっちゅう聞いているのよ。ってわけでおまけで軽く語っていい?吉川つながりでもあるし。
T:大沢誉志幸もここでしか語るとこないですしお願いします。
M:って大沢親分はつかささんは聞いたことある?
T:いや。ブックオフでたまたま1枚ひろった「シリアスバーバリアン 2」持っているだけ。ブレイクはクボジャーより先なんです?
M:そりゃぜんぜん前。だって久保田はまだこの年デビューしていないし。
T:あ、そうか。そもそもトシちゃんの「It's BAD」がこの年の年末だしね。
M:ってなぜ、そこでクボジャー……。そりゃ共にロイクな音楽だけれども、どちらかというと大沢親分は岡村靖幸と立ち位置が近かったような、和製プリンスというか。
T:俺の中ではクロい人の系譜に勝手に入れてたんですけど、岡村ちゃんなんすか……。
M:エキセントリックで危なっかしい挙動不審な感じが似ていた。紫色の夢を見ているというか。
T:エロいの?
M:わりとエロっぽだね。
T:確かに岡村ちゃんとルックスちょっと似てるけども。
M:大沢親分もこの頃は……
T:ちょっと、大沢親分だと日曜に「カーツ!」いっている人になっちゃいますけど(笑)
M:って、こういう誤読を導く私の罠はお嫌い?
T:罠なのか(笑)。いや、いいです。
M:まぁ、ともあれ、デビューから「CONFUSION」を経てこの年の「in・Fin・ity」(年間34位/23.7万枚)までの大沢親分は素晴らしいですっっ。ニューウェーブっぽなアヴァンギャルドなサウンドにほんのり黒さが立ち込めて最高です。妖しい。
T:クボジャーを想像したら違うんだ。
M:全然ちがうよっっ。もっと音がとんがっている。過激でスリリング。
T:もっと変態チックで脂ギトギトな感じ?
M:脂ぎっているかは知らんが、変なプレイとかしそうな感じではある。ねちっこいベットプレイをしそうな。
T:はははは。そうか、認識改めなきゃならんすね。
M:大沢さんはデビューから「CONFUSION」まで銀色夏生―大沢誉志幸―大村雅朗トリオで楽曲作っているんですが、濃密な夜のエロス、という感じで、マジヤバって感じっす。
T:「そして僕は〜」もそのトリオですね。
M:でも「途方にくれる」はそのなかではむしろ継子的な作品って感じ。
T:うん。「そして僕は〜」からはちょっと想像つかないですもんね、それは。じゃあかなり時代的に早い人だったんでは?
M:確かにそういえるかも。
T:日本のブラックって、順序としてはクボジャーとか杏里とかあのへんが入門になってその次にそういう変態ファンク的なものが来るのはわかるけど、その前にやっていたってことでしょ。
M:ま、ニューウェーブ的な装いがあったわけでそこでカモフラしていたけれども、ただ、ソロデビュー前にもジュリーに「晴れのちBLUE BOY」なんて、トンでもな曲を書いていたわけで、元々そういう素質の人なんだろうな。
T:まあ、こうしてチャートだけ振り返ると売り上げ的にはそんなに目立たないけども日本のブラックというと必ず名前の挙がる人ですよね。
M:ま、でも、この「CONFUSION」は84年7月発売で前年分を入れると40万枚を突破しているから当時としては結構なビックヒットアルバムだったとも言えるわけで、それなりのセールスと影響を残したのかな、とおもったりもする。
T:なるほど。
M:っていうか、まぁ大沢の親分は今度レビュー書くよ。
T:おお。
M:っていうか、つかささん聞いてないしっっ!!!!!
T:はは。や、聴きます、はい。つうか「シリアスバーバリアン 2」も買って聴いてない。
M:聞けよ。そこは素直に。


■ 1985年、総括

M:ともあれまとめだぁっ。デーモン閣下風に「まとめだぁー」。
T:デーモン風が文字で伝わりません。
M:がーん。またそれかよ。
T:20年前の85年のチャートを振り返ってみたわけですが。
M:はい。
T:まあ、私は知識不足でちょっと語りきれなかったかなあとも思うんですけどもどうでしたか、85年。
M:ポピュラー音楽的に色々と節目の年でもあったなぁという印象が前々からあったので、それを確認できたのでよかったです。ただ、そういえばおにゃんこ語っていないよなあ、と思ったり。
T:あっ。……まあ、おニャン子は次の年でもその次でもいいだろうということで。
M:セールスの山は86年だしね。そこでいいか。
T:まあ、この年のテーマとしてはやっぱり、何度もクロスオーバーという言葉を使ってしまったんですがアイドル、歌謡曲、NM・ロックという区分けがこう決壊しはじめてチェッカーズや吉川、中村あゆみなどの象徴的な存在が表れて。
M:色々と良くも悪くも現在にいたる下準備が始まったという。
T:ジャンルが決壊して混ざり合っていく、ドロドロとした胎動というかそれが始まっているという。
M:経済的にもこの年は「プラザ合意」があって、ついにバブルの引き金が放たれたわけでもあるし、そういったところもLINKしているのかなぁと思ったりもしますって相変わらず大袈裟な方向に持っていく私なのであった。
T:80年代後半に入って、90年へ向けていろいろ動きだしているという感じですかねぇ。
M:J-POPってバブルとその後の音楽、ってイメージがあるからさぁ。コンビニが全国どこにでもある時代の音楽、というか。そういう空気がこの時期の作品から少しずつ漂い始めてきているかな、と。85年頃にはコンビニが全国どこにでもあるようになったし。
T:でもこの時期の音源聴くと、未発達ゆえの独特な面白さみたいなものがあると思うんですよ。
M:コンピュータによる打ち込みが汎用化されたのもちょうどこの頃からだしね。
T:新たなものが生まれ始めているけどまだ洗練・確立はされていないゆえに、ときちょっとヘンテコであったりとか、それが面白かったりね。なんかこう、独特の魅力なんですよこの時期。
M:90年代の音楽が忘れたものですね、それは。
T:凸凹している。研磨される前の状態というか。そこが面白い。だからハマり出すと止まらなかったりするんですよね。
M:そのわりには、あまり振り返られることのないアーティストが多いのが寂しかったりしますが。
T:それはあるかもですねぇ。
M:そのあたりが現在に繋がるな、とも思えるわけで。まぁ、この年の作品はオリジナル音源で手に入るものがちょっと少ないのが残念ですがまた色々と聞いてみると新しい発見があるかな、なんて思ったりします。
T:そうですね。
M:ってわけでまとめっぽい感じですが、そこんところ、どうよ。
T:前回のエックスより綺麗な終わり方でいいんじゃないかと。
M:ははははは。それでは皆さん次のチャート回顧でお会いしましょう。
T:さよーーならーー。

2005.08.28
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